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子ども予算支出に効果検証は不可欠か?:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-8

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「少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション」というシリーズに取り組み、これまで以下を投稿。

第1回>:女性の逸失所得防止策は、中長期的雇用・労働政策アプローチ:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-1(2023/4/8)
第2回>:「幸せ」という情緒的要素を少子化対策の経済的手段とすることは可能か:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-2(2023/4/11)
<第3回>:少子化・人口減少に不可欠な経済成長とその実現方法:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-32023/4/14)
<第4回>:児童手当の所得制限廃止は、ベーシック・ペンション児童基礎年金の先行導入:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-42023/4/17)
<第5回>:新設「こども家庭庁」の責務と課題:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-52023/4/22)
<第6回>:東京財団の消費増税社会保障財源論の偏向性と矛盾:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-62023/4/25)
<第7回>:児童手当よりも優先すべき政策とは:少子化対策の視点とベーシックインカム、ベーシック・ペンション-72023/5/8)

 当初、第6回で終了したのだが、最終回翌日に日経のコラムに少々気になった内容の小文が載ったので、昨日続編を投稿したのが、その<第7回>。
加えて、またまた、昨日5月8日日経に、やはり少子化対策関連で、以下の記事が掲載。
⇒ 膨張子ども予算、果実乏しく  自治体予算3倍も出生率横ばい、検証が不可欠 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 これは、<第7回>の元となったコラムの物足りなさを十分補うもの、と続々編にして、今回<第8回>。

 岸田内閣の異次元の少子化対策には、相当の財政支出が必要という観点から、「膨張する子ども予算」に対する懸念を提起するもの。
従来の関連記事と少し趣きを異にしているのは、多くの子育て支援政策の実務を担うのが地方自治体であることに着眼して論述している点。
但し、その目的・意図は、当然、子ども関連予算が果たして成果・効果に結びつくのかどうかにあるわけで、論調は、記事テーマに占めされるように、「果実乏しく」や「検証が不可欠」と批判的。
但し、異次元の少子化対策は、これからなので、過去積み上げられ、継続されてきた少子化対策への支出の評価・検証となることは言うまでもない。

 当然、本稿は、その批判への批判を目的とするもの。
 以下の2つに分けられた記事を整理して、考えてみたい。
膨張子ども予算、果実乏しく  自治体予算3倍も出生率横ばい、検証が不可欠 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
(Review 記者から)政策効果、現金より現物給付  – 日本経済新聞 (nikkei.com)


国の少子化対策に、浪費の懸念?

「国が本腰を入れ始めた少子化対策に、浪費の懸念が出始めている。」
こういう書き出しの記事。
先ず矛先は、少子化対策の現場となる自治体。
「保育所整備などに費やされた全国の予算は20年前の3倍超になったが、想定通りの効果は限定的で、効果検証そのものをしていない例もある。」
「少子化対策予算は「錦の御旗」の下で今後も膨張が避けられないが、後世のツケを重くすることになりかねない。」

 端からこの調子なので、率直なところ、まともに評価すること自体ムダなことと思うのだが・・・。
まず「想定通りの効果」における「想定」とは、いかなるもの・ことを言うのか。
そして、仮に出生率の向上を想定していたとしたとき、「効果検証」の基準となる評価算定方法は、果たして真に合理的なものがあるのかどうか。
もう一つ、仮に、効果をもたらすことができていないとしたとき、その責任は、自治体にあるのかどうか。

子ども予算増えても、子ども減少に歯止めかからず?

 日経の基調は、「子ども予算が増えても、子ども減少に歯止めかからず」である。
 そんな簡単に出産数が増えるものと考えること自体浅はかと思うのだが。
ある県(高知県ということだ)の外部監査で、「少子化対策の効果を測定し、改善につなげることは必要」とし、「急速な人口減少を受け矢継ぎ早に事業を実施。だが効果が明確でないものがある。」と県に厳しく注文をつけたことを紹介する。

女性就労支援は、出生数増加目的?

 取り組み例として挙げたの<女性就労支援事業>。
これを、出生率引き上げ施策の一つと位置付けたとの事だが、これだけで子どもの数が簡単に増えることを期待する方がおかしい。
 女性就労は、出生数を増やすことだけが目的では決してない。
日経などは、女性就労者数増加は、減少傾向にある労働人口増やGDP増にも寄与すると評価するはずで、自らこのような使い方をすることに疑問を持たないのだろうか。

政府の無責任さに肩を持つ、内閣府調査の活用

 政府・自治体が支出した2021年度児童福祉費は、20年前比3.2倍増の10.7兆円。
その中で、全国63町村では年間出生数5人以下と「地方消滅」が現実味を帯び、自治体は子ども予算を増やし続けてきたが、その予算の効果は乏しい。
当たり前のことで、その原因は、若い世代の首都圏への一極人口集中による流出、女性人口自体の減少、地方産業の地盤沈下による雇用機会の減少など、子ども予算を付けたところで簡単に状況が変わることなどあり得ない。
 それに追い打ちをかけるように用いたのが、自治体対象の内閣府2021年度調査。
少子化対策効果に「子育てしやすいと思う住民の割合上昇」や「出生数の増加」を見込むと回答した4自治体の割合6割。
その効果は「住民の割合上昇」25%、「出生数の増加」5%、「特にない」22%と。
現実的に、各地方自治体が行ってきた子育て支援プログラムの強化策は、自治体間における子育て世帯の取り合いとなること、なってきたことは明らかなはずだ。
いわば、ゼロサムもしくはマイナスサムのゲームに過ぎなかったわけだ。
これをもってして、国が地方自治体の責任を問うことは、無責任極まりないことであり、日経の神経を疑うべきものであろう。
では、国家予算が支出されるすべての政策は、その効果・成果が検証されているのか。
とんでもない話だろう。
その検証に関する別の視点からの論述を次に見てみよう。

EBPM主義研究者の相も変わらぬ戯れ言

 日経は、EBPM(根拠に基づく政策立案)に詳しいという研究者の話を都合よく引用する。
こうだ。
少子化対策支出の効果が上がらない理由は、
多くの自治体は何が少子化対策に結びつくかの可視化や、個別事業が出生率向上にどの程度結びつくかの検証ができていない」とみる。
 ならばこの研究者に問おう。
貴方は、個別事業が出生率向上にどの程度結びつくかの仮説をどのように設定できるのか。
何よりも、その前提としての少子化対策に結びつくかの可視化とは、そもそもどのようなもの・ことを意味し、どのようにそれを行うのか。
仮に、個別事業の貢献度が、0.1ポイントとすると、真にそれが一人の子どもが誕生する上で確かに10%貢献したとどのように実証するのか、できるのか。
個別事業の種類が仮に何十種類もあり、それぞれに予算が付けられ支出されたとき、コンマ以下の稀少値レベルの評価が、果たしてEB、エビデンス・ベーストのものと言えるのか。
そして全体のサンプル数が極めて少数の場合に、EBを求めることそのものにムリがあるのではないか。

 こうした人の社会的行動に対する財政支出の成果は客観的に評価検証され、新たに適切な政策立案に活用されるべきとするEBPMの考え方。
それを全面的に否定するものではないが、私は極めて疑問に思っている。
子育て支出しかり、教育支出しかり。
そこでの評価は、労働力として所得・付加価値を生み出す経済的評価基準に集約されるしかないのである。
こうした疑問については、本稿を待つまでもなく、以前から何度も提起してきている。
その事例として、以下の過去記事を参考までのメモしておきました。
関心をお持ち頂ければ確認ください。

EBPM書としての評価は?:柴田悠・山口慎太郎両氏<子育て支援経済論>シリーズ比較・紹介:2022年書籍記事シリーズ紹介ー4(2022/6/2)

苦し紛れの日経論述の顛末

「出産・育児のほか、出会いや家庭の経済力も絡む少子化の要因は複雑で、事業の効果測定や改善は容易ではない。それでも財政余力が先細りするなか、費用対効果を上げる努力は欠かせない。」
 こう理解しているのだから、もうそろそろ、紋切り型の主張は打ち止めにすればよいのだが。
効果検証のためのいくつかの県の取り組みを紹介したり、行政の縦割り打破の提案を添えている。
そこでのキーワードは、またまたある研究者の「総合的な視点に立つ議会の役割が欠かせない。」「地域の将来の着地点をどこに置いて少子化対策を進めるかを定め、住民に公開して討議していくべき」という言葉で代弁させ、多様な意見を反映できるように、女性や子育て中の人が政治参加しやすい環境整備を行うべきと綺麗事でまとめる。
一層混沌とさせ、自治体にプレッシャーを与え続ける便法である。
また困った時の産官学の「学」。
調査研究の足として大学を使うのも常套手段である。

話は、地方創生戦略のKPI(重要業績評価指標)利用に

 挙句の果てに、2014年に掲げられた地方創生問題を持ち出し、ムリを承知で自治体に求めたKPI(重要業績評価指標)数値目標を含む<地方創生戦略>策定、その中での少子化対策に話を戻すのである。
これも、政府の責任放棄と自治体への実務と責任の丸投げの象徴的政策で、日経も分かっていたはず。
日経は、庇うどころか、図に乗ってこう言い放つ。
 地方自治法では「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とし、「財源も時間も余裕はなく、自治体の原点に立ち返る必要がある。」と。
白々しい限りだ。
原点に立ち返るべきは、政府と官庁と国会である。

政策効果、現金より現物給付、ってホント?

 結局、日経執筆陣がまとめた内容の見出しが、上にある「政策効果、現金より現物給付」。
これだけではよく分からないが、続きにこうある。
「解が見えにくい少子化対策の中で、効果をあげる事例もある。」
「解が見えにくい」と正直なのはよいが、持ち出したのが、先のEBPM紹介記事中にもある、学者研究者山口慎太郎東大教授の言。
「児童手当などの現金給付より保育所整備などの現物給付が出生率向上に効果的」、「自治体が男性職員が育休を取りやすいよう率先して職場環境を整え、地域企業に育休取得の支援金を出すのも有効」、自治体ごとに有効な少子化対策は異なるが、各地で対策の効果や検証データを蓄積して共有すれば「国全体の大きな財産になる」。
なんだか、脈絡なく、同氏が述べた意見を取り出して利用しただけのもの。
 記者自身が、あるいは日経としてどう考えるかではなく、一応専門家の意見を、さも本当に現物給付が効果があるかのように結んでいる。
現物給付にも支出が伴うことを無視しており、効果的としたのも、海外の事例を持ち込んでのもの。
海外諸国には、日本と異なる文化的・社会的・法的基盤と背景があるわけで、決して同条件での取り組みと検証ではありえないのだ。
特に、私が重視している、雇用・所得の経済的不安要素について海外ではどうなのかは、先述の記事紹介で扱っている2人の専門家の研究でもほとんど触れられていない。

そして相変わらず提示するのが、「欧州では男性が子育てに参加する国ほど夫婦ともに子どもを希望し、そうした国ほど出生率が高い傾向がみられた。」という例。
では、この政策実行に要した支出規模がどの程度で、実際に出生率向上に寄与した程度がどれ程だったのか。
決して合理的な数値効果の検証はできないだろうし、先述したように、仮にコンマ以下の寄与度では、子ども1人の誕生には至らないわけで、まさに総合的施策の結果でしかありえないのである。

 わずかに一つ、記者自身の言葉が最後に示されていた。
難局を乗り切るには集合知が欠かせない。」
まったくしょうがない。
集合知とはなんぞや?
必要な集合知をどのように集めるのか?
記者も、日経も、原点に返るべきであろう???

自治体の子ども予算化の本質は、暮らしやすさの基盤整備

 元来、子ども予算は、子どもを安心して生み育てることができる社会経済的基盤や、子どもが健やかに成長し、教育を受けることができる社会経済的基盤を整備・拡充・維持するための支出である。
決して、少子化対策としてだけのものではない。
多様な子育て支援政策もそこに含まれるもので、それに必要な施設・設備、支援サービス組織形成のための基盤整備・拡充に対する支出に、出生率向上への貢献度の検証を求めること自体にはムリがある。
安心して働くことができるようになった、子どもを預けることができるようになった、という類の地域住民の評価・感想が得られれば良しとしてよいはずだろう。

 基本的には、少子化は簡単に止められないし、簡単に出生率を引き上げることも不可能である。
他サイトに、以下のテーマで投稿しているので、関心をお持ち頂ければ、確認をと思います。

参考関連記事:異次元の少子化対策でも少子化は止められない3つの構造的要因

1.異次元の少子化対策でも少子化は止められない3つの構造的要因(上)人口構造要因:総務省2022年10月人口推計から(2023/4/13)
2.異次元の少子化対策でも少子化は止められない3つの構造的要因(中)雇用・労働構造要因:経済的不安の根幹、非正規雇用者数・比率の増大(2023/4/23)
3.異次元の少子化対策でも少子化は止められない3つの構造的要因(下)心理的・精神的構造要因:選択的非婚化社会化とひとりで生きるソロ社会化(2023/4/26)

まず、ベーシック・ペンションの段階的導入から

 現物サービス給付は、子育て支援政策を推し進める上で不可欠な政策。
しかし、結婚・出産の前提としての家族形成には、雇用・所得という経済的不安を払拭できる社会経済的基盤の整備は必須である。
そのための唯一の改善・解消策として提案しているのが、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンションの導入。
但し、その実現には大きなハードルがあり、出生率向上政策の軸とするにも、まだまだ時間が必要であることが最大の問題。
加えて、ベーシック・ペンションは、少子化対策や出生率向上だけを目的としているわけではなく、多様な目的・意義を持つもの。
これまでの様々な考察・提案を、当サイトで確認頂くとともに、今後の諸考察・諸提案にも引き続き関心をお持ち頂ければと思います。

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