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2020・21年考察

憲法の基本的人権に基づくベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-1

先日
「生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文」解説、始めます(2021/6/2)
でお伝えしたように、当サイトで提案している日本独自のベーシックインカム、「ベーシック・ペンション生活基礎年金」法律案の前文に掲げた、同法制定の背景・目的(当記事最後に掲載)の各項目ごとに補足・解説を行うシリーズを始めます。
(参考)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

 今回は、第1回目。
 このテーマです。

憲法に規定する基本的人権及び生存権の実現

 同前文で一番初めに位置づけた内容は、以下のとおり。

<憲法に規定する基本的人権及び生存権等の実現>
 日本国憲法の最高法規である第97条規定の「基本的人権」に準拠した「第三章 国民の権利および義務」の各条に定める「基本的人権」「個人の尊重・尊厳」「法の下の平等」「自由」「生存権」「教育を受ける権利」「職業選択の自由及び勤労の権利」「幸福追求権」等に基づき、種々の社会保障・社会福祉に関する制度・法律が制定され、運用されていますが、それらにおいて、未だに規定する条件を実現していないものがあり、その対策・充実が必要とされています

 
 憲法当該各条に規定したさまざま権利には、実際に法律で制度として規定され運用管理されているものがあります。
 しかし、中には、追求すべき理想・モデルの粋に達していないものや、社会的な状況などに合わなくなっているものがあり、まだ制度・法律として具体化されていないものも多々あります。
 ベーシック・ペンションそのものが、憲法規定のさまざまな権利を実現する方法であるとともに、それらの現状を改善・解消する基本的な手段・方法として、関連するあるいは必要な諸制度・法律の改廃や制定を行うことに繋げます。
 <憲法に規定する基本的人権及び生存権等の実現>は、こうした課題への取り組みも広く含むものであることを意味しています。

 以下に、対象となる<第三章 国民の権利及び義務>と<第十章 最高法規>の中の関連条文を以下に抽出しました。
(参考)⇒ 日本国憲法

第三章 国民の権利及び義務

〔国民たる要件〕
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〔基本的人権〕
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
〔平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界〕
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

以降、第十五条から第十七条 略

〔奴隷的拘束及び苦役の禁止〕
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
〔思想及び良心の自由〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
〔信教の自由〕
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
〔学問の自由〕
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等〕
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
〔財産権〕
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
〔納税の義務〕
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
〔生命及び自由の保障と科刑の制約〕
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

以降、第三十二条から第四十条 略

第十章 最高法規

〔基本的人権の由来特質〕
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

権利としてベーシック・ペンションを明示

 以前投稿した記事
憲法 第三章 基本的人権と自由・平等に基づき支給されるベーシック・ペンション(2021/2/21)
において、先述した各条文ごと適用した目的・意図を簡潔に提示したのが、以下の小項目リストです。
 その各項ごとの詳しい内容は、同記事でぜひ確認頂きたいと思います。

1)ベーシック・ペンションは、日本国民に与えられた基本的人権と自由・平等に基づき支給される
2)世帯ではなく個人に、平等に支給されるベーシック・ペンション
3)生存権保障を目的とした生活保護制度は、ベーシック・ペンション生活基礎年金への拡充で保障へ
4)教育を受ける権利は、義務教育制とベーシック・ペンション教育基礎年金・学生等基礎年金・生活基礎年金で保障される
5)職業選択の自由、勤労の義務・責任も、ベーシック・ペンション生活基礎年金で保障される
6)幸福追求権も自由も、ベーシック・ペンション生活基礎献金で保障される

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唯一「平等」を具体化でき、具体化したベーシック・ペンション

 私たちは、先の種々の人権を語る時、必ずといっていいほど「平等」「自由」「公平」という言葉を用います。
 ただ、おわかりの通り、それらの捉え方は個々人によって異なりますし、何か数字で基準を決めてその度合をルールとして用いるのも難しいことです。
 しかし、貧富・所得の違いに関係なく、(年齢別ですが)同額をすべての個人に対して支給するベーシック・ペンションは、絶対的に「平等」なものと言えます。
 その視点で述べたのが、以下の記事です。
 その記事内の小見出しも、その論点をイメージして頂けるかと思い書き添えました。

日本国民すべてに、唯一の、真の平等を実現・保障するベーシック・ペンション(2021/3/5)

世帯ではなく個人に、平等に支給されるベーシック・ペンション
・公平、公正の個人ごとの捉え方の違い
・法の下の「平等」実行・実現の難しさ
・憲法に規定する「自由」の定義の難しさと感じ方の多様性
ベーシック・ペンションだけが、憲法で保障する「平等」唯一の実現事項
ベーシック・ペンションの平等から、次の平等の対象・課題の設定と実現へ
・民主主義を考えるヒントが


 なお、上記の2つの記事よりも以前に、憲法と関連付けてアップしたものとして以下があります。
 参考までに添付しました。
ヘリコプターマネーではなく、ファンダメンタルマネー:全国民受給のベーシック・インカム制へ(2020/5/8)
なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ?-1(2021/1/20)

改憲とベーシック・ペンション

 ベーシックインカム導入論者の中に、UBIユニバーサル・ベーシックインカム思想を憲法に盛り込むべきとする人がいます。
(参考)⇒ 佐々木重人氏が主宰するFacebookグループ<ベーシックインカム・ウェイブ in Japan

 人は生まれながらにUBIを受け取る権利をもつことを憲法でうたえばよいというものです。
 確かにその考え方には賛同できます。
 しかし、現状の日本における改憲の議論は、第9条を軸とするものであり、いきなりUBIについて改憲、憲法への盛り込み云々を提案することは相当の困難を伴います。
 現実論としては、当サイトが上記に示したように、現行憲法の第三章の基本的人権と生活保障条項などを根拠に法律を制定することで良いと考えます。(まあ、それも大変なことではありますが。)
 その導入・運用管理、定着をみて、(9条問題などに関して)何かしらの改憲が行なわれた後、新たに、すでに慣習法としても認めうるようになっているであろうベーシック・ペンションの権利を盛り込むことが望ましいと考えます。

改正国民投票法成立で、改憲論議深まるか


 改憲と言えば、憲法改正の手続きを定める改正国民投票法が6月11日に成立しました。
 新型コロナウイルス禍で問題となった「緊急事態」における国の個人に対する強権・私権制限のあり方が、憲法・改憲事項として認識されるようになったことで、この法改正に関心が持たれることになりました。
 そこで、以下に、改憲の要件と当改正国民投票法の改正のポイントをメモしました。

<改憲要件>
・衆参両院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成で発議
・国民投票で有効投票総数の過半数の賛成があれば実現
・公務員や教職員の地位を利用した国民投票運動は禁止

現在、自公両党の衆院の会派別議席数は計306で3分の2にあたる310議席に満たない。
参院も計140議席と、3分の2超えとなる164に届かない。

<法改正法のポイント>(国政選や地方選で導入済みの制度の適用)
・駅やショッピングセンター等商業施設に「共通投票所」を設置して投票可能に
・悪天候などを理由に期日前投票を認め、投票時間の拡大を認める
・航海実習中の学生にも洋上投票を認める
・付則として、CM規制などについて施行後3年を目処に検討し法制化する

各党の改憲へのスタンス

・自民党は「9条」「緊急事態条項」など優先4項目
・公明党は改憲議論を再開レベル
・立憲民主党は改憲の中身より今回の改正法の見直しを先行させるよう主張
・国民民主党はデータ基本権
・日本維新の会は道州制や教育の無償化、憲法裁判所の創設、「緊急事態条項」の創設など
・共産党は改憲に反対

現状各政党の改憲に対する方針はこういう状態です。

ベーシック・ペンションを基本的人権として憲法へ

 当然ですが、ベーシックインカム云々を憲法に、というお話は皆無です。
 私の希望的観測では、5年~10年スパンで、改憲提案がなされ、一度は国民投票が実施されることになるのではないか。
 その間、ベーシック・ペンションが部分的ベーシックインカムとして実験を含めて実施され、20年後頃までには完全ベーシックインカムすなわちベーシック・ペンションが導入、運用、定着。
 そして2050年頃までに、改憲事項として憲法に組み入れられる。
 これが理想ではないかと考えています。

 憲法ついでに、改憲、改正国民投票法と話が少しそれてしまいました。
 以上で第1回目を終了し、次回は<生活保護の運用と実態>と関連して、ベーシック・ペンションのあり方について確認したいと思います。


本シリーズは、以下の前文各項目について、解説・補足を行うシリーズです。

ベーシック・ペンション生活基礎年金制度の背景と目的(同法前文より)

1)憲法に規定する基本的人権及び生存権等の実現
2)生活保護の運用と実態
3)少子化社会の要因としての結婚・出産・育児等における経済的不安
4)子どもの貧困と幸福度を巡る評価と課題
5)母子世帯・父子世帯の困窮支援の必要性
6)非正規労働者の増加と雇用及び経済的不安の拡大及び格差拡大
7)保育職・介護職等社会保障分野の労働条件等を要因とする慢性的人材不足
8)共働き夫婦世帯の増加と仕事と育児・介護等両立のための生活基盤への不安
9)国民年金受給高齢者の生活基盤の不安・脆弱性及び世代間年金制度問題
10)高齢単身世帯、高齢夫婦世帯、中高齢家族世帯の増加と生活基盤への不安
11)コロナウイルス禍による就労・所得機会の減少・喪失による生活基盤の脆弱化
12)自然災害被災リスクと生活基盤の脆弱化・喪失対策
13)日常における不測・不慮の事故、ケガ、失業等による就労不能、所得減少・喪失リスク
14)IT社会・AI社会進展による雇用・職業職種構造の変化と所得格差拡大と脱労働社会への対応
15)能力・適性・希望に応じた多様な生き方選択による就労・事業機会、自己実現・社会貢献機会創出と付加価値創造
16)貧富の格差をもたらす雇用・結婚・教育格差等の抑制・解消のための社会保障制度改革、所得再分配政策再考
17)世代間負担の不公平対策と全世代型社会保障制度改革の必要性
18)コロナ禍で深刻さ・必要度を増した、安心安全な生活を送るための安全弁としての経済的社会保障制度
19)基本的人権に基づく全世代型・生涯型・全国民社会保障制度としての、生活基礎年金制(ベーシック・ペンション制)導入へ
20)副次的に経済政策として機能する、社会経済システムとしてのベーシック・ペンション
21)生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)導入に必要な種々の課題への取り組み

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