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ベーシックインカムの特徴と魅力、再確認・再考察(2020/10/13)

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ベーシックインカム(生活基礎年金制度)案再考察-10

基本的人権基盤としてのベーシックインカム制導入再考察と制度法案創り
ベーシックインカムの定義再考察:JBIとは(Japanese Basic Income)
財源問題、所得再分配論から脱却すべき日本型ベーシックインカム
日本型ベーシックインカム実現をめざすカウンター・デモクラシー・ミーティングを開設!
BIは、日本国内のみ利用可、使途・期間限定日銀発行デジタル通貨に
ベーシックインカム生活基礎年金月額15万円、児童基礎年金8万円案
ベーシックインカム生活基礎年金15万円で社会保障制度改革・行政改革
ベーシックインカム生活基礎年金、段階的導入の理由と方法
実現シナリオ欠落の理想的ベーシックインカムの非社会性
と続いている<再考察シリーズ>。

 今回は、もう一度原点に戻り、ベーシックインカムの定義や意義などを再確認したいと思います。
 初めて、ベーシックインカムを知った方にも役に立つと思われます。

アイルランド政府による「ベーシック・インカム白書」から

 参考資料として、山森亮氏著『ベーシック・インカム入門 』(2009/2/20刊)を用い、そこで紹介されている、2002年のアイルランド政府が出した「ベーシック・インカム白書」による定義と特徴、魅力等を、以下に引用・転載させて頂きます。
 そこに、私が提案する日本型ベーシックインカム生活基礎年金制との共通点と異なる点、意見等を少し加えてみます。


はじめは、ベーシック・インカムの定義です。

ベーシック・インカムの定義

1.個人に対して、どのような状況におかれているかに関わりなく無条件に給付される。
2.ベーシック・インカム給付は課税されず、
それ以外の所得は全て課税される。
3.給付水準は、尊厳をもって生きること、生活上の真の選択を行使することを保障するものであることが望ましい。
その水準は貧困線と同じかそれ以上として表すことができるかもしれないし、「適切な」生活保護基準と同等、あるいは平均賃金の何割、といった表現になるかもしれない。


 1.どんな状況にあるかは無条件、ということは、働いていても働いていなくても、所得があってもなくても、所得が多くても少なくても、大人であっても子どもであっても学生であっても、です。
 2.現状の制度では、給与所得があっても、非課税枠や控除などにより納税の必要がなかった人もいます。
 私の案でも、所得のある人すべてが所得税および社会保険料を徴収されることとしています。皆等しくベーシックインカムの給付を受けるからです。
 3.給付水準については、明確に金額や率などで示していません。生活保障的意味を含ませています。ですからその額は、自ずとその目的に沿った水準に収まるべきでしょう。

 参考までに、
ベーシックインカムの定義再考察:JBIとは(Japanese Basic Income)
で紹介した、波頭亮氏の記述を以下に再掲しました。
 課税に関する項目がないことと、無期限という表現の有無の違い程度でしょうか。

BIとは、本来UBI(Universal Basic Incomeユニバーサルベーシックインカム)と呼ばれ、「すべての国民に対して生活を賄えるだけの一定の金銭を無条件で無期限に給付する」制度とし、以下を基本要件としています。
1.無条件給付(受給のための条件や、年齢・性別・疾病の有無・就業状況の等の制約がない)
2.全国民に一律で給付
3.最低限度の生活を営むに足る額の現金給付
4.受給期間に制限がなく永続的

次に、その特徴についての同白書の記述です。

ベーシック・インカムの特徴

1.現物(サービスやクーポン)ではなく金銭で給付される。それゆえ、いつどのように使うかに制約はない。
2.
人生のある時点で一括して給付されるのではなく、毎月ないし毎週といった定期的な支払いの形をとる。
3.
公的に管理される資源の中から、国家または他の政治的共同体(地方自治体など)によって支払われる。
4.
世帯や世帯主にではなく、個々人に支払われる。
5.資力調査なしに支払われる。
それゆえ一連の行政管理やそれにかかる費用、現存する労働へのインセンティブを阻害する要因がなくなる。
6.稼働能力調査なしに支払われる。
それゆえ雇用の柔軟性や個人の選択を最大化し、また社会的に有益でありながら低賃金の仕事に人々がつくインセンティブを高める。
(例えば現行の日本の生活保護では、個々人ではなく世帯単位で給付される。その給付を受けるためには、所得や資産などを調べる資力調査を受けなくてはならないし、稼働能力の有無も問題となる。)

 1.で「いつどのように使うか制約はない」としていますが、支給される額の大きさと経済への影響、対外貿易・外国為替市場への影響などを考えると、私は、利用方法や蓄積・所有など様々な観点から、一定の規律・基準が必要と考えています。
 国の事情などで、この条件は一律に適用できない、あるいは自由としてはいけない、そう考えています。
(参考)
BIは、日本国内のみ利用可、使途・期間限定日銀発行デジタル通貨に

 5.の「資力調査なしに支払われため、一連の行政管理やそれにかかる費用、現存する労働へのインセンティブを阻害する要因がなくなる。」という点は、非常に大きな意味があると考えます。
 行政改革が必然的に行われることになり、行政コストも削減される効果が生まれます。
 6.の「稼働能力調査なしに支払われるため、雇用の柔軟性や個人の選択を最大化し、また社会的に有益でありながら低賃金の仕事に人々がつくインセンティブを高める。」ことも大きな意義です。
 例えとして生活保護が挙げられていますが、私は、日本では保育や介護に従事する方々、非正規雇用に甘んじている方々に直結することの重要性を指摘したいと考えています。

 次に、やはり白書に記述されている、ベーシック・インカムの魅力が列記してありましたので、同様引用しました。

ベーシック・インカムの魅力

1.現行制度ほど複雑ではなく単純性が高い
 行政にとっても利用者にとっても分かりやすい。資力調査や社会保険記録の管理といった、現存の行政手続きの多くは要らなくなる。
2.現存の税制や社会保障システムから生じる「貧困の罠」「失業の罠」が除去される。
3.自動的に支払われるので、給付から漏れるという問題や受給に当たって恥辱感(スティグマ)を感じるという問題がなくなる。ベーシック・インカム給付のために必要な増税は、ベーシック・インカムという形で市民に直接戻される
4.家庭内で働いてはいるが個人として所得がない人々のような、支払い労働に従事していないすべての人に、独立した所得を与える
5.(生活保護のような)選別主義的なアプローチは相対的貧困を除去するのに失敗してきた。
 児童手当やベーシック・インカムのような普遍主義的なアプローチの方が効果的かもしれない。
6.以下の諸点でより公正で結束力のある社会を作り出すだろう。
 1)仕事や雇用と親和的である。
 2)衡平性を促進し、少なくとも貧困を避けるために必要な水準の所得を確保する。
 3)税負担をより衡平にする。
 4)社会保障と税の単位を個人単位に変えるための一つの公正な方法を提供する。
 5)男女を平等に扱う。
 6)透明性がある。
 7)労働市場において効率的である。
 8)家事や子育てなど、市場経済がしばしば無視する社会経済における仕事に報いる。
 9)さらなる教育や職業訓練を促進する。
10)技術発展や非典型的な働き方などを含む、グローバル経済における変化に対応する。
11)ベーシック・インカム導入に付随する様々な経済的社会的改良から良い動態的効果が生まれる。


 前述の<ベーシック・インカムの特徴>に書かれた内容といくつかは重複していますが、概ね理解・納得できることです。 
 私も、ベーシックインカムの最大の特徴であり利点であるのは、シンプルであり平等であることと思っています。
 恣意性や裁量が入り込む余地がないわけです。
 また、そのことから、
 4.家庭内で働いてはいるが個人として所得がない人々のような、支払い労働に従事していないすべての人に、独立した所得を与える
 6.8)家事や子育てなど、市場経済がしばしば無視する社会経済における仕事に報いる。
という対応が漏れなく行われることになります。
 子育てと仕事の両立、介護と仕事の両立、介護離職の回避、などが可能になる制度と評価できるでしょう。
 素晴らしいことです。
 その上で、
 6.11)ベーシック・インカム導入に付随する様々な経済的社会的改良から良い動態的効果が生まれる。
ことが期待できます。
 というか、そこに結び付けないと、結びつかないと、単なるバラマキに終わってしまうわけです。
 私が、ベーシックインカム導入が、社会システム改革、望ましい未来社会創造の一つの基軸となる制度であるとする理由です。
(参考)
ベーシックインカム生活基礎年金15万円で社会保障制度改革・行政改革

 と、今回は、ベーシックインカムの基本を再確認する再考察を、一般的に語られる定義や特徴面から行いました。
 この考え方は、財源を何にするかや、社会保障なのか、国民の権利なのか、所得保障か、国民配当か、国民基本給か、等の議論の主張・応酬、相手の否定・非難などにさしたる意味はないことを気づかせてくれるはずなのですが。
 そうしたムダな時間を費やすことから脱却して、また別の、ベーシックインカムの導入の妨げとなっている要素・原因を取り上げ、その対策を考える方に目を向けたいと思います。

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年10月13日投稿記事 2050society.com/?p=2847 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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