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山森亮氏のベーシックインカム財源論

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本稿は、当サイトで頻繁に利用・引用させて頂いている山森亮氏著『ベーシック・インカム入門』(2009/2/20刊)『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』(2018/11/20刊・共著)及び、同氏による2019年6月14日公開の現代ビジネス | 講談社 (ismedia.jp)への寄稿を参考にさせて頂いています。

「財源」という課題設定への疑問

まず、山森氏は、ベーシックインカムを議論・検討するに当たって、その財源は何か、どうするのか、という問いかけ、課題設定自体に疑問を呈します。

その理由として
先ず、財政学では、「ノン・アフェクタシオンの原則」といって、特定の税と特定の支出を関連付けることは、望ましいことではないとしています。
要は、税収に色がついていないことが大半で、BIにどの財源を充てるかという問い自体不自然、というわけです。
もう一つは、
それでもこの課題が議論の俎上に上り、特定の政策の財源を問うということがなされるのは、圧倒的に、社会保障をめぐるケースだから、というのです。

率直な感想を述べると、ピンとこない!です。
既存の社会保障制度では、税方式か保険料方式かの議論から始まり、既に税方式で運用管理されている分野がほとんどでしょうから、殊更新たにどの税金から、と課題にする必要はないですね。
ただ、従来の予算枠や実績を大きく上回る金額を必要とする場合に、どの財源から充当するか、という課題設定はありうると思います。

とりわけ、完全BIの場合は、相当額の資金を必要とするので、どの税から充当するかを検討することは、ある意味では必要なことと思います。
なので、山森氏がどの論述でも示しているこの理由付けには、あまり説得力・合理性はないような気がします。

ベーシックインカム導入における2つの選択肢

とは言っても、現実にBIを導入するに当たっては、給付のための必要資金を調達する必要があるわけで、同氏は次のどちらかを選ぶしかない、とします。

完全ベーシックインカムを導入する、あるいはベーシックインカムの導入と同時に社会サービスの充実を図ろうとするならば、
1)既存の税率ないし税収構造を大きく変更する
2)税収に頼らない給付の方法を導入する
どちらかを選択せざるを得ない。

そして、この2つの方法について、それぞれ以下のように提示しています。

税率あるいは税収構造の変更方法例

先ず、既存の税率あるいは税収構造を変える方法の例を以下に列記します。

1)定率所得税方式
  現状多くの国で採用されている所得が多いほど税率が高くなる累進課税方式に対して、ベーシックインカム導入時には、所得税への課税を定率化し、その税収を主なBI原資とする方式
2)再分配重視方式
  所得が多いほど高い税率を課す累進課税方式で課税・歳入化された税金を、BI受給者に公平に分配する方式
3)消費税方式
  BIの資金源を主に消費税で賄う方式。消費税がBI給付を目的とした財源とされるいわゆる目的税方式
4)環境税等環境重視方式
  例えば、CO2排出量に対して環境税を課し、それを主なBIの財源に充当する方式
  しかし、ゼロ・カーボンが実現されれば、その財源自体が消滅することになってしまう。

ただ、いずれの提案も、今より税負担が重くなるケースが殆どで、これらの提案は、反対されることが多いのは当然と言えましょう。

理論的には可能だが、現実となると別問題ということです。
例えば、過去の消費税増税が、経済停滞の大きな要因とされていることでも、今後BI導入の議論が行われることになった場合、最大の難問になることは間違いないでしょう。

なお、山森氏が例示した方式以外に
5)相続税方式
  相続税への課税率を高めて税収を増やし、BIの原資に充当する
6)企業保有資産課税方式
  企業などが保有し、活用していない資金・資産に対して課税し、BIの原資に充当する

などが提案されています。
しかし、どの方式か一つだけで賄うのではなく、複数の組み合わせによる検討・考察が大半です。

貨幣制度と銀行制度による信用創造という基本

ところで、ほとんどの国においては、現行の貨幣・銀行制度では、政府あるいは中央銀行にのみ通貨発行権があり、日本では、紙幣は中央銀行である日本銀行が、硬貨は造幣局が発行しています。

加えて、実は民間の銀行も貨幣を作り出しており、銀行は預かっているお金の何倍ものお金を貸し出すことができるのです。
その預り金の何倍まで貸し出せるかという規制「準備預金制度」が一応あり、日本の場合、現在0.05%〜1.3%とされています。
すなわち、銀行が融資をすることで、経済に流通する貨幣が作られ、増えていくことになっているのです。
この過程を経済用語では信用創造、英語ではMoney Creation 貨幣創造と言います
しかし、経済活動が冷え込むと、逆に極端な信用収縮が起き、流通する貨幣の量が一気に減ることになるわけです。

ベーシックインカムによる信用創造と経済効果とインフレリスク

ベーシックインカムは、一般的には、政府または中央銀行がその通貨を発行し、支給する方式を取るとされています。
これ自体が、信用創造行為に当ります。
そしてこのBI給付が、消費に充てられ、経済的な効果が生まれます。
ニワトリが先か玉子が先かの議論と共通ですが、BI給付が経済活性化・経済成長に貢献するゆえに必要とされる根拠がここにあります。

但し、こうしてBIが毎年支給されることで懸念されるのが、需要と供給のバランスが取れなくなることで起こりうるインフレ発生リスクです。
デフレ対策や低迷する経済対策として期待されるBIですが、それが高じてインフレを招くリスクも当然あることに注意が必要です。

言うならば過剰な信用創造が行われた結果のリスク、というわけです。
後述する、税収に頼らないBI給付が行われた場合、インフレリスクがあることが、同論者の口からも示されています。

しかし、意図的に信用収縮を図ることでインフレを収めることで対応が可能としているのです。

そのインフレリスクの可能性が、税収に頼らないBI方式を反対するグループに対する反対理由になるのですが、
そのグループは、当然、税収によるBI支給論派であることから、赤字国債に頼った相当額のBI給付がもたらす財政赤字、プライマリーバランスを欠いた財政政策を当然批判することになります。

このように、山森氏が示した2つの選択肢において、想定されるリスクとそれへの対応についての考え方も明確に違いがあることが示されています。

税収に頼らない給付の方法:シカゴブランとベーシックインカム

1929年の大恐慌後、民間銀行が信用創造するような現行の貨幣・銀行システムを変え、「完全準備金制度」「100%準備金制度」という性質をもつ提案が「シカゴプラン」としてなされました。

この延長線上に、政府や中央銀行等が流通に必要な分だけ発行した貨幣を、ベーシックインカムとして給付したら良いのではないかという考え方が出てきます
これは、税収に頼らない給付方法です。
実はこれに類した議論・提案は、MMTや赤字国債の中央銀行による買い取り方式等にも見られます。

当サイトが提案するベーシック・ペンションは、日銀が発行する専用デジタル通貨JBPCを給付するもので、やはり税収に頼らない方式を採用しています。
但し、現金ではないことや赤字国債の買い上げという方式ではないことに違いがあります。

山森氏は、これまでのところ、税収に頼らない方法を支持してはいません。
基本的には、税率あるいは税収構造の変更による方式を選択していると思われますが、その給付額を含め、具体的にその内容・方法を提案した論述を見てはいません。
それが残念なところです。

いずれにしても、財源をめぐる議論がなくなることはないでしょう。
それを前提として、ベーシックインカム、ベーシック・ペンションの実現を探り、方向性と方法とを詰めていく必要があります。
問題・課題の所在を確認し、どこに共通点・類似点を見出すことができるか。
コロナ禍におけるBI論が、ともすれば経済的要素だけに焦点が絞られている状況を問題化し、中期視点で取り組む姿勢は維持すべきと再確認を重ねることが重要と考えています。

(参考)
⇒ MMT現代貨幣理論とは:ベーシックインカムの論拠としての経済学説を知る(2021/2/23)
⇒ 井上智洋氏提案ベーシックインカムは、所得再分配による固定BIとMMTによる変動BIの2階建て(2021/2/24)
⇒ 福祉国家論とベーシックインカム:福祉国家から基本的人権社会保障国家へ(2021/2/27)
⇒ 山森亮氏のベーシックインカム財源論(2021/4/3)

<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)


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