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MMT現代貨幣理論とは:ベーシックインカムの論拠としての経済学説を知る


コロナ禍を背景に、MMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)を根拠にしたベーシックインカム導入主張が、勢いを増している感があります。

こうした状況から、MMTは、経済学者間の論争に留まることなく、BIを主張する多くの人と政府・財務省とその官僚、政党なども巻き込んでいます。
しかし、当初から、どちらかというとMMTには理論とは言うものの何か胡散臭さを私は感じていました。
その理由は、
・経済を第一義としてのBI導入案が色濃く感じられ、社会保障制度など本来主題とすべき課題への関心がさほど感じられなかったこと。
・BI導入を可能にする論拠として、従来の「税と社会保障の一体化」や「財政規律と財政赤字」を巡る議論が不要であることを挙げ、ただそれをもってBIの正当性・妥当性を主張するものであったこと。
などです。

しかし、私自身が提案しているベーシック・ペンションも、実のところ「税と社会保障の一体改革」が限りなく不可能に近いことを理由に、従来の財源には縛られない「財源フリー」論を根拠にしています。
それ自体が、MMTと気脈?を通じるところがあることは重々承知していました。
それゆえに、やはり、今急にポッと出てきたものではなく、それなりの歴史を持つMMT故に、一応の知識を持っておくべき。
そう思いつつ、なかなか取り組むことを躊躇していました。
というよりも経済学という学問自体あまり好きでない、その能力がないと自覚していたためでもあります。

今回も当初、今注目を集めている井上智洋氏の書をベースにして取り組もうと思っていました。
しかし同氏が提案するBIは、MMTを純粋に生かしたものでもないため、それはそれで別に論じるべきと。
そして、かの森永康平氏による『MMTが日本を救う』(2020/6/24刊)を参考に整理しようと準備を始めました。
しかし、ページを何度もめくりながら整理しまとめるのはどうにも非効率というか、整理しにくい。
そこでたどり着いたのが、困ったときのWiki 頼み。
MMTが日本を救う』も少し活用させて頂きつつ、ほんの時々寄付もしている”Wikipedeia” に拠る<MMT現代貨幣理論>を活用させて頂くことにしました。

以下、今回は、BI云々に入る前に、MMTとはどういうものかに絞って理解すべく、取り組むことにします。
若干、感じるところも書き添えつつ。

MMT、現代貨幣理論(Modern Monetary Theoryとその最大の特徴


MMTは、ケインズ経済学・ポストケインズ派経済学の流れを汲むマクロ経済学理論の一つであり現代の貨幣についての理論を支柱としています。
それは、新古典派経済学の枠組みで構築され、政府の財源を税と債券発行によって先買権的に調達すべきとする主流派のマクロ経済学と対立しており、政策的効果やリスクについての議論がなされています。

そのMMTの最大の特徴は、


 1.貨幣の起源や制度に焦点を当て、管理通貨制度の下で政府が独自に法
  定通貨を発行している国家を前提としていること。
 2.政府に通貨発行権があれば、政府の意思に基づき通貨発行による支出
  が可能であり、財源のための徴税は必要ない、としていること

そして


 3.変動相場制で自国通貨を有している政府は通貨発行で支出可能なため、
  税収や自国通貨建ての政府債務ではなくインフレ率に基づいて財政を調
  整すべきという財政規律論
 4.貨幣を政府の負債であると見なし政府が法定通貨での納税義務を国
  民や企業に課すことにより、法定通貨に納税手段としての基盤的な価値
  が付与され流通するという納税肯定論。(「貨幣国定説」「表券主義」)

を特徴としています。

「納税肯定論」と表現したのは、私です.
「MMTを突き詰めると、結局税金を収めなくても良いことになるのではないか」と私は思っていたのですが、先述した森永氏の著でもそれは否定していました。
これについては、あとから触れます。
でも、MMTの説明は、素人には、常に「鶏が先かタマゴが先か」の議論と同じ性質のもののように感じられ、そのことで胡散臭さが払拭できないのです。

MMTにおける財政政策及びインフレ対策の在り方


その財政政策やインフレ対策について、以下のようにしています。


 1.主権通貨国における政府の財政政策は、完全雇用の達成・格差の是正・
  適正なインフレ率の維持等、財政の均衡ではなく経済の均衡を目的として

  実行すべき
 2.起きうるインフレリスクに対しては、ビルト・イン・スタビライザー
  や、政府の支出抑制および増税と、国債発行による超過貨幣の回収で対
  できる。

(参考)
 ビルト・イン・スタビライザーとは、
 財政自体に備わっている、景気を自動的に安定させるプロセス(装置)
 補整的公共投資政策などの投資的財政政策に比べタイム・ラグがなく、税
 制における累進率が高いほどその効果は大きい。
 歳出の一定額への固定、増加率の固定などによっても安定化機能は果たせ
 る。(Wikipediaより

ということで、そもそもMMTは財政論を回避し、経済ファーストのロジックを展開していることが分かります。
そして、自国通貨建てであれば政府債務がどれだけ増加しても、政府は通貨発行で当該債務の償還が可能なため債務不履行(デフォルト)には陥らないから、財政赤字などまったく気にすることなく、経済最優先で国の運営を行っていけばよい、となります。
その辺りの事情を以下に再度整理します。


自国通貨を発行できる政府の働き

MMTは、自国通貨を発行することができる政府について以下のように説明します。

  1. 徴税や国債の発行による財源を確保する必要なしに、支出することができる
  2. 自国通貨建ての債務で債務不履行(デフォルト)を強制されることはない。
  3. 経済の実物的な資源(労働、資本、資源)の利用が限界に達した場合に発生する、インフレ率の上昇が財政の制約である。
  4. 徴税で貨幣を経済から取り除くことで、ディマンドプルインフレーション(需要インフレ)の抑制が可能である(ただし、それを実行する政治的意思が常にあるとは限らない)。
  5. 国債の発行が民間部門の資金を締め出すことはない(クラウディングアウトは起こらない)。


MMTに基づく経済運営において、唯一心配なのはインフレ。
しかし、それも、上記のように(簡単に?)抑制可能で、デフォルトも、クラウディングアウトも起こらないから、心配しなさんな!
ということになりました。

では、もう一つ、MMTと税金との関係です。

無税国家は可能か?


MMTは「無税国家が可能になる」と主張しているわけではない、と言います。
その理由は、


  自国通貨を発行する国にとって税は財源確保の手段ではなく法定通貨
  での納税義務を国民や企業に課すことで、法定通貨の基盤的な通用力と
  流動性を確保し、さらに経済の調整弁として貨幣を回収することによっ
  てインフレや格差を調整するための手段であるから。

仮に無税国家を実現しようとした場合には、税による上記の機能が失われるためだという(屁)理屈です。

納税するために通貨・貨幣が必要であり、通貨があり余るくらい流通したら、税を課して回収すればいい。
ということですが、これが先程私が述べた「鶏が先か、タマゴが先か」のこじつけ議論だとする理由です。
このことを何度も思い起こさせるロジックとして、MMTではまたこう説明を加えます。

  1. 政府の支出は租税収入によって賄われているのではない。政府の支出に租税収入は必要でない。それどころか、政府が先に貨幣を創造しなければ、誰も租税を支払えない。
  2. 政府は貨幣を創造できるのだから、支出を行う際にそもそも借入などする必要がない。従って、国債は財源調達ではなく金利調整手段である。
  3. 貯蓄が政府の赤字をファイナンスするのではない。政府の赤字が貯蓄を創造するのである。
  4. 政府は、自国通貨建てで売られているものなら何でも購入する「支出能力」がある
  5. 銀行は、集めた預金、金庫の中の現金、あるいは中央銀行に保有している準備預金を元手に貸出を行っているのではない。それどころか、貸出が預金を創造するのである。


やっぱり、「鶏が先か、タマゴが先か」の口上と思いませんか?

自国通貨を発行する政府は、いくらでもお金を刷って発行でき、それで破産することはない。
このくらいシンプルなことはないですし、分かると言えば分かります。
言っていることは単純ですから。
その単純さは、1国の経済すべてその国内で循環し、完結するものならば同意もできます。
しかし、グローバル社会及び経済においては、その単純さは通用せず、常にリスクが隠れており、それが顕在化する可能性がいくらでもある。
そう考えています。

これまでの主流な経済理論における財政政策


参考までに、従来の主流派経済理論における均衡財政政策の考え方を、以下に記しておきます。


  政府の財政赤字が累積して政府債務が増大していけば、通貨の信認が失
  墜することによる通貨暴落や、クラウディングアウトと国債の信用リス
  ク増大による金利上昇が発生し、それに伴う高インフレを招く。
  そのため、国債発行の増大や政府債務の拡大は望ましくなく、基本的に
  税収の範囲で支出を行うべきである。

MMTを簿記と結びつけて考えると

ちょっと余分なことですが、簿記をご存知でしたら、MMTではこう考える、と知っておくと便利?かと。


  政府のバランスシートにおいてあらゆる政府発行の貨幣性商品は資産と
 して計上されない。政府自らは貨幣を所有しないのである。
  あらゆる政府発行の貨幣性商品は負債として計上される
  政府支出によりこのような貨幣性商品は作られ、課税・国債発行により
 このような貨幣性商品は消えていく

私が提案するベーシック・ペンションでは、回収されたデジタル通貨がバーン、消却される、としていることと少し通じてはいます。
ただ、導入目的・導入思想はまったく異なることは、ご承知ください。
日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)

MMTによる祖税の役割


MMTを掲げる経済学者の一人、ランダル・レイはMMTにおける祖税の目的が「貨幣を動かす(Taxes Drive Money)ため」とし、以下の4つの役割を挙げています。

  1. 通貨の需要を促進する。
  2. インフレと景気を調整する。
  3. 所得の不平等に対処する。
  4. 悪い経済的行動を抑制する。

森永氏の説明でやり直すと、以下になります。


 1.税によって購買力を奪い、総需要を抑制させることで、インフレを抑
  制させる。
 2.累進的な所得税などにより、冨と所得の分配を変更する。
 3.大気や水質汚染、喫煙や飲酒など悪い行動を抑止する手段としての税
  「悪行税」を課す
ように、それらの悪行のコストを引き上げる。
 4.特定のプログラムのコストをその受益者に割り当てる。

MMTは本当に万能なのか?


前項を受けて、考えてみました。
まず、1では、インフレは起こりうることを自ら言っています。
起これば、秒殺でインフレを退治できるわけではありません。
タイムラグがあるわけで、少なからずの影響があります。
死者が発生する暴動や略奪があるかもしれない。
他の不測の事態のリスクもある。
MMTは、そうして起きたことに対する保障も、タダで刷ることができるカネで解決するのでしょうが、死や心障はカネの問題ではありません。

2で、MMTが導入されても、所得再分配機能は、別途存在を継続することを示しています。
このことが、MMTを論拠とするほとんどのBI導入論者が、社会保障制度等について踏むこまない、というか、むしろ踏み込めない、踏み込みたくない理由があることを示している。
「そちらでやってくれ」、「こちらの課題ではないから」。
今、そう強く思いました。

3.については、私が提案するベーシック・ペンションが現金ではなくデジタル通貨でなければ、という記事のなかで触れている懸念への対応と通じていることを書き添えます。
なぜベーシック・ペンションは現金ではなくデジタル通貨なのか:DX時代の必然としてのJBPC(2021/2/17)
ベーシック・ペンションを現ナマで、は怖いというお話から、人間は、社会は変わらないというお話へ(2021/2/17)

4.の「特定のプログラムのコスト」についてやはり思い浮かぶのは、「特定のプログラムのメリット」を特定の受益者に割り当てる、というMMTが根源的に持つであろうリスクを、即思い浮かべさせました。

ついでに、MMTでは、インフレなき完全雇用を実現する政策手段として、「公的な雇用提供プログラム(Job guarantee program)=就労保証プログラム」の導入を提唱しています。
このことも、経済ファーストだけでは、発生する問題を解決できないことを示しています。
加えて、「MMTが完全雇用をめざす」という経済政策を掲げていることについては、私の提案するベーシック・ペンションでの考え方とズレがあります。
また、MMTを用いたBI論には、必ずと言ってよいほどAI社会の雇用の喪失への対策としてのBIが組み込まれています。
そこには、完全雇用を目論むMMTとは相いれない要素があることも、付け加えておきます。

MMTが否定・批判する3つの悪い税


ついでに?、森永氏の同書にあった、MMTが掲げる悪い3つの税を以下に挙げておきましょう。
その理由など詳しい説明は省かせて頂きます。

  
  1.社会保障税(日本では社会保険料)
  2.消費税
  3.法人税

悪い税の中にある「消費税」。
これは、日本において経済第一主義からMMTを活用しBI導入を主張する論者にとって、仇とすべき悪税・悪政とされていることは周知のとおりです。
法人税」。
経団連等財界が聞けば、泣いて喜ぶ話です。
もしこれを認めるなら、個人への租税公課も同様になしにしないと、示しがつきませんね。

最後に「社会保険料」。
これが無料になれば、国民は何の心配もなく、医者にかかり、介護サービスを受けつことが可能になる。
ある意味ユートピアが実現することになります。
しかし、森永氏が提示した「悪い税」をなくそう、社会保険料負担をなくし医療や介護サービスをMMTで無料化しよう、所得税もなくしてグローバル社会で負けない企業を作ろう、などという提案は、日本の現在のBI論者から聞くことはありません。
やはり、知らぬ顔、のような気がしてなりません。

実はMMTは、ベーシックインカムについては否定的である

実は、と繰り返して、森永氏の同書に、「実はMMTは、ベーシックインカムについては否定的である」という一文とその理由に関する説明があります。
意地が悪いですが、今回ここでは紹介しません。

今後も継続してMMTに焦点を当てて

後段では、MMTをバックにしてのBI論への反論展開に入ってしまいました。
これらの主張については、別の機会に取り上げるMMT主義者のBI論紹介時に再度取り上げることになると思います。

一応、前段で、MMTとはどういうものか、どんな特徴を持つものかの紹介を行いました。
門外漢の作業ですので、ご専門の方から見ると非常に底の浅い、一面的な整理、とご指摘を受けることは十分覚悟しています。

なお、本来述べるべき「貨幣信用論」について、政府と中央銀行との関係を巡る「統合政府論」等、MMTを論ずる際欠かすべきでない課題について、今回は触れなかったことをお断りしておきたいと思います。

その課題を含め、今後も、折に触れてMMTを深く理解すべく取り上げ、紹介もできるようにと思っていますが、今回は以上としたいと思います。
次回は、MMTベースにBI導入を現実的に提案している方の提案内容を取り上げたいと思っています。
またその中で、「実はMMTは、ベーシックインカムについては否定的である」という森永氏の説明も紹介する予定です。
では次回に。



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