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2020・21年考察

デフレ脱却やBI実現には、政府の「借金」「財政不健全化」が望ましい:井上智洋氏著『現金給付の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考える-5

井上智洋氏提案のベーシックインカム再確認ー5

 井上智洋氏のBI論を、近著 『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる 』 (2021/5/10刊・NHK出版新書)を紹介し考察することで再確認するシリーズを進めています。

井上智洋氏ベーシックインカム論総括とベーシック・ペンション2022提案に向けて:『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考えるー1(2021/10/17)
コロナ禍ゆえ、長引く不況ゆえだけのためのベーシックインカムではない:井上智洋氏著『現金給付の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考える-2 (2021/10/25)
「自助・共助・公助」理念と相反するベーシックインカム:井上智洋氏著『現金給付の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考える-3 (2021/11/4)
3段階に分けて導入する二階建てベーシックインカム:井上智洋氏著『現金給付の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考える-4 (2021/11/6)

 以上の4回に続き、5回目の今回は、<第3章 政府の「借金」はどこまで可能か>を取り上げます。

第3章 政府の「借金」はどこまで可能か>から

 第3章は、以下の節と項で構成されています。

第3章 政府の「借金」はどこまで可能か
1.財政赤字をめぐる三つの立場

 ・コロナ増税を警戒せよ
 ・税制健全化は必要か?
 ・政府が「借金」して何が悪い?
 ・ケインズ主義とは何が違うのか?
 ・財政ハト派のケインズ主義の問題点
2.現代の貨幣制度とMMT

 ・モズラーの名刺の逸話
 ・お金を使うとお金が増える
 ・マネーストックとマネタリーベースの違い
3.お金はいつ生まれ、いつ消えるのか

 ・財政支出と徴税の際のお金の動き
 ・日本を衰退に導いた大いなる勘違い
 ・お金を増やすには「借金」しかない
 ・なぜ税金は財源ではないのか?
4.政府の「借金」はなぜ問題ないのか

 ・「借金」を増やしても良い理由
 ・国債を貨幣化するとどうなるか?
補論 ドーマー条件と横断性条件

 ・ドーマー条件とは何か?
 ・横断性条件とはなにか?
 ・ノン・ポンジ・ゲーム条件
 ・マネタイゼーションした場合はどうなるか?

 この章は、本書のタイトルが『「現金給付」の経済学』とされているように、現金給付によるベーシックインカムを行うに当たって、その財源を政府が発行する国債すなわち「借金」で賄うことが適正とする根拠を示すためのものです。
 また「経済学」書としていることで、本書における重要な章であることも分かります。
 その考え方を、上記の節と項の構成順に従い、ポイントを抽出し、少し私が感じた点も混じえて確認してみます。

1.「財政赤字をめぐる三つの立場」から

 井上氏の基本的な考えは、これまで当サイトの他の記事で紹介してきたように、デフレ経済からの脱却を不可欠とし反緊縮を掲げ、ベーシックインカム実現を主張するものです。
 そのBI導入においては、政府の借金は、国の財政上まったく問題がない。
 すなわち一般的な、国の財政赤字が膨れ上がることを誤った財政政策とすることに反対するのです。
 故に、<コロナ増税を警戒せよ><財政健全化は必要か?><政府が「借金」して何が悪い?>というわけです。

 衆議院選の各党公約の中に、さまざまな<バラマキ>政策が盛り込まれ、自公政権が絶対多数を確保して終えた今は、公明党が公約として掲げた、すべての18歳以下の国民への一律10万円給付実現に向けての動きが表面化しています。
 それに対して、自民党高市政調会長が昨日反対を表明し、すんなりとはいかないかの様相を呈しており、果たしてどうなるか。
 公明党はその財源として、昨年予算計上されたものの未執行に終わっているものを充当するとしてはいますが。
 未執行分とはいえ、元はと言えば、財源は赤字国債発行によるものです。
 またコロナ禍による家計への打撃、消費の低迷などを理由にした、消費税の一時的減税や廃止などの公約を掲げた党もあり、コロナ増税への懸念は、しばらくは不要かなとは思いますが。

MMT現代貨幣理論を用いての財政健全化不要、政府の借金は問題ない論。ただしインフレの程度には問題がある、という主張

 財政健全化に関して、井上氏は「そのために政府支出を減らしたり増税する必要は、「MMT現代貨幣理論」の立場からは必要なく、むしろ害悪ですらある」と言います。
 MMTは、主流派経済学が支配するミクロ、マクロなど標準的な経済理論に対して、マルクス経済学とともに「非主流派」の経済学理論、異端とされていると紹介し、以下その特徴を付け加えています。

MMTについて、「政府の借金はインフレをもたらさない限り問題ではない」という一般的な言い回しを「自国通貨を持つ国にとって、政府支出が過剰かどうかを判断するバロメータは、赤字国債の残高ではなくインフレの程度である」と説明。
「アメリカやイギリス、日本などは、それぞれ自国通貨を持ち、国や中央銀行は通貨の製造者であり、必要な資金を自らつくり出すことができ、資金が尽きることはなく、借金をする必要もない。」と加えます。


 そして、本来「国債」による財源調達は「借金」ではなく、正確には「債務」や「負債」と呼ぶべきと言います。
 しかし、財政破綻が起きないにしても、国債を発行して政府支出を増大し(借金が増え)続ければ、やがてインフレが起きることに警戒が必要とします。

均衡・反均衡をめぐる3つの財政論

 次に、政府の借金は問題ではないとすることから、ケインズ主義も同じと指摘されることから、ケルトンによる次の3種類の財政政策を紹介し、井上氏自身がどの分類の立場でこの問題を捉えているかを示します。

1)財政タカ派:短期的均衡財政主義
  いかなる時でも政府は財政収支をゼロないし黒字にすべき。景気云々に拘らず、政府支出は収入である税収以下であるべき。
2)財政ハト派:長期的均衡財政主義

  景気が悪い時には、政府は借金をしてでも支出を増大させ、景気をよくする必要がある。好況時には逆に、政府支出を減らすか増税により、赤字分を埋め合わせする必要がある。
  ケインズ主義者は、主としてこの派に当たる。
3)財政フクロウ派 :反均衡財政主義
  色々な意味合いがあるが、長期的にも均衡財政を達成する必要はないとする。
  過度なインフレになるまでは「借金」が増え続けても支障ない。
  MMTは、基本的にはこの財政フクロウ派に沿う考え方であり、井上氏自身もこれに当たるとしています。

長期化する不況下、膨大な財政赤字解消の目処が立たたなくても緊縮的政策を唱えることもあるケインズ主義経済学者への疑問

 こうした分類に従う時、長期的財政均衡主義の財政ハト派に属するはずのケインジアンが、長期化するデフレ経済においても、需要不足以外の原因を擁して緊縮政策を唱えることさえあることに井上氏は疑問を呈します。
 そしてこれに財政ハト派も加えたそれらの主流派経済学者の理解不足を指摘するのです。

2.「現代の貨幣制度とMMT」から

 本節はMMTをテーマとしているように見えますが、その端的な意味は、先述のレベルでよしとして、現代の貨幣システムに関する記述を、ここで参考までに取り上げておくことにします。

政府支出は、お金の消費・消失ではなく、お金の増加という実態

 現代の貨幣システムは
・政府と中央銀行の間に民間銀行が存在し
・この民間銀行を介して政府と中央銀行が間接的に国債と貨幣のやりとりをしている
が、この国債の存在がさらに貨幣システムを複雑にしている。
・政府支出を行うと世の中に出回っているお金「マネーストック」が増える。

 政府支出とは、公共事業や政府や地方自治体の行政のための人件費その他の費用、医療・介護・年金その他の社会保障・社会保険等への支出など、さまざまな形で生活や社会経済を営むために政府が、税収や国債発行で調達した通貨で支出・使用すること。
 しかし、支出と表現はするが、実際には、市中に出回るお金は、消えてしまうのではなく、逆に増えることを意味する、というわけです。

マネーストックとマネタリーベースの違いを知っておく

 もう一つ経済学の基礎知識を。
 お金については以下の2種類を理解しておきたい。
1)マネーストック:企業や個人など普通の民間経済主体が使うお金で、「現金」と「預金」から成り立つ
2)マネタリーベース:銀行同士の取引に使う特別のお金で、「預金準備」と「現金」から成り立つ
 「預金準備」とは、民間銀行が中央銀行に預けているお金で、マネタリーベースは、銀行間の取引以外に「政府と民間銀行の取引」にも使われる。
 また、政府が日銀に預けている「政府預金」はマネタリーベースではないが、それと同類のお金と見なされている。

3.「お金はいつ生まれ、いつ消えるのか」から

 次に、この節が意外に重要な節になります。
 井上氏は、バランスシートを用いて説明しているのですが、省略して、簡単な文章もしくは式でそのポイントをメモしてみます。

デフレ脱却には、政府の「借金」「財政不健全化」が不可欠?

 まず、著名な経済学者も犯し続けてきた間違いを指摘しながらの説明です。

1)国債を発行した分を政府支出した場合、プラスマイナスゼロになるのではなく、政府が借金をすれば、増税同様に、その分だけ世の中に出回っているお金が消滅するわけではない。
2)その理由は、多くの場合国債を購入するのは民間銀行であり、民間銀行は預金で国債を買うのではなく、預金準備で買う。
3)すなわち、民間銀行は預金準備が減少し、保有国債が増え、預金に変化はない。
4)通常、民間銀行は法定準備率をギリギリ満たす程度の預金準備しか保持しておらず、国債購入のための余分の預金準備は持ち合わせていない。
5)従い、民間銀行が国債を購入するタイミングで、中央銀行はそのための資金である預金準備を、民間銀行保有の国債(既発債)の購入する代わりに供給して増大させる。
6)すなわち、政府が使う資金の元手は中央銀行であり、他所から持ってくる必要はない。
7)中央銀行の機能を政府自身が持つ統合政府という形式の場合は、政府自身が使う資金を自分がつくり出すことになる。
8)これは、民間部門から資金調達しているように見えるが、見せかけであって、本質的には自らお金を作りだして資金調達していることを意味する。

 こうしたことをしっかり理解すると、以下に行き着きます。

1)政府支出 ⇒ お金が増える
  租税 ⇒ お金が減る
  国債発行 ⇒ お金に変化なし
2)租税+政府支出 ⇒ お金に変化なし
  国債発行+政府支出 ⇒ お金が増える

 すなわち、

1)政府が「借金」をして支出するとお金が増える
2)お金を増やすには政府は「借金」をしなければならない

 また、

1)民間銀行による企業への貸し出しによりお金をつくる「信用創造」は、(コンピュータのキーボードを叩く)「キーストローク」による貨幣創造で行われる。
2)そこで、企業への貸し出しと同時に、預金というお金(マネーストック)が増大する。

 そして、

1)プラス金利下ならば、中央銀行による金利引き下げ政策で、貸し出しを増大させ、マネーストックも増大できるが、ゼロ金利下では、その政策の実施はほとんど不可能である。
2)従い、マネーストックを増大させるには、政府の「借金」を増やすしかない。
3)それによりマネーストックが増大すればデフレからの脱却が可能になる。
4)すなわち、「財政不健全化」こそが正しい政策である。

という結論に至るわけです。

 

 税金は財源ではない?

 「世の中に出回るお金は、政府支出によって生まれ、租税によって消滅する、となれば、そもそも政府支出を行うために税金を徴収して財源を確保する必要はない。」
 こうしたロジックを踏まえて、この節の最後に、MMTでいうところの「租税は財源ではない」ということについて触れています。
 ここで井上氏は、それは「財源」の定義に関わる問題とし、<マネーストックのレイヤー><マネタリーベース・政府預金のレイヤー><歳入・歳出のレイヤー>という3種類のレイヤー概念を用いて説明します。

 すなわち、
1) <マネーストックのレイヤー>では、政府支出と貨幣創造の関係による「貨幣は無から生まれる」こと
2) <マネタリーベース・政府預金のレイヤー>では、預金準備と政府預金の関係から「政府預金の源泉は預金準備」であること
3) <歳入・歳出のレイヤー>では、租税と公債金による「歳入」と(基礎的財政収支対象)経費と公債費による「歳出」とが同額であること
のうち、先の2つのレイヤーで見れば、自国通貨を持つ国の政府は、他所から資金調達をしてくる必要がないとみなすことができることで「税金は財源ではない」と見ることが可能になる。
と説明になっています。

 ちょっと最後は分かりづらいですね。
 他に、租税は、世に出回るお金の回収で、景気を調整する機能・目的を持つという理論もありますが、井上氏はそこには触れていません。


4.政府の「借金」はなぜ問題ないのか

 では、最後の節で、政府の借金の合理性のダメ押しのロジックを確認することにします。

永続的な経済主体である政府は、必ずしも借金を完済する必要がない前提で成り立っている

 破産宣告を受けて禁治産者になる以外は個人の借金は返さなければならないのに対して、銀行は預金という借金を拡大し、貸付などを行い、その借金を完済することはない。
 この前提としての資本主義経済では、政府もまた永続的な経済主体組織として、国債は期限が来たら償還するが、新たな国債を発行して、借り換えすれば済む。
 すなわち、国債残高をゼロにする必要はないと言い換えることができる。

 しかし、それは自国通貨を発行できる国に限ったことであり、それにより中央銀行が買いオペして、国債と通貨を交換すればよいわけです。

「無利子永久債」の通貨の発行は、永久に利払い不要で、インフレ対応が必要のみ

 ということで、利払いの必要がなく、実質償還期限もない債権の性質をもつ「無利子永久債通貨」を政府が発行することで、ベーシックインカムの給付に充てることが可能になるというわけです。

インフレ対策として動員するマネタイゼーションは、政府の「借金」を無害化できる

 ただし、繰り返しになりますが、過度な通貨発行で発生のリスクが高まるインフレには配慮が必要で、その発生時には、社会に出回っている主として民間銀行が保有する「国債」を日銀が買い入れ、「通貨」に換える「マネタイゼーション(貨幣化)」で対応するとしています。
 金利上昇対策としての国債の通貨への交換による通貨の過剰な出回り、金利上昇時の利払いへの通貨発行等によるインフレ発生時にもマネタイゼーションを実施するというわけです。
 こうして、マネタイゼーションが、政府の「借金」を無害化する確実な手段ということになります。

BI導入によるインフレ発生リスク対策を組み入れた井上BI論に潜む別のリスク

 国債発行とその買い上げによる通貨発行で発生するインフレを、国債買い上げのマネターゼーションで対応する。
 それ以外に、企業や市民が保有する現金通貨を預金等に吸い上げるために金利を引き上げる方策も一般的です。
 ここでは、そのことに関して井上氏は踏み込んでいません。

 また、別の観点から、MMTを基本として通貨発行がある意味際限なく行われるリスクがあることを確認し、その対策を十分に考え、ルール化しておく必要があります。
 例えば、軍事費に充当するなどです。
 こうしたBI以外の特定の政府支出にMMTの考え方が方針・政策として活用されるようになると、もう歯止めが効かなくなる可能性も出てくるわけです。
 私は、財政規律主義に拘泥している限りは、真のベーシックインカムの実現は困難と思っています。
 そういう意味では井上氏の提案には、賛同する部分も大きいのですが、その歯止めとなる規律・規定を明確に、言うならば普遍的に守る絶対的なルール、結局それは憲法になるのでしょうが、が必須となります。
 しかし、よく「法の支配」を盾にすることで、憲法の絶対性を主張することも一般的なのですが、実は憲法自体、改正可能なわけで、絶対的な絶対はないと言えるのです。

 まあ、これを言い出すと結局、原発を保有するかしないか、戦争を放棄するかできないか、の議論と同質のものとなり、何も進まなくなるので、問題提起・確認に留めておくことにしましょう。

 なお、<補論 ドーマー条件と横断性条件> は省略しました。

 さて次回は最終回。
 最終章<第4章 脱成長の不都合な真実 >で井上氏の経済対策としてのBIの位置付けを確認し、併せて本書に関する総括を行います。

参考ー1:『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる 』の構成

第1章 コロナ不況と経済政策
1.大切なのは経済か、命か

 ・「経済か命か?」
 ・長期不況の始まりかもしれない
 ・問題は生産性ではない
 ・一次的不況と二次的不況
 ・長期デフレ不況と就職氷河期の再来
2.コロナ危機下の経済政策 ー コールドスリープせよ
 ・ターゲットを絞った支援の難しさ
 ・事業体をコールドスリープさせる
 ・現状の支援制度の問題点
 ・支援制度をいかに整えるべきか
3.Gotoキャンペーンの是非を問う
 ・GoToキャンペーンには安全宣言が必要だった
 ・GoToキャンペーンの問題点①
 ・GoToキャンペーンの問題点②
 ・GoToキャンペーンのほうが効果が高いか?
4.反緊縮で日本はよみがえる

 ・政府の「借金」を増やすなという批判
 ・反緊縮とはどのような思想か
 ・アベノミクスの最大の失敗
 ・必要なのはヘリコプター・マネー
第2章 なぜ、ベーシックインカムが必要か
1.現状と歴史はどうなっているか

 ・コロナ危機とベーシックインカム
 ・ベーシックインカムはネオリベ的か?
 ・社会保障制度とベーシックインカムの起源
 ・20世紀のベーシックインカム論
 ・実現に向けた取り組み
2.ベーシックインカムの「自助・共助・公助」

 ・ITによる格差の拡大
 ・物流の完全無人化は可能か
 ・クリエイティブ系の仕事は増えるけれど
 ・コロナ危機が時代を10年早送りした
 「自助・共助・公助」は何を意味するか?
 ・ベーシックインカムは「 自助・共助・公助」 に反する
3.生活保護は廃止してもよいのか

 ・生活保護には欠点がある
 ・ベーシックインカムと負の所得税
 ・生活保護は廃止すべきか
 ・制度はもっとシンプルであるべきだ
 ・「理由なき困窮者」を見捨てない
4.二階建てベーシックインカムへの道

 ・当面は追加型BIしかない
 ・貨幣制度の大きな欠陥
 ・ヘリコプター・マネーの具体案
 ・二階建てべーシックインカムとは何か?
 ・インフレ率目標が達成できない理由
 ・変動ベーシックインカムで景気をどう調整するか?
 ・実現に向けた三つのフェーズ
 ・財源はどうするべきなのか?
第3章 政府の「借金」はどこまで可能か
1.財政赤字をめぐる三つの立場

 ・コロナ増税を警戒せよ
 ・税制健全化は必要か?
 ・政府が「借金」して何が悪い?
 ・ケインズ主義とは何が違うのか?
 ・財政ハト派のケインズ主義の問題点
2.現代の貨幣制度とMMT

 ・モズラーの名刺の逸話
 ・お金を使うとお金が増える
 ・マネーストックとマネタリーベースの違い
3.お金はいつ生まれ、いつ消えるのか

 ・財政支出と徴税の際のお金の動き
 ・日本を衰退に導いた大いなる勘違い
 ・お金を増やすには「借金」しかない
 ・なぜ税金は財源ではないのか?
4.政府の「借金」はなぜ問題ないのか

 ・「借金」を増やしても良い理由
 ・国債を貨幣化するとどうなるか?
補論 ドーマー条件と横断性条件

 ・ドーマー条件とは何か?
 ・横断性条件とはなにか?
 ・ノン・ポンジ・ゲーム条件
 ・マネタイゼーションした場合はどうなるか?
第4章 脱成長の不都合な真実
1.完全雇用が達成されればよいのか

 ・雇用保障プログラムとは何か?
 ・雇用保障プログラムの問題点
 ・本当に完全雇用を実現できるのか?
2.デフレマインドが日本を滅ぼす
 ・完全雇用で満足してはならない理由
 ・労働者と企業経営者のデフレマインド
 ・デフレマインドで科学技術も衰える
 ・出版不況の原因は何か?
 ・新国立競技場のザハ案が却下されたのはなぜか?
3.脱成長論とグリーン・マルクス主義
 ・脱成長論とは何か?
 ・グリーン・マルクス主義
 ・地球温暖化は本当に害悪か?
 ・グリーン・ケインズ主義
 ・経済成長と二酸化炭素排出のデカップリング
 ・すでに物欲は減退し始めている
 ・反緊縮主義とは何か?
4.なぜ経済成長が必要なのか
 ・経済成長と幸福の関係
 ・近代世界システムから考える
 ・日本の衰退と中国の勃興
 ・「日本人」と「香港人」の意外な共通点
 ・私たちはもっと豊かになっていい
おわりに

参考-2:井上智洋氏著の所持書

・『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(2016/7/20刊・文藝新書)
AI時代の新・ベーシックインカム論 (2018/4/30・光文社新書)
・『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(2021/1/21刊・扶桑社、小野盛司氏共著)
・『資本主義から脱却せよ 貨幣を人びとの手に取り戻す』(2021/3/30刊・ 光文社新書、松尾匡・高橋真矢氏共著)
・『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』(2021/5/10刊・NHK出版新書)

参考-3:井上智洋氏著等に関する投稿記事

ベーシック・インカムとは-3:AIによる脱労働社会論から学ぶベーシック・インカム (2020/6/16)
朴勝俊・山森亮・井上智洋氏提案の「99%のためのベーシックインカム構想」ー1(紹介編)(2021/4/8)
朴勝俊・山森亮・井上智洋氏提案の「99%のためのベーシックインカム構想」ー2(評価編)その意義と課題 (2021/4/9)
小野盛司氏の経済復活狙いのみのベーシックインカム案? (2021/2/25)
資本主義リアリズム、加速主義、閉塞状態にある資本主義の正し方:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-1(2021/5/7)
知らなかった、民間銀行の濡れ手で粟の信用創造:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-2(2021/5/9)
信用創造廃止と貨幣発行公有化で、資本主義と社会はどうなるのか:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-3(2021/5/11)
資本主義脱却でも描けぬ理想社会:『資本主義から脱却せよ』から考える社会経済システム-4(2021/5/13)

参考-4:日本のBI論者に関する記事リスト

<小沢修司氏提案BIに関する記事:『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』(2002/10/30刊・小沢修司氏著・高菅出版)から>
1) 2000年前後までのベーシックインカム論確認:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-1(2021/10/1)
2)負の所得税、参加所得、社会配当。BIに類似した最低限所得保障構想:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-2 (2021/10/2)
3)ゴルツの時短・時間解放社会と社会的排除の本質とBI論との結びつき:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-3 (2021/10/6)
4)ワークフェアとBIの一体化のための「労働と消費を含めた生活全般の人間化」の意味不明:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-4 (2021/10/7)
5)月額8万円所得税率50%で問題多き小沢BI構想に落胆:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-5 (2021/10/11)
6)20年前よりも所得税率引き上げ56%で月額8万円の変わらぬ小沢BI論の残念:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-6 (2021/10/12)

<山森亮氏提案BIに関する記事: 『ベーシック・インカム入門』(2009/2/20刊)『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』(2018/11/20刊・共著)等から >
1)ベーシック・インカムとは-1:歴史から学ぶベーシック・インカム (2020/6/2)
2)山森亮氏のベーシックインカム財源論(2021/4/3)

<原田泰氏提案BIに関する記事:『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』(2015//から >
1)ベーシック・インカムとは-2:リフレ派原田泰・前日銀政策委員会審議員から学ぶベーシック・インカム (2020/6/6)
2)3種類の所得再分配論によるベーシックインカム思想の原型:原田泰氏著『ベーシック・インカム』より(2021/1/28)
3)リフレ派原田泰氏2015年提案ベーシックインカム給付額と財源試算:月額7万円、年間総額96兆3千億円 (2021/2/3)

<竹中平蔵氏主張BIに関する記事>
1)竹中平蔵の暴論はシカトすべき!:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-1
(2021/1/14)
2)宮内義彦氏の話を耳をかっぽじって聞け、竹中平蔵:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-2 (2021/1/15)
3)ベーシックインカムを突き詰めて考えたことはない竹中平蔵氏 (2021/8/17)

参考-5:ベーシックインカムの歴史と実験導入例に関する記事リスト

1)イギリス救貧法の歴史・背景、概要とベーシックインカム:貧困対策としてのベーシックインカムを考えるヒントとして(2021/1/26)
2)18世紀末、2人のトマス、トマス・ペイン、トマス・スペンスの思想:ベーシックインカム構想の起源(2021/1/31)
3)ミルトン・フリードマンの「負の所得税」論とベーシックインカム(2021/2/19)
4)カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1(2021/3/6)
5) BI実験と効果誘導に必要な認識:ベーシックインカム、実験導入事例紹介-2 (2021/3/7)
6)メディア美学者武邑光裕氏による無条件ベーシックインカム論とドイツBI事情-1(2021/3/8)
7)ドイツでUBI実証実験、2021年6月開始:武邑光裕氏によるドイツUBI事情-2 (2021/3/9)
8)米カリフォルニア州ストックトン市のベーシックインカム社会実験、中間報告(2021/3/15)
9) 1968年凶弾に倒れたキング牧師を動かしたアメリカ福祉権運動とベーシックインカム (2021/3/17)
10) ベーシック・インカム世界ネットワーク(BIEN)の位置付け (2021/3/22)

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