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インフレ抑止に不可欠な供給力向上と技術革新:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-8

一昨日
2022年の「ベーシック・ペンション導入が望まれる社会」シリーズを再開(2023/2/23)
でお知らせしたシリーズ再開。
再開シリーズ第1回、通算第7回は、
・河合雅司氏著『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』(2022/12/20刊・講談社現代新書)を取り上げました。(最後にその記事をリストに入れています。)
今回は、
野口悠紀雄氏著2040年の日本(2023/1/20刊:幻冬舎新書 )を参考にします。

私が運営している上記 https://2050society.com が、「2050年の望ましい日本社会の創造」を主テーマとしており、本書が「2040年の日本」を描く書であったため入手したもの。
そして、これまでも述べてきているように、ベーシック・ペンションの導入において、個人生活基盤・社会システム・経済システムの整備・改革も並行して取り組み、実現していくことも目標・目的としていることと関連する。
本稿の意図は、そこと繋がるものです。

まず、本書の構成を以下に。

『2040年の日本』構成

はじめに:なぜ未来を考えるのか
第1章 1%成長できるかどうかが、日本の未来を決める
 1.なぜ経済成長が必要なのか
 2.少子化のもとで1%成長を実現できるか
 3.高い経済成長率見通しは、深刻な問題を隠蔽する
 4.日本経済の長期的な成長率を予測する
 5.出生率低下は日本の将来にどんな影響を与えるか
第2章 未来の世界で日本の地位はどうなるか
 1.日本は豊かな国であり続けるが、新興国との差は縮まる
 2.中国との関係は、きわめて重要だが難しい
 3.GDPが日本の10倍となる中国と、どのようの向き合うべきか
 4.急激な円安で、日本は台湾より貧しい国になった
第3章 増大する医療・介護需要に対処できるか
 1.社会保障負担を4割以上上げる必要があるのに、何もしていない
 2.超高齢化社会では誰もが要介護になる
 3.医療・福祉が最大の産業となる20年後の異常な姿
 4.低い賃金で、必要な介護人材を確保できるか
 5.こんな経済が成り立つのか
第4章 医療・介護技術は、ここまで進歩する
 1.医療技術はどこまで進歩するか
 2.介護ロボットはどこまで進化するか
 3.未来の医療は、メタバースで行われる
第5章 メタバースと無人企業はどこまで広がるか
 1.メタバースがもたらす巨大な可能性
 2.メタバース経済取引の可能性と問題点
 3.日常生活にメタバースを使う
 4.NFTで何ができるか?
 5.無人企業DAOが現実化する
第6章 自動運転とEVで生活は大きく変わる
 1.完全自動運転が実現したら、社会はどう変わるか
 2.自動運転で生活環境は大きく変わる
 3.EVへの移行は進むか
第7章 再生可能エネルギーで脱炭素は実現できるか
 1.日本の将来のエネルギーは大丈夫か
 2.原発の所要稼働台数を計画の3分の1に減らせるか
第8章 核融合発電、量子コンピュータの未来
 1.実現が難しい技術はどうなるか
 2.比較的早期に実現できる技術
 3.量子コンピュータと量子暗号とは何か
第9章 未来に向けて、人材育成が急務
 1.日本のデジタル化は「バック・トゥ・ザ・パースト」
 2.世界ランキングで分かる、日本の大学の立ち後れ
 3.デジタル人材育成の遅れが日本の遅れの基本原因
 4.勉強しない日本の学生と、死に物狂いで勉強するアメリカの学生
おわりに:われわれは、未来に対する責任を果たしているのか?

キーワードを拾っていくと、
経済成長、少子高齢化、社会保障制度の維持、エネルギー及び環境問題、技術革新、そしてメタバース、人材育成 等々
どこにもベーシックインカムのべの字も出てきていません。

「第1章 財源は国債だけでは賄えない」から

インフレを発生させたMMT手法を批判

冒頭「財源は国債だけでは賄えない」という書き出しで、「財政支出の財源は、中央銀行が貨幣を発行して賄えばよい」というMMT(現代貨幣理論)を引き合いに出します。
その意図は、MMTは「インフレが起こらない限り」という限定条件付きでの国債によるファイナンスの正当化を論拠とするが、現実的には、アメリカのインフレを見ればその方法が誤りであったことを証明していると。

成長が必要な日本に不可欠な、供給力を高めるための技術革新と労働力率向上

インフレ発生の根本的要因は、供給力不足。
いわゆるコストプッシュ・インフレで、先にシリーズを終えた、
中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書)を題材にしての【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズで、供給力を高める必要があることと併せて、再三再四、確認してきました。
(参考)
⇒ 【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー11、最終回終了!(2023/2/6)

政府は、ゼロ成長シナリオを示すべき

ただ、野口氏の提起は、多くの経済学者が同様の主張をするのと変わりません。
そしてこの章での主張の特徴は、政府を初めとする種々の公的な経済に関する見通しや仮説シナリオ想定に用いる数値が、すべて甘いものであるというものです。
そして政府はゼロ成長シナリオを想定し示すべきと言います。
これも、特段取り立てる必要はないと考えます。
何より、中野剛志氏の書での基本認識は、「恒久的戦時経済」を想定すべきというものでしたから。
ただ、先の供給不足を解消する以前に、需要を喚起することも必要なわけで、なんとか1%でも経済成長をと、そのための技術革新、労働力率向上としているわけです。
加えて、「出生率の引き上げより、高齢者や女性労働力率引き上げが重要」とまで言い及ぶと、いささか鼻白む思いがわいてきます。

第3章 増大する医療・介護需要に対処できるか」から

社会保障財源対策は、自己負担・社会保険料負担の引き上げと給付サービスの削減

野口氏がベーシックインカムにはまったく賛成していない学者です。
先述のMMT批判で示されていますし、「第3章 増大する医療・介護需要に対処できるか」のテーマと構成を見れば、その感覚は伝わってくると思います。
そこでの内容をしっかりみていくと、行き着く先は、社会保険給付サービスに対する自己負担増と保険給付の削減、そして社会保険料の引き上げになります。
「低い賃金で、必要な介護人材を確保できるか」などとどこか他人事のように書いてもいます。


財源確保に税負担率引き上げ不可避で、その議論を一刻も早く始めるべき

とは言うものの、負担引き上げにおいては、財源確保も重要な問題とし、社会保険料引き上げだけでなく、税負担率の引き上げは避けて通れない。
一刻も早く本格的な議論を始めることが必要とし、まず最初に必要なのは、現在の大きな不公平是正のために、資産所得課税の強化を提案しています。
その方針での検討を始めた税制調査会での進展を期待したい。
これでおしまい、です。

気になる日本の地位低下と懸念される未来

第1章に続いて、「第2章 未来の世界で日本の地位はどうなるか」では、グローバル社会経済における日本の現状及びこれからの地位低下について、データを示しつつ、主に中国及び中国との関係に焦点を当てつつ整理しています。
総じて、2040年の悲観的な日本を想像・想定しつつ、打開策としては、技術革新とその源泉である人材育成という結論になるのですが、肝心の人材育成については、海外諸国の学生に比して日本の学生が勉強しないことを指摘し、やはり悲観的な論調で終わってしまっています。
こうなると、前回の河合雅司氏の『未来の年表』に対して予想される近未来のトピックを、時系列的に並べただけ、2040年を象徴的に設定し、現状認識を踏まえて種々の予想と対策の一端を示しただけ、となってしまいます。

ベーシック・ペンション導入で懸念されるインフレ対策に不可欠な供給力向上政策に繋がるエネルギー等技術革新課題

ベーシック・ペンションがまずもたらすであろう需要増。
その需要に応じるための供給力向上。
そこでは、コロナパンデミック、ウクライナ戦争が加速したエネルギー、食料、希少資源などの供給不安を要因とするコストプッシュ・インフレ対策とも結びつくことは言うまでもありません。
一朝一夕では改善・解決が不可能なことは自明ですが、平時において恒久的戦時社会経済体制を想定した技術革新への取り組みと社会経済政策への取り組みを、プロセスデザインを元に進めていくべく考察・提案を進めているのです。

本書では、『未来の年表』とは異なり、ベーシック・ペンションの導入におけるインフレ懸念への長期的な対策・対応を考える上で、いくつものヒントや提案が第4章以下で種々組み込まれています。
最も興味深いのは、エネルギー自国自給自足政策と繋がる「核融合発電」や再生可能エネルギーに関すること。
その他にも、https://2050society.com で進めている、多様な<安心安全安定・保持保有確保>の「安保」政策と関連する内容もあるため、同サイトでまず取り上げて、こちらのサイト、ベーシック・ペンションと繋ぐ。
こういう方法を採っていきたいと考えます。

なお、インフレ懸念があることは当然と想定していますが、ベーシック・ペンションの支給が、まず基礎的な生活のための消費・需要を喚起することで供給力の整備拡充に繋がる。
そしてその給付から、通常の所得を投資や起業化行動や、文化芸術等創造的活動のために用いる。
こうしたことが経済成長に結びつくことがイメージ可能となることを申し添えておきたいと思います。


既に取り上げた、野口悠紀雄氏著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃

なお、野口悠紀雄氏については、2021年12月に、同氏著
・『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(2021/11/15刊・新潮社)
を参考にして、ベーシックペンションの専用デジタル通貨での給付について、技術面・運用面での課題などを考察する以下のシリーズを投稿しています。
野口悠紀雄氏著『CBDC中央銀行デジタル通貨の衝撃』から:2021年発刊新書考察シリーズ振り返り-5(2021/12/30)
でその概要を見て頂けますので、ご関心をお持ち頂ければと思います。

次回は、岸田首相得意の竜頭蛇尾型政策及びスローガンの一つ「異次元の少子化対策」の目玉の一つ、「児童手当」と所得制限撤廃を巡る最近の議論とベーシック・ペンションを結びつけてみます。

「ベーシック・ペンション導入が望まれる社会」シリーズ記事リスト

<第1回>: 2022年2月生活保護受給164万世帯、現役世代も増加:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-1(2022/5/16)
<第2回>:生活保護世帯の子どもの進学率に地域格差:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-2(2022/5/17)
<第3回>:コロナ禍、目立つ低所得層の子どもの医療機関受診減少:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-3(2022/5/18)
<第4回>:コロナ禍の「生活福祉資金の特例貸付」利用者が返済不能に:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-4(2022/5/19)
<第5回>:平均年収443万円に含まれた多様な格差要因:全世代共通に広がるベーシック・ペンション早期導入ニーズ-1(ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-5)(2023/1/12)
<第6回>:突出する日本の生涯無子率が示す結婚困難要因:全世代共通に広がるベーシック・ペンション早期導入ニーズ-2(ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-6)(2023/1/14)
<第7回>:ベーシック・ペンション実現のための近未来の年表を描く:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-7(2023/2/24)
<第8回>:インフレ抑止に不可欠な供給力向上と技術革新:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-8(2023/2/25)

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

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