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2023年blog&考察

BI財源論に必要な発想の転換とは?:NI氏のベーシックインカム論を考える-1

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

かねてから、ご自身もベーシックインカムの必要性を提案なさり、私の提案するベーシック・ペンションにも関心をお持ち頂き、常にその膨大な支給額による過剰な貨幣の流通が、インフレ、ハイパーインフレを発生させることへの懸念を示し、対策や考え方を要求なさっているNI氏。
同氏が、「未来党宣言」というFacebookグループを昨年開設。
その中で、ベーシックインカムについての持論を発信・配信していらっしゃいます。
そこで公開されているご提案資料を、私が運営するFacebookグループ「ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング」にも投稿頂きました。
その構成を整理したのが、以下です。

<序論-1>:未来社会の経済原則を考察するに当っての視点と答え
 1.今後も予想される人口増加下での資源枯渇化、地球温暖化、環境破壊を抑止していく視点と答え
 2.資本主義経済か共産主義経済かの選択と答え
 3.新自由主義がもたらす行き詰まりという視点と答え
 4.ロボット化・AI化が進化した社会で増加する経済困窮者救済と購買力低下という視点を答え
<序論ー2>:政府財源の国債依存体質は問題ないのか
 1.現在の国債に依存している政府財政に対する危機感
 2.国債はいくらでも発行可能か
 3.税は政府財源ではないのか
 4.国債依存の政府財政がもたらす問題点=過大なインフレ
 5.現在の日本の政府財政状況と今後の対応
以下<本論>
Ⅰ ベーシックインカム制度は人間を堕落させるか
 1.未来社会にベーシックインカム制度は必須となるのでは
 2.ベーシックインカム制度は人間の堕落をもたらすか
Ⅱ 生活保護とベーシックインカム
 1.現行の生活保護の実態
 2.現時点でベーシックインカムは実現可能か
 3.ベーシックインカムが必須となる状況
 4.ベーシックインカムを実現するには、発想の転換が必須
Ⅲ ベーシックインカム私案例に対する私の疑問
 1.れいわ党山本党首私案
 2.日本ベーシックインカム学会会員S氏の試案
Ⅳ ベーシックインカム実現の必要条件
 1.財源の問題
 (1)最大の課題は財源
 (2)財源の問題は発想の転換が必須
 (3)最大の懸念はインフレの発生である
 (4)市中からの貨幣の吸い上げ
 2.ベーシックインカムの導入が必要になる時期
 3.ベーシックインカム導入が可能となる条件
 4.世界が連携・協調出来る体制作りは長い道のり
 5.課税強化は時間を掛けて
 6.課税強化による市中からの貨幣吸い上げで、過大インフレが防げるか
 (1)将来の課税強化による貨幣の市中からの吸い上げ効果が出るまでは
 (2)富裕層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
 (3)中間層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
Ⅴ ベーシックインカム導入後の世界
 
1.個人の活動の成果である資産は一代限り
 2.子孫や家族の安定した生活は国で保障
 3.労働と生きる事に対する価値の多様化
 4.社会貢献業務・ボランティア活動への参画

この体系を利用して、今回から3回にわたって、<「NI氏のベーシックインカム論」を考える>と題したシリーズに取り組みます。

今回は、上記の2つの<序論>と本論のうちのⅠ、Ⅱ、Ⅲの3つのテーマを取り上げます。

<序ー1>:未来社会の経済原則を考察するに当っての視点と答え

以上のテーマでNIⅢ氏が作成した資料は以下になります。

<序論-1>:概括

まず、ベーシックインカムの必要性を提案する論拠として位置づけるのが、この<序ー1>です。
その要点を、上記資料から抜粋すると以下になります。

1)新自由主義下の行き過ぎた資本主義による中間層の没落、一部の富裕層と大多数の経済困窮者との二極化・経済格差の進行がもたらす深刻な経済不況への対策
⇒ 経済困窮層へのベーシックインカム支給で需要喚起
⇒ 世界の経済主要国の連携・協調による企業への規制強化・課税強化、富裕層への課税強化(所得税累進課税、相続税・譲渡税100%課税)
2)ロボット化・AI化社会の進行に伴う低賃金労働者及び失業者等経済困窮者の大多数化で購買力の大幅幅低下・社会の不安定化
⇒ 現行の一部の経済困窮者に対する生活保護に代え、国民全員に一律支給するベーシックインカム制導入が制度的に合理的


起点が、現状確認と今後の社会状況の予測から、格差社会の進行により絶対的に多数発生すると予想する経済的困窮者の救済策として、ベーシックインカムが必要というものです。
ただそのためには、日本一国だけでの採用には問題があり、先進諸国との連携・協調が必要であることと、相続税・譲渡税100課税という税制大改革を行うことを条件としています。
経済主要国とはどことどこなのか具体的に示されていません。
果たして、必要とする国家すべてで連携・協調が可能なのか。
いまここでその問題を突っつけば議論は進まなくなるので、スルーすることにします。
さて、経済困窮者の範囲の特定化・基準化は簡単ではないですし、ユニバーサル・ベーシックインカムの基本的認識・方針は、困窮者政策に限ったものではありません。
ゆえに、ここでの問題提起は、ごく一面を切り取ってのものと私は考えます。
但し、反対というものでもありませんが。

<序-2>:政府財源の国債依存体質は問題ないのか

次も、直接ベーシックインカムと結びつけて論じた内容ではないので、一応<序論>の一つとしました。
同様、資料は、以下のとおりです。

<序論-2>:概括

本論は、ベーシックインカム提案において、議論が絶対不可欠な財源問題、とりわけ国債を財源とする考え方への批判の準備・前提の意味合いを持つものとして、確認しておくべきものでしょう。
 1.現在の国債に依存している政府財政に対する危機感
 2.国債はいくらでも発行可能か
 3.税は政府財源ではないのか
 4.国債依存の政府財政がもたらす問題点=過大なインフレ
 5.現在の日本の政府財政状況と今後の対応
以上の構成で想像・想定できるように、NI氏が懸念するのは、ベーシックインカム制が、国債を財源として導入されることを仮定した場合のインフレ発生リスク及び円安リスクです。
その認識、一般論は多くが知るところであり、そのリスクが、ベーシックインカム導入論の勢いを減衰させてきている要因と言っても過言ではないと思います。
ゆえに、NI氏は、その突破口として発想の転換の必要性を説くことになります。
その具体的な方法は、後に示されることになります。
(次回のテーマとなります。)

以上の2つの序論を受けて、本論に入りますが、今回は、上記の全構成のⅠからⅤまでのうちの以下の3つの区分をNI氏がまとめた資料に従い、順に概括していきます。

Ⅰ ベーシックインカム制度は人間を堕落させるか
 1.未来社会にベーシックインカム制度は必須となるのでは
 2.ベーシックインカム制度は人間の堕落をもたらすか
Ⅱ 生活保護とベーシックインカム
 1.現行の生活保護の実態
 2.現時点でベーシックインカムは実現可能か
 3.ベーシックインカムが必須となる状況
 4.ベーシックインカムを実現するには、発想の転換が必須
Ⅲ ベーシックインカム私案例に対する私の疑問
 1.れいわ党山本党首私案
 2.日本ベーシックインカム学会会員S氏の試案

Ⅰ ベーシックインカム制度は人間を堕落させるか

ベーシックインカムとはいかなるものか、という前提を飛ばして、いきなり、ベーシックインカム反対論者から最も提起される問題をテーマとしています。
 1.未来社会にベーシックインカム制度は必須となるのでは
 2.ベーシックインカム制度は人間の堕落をもたらすか
という2つの視点での資料が示されています。

最初は、先述の<序論-1>の確認。
次がテーマに対する回答というわけです。
この観点での議論は、これまで諸外国でも日本でも繰り返されてきており、BI導入論者が必ずそうではない根拠として持ち出すのが、海外各国・地域で種々行われてきた実証実験結果とその評価です。
堕落よりもプラスの諸効果がみられた、と。
まあ、こうした議論が何か格別の意義や意味を決定づけるわけではなく、私には、いろいろ人によりけりでしょう、堕落するかのように見える人もいれば、種々の社会的貢献を生み出す人もいる。
まして、実験止まりの例ばかりであり、真のBIは、やってみなければ分からない、というスタンスでよいのでは、と思うのです。
すなわち、ベーシックインカムは、さまざまな状況にある人々が受給することで、さまざまな影響を及ぼし、さまざまな行動を起こす要素・要因となるだろう、と。
そのさまざまな状況をいくつか象徴的に、あるいは優先課題化して想定することで、どんな影響を与える可能性があるかを描いてみることは、本当に多々可能と思います。
(参考)
⇒ ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)

Ⅱ 生活保護とベーシックインカム

次のテーマが、経済的困窮者を取り上げる上で、最も有効とされ、説得力を持つ例とされる「生活保護受給」とベーシックインカム導入時との比較・考察です。


ただ、ここで現状の「生活保護」制度が持ち出されたのは、生活保護レベルの保障を必要とする人々が格差拡大で今後増加し、現状の「生活扶助」に要するレベルでのベーシックインカムに切り替えた場合、財源的にまったく不可能であることを示すためだったのですね。
何割かのベーシックインカム論者は、現状の生活保護制度を残し、それにベーシックインカムを上乗せするという無茶振りをするのが常だったので、焦点ずれで、ちょっと肩透かしをくった感じです。
当然、ミーンズテストの問題や行政の審査の恣意性などの問題にも触れていませんので。
狙いは、ベーシックインカム制導入に必要な発想の転換につなげることにある故です。

Ⅲ ベーシックインカム私案例に対する私の疑問

ちょっとインパクトの弱いシリーズ1回目になってしまいますが、今回の最後は、以下の2人のベーシックインカム提案者の内容紹介と批判です。
 1.れいわ党山本党首私案
 2.日本ベーシックインカム学会会員S氏の試案


初めに提示されたれいわ新選組山本氏無責任論。
このレベルの提案をストレートに受け止めて無責任と責めるなら、これまでの財政政策・金融政策が実らなかったことに対して政府・政権政党、行政等の責任はどうなるのか、どうするのか、と。
シミュレーションがシミュレーションに過ぎないことは、過去の多数のノーベル賞受賞経済学者の表彰対象が、真に社会経済の成長発展や公正性に間違いなく寄与したものではなかったことで示されているでしょう。

次の部分的BIの是非についての評価はここでは必要ないでしょう。
中途半端なBIは、導入自体に意味・意義をさほど認めることができません。
税財源論の試算から、中流階級の没落により国民的合意が難しい、という指摘も、観念的です。
国民的合意とはどういうレベル・性質のもので、どのように形成されるものか・・・。
なによりも、こうした年収ベースでの試算・試論自体にどれほどの意味があるのか私は不思議に思っています。
4人世帯を標準として試算した場合、実際それに適用される世帯がどれほどあるものか。
仮にそこに該当するとしても、親の雇用状況、住宅事情、子どもの年齢・状態等の個々の要素・要因の違いで、可処分所得自体に違いがあるでしょう。
そもそも、NI氏の論の前提は、中間層の没落・消失にあったのではないでしょうか。
現状のBI論のほとんどに完全なものはなく、多数の支持を得て、政治の場でその是非が議論検討される例もみられません。
地域限定、対象者限定、期間限定の実験的取り組みは海外に多く見られますが、それらすべてが実験・試験にとどまるのみです。
まだまだ、公の場で、率直に、公正に課題として認識され、議論されるまでに至っていないものばかりで、求められるのは、他への批判ではなく、持論の内容をその対象とされるようなレベル・内容に高めていくことと考えています。

ということで、NI氏の今回のBI論の根幹は、主張される財源案にあると思われますので、次回、残す以下の提案を参考にしての検討・考察を行いたいと思います。

Ⅳ ベーシックインカム実現の必要条件
 1.財源の問題
 (1)最大の課題は財源
 (2)財源の問題は発想の転換が必須
 (3)最大の懸念はインフレの発生である
 (4)市中からの貨幣の吸い上げ
 2.ベーシックインカムの導入が必要になる時期
 3.ベーシックインカム導入が可能となる条件
 4.世界が連携・協調出来る体制作りは長い道のり
 5.課税強化は時間を掛けて
 6.課税強化による市中からの貨幣吸い上げで、過大インフレが防げるか
 (1)将来の課税強化による貨幣の市中からの吸い上げ効果が出るまでは
 (2)富裕層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
 (3)中間層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
Ⅴ ベーシックインカム導入後の世界
 1.個人の活動の成果である資産は一代限り
 2.子孫や家族の安定した生活は国で保障
 3.労働と生きる事に対する価値の多様化
 4.社会貢献業務・ボランティア活動への参画
 5.脱成長意識


20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

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