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政府財政支出に制限なし論とBI財源問題:島倉原氏著『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンションー4

財源・財政・金融・インフレ問題とMMTを関連付けてベーシックインカム、ベーシック・ペンションを考察するシリーズ-Ⅱ

【『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション】シリーズ(記事リストは最後に掲載)に続いて、
島倉原氏著MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論』(2019/12/10刊・角川新書)を参考にした、【島倉原氏著『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンション】シリーズを進めている。
<第1回>:ベーシックインカムとMMTの誤解・無理解をどう克服するか:島倉原氏著『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンションー1(2023/7/5)
<第2回>:貨幣の本質とベーシックインカムに関係はあるか:島倉原氏著『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンションー2(2023/7/7)
<第3回>:遊びのような「内生的貨幣供給論」と「外生的貨幣供給論」の比較論:島倉原氏著『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンションー3(2023/7/9)


『MMTとは何か』から考えるベーシック・ペンション-4

上記<第3回>に続いて【第1部 MMTの貨幣論】の3、<第3章 主権国家における政府の機能>を今回取り上げる。
これまで同様、以下の本章構成を整理しながら要点を確認し、感じた点のメモを加えていくことに。

第1部 MMTの貨幣論
第3章 主権国家における政府の機能
・主権通貨とは何か
・自国通貨建てであれば政府の支出能力には制限がない
支出能力に制限はないが、インフレが政府支出の制約となる
税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない
・主権通貨国の財政オペレーション(1)統合政府のケース
・主権通貨国の財政オペレーション(2)中央銀行が国債を引き受けるケース 
・主権通貨国の財政オペレーション(3)民間銀行が国債を引き受けるケース
・現実に行われている「間接的な財政ファイナンス」
・中央銀行の独立性は「手段の独立性」
・政府の赤字支出は金利を引き下げる
財政赤字が非政府部門の貯蓄を創造する
・海外部門の国債保有は問題ではない
政府財政は赤字が正常


主権国家における政府の機能」と題しているが、政府の財政機能、政府による支出機能がテーマである。
MMTを基礎にした考え方であることはいうまでもない。

主権通貨とは

広義では、自国通貨、すなわち、統治権を持つ国家が独自に定めた計算貨幣に基づいて発行する通貨全般。
狭義では、自国通貨の中でも変動為替相場制下での不換紙幣、すなわち、固定レートで貴金属や外貨などに交換されることが約束されていない通貨。

主権通貨による政府支出の特徴

この主権通貨を政府が支出するに当たって、以下の重要な特徴・特質が提示される。

1)自国通貨建て政府支出能力には制限がない
前章で示された「負債ピラミッドの頂点である国家の負債は、他者の負債ではなく、自らの負債によってのみ返済され」、国内で提供されるモノやサービスの大半は、自国通貨建てで取引されることから、国家の負債は際限なく発行することが可能、としている。

2)インフレが政府支出の制約となる

とはいっても、なんの制約もないというわけではなく、インフレが政府支出に歯止めをかける要素・要因であると。
その理由・根拠は?
国家の貨幣制度の目的は、モノやサービス、労働力という実物資源を政府部門に動員し、それにより、何らかの公共目的を達成すること。
そして、そこでの支払手段として機能させるため、国定貨幣(通貨)に対する需要を創造するのが租税の役割。
政府の通貨発行の度合いが、その折々の経済活動において、実物資源(の供給)と実際の需要とのバランスに影響を与えることになる。
そこでの悪しき状況の一つとして、需要に対して過剰に通貨が発行されることで、価格を引き上げても供給が不足し、物価上昇やインフレが発生。
そのインフレの加速が、「価値の貯蔵手段」としての自国通貨機能の棄損や著しいインフレ=ハイパーインフレの発生、通貨制度の破綻をさえ招くこともありうるわけだ。
その発生を防ぐため、政府支出を増やすことはやめ、むしろ多くの税金を課し、通貨に対する需要を増加させ、過剰な通貨を回収することに。
MMTに依拠した政府財政支出、赤字財政の弱点であり、インフレが政府支出の制約となるわけだ。
しかし、インフレは、主流派経済学に依拠した財政政策でも発生リスクを伴い、その抑制策としてもっぱら用いられているのが利上げという金融政策であることは周知のところである。
MMTでは、租税策を掲げている。
インフレに関するMMT論は、次回の【第2部 MMTの政策】の主要テーマとされているので、そこで確認することにしたい。

3)税金は政府支出のための財源ではなく、国債は政府支出のための資金調達手段ではない
政府は事前に財源となる資金を必要とせず、自国通貨で政府支出を行うことができるのだが、ここで確認できたように、支出を抑えるべき時に用いる手段が「課税」「税金」であり、決してそれが政府支出の財源として徴収・活用されるわけではない。
すっと腑に落ちる内容ではないのだが、言われてみれば確かにそうだろうな、と。

一方、家計や企業が支出を行うためには、予め現金や預金が必要。
となると、その現金や預金の元手となる貨幣・通貨は、どうやって発行され、入手できるのか。
この問いに応えるのが、次の、財政オペレーションという、政府財政支出システムのモデルである。

主権通貨国の3種類の財政オペレーション

財政オペレーションとは、実際に国家の財政支出業務を行うこと。
本章では、以下の3種類の財政オペレーションのケースを、貸借対照表を用いて説明しているが、本稿ではその要点を(なかなか簡単にはいかないが)簡潔に紹介するにとどめたい。

1)統合政府による財政オペレーション:
統合政府とは、中央政府と中央銀行を別々の組織としてでなく、連結して一体と捉えたもの。
実際の形式はこれと異なるが、単純化したモデルとして例示されており、その財政支出と国債発行に関する基本的手順と内容が3ステップで示される。
①<スタート時点>:
・統合政府が国債(負債)を1兆円発行(純貯蓄ー1兆円)
・民間銀行は国債(資産)、純貯蓄(負債)を各1兆円保有
②<財政支出時点>:
・統合政府が、家計への1兆円支払いのために、民間銀行保有の中央銀行当座預金口座に1兆円の預金入力し、家計への振込データを民間銀行に送付。(中央銀行当座預金・国債それぞれ1兆円、純貯蓄ー2兆円、いずれも負債)
・民間銀行は、自行家計名義口座に民間銀行預金1兆円入力し、家計への支払処理完了(中央銀行預金・国債それぞれ1兆円=資産、民間銀行預金・純貯蓄それぞれ1兆円=負債)
・家計(民間銀行預金=資産1兆円、純貯蓄=負債1兆円)
③<最終的ポジション>:
・民間銀行は、家計預金引出しに備えた「準備金」として民間銀行預金残高の10%の中央銀行当座預金保有が必要(中央銀行当座預金0.1兆円・国債1.9兆円いずれも資産、民間銀行預金1兆円・純貯蓄1兆円いずれも負債)
・統合政府が、過剰な準備金を吸収するため国債9000億円発行(民間銀行引受け)(中央銀行当座預金0.1兆円・国債1.9兆円・純貯蓄ー2兆円いずれも負債)
※国債購入代金は、民間銀行名義中央銀行当座預金で決済。民間銀行保有中央銀行当座預金が1兆円から1000億円に減少し、国債は1兆円から1兆9000億円に増加
・家計(民間銀行預金1兆円=資産、純貯蓄1兆円=負債)

ここでは、統合政府が中央銀行当座預金を「貨幣創造」し、財政支出に充当。
新規発行の9000億円の国債は、財政支出完了後に過剰な中央銀行当座預金を吸収するためのものであり、統合政府の資金調達手段ではない。
(既発の国債1兆円は、このオペレーションとはそもそも無関係)

2)中央銀行が国債を引き受ける財政オペレーション

政府が、中央政府と中央銀行に分離している形を前提とし、中央政府が財政支出と国債発行を行う形式による手順がここでは4つのステップで示される。
①<スタート時点>:
統合政府が、国債(負債)を1兆円発行(純貯蓄ー1兆円)
民間銀行は国債(資産)、純貯蓄(負債)を各1兆円保有
②<国債発行時点>:
中央政府が、国債1兆円発行(中央銀行引受け)(中央銀行当座預金1兆円=資産、国債2兆円・純貯蓄ー1兆円=いずれも負債)
中央銀行は、国債引受けのため自行中央政府名義口座に1兆円中央銀行当座預金入力(国債1兆円=資産、中央銀行当座預金1兆円=負債)
民間銀行(国債1兆円=資産、純貯蓄1兆円=負債)
③<財政支出時点>:
中央政府は、家計への1兆円支払いのため、支払情報を中央銀行に送信(国債2兆円・純貯蓄-2兆円=いずれも負債)
中央銀行は、1兆円中央銀行当座預金名義口座から民間銀行口座に振り替え、家計への振込依頼データを民間銀行に送信(国債1兆円=資産、中央銀行当座預金1兆円=負債)
民間銀行は、振込依頼データを受け取り、自行家計名義口座に1兆円民間銀行口座預金入力し家計への支払処理完了、1兆円民間銀行預金発生=負債(家計が資産として保有)(中央銀行当座預金・国債各1兆円=資産、民間銀行預金・純貯蓄各1兆円=負債)
家計(民間銀行預金1兆円=資産、純貯蓄1兆円=負債)
④<最終的ポジション>:
・③で民間銀行保有の1兆円中央銀行当座預金は、家計の預金引出しに備えた「準備金」としては9000億円過剰
中央銀行は、過剰な準備金吸収のため、保有国債のうち9000億円分を金融市場を通じて売却。
民間銀行は、金融資産としてこの国債を購入し、民間銀行名義中央銀行当座預金で決済し、中央銀行当座預金が1兆円から9000億円に減少し、国債は1兆円から1兆9000億円に増加(中央政府と中央銀行を連結した統合政府の負債に相当)。(中央銀行当座預金0.1兆円・国債1.9兆円=いずれも資産、民間銀行預金・純貯蓄いずれも1兆円=負債)
中央政府、家計いずれも③と同様

法律上の通貨発行権は、中央政府・中央銀行双方が持つが、財政支出は通常、中央政府名義の口座から民間銀行名義口座への中央銀行当座預金の振替により実行される。
そのためここでは、中央銀行だけが行うと想定していた。
しかし、統合政府モデルに比べ複雑に見えるが、②が同モデルの①に当たるだけで、同一形式のオペレーションが行われている。

3)民間銀行が国債を引き受ける財政オペレーション

しかし、2)の例による中央銀行による政府発行国債を直接引き受けは、「財政ファイナンス」「国債の貨幣化」などと呼ばれ、財政規律および通貨や経済政策への信認を大きく損なうリスクがあるとされ、多くの国で禁止されている。
従い、民間銀行(民間金融機関)が国債を引き受ける当モデルが主流となっている。
ここでは5つのステップで手順と内容が示されている。
①<スタート時点>:
中央政府が国債(負債)を1兆円発行(純貯蓄ー1兆円)
・民間銀行が国債(資産)、純貯蓄(負債)を各1兆円保有
②<国債発行前>:
中央銀行が、金融政策の一環として、中央政府の国債発行直前に、民間部門保有の中央銀行当座預金残高を増やすべく、金融市場を通じて、民間銀行保有の国債1兆円分買い上げ。その代金として自行民間銀行名義口座に1兆円中央銀行当座預金を入力。(国債1兆円=資産、中央銀行当座預金1兆円=負債)
民間銀行(中央銀行当座預金1兆円=資産、純貯蓄1兆円=負債)
③<国債発行時点>
中央銀行は、国債1兆円発行(民間銀行は引受け)(国債1兆円=資産、中央銀行当座預金1兆円)
民間銀行は、国債購入代金決済のため、1兆円中央銀行当座預金を民間銀行名義口座から中央政府名義口座に振り替え(②と同じ)
中央政府の国債(負債)が1兆円から2兆円に増加し、中央政府資産として中央銀行当座預金(負債)が1兆円発生(中央銀行当座預金1兆円=資産、国債2兆円・純貯蓄-1兆円)
④<財政支出時点>:
中央政府は、家計へ1兆円支払いで、支払情報を中央銀行に送信。純貯蓄が赤字支出分減少。(国債2兆円、純貯蓄-2兆円、いずれも負債)
中央銀行は、1兆円中央銀行当座預金を中央政府名義口座から民間銀行名義口座に振り替え、家計振込データを民間銀行に送信(国債1兆円=資産、中央銀行当座預金1兆円=負債)
民間銀行は、これを受け取り、自行家計名義口座に1兆円民間銀行預金入力で家計への支払処理完了。民間銀行負債として1兆円民間銀行預金発生。(中央銀行当座預金・国債いずれも1兆円=資産、民間銀行預金・純貯蓄いずれも1兆円=負債)
家計が、これを資産として保有(民間銀行預金1兆円=資産、純貯蓄1兆円負債)
⑤<最終的ポジション>:
・④で民間銀行保有の1兆円中央銀行当座預金は、家計の預金引出しに備えた「準備金」としては9000億円過剰
中央銀行は、その過剰準備金吸収のため、保有国債のうち9000億円を金融市場で売却。民間銀行がこれを有利な金融資産として購入(国債0.1兆円=資産、中央銀行当座預金0.1兆円)
・国債購入代金は、民間銀行名義の中央銀行当座預金で決済。
民間銀行は、保有の中央銀行当座預金(負債)が1兆円から9000億円に減少。国債(資産)1兆9000億円に増加
・中央銀行及び家計は、④と変わらず。

このモデルにおいて、国債発行時の貸借対照表においては、新発国債と既発国債の保有者が入れ替わっている点を除けば、先のオペレーションモデルと同一である。
新規発行国債の場合でも、元々は民間銀行から国債購入代金として中央銀行が創造したもので、間接的な財政支出の原資になっている。
従い、当モデルも財政支出は実質的に通貨発行によりまかなわれており、政府全体としては「国債発行は資金調達手段に当たらない」。
これにより、「政府は支出のすべては、新たな貨幣の直接創造で成り立っている」と結論づけている。

現実としての「間接的な財政ファイナンス」と「手段の独立性」としての中央銀行の独立性

上記のモデルが、通常の政策オペレーションを想定してのことだったが、これに、量的緩和政策という例外的な財政支出について付け加えている。
量的緩和政策とは、準備金としての必要額を大幅に上回る中央銀行当座預金を民間銀行に保有させるため、従来の金融政策に比して過剰なレベルで中央銀行が国債などの金融資産を購入する政策、と。
こうした「間接的財政ファイナンス」が、中央銀行が、既発国債を市場から購入することなく国債を新規発行でき、また現実的に行われていることを示し、中央銀行の「独立性」をその根拠として示している。
この独立性と併せて、中央銀行の金融政策について本章・本項では説明しているが、政府の財政支出が主テーマなので割愛したい。

ただ、MMTは、「財政規律をより緩めるべき」ということではないが、主権通貨国において財政ファイナンスを禁じているのは「おかしな禁止」と批判。
形式的に間接的ファイナンスを行わざるを得なくしていることが、手続きを煩雑化し、無意味なコストを発生しているだけと、現行法制度に対する建設的批判であると強調していることを確認しておきたい。
この後、政府の財政支出がもたらす財政赤字について、以下の特徴が挙げられている。

政府の財政赤字の特徴

1)政府の赤字支出は金利を引き下げる
家計や民間企業が赤字で収入等に頼れず支出が必要な場合は借入れに依存。
その際は資金調達に金利上昇圧力が働く。
これと同様に、国債発行による資金調達を伴っての中央政府の赤字支出にも金利上昇圧力が伴うというのが一般的。
しかし、自国通貨建て支出においては、先の財政オペレーションでは外部調達の必要はなく、本来国債発行時点の金利には影響は働かないとする。
そして、財政支出時点では、民間銀行の中央銀行当座預金増加分は、預金者による現金引出し用の「準備金」としては過剰であり、別の金融資産で運用すべく資金供給が増加。
そのため、反対に金利低下圧力がかかるため、中央政府の赤字支出自体は、通貨発行とセットになることで、「国債金利を低下させる」傾向があるとMMTでは結論付けるとしている。

2)財政赤字が非政府部門の貯蓄を創造する

また一般的には「財政赤字が増えすぎると、非政府部門の純貯蓄ではまかないきれなくなり、国債発行は困難になる」とされるが、政府自身が先述の財政オペレーションを止めるという選択をしない限り、「国債の消化能力」が低下することはありえない、とMMTはしている。
すなわち、家計や企業の貯蓄が国債を「消化」しているわけではなく、反対に、「政府赤字がそれと同額の非政府部門の貯蓄を創造し、政府が貯蓄の供給不足に直面することはないというわけだ。
このあたりの主張は主流派経済学とは正反対であり、素人としては、どちらにしてもメンツにこだわることなく、一つにまとめて欲しいと思うのだが。
経済学の素人の私として単純に考えれば、MMTの考え方に賛成である。
一般的なベーシックインカムでは、恐らく多くが貯蓄に回るであろうことは明らかであるし。

3)海外部門の国債保有は問題ではない

個人的に気になっていることの一つ、国債の海外資本保有度が高いことは、好ましいことではないのでは、という懸念。
これについてMMTでは、海外部門の国債保有は、財政赤字や政府債務を気にする必要がないことと同様問題ではないと。
そもそも、海外部門が経常赤字国の国債を保有するのは、海外諸国の経済主体が当該通貨建て資産の貯蓄を望んだ結果だとも。
加えて、金利が上昇して国債利払いが増えても、支払い能力に制限がない主権通貨国政府にとって何ら問題ではない等含め、ここでの問題なし論の理由を縷々述べている。

4)政府財政は赤字が正常なあり方

「誰かの収入は、必ず別の誰かの支出によってもたらされている」、「収入の合計=支出の合計」という、経済学派を問わず常に正しい命題から、政府財政が赤字傾向であることは、むしろ「正常」である、と。
言い換えれば、すべての経済主体が同時に黒字になることは原理的に不可能である。
こうした基本から
・民間部門の赤字は持続的でもなければ、経済全体にとっても好ましいことではない。
・すべての国が同時に経常黒字となるのは不可能。
・少なくともいくつかの国の政府は、世界の貯蓄者が欲する純金融資産を供給できるよう絶えず赤字でなければならず、最も高い支出能力を備えた基軸通貨発行国の政府がその役割を果たすことが適切。
こう言えるわけだ。

<第主権国家における政府の機能>から考える、ベーシックインカム及びベーシック・ペンションの財源としての政府支出

本章で、ベーシックインカム(BI)あるいはベーシック・ペンション(BP)の財源を、MMTを活用して考える上での軸あるいは参考となりうる重要な考え方が、縷々、展開された。
現実的に、政府の財政政策、中央銀行の金融政策などが、主流派経済学ではなく、MMTに基づいて運用管理されていれば、特段問題とする必要はなく、そのいずれかが導入・実現されているだろう。
しかし、未だにMMTが異端の経済学理論とされている現状が、BI、BPが財源問題を要因として、真剣に実現可能なものとして認識・認知されていないことに結びついているといってよいだろう。

しかし、本章を通じて、財政支出が国債発行により行われるという大前提のみの論述であることには、経済学の素人としては、いささか物足りなさ、というか、MMT自体の想像力・創造力の限界を感じた。
国債という手法・手続きしかないのか、それが唯一絶対的な方法なのか?
負債という「負のピラミッド」構造で語るとき、中間に民間金融機関が入ることで、どうしても国債という手段を取らざるを得ないということになるのだろう。
ベーシック・ペンションの支給や利用、循環では、民間銀行は不要なのだから。

「主権国家における政府の機能」で主なテーマとなったのは、政府の財政支出機能。
ベーシックインカムBI及びベーシック・ペンションBP実現を阻んでいる最大の要因の一つが、中央政府財源問題。
いずれにしても、本章によれば、BI及びBPの財源に関しては、自国通貨を発行しているわが国においては、その額がいくらであろうとも、政府支出で支給できることになる。
このMMTを理解することで、その実現が現実的になるわけではないのだが、MMTに拠ればという条件ではなく、財政論・金融論全般を通じての合意事項として、あるいは論理的整合性をもつ考え方として、本章そして本書が参考になればと実は考えている。
本章の記述のどれがMMTで、何が主流派経済学と共通なのか。
なかなか正しい認識をもって判断することが難しいのが事実であるゆえに、一層そう思うわけだ。

もう一つ、BI、BPをめぐる大きな問題が、本章でも提示された政府財政支出において「インフレ」が制約となるという条件・特性。
先述したように、次の【第2部 MMTの政策論】の中で、インフレ、物価対策が取り上げられているので、その際に詳しく見ていきたい。

今回で【第1部 MMTの貨幣論】を終え、次回から【第2部 MMTの政策論】に入る。
ゆえに、一層BI、BP提案のバックボーンに据えることができる論述が読み取れないか、一層の関心をもって臨みたい。
まずは、次回は、<第4章 MMTの租税政策論><第5章 機能的財政論>を合わせて確認していく予定である。

MMT<現代貨幣論>とは何か 日本を救う反緊縮理論』構成

序章 MMTはなぜ注目されているのか
・MMTブームに火をつけた女性政治家
・有力者による批判の的となったMMT
・日本にも波及したMMT論争
・MMTサイドからの報道や議論
・本書の目的と構成
第1部 MMTの貨幣論
第1章 貨幣の本質

・貨幣の定義
・貨幣に関する3つの機能と「計算貨幣」
主流派経済学は「商品貨幣論」
・商品貨幣論の問題点(1)論理構造の欠陥
・商品貨幣論の問題点(2)物々交換経済の不在
・商品貨幣論の問題点(3)「貴金属硬貨=効率的な交換媒体」論の非現実性
MMTは「信用貨幣論」
・「割り符=貴金属硬貨の代用品」はありえない
・貴金属硬貨も債務証書の一種だった
・「貨幣国定学説」と表券主義
・租税が貨幣を動かす
・国定貨幣=国家を債務者とする特殊な信用貨幣
第2章 預金のメカニズム
・預金も信用貨幣の一種
・通貨供給が貸出と預金を生み出す ー 主流派経済学は「外生的貨幣供給論
・中央銀行はマネーストックを制御できる ー 主流派経済学の「貨幣乗数理論」
・銀行貸出が預金と通貨を生み出す ー MMTは「内生的貨幣供給論
・実務関係者が支持するのは内生的貨幣供給論
・負債のピラミッド構造
・ビットコインは貨幣か?
・ビットコインは貨幣ではない ー MMTの結論
第3章 主権国家における政府の機能
・主権通貨とは何か
・自国通貨建てであれば政府の支出能力には制限がない
支出能力に制限はないが、インフレが政府支出の制約となる
税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない
・主権通貨国の財政オペレーション(1)統合政府のケース
・主権通貨国の財政オペレーション(2)中央銀行が国債を引き受けるケース 
・主権通貨国の財政オペレーション(3)民間銀行が国債を引き受けるケース
・現実に行われている「間接的な財政ファイナンス」
・中央銀行の独立性は「手段の独立性」
・政府の赤字支出は金利を引き下げる
財政赤字が非政府部門の貯蓄を創造する
・海外部門の国債保有は問題ではない
政府財政は赤字が正常
第2部 MMTの政策論
第4章 MMTの租税政策論

・「MMT=無税国家論」ではない
・租税の目的とは何か
悪い税(1)社会保障税
悪い税(2)消費税
悪い税(3)法人税
第5章 機能的財政論
「完全雇用と物価安定」という公共目的
・機能的財政と二つのルール
・機能的財政と表券主義
・機能的財政と為替相場制度
第6章 就業保証プログラム
・裁量的財政政策に否定的なMMT
・就業保証プログラムとは何か
・就業保証プログラムの3つの意義
就業保証プログラムの問題点
・就業保証プログラムの実例? ー 理論と現実とのギャップ
・ベーシック・インカムや最低賃金制度との違い
第3部 MMTから見た日本経済
第7章 日本は財政危機なのか

・クルーグマンの機能的財政論批判
・日本は非常に良い事例 ー ケルトンの反論
・財政赤字は金利やインフレ率の上昇とは無関係
・日本は財政危機ではない ー MMTと財務省のコンセンサス?
・自国通貨建て債務でも国家は破綻する? ー サマーズの批判
デフォルトや通貨危機の真の原因は固定相場制 ー MMTの結論
第8章 日本経済には何が必要なのか
・企業の過少投資が主導する日本の長期デフレ
・生産能力と人々の生活を破綻するデフレ・スパイラル
・金融政策よりも財政政策 ー ケルトンの提言
・金融政策こそ主要な政策手段 ー クルーグマンの異論
・金融政策の効果は乏しい ー ケルトンの反論
・緊縮財政こそが長期デフレの原因
・量的緩和政策は何が問題なのか
・デフレ不況を深刻化させる消費増税
・「マクロ経済スライド」は緊縮財政の産物
・機能的財政が「老後2000万円問題」を解決する
第9章 民主主義はインフレを制御できるのか
・財政の民主的統制は難しい?
・ケインズ型政策がスタグフレーションをもたらした?
・マクロな視点が欠落した『赤字の民主主義』
・民主的統制能力を示す現代の日本
・スタグフレーションには複合的対策を ー MMTのスタンス
民主主義はインフレを制御できる ー MMTのハイパーインフレ論
・民主主義の不在が招いた日本の悲劇
おわりに ー MMTをどうす生かすべきか
・主流派経済学はなぜ間違えるのか
・現実とも整合的なMMT
・MMTの課題と展望
・MMTの「実践」が求められる日本
・「公益民主主義」の形成に向けて

参考:「2022年ベーシック・ペンション案」シリーズ

<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

(参考)【『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション】シリーズ

<第1回>:スコット・サンテンス氏の想いを知る:『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション-1(2023/5/28)
<第2回>:MMT視点での財政支出・BI支出によるインフレと課税論:『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション-2(2023/6/12)
<第3回>:MMTのJG雇用保証プログラムよりもBIを、という卓見:『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション-3(2023/6/13)
<第4回>:MMTに欠けるBI導入要件の矛盾と正論:『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション-4(2023/6/18)
<第5回>:MMTなくしてBI実現は不可能なのか:『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』から考えるベーシック・ペンション-5(最終回)(2023/6/29)

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