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2023年BP社会保障・社会政策論

社会経済システムそして日本の文化としてのベーシック・ペンションの実現へ:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー11(最終回)

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書)を参考にしての【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズ

<第1回>:リベラリズム批判と米国追随日本のグローバリゼーション終焉リスク:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー1(2023/1/17)
<第2回>:TPP批判・安倍首相批判による食料・エネルギー安保失政を考える:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー2(2023/1/18)
<第3回>:デマンドプル・インフレ、コストプッシュ・インフレ、貨幣供給過剰インフレを知る:『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー3(2023/1/22)
<第4回>:ベーシック・ペンション、インフレ懸念への基本認識:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー4(2023/1/24)
<第5回>:主流派経済学におけるケインズ派と新自由主義派の異なるインフレ政策と課題:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー5(2023/1/26)
<第6回>:ベーシック・ペンション起因のインフレ対策は利上げのみか。新たな視点へ:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー6(2023/1/28)
<第7回>:主流派経済学派からポスト・ケインズ派のインフレ論へ転換を:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー7(2023/1/29)
<第8回>:ベーシック・ペンション財源論は現代貨幣理論MMTが参考に。インフレ論は?:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー8(2023/1/31)
<第9回>:恒久的戦時経済が示唆する平時経済のあり方とベーシック・ペンション:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー9(2023/2/9)
<第10回>:生活基礎・社会保障安保としてのベーシック・ペンション:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー10(2023/2/4)

当初の予定通り回を重ねて、ようやく最終回第11回にたどりきました。

5.「第5章 恒久戦時経済」から考える21世紀の総合的・体系的・恒久的安保とベーシック・ペンションモデル

「第5章 恒久戦時経済」構成

第5章 恒久戦時経済
  第五波インフレで、世界は政治的危機へ
  中世ヨーロッパ文明に終焉をもたらした第一波インフレ
  格差拡大、反乱、革命、戦争を引き起こした第二波・第三波
  冷戦の終結をもたらした第四波インフレ
  すでに危険な状態にあった世界を襲った第五波
  内戦が勃発する可能性が高まっているアメリカ
  債務危機のリスクが高まりナショナリズムが先鋭化するEU
  成長モデルの根本的な変更を余儀なくされている中国
  中国の行き詰まりから東アジア全体で地政学的危機勃発か
  日本は最優先で何に取り組むべきか
 ・安全保障を強化し、内需を拡大させる産業政策を
 ・国内秩序を維持するための「大きな政府」
 ・特定の財に限定した「戦略的価格統制」の有効性
 ・世界秩序の危機は長期化し、戦時経済体制も長期化
  「恒久戦時経済」構築以外に生き残る道はない 
おわりに 悲観的積極主義


上記構成の「第5章 恒久的戦時経済」を課題とした取り組み。
その構成を私なりに整理して、以下の2回で、中野氏の論述とベーシック・ペンションとを結びつけ、確認と考察を行いました。

5-1 恒久経済システム確立のためのポスト・ケインズ派理論に基づく新しい資本主義及び財政政策改革
 ・2020年代第5波インフレがもたらす世界の政治的危機、ナショナリズム、地政学的リスク
1)恒久的戦時状況にあるとみなすべき時代の日本の最優先課題とは
 ・絶対不可欠の安全保障強化戦略
 ・内需拡大のための産業政策
 ・「大きな政府」の必要性
 ・「大きな政府」形成・維持の条件
 ・特定財限定の「戦略的価格統制」の必要性
 ・世界秩序危機の長期化が必要とする戦時経済体制の長期化、そのための「恒久戦時経済」構築
 ・中野氏が掲げる「悲観的積極主義」
2)ベーシック・ペンションは、恒久戦時経済と結びつくのか

5-2 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的基礎生活及び社会保障安保
1)少子高齢化と人口減少を前提としてのベーシック・ペンション
2)総合的・体系的社会保障制度改革の軸としてのベーシック・ペンション

 ・有所得者全員が納税・社会保険料納付義務を持つ社会システム基盤としてのベーシック・ペンション
 ・行政改革に直結するベーシック・ペンション
3)リスク対策としてのベーシック・ペンション、希望する生き方選択のためのベーシック・ペンション
 ・生きる権利としての生活基礎年金の全員無条件・生涯・平等生活基礎年金給付、ベーシック・ペンション
 ・常に日常生活における不安・不確実・リスクと背中合わせの現代とその備えとしてのベーシック・ペンション、生き方・働き方を自分の意志で選択できる基盤としてのベーシック・ペンション
4)【「日本国民の基本的人権に基づき支給する生活基礎年金に関する法律」前文:2022年草案】<本法制定の背景>に規定したベーシック・ペンションの生活安保・社会保障安保
 ・平時においても想定外のリスクに備えることと共通の意味を持つ「恒久的戦時」体制
 ・ベーシック・ペンションによる、従来型ウェルフェア、ワークフェア主義から、ヒューマンフェアへの転換
5)生活基礎安保に必要な生活基礎物資・サービスの需要を満たすために必要な供給システムの整備拡充


今回は、その3回目であり、全体の最終回・総括を兼ねての整理・考察です。

5-3 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的社会経済システム安保

ベーシック・ペンションを巡る財政・金融システム懸念への対策・対応

本書を用いることにした一番の目的は、ベーシック・ペンション給付時に発生が懸念されるインフレについて理解し、その対策・対応方法等について参考になる考え方・理論などを確認できれば、と考えたこと。
次いで、インフレにおけるコストプッシュ・インフレ対策として推奨する、積極財政政策とその具体的な方法として、貨幣循環理論・現代貨幣理論(MMT)に基づく政府・中央銀行による、税に頼らない、信用創造による通貨発行を主張・提案が見られ、ベーシック・ペンションの財源不要主義と結びつけることが可能と考えたこと。

ベーシック・ペンションでみなされる過剰通貨発行と伴うインフレ懸念対策

一部の論者から指摘されるベーシックインカムの過大な給付がもたらすインフレは、中野氏の指摘ではほとんどが「コストプッシュ・インフレ」タイプとされるのに対して、「デマンドプッシュ・インフレ」に当たります。
この過剰流動性は、積極財政から起きる場合が想定され、ベーシック・ペンションでも同質と考えることができます。
先述のMMTを主導するポスト・ケインズ派では、「需要が供給」を創造・創出するとしており、当初供給不足であっても、次第に供給体制が整うことで値上げは沈静化され、インフレも抑制されるとします。
しかし、今時のエネルギーや食料、半導体・希少メタルなどグローバル社会における地政学的リスクを原因とする財の供給不足解消は、簡単ではありません。
こうした個別の財の性質を考慮すると、一律・一元的に値上げやインフレを抑止・制御する手立ては、簡単には見つからない。
「利上げ」を持ってしても、その効果・効能に保証はありません。
従い、インフレ懸念、インフレリスクは払拭することはできないと見るべきでしょう。
しかし、その程度・度合いは、調整することは可能と考えます。
そこでは、ベーシック・ペンションの実施・導入方法を給付額を一度に多額を支給するのではなく、少しずつ支給し、需給状況の判断、値上げ・インフレへの影響度の分析などを行いながら、発生する問題の改善・解消に取り組んでいく方法があります。
導入後に発生した値上げやインフレに関しては、それらの利用内容分析、供給動向分析などを通じて、供給支援策、必要事業種ごとの支援策、場合によっては利上げなど金融政策なども検討し、対処することになります。
例えばの話ですが、インフレの度合いによっては、一定期間の ①消費税減税 ②消費税廃止 ③給付額の増額、など機動的に対応するシステム・法制を用意しておくことが考えられます。
ただこれまでも申し上げているように、基本的には生活基礎消費に充てる年金であり、地域及び国内の供給体制の整備・拡充が、需要に応じるように行われることを主眼としています。
従い現状国外に多くを依存している原材料など財については、長期的に国内での供給・調達機能を拡充する政策を推進することも並行して行うべきとしています。

一般通貨に換金されるベーシック・ペンション

次に、ベーシック・ペンションが利用され、その専用デジタル通貨を受け取った事業者は、自身の事業の仕入れや諸経費、従業員の賃金などに支払うために、一般の法定通貨が必要になり、その交換を日銀に要求できます。
ただし、それとは別に、政府や自治体へ納付すべき預かりし消費税や、法定福利費、法人所得税・事業税などをこのベーシック・ペンションで納付できるとし、利益処分として日銀に返却することも可能ともしています。
この方法で、上記の法定通貨への換金要求率が減り、市中に流通する一般法定通貨の量を削減することも可能としています。

ベーシック・ペンション以外の通常所得が持たらす過剰流動性懸念

上記は、主にベーシック・ペンションが利用可能な消費財・サービスの値上げ・インフレ懸念に対する考察でした。
もう一つ、従来の所得の一部は、生活基礎消費に充てる必要がなくなり、他の用途に利用できる、すなわち可処分所得の増加をもたらします。
実質的には、ベーシック・ペンション給付部分が従来の流通通貨を上回る流動性に当たるわけです。
しかし、需給視点で考えると、それ以前の通常所得の一部が生活基礎商品・サービスに利用されており、その部分の金額が、ベーシック・ペンションに置き換えられるわけですね。
その代替額に当たる部分が可処分所得の増加になるわけです。
そうした変化が、どんな経済的社会的影響をもたらすか。
例を上げれば、乗用車を購入する、家を建てる、リッチな食事や旅行をする、海外旅行の機会を増やす、そして株式等に投資する、起業資金に充てる etc.
さまざまな分野・領域・方法での需要が喚起され、場合によっては、供給不足が生じ、値上がりが起きる。
その供給不足を充足させるための事業投資が活発化する。
先にように「需要が供給」を生み出し、産業基盤の拡充に繋がり、労働生産性も向上し、経済成長を実現する。
まあ、そう理想的に運ぶわけではないでしょうが、想定はできます。
すなわち、中野氏が指摘したように、「利上げ」は、こうした経済の活性化に水を浴びせるリスクもあるということを確認しておくべきと思います。

財源問題と決別する、専用デジタル通貨循環・回収システムとしてのベーシック・ペンション

ベーシック・ペンションは、一応中野氏が支持する現代貨幣理論MMTに類する考え方を財源論として用いています。
しかし、財政赤字がいくら増えてもよい、という考え方は採用せず、一定のルールの下で、膨大な給付が行われ、そうしたルール・基準を法制化し、他の政府支出の一部にも適用可能にするとします。
そうした財政支出に一定の歯止めをかけることは必須です。
また、日銀によるベーシック・ペンションの専用デジタル通貨給付は、一定期間で日銀に回収されます。
回収された過去1年分全額は、日銀勘定内で消却(中野論では破壊)されるのですが、実質的に、消却されたものは、新しい年の専用デジタル通貨に切り替えられることに等しいわけです。
日銀勘定においてのデジタル通貨発行残高は、一定額以上に増えることはないのです。

以上で、一応、本書を通じてのインフレと財源問題に対する検討・考察としておくことにします。
但し、その枠に留まらない、狙いやメリットが非常に大きな重み・価値をもって組み込まれていることを、以下で確認して頂きたいと思います。

ベーシック・ペンションの経済システムシステムモデル考察

ベーシック・ペンションの給付額と給付実施プロセス

ベーシック・ペンションの支給額は、大きく2段階方式とすれば、第一段階が2040年までの実現をめざす年間100兆円規模、第二段階の2050年時点では同じく200兆円規模。
それまでのプロセスとして、支給対象の優先順位化や需給体制判断、段階的導入に伴う物価変動やインフレ気配分析に基づく判断などを用いながら、大雑把かつ単純化すればば、2030年から1年毎に10兆円ずつ増額していくなど、方法は十分検討すべきと考えています。
もちろん、デジタル通貨化技術の進展状況が最も影響を与えるため、状況によっては、一部専用マイナポイント(マイナ通貨)や現金給付も考えるべきかもしれません。

雇用・労働構造改革・拡充と働き方の多様化・選択可能化

こうして導入するベーシック・ペンションは、元来個人の生き方・生活の基盤を経済的に支えることを目的としています。
しかしその支給自体が、経済的意義・目的を同時に持つものであり、それがまた個人の生き方・生活基盤を一層安心安全安定的なものに拡充していくという循環を生み出すものとなります。
そして給付分が使用されることで、事業基盤の拡充が生まれ、伴って、そこでの新たな雇用や新たな事業を自ら起こそうとする起業家・事業主の創出を見ることが可能になります。
事業活動においては、より必要な人材を獲得すべく雇用条件・労働条件の向上や人材育成を強化する事業・企業が増えるでしょう。
それにより、自ら望む仕事・職種・企業を求める、事業を起こすなど、働き方の多様性と選択可能性の基盤が充実すると想像できます。

ワークフェア主義との決別

こうした側面は、従来の社会保障制度の多くが、働くことを条件とし、働いて得る所得があることを前提として給付額や給付サービスのランクを設定した、いわゆるワークフェア主義に基づくものでした。
その呪縛からベーシック・ペンションは解き放つことになるのです。

産業構造・業種構造基盤拡充と労働生産性をめぐる議論

先述した雇用・労働面から変化・変革は、働く人視点からの見方。
これを雇用する事業者・企業から見ると、ベーシック・ペンション導入は、大きな産業構造の変化、業種選択の変化の機会と捉えることができます。
むしろそれが必須になると言えるでしょう。
ベーシック・ペンション支給により、人々の仕事や働くことへの意識・認識が変わるでしょう。
自分が本当にやりたい仕事は何か、自分を活かせる仕事は何か、いつどういう時間にどのくらい働きたいか、どの程度の収入・賃金を望むか・・・。
多様な要望への対応、適切な人材の選択、求める人材の要件の提示、人材獲得のための人事労務人材制度・政策化、そして現在も非常に重要性を増している仕事と子育て・介護等をサポートする諸制度・諸施策・・・。
その整備拡充に向けて企業が求められる課題は一層重視され、競争も激しくなるでしょう。
その内容・結果が、個人個人が望む生き方・働き方を一層納得のいくものに高めていくことになるでしょう。

当然、その取り組みを行うためには、そのために充当するコスト(これを投資と呼び替えることも多いですが)を産み出すことができる経営を必要としています。
そして当然のことながら「付加価値」「労働生産性」を高めること・創造することが必須ともされます。
ただこうした取り組みが比較的可能な業種・職種が厳として存在することは認識しておくべきと考えます。
保育士・介護士・看護師等のケアサービス職や障がい者福祉・児童福祉職、公的行政サービス職などに労働生産性の向上を紋切り型に求めるには大きな問題があります。
中野氏が用いた「大きな政府」は、多額の財政支出が求められることを表現しての主旨がでした。
しかし、ベーシック・ペンションを基軸とする社会保障制度の大改革では、むしろこうした高い生産性を求めることが困難な職種こそ厳しい人材不足が生じています。
当然それらの不足人材を確保するためには、財源が必要で、一般の民間企業市場と同じ土俵で競争することには困難がつきまといます。
そうした時に、ベーシック・ペンションがすべての人々に支給されることで、こうした準市場的公的事業職種や公的行政サービス職務に携わる方々の厳しい経済的事情も緩和されることになります。
また、ベーシック・ペンション導入で派生的に行われる行政改革で起きる職員・人材の再配置も、生産性第一主義とは異なる視点で可能になります。
こうした観点での認識や議論も、ベーシック・ペンション制度化での重要な課題としています。

地域経済基盤拡充、地方自治体機能の拡充と新しい地方論へ

雇用と産業基盤拡充に加えて、ベーシック・ペンション導入で自ずと強く結びつくのが、地域経済基盤の拡充です。
専用デジタル通貨ベーシック・ペンションは、生活基礎消費に充当することを前提とした年金制度です。
そのため、地域のスーパーやドラッグストア、飲食店、病院、介護施設などでの利用に集中し、地域経済の基盤の整備・拡充と活性化に直結します。
国内旅行での利用も増え、対象の地域自体も次第に広がり、相互に利益を増大することが可能になります。
小事業主、起業を志す人々も増えるでしょう。
地域経済の活性化で、地方自治体の税収も増え、好循環をもたらすでしょう。
なおそれにとどまらず、ベーシック・ペンション導入における社会保障制度改革において、地方自治体が執行する行政サービスに必要な財源を確保し増やすために、国税徴収権の一部を地方自治体に移管・委譲することも課題としています。
また行政機関での職務に従事する方々にもすべてベーシック・ペンションが支給されることで、日常生活の経済的不安の改善・解消にも繋がるわけです。
以上のような視点から、新たな地方論が巻き起きることも期待したいものです。

ベーシック・ペンションによる新しい資本主義議論の活発化と理念作りへ

ベーシック・ペンションの導入により、個人の可処分所得の増加や産業基盤・雇用基盤の拡充がもたらす所得増、企業所得の増加。
これらの副次的な効果で最も期待したいのが、失われた10年、20年、30年で、同様に失われた中間層・中所得者層の増加・拡大です。
仕事の選択の自由と労働人口の減少を要因として引き起こされる人材不足は賃上げに結びつく可能性が高く、非正規雇用者の囲い込みによる正規雇用化や処遇改善の可能性も高まるでしょう。
ベーシック・ペンションの安定的・定期的支給は、総じて可処分所得の上乗せを推し進め、貯蓄や株式やスタートアップ等への投資、自ら起業する資金への充当などを可能にし、活発化することが想定・期待できます。
こうした意識の醸成と行動助長、そして実際の行動は、ベーシック・ペンション生活基礎年金所得への上乗せで現実化され、巨大金融資本家群とは別のグループを形成することを期待するものです。

日本銀行法改革及び銀行法改革の必要性

これに、行きすぎた金融市場主義と一部の富裕層によるその支配を抑止するための中銀と市中民間銀行との預金準備制度、預金準備率の法律を改正することで、過剰流動性によるバブルの発生を抑止する法改正を、ベーシック・ペンション導入と合わせて実施する。
この2つの改革が、「新しい資本主義」の創出・創造に結びつく。
そう考えています。

「恒久的戦時経済」を「平時<安心安全安定・確保>社会経済」と呼び替える

安保の意味とベーシック・ペンション

本シリーズで用いる「安保」。
親サイト https://2050society.com でも再三再四申し上げていますが、一般的な安全保障の意の「安保」ではなく、<安心安全安定・保持保有確保>の意味をもつ「安保」として用いています。

広範な経済安保政策とベーシック・ペンションとの関係

こうした安保問題ですが、このところ二極化・分極化する異なる政治思想・政治体制下では、「経済安保」という括りで議論され、課題化されています。
すると、先述のサイトで以下の記事で論じたように種々の個別の安保も課題としていることが分かります。
⇒ 体系的課題別「安心安全安定・保有保持確保」の安保政策の長期的政策合意形成と取り組みを:21世紀第2四半期の安保政策シリーズ-1(2022/12/2)

この記事中で示した広範囲での「安保」課題の例は以下の通りです。

1)エネルギーの安心安全安定・保持保有確保課題=エネルギー安保
2)食料の安心安全安定・保持保有確保課題=食料安保
3)半導体の安心安全安定・保持保有確保課題=半導体安保
4)国民生活の安心安全安定・保持保有確保課題=生活安保
5)社会構成人口の安心安全安定・保持保有確保課題=人口安保
6)地域社会生活社会資本の安心安全安定・保持保有確保課題=地方行政安保
7)国家防衛の安心安全安定・保持保有確保課題=防衛安保
8)国家財政・地方財政の安心安全安定・保持保有確保課題=財政安保


中には、当シリーズでは経済安保と切り離して課題とした、<生活安保>や、従来の安保がこれ一択だった、<防衛・軍事的安保>も含んでいます。
当然詳しく検討していくと、エネルギーでは電力を明示して組み入れるべきでしょうし、希少メタルや水資源・環境資源などまだまだ経済と結びつけるべき個別の「安保」問題が挙げられるでしょう。
ベーシック・ペンションでは、それらのすべてと関係するわけではありませんが、公共料金の支払いにも当然利用可能ですし、生活基礎消費のすべてが官民を問わず経済活動として行われているわけです。
ゆえに、専用通貨を発行する日本銀行業務や国と自治体の事業を含め、すべての社会的経済的活動と直接・間接に結びつき、その「安保」が必須課題となるわけです。
それらの一つひとつの領域の課題を当サイトで取り上げることはできませんし、その必要もないと思います。
こうした広範かつ個別の「安保」問題は、2050年の望ましい日本社会の創造を掲げて運営するサイト https://2050society.com で今後も展開していきます。
合わせてチェックして頂ければと思います。


経済安保の観点からのインフレ、ハイパーインフレ対策

なお、中野氏が「恒久戦時経済」対策として提起した、特定物資・サービスの価格統制や、その供給元への補助金支給による価格維持政策も選択肢としておくことが適切と考えます。
海外からの供給途絶や輸入価格高騰リスクに対しては、こうした価格統制に加え、それらの代替需要機能を持つ国内物資の輸出禁止や輸出税課税などの緊急対策での対応も考えられます。

総括:日本独自の社会経済システム及び文化としてのベーシック・ペンションをグローバルモデルに

グローバリゼーションの終焉。
この基本認識をベースにして、これからの時代の「世界インフレと戦争」リスクとそれに伴う金融財政政策のあるべき形を、過去と現在のインフレ、デフレ、スタグフレーションの事例を用いながら展開してきた中野氏の書。
本書には、ベーシックインカムに関する記述も、その用語すらまったくありません。
ベーシック・ペンション提案を行うにあたり、最大で100~200兆円規模の膨大な給付を描いていることから、賛否いずれのベーシックインカム論者からも、インフレ、ハイパーインフレは避けがたいという批判をもらい、何かしらの説明・反論が必要。
そうずっと気になっていたことで、先の渡辺努氏著『世界インフレの謎』に続いて、本書を参考にして考え、できれば少しでも有効・有益な解を見つけ出すこと、感じることができればという思いからのアプローチでした。

正直なところ、正解はないと認識しており、経済学的にも、金融政策・財政政策においても、どれに与するという確固たる信頼・信条ももっていません。
絶対的なものはない。
人は、歴史に学ぶべきとは常に言いつつも、良いか悪いかわかりませんが、どちらか一つだけに解を集約し、それを絶対的なものとする。
そう思ったとしても、かならず反対に作用する社会的経済的事象や行動が起きる。
それが歴史であると考えています。
ならば、想定外も想定内、平時も戦時と考えて、しかし将来や未来に対して悲観一色ではなくて、より望ましい社会を形成・構築するべく、目標・目的をもって、現在と将来想定される諸課題に取り組んでいくべき。
そう考えるのです。
このように考え、提案を重ねてきているベーシック・ペンションは、個人及び社会との関係、経済システムとの関係両面を合わせた、社会経済システムとしての機能を持つものです。
そして基本的人権とそこによる生活保障の理念を具眼化する意味では、むしろ日本独自の文化と言うべきものとも提起しています。
初めは日本というローカルな取り組みであり、制度化・システム化ですが、その安定的な管理と運用方法が確立できれば、グローバル社会における一つのモデルとして、その経験と方法を移転することも視野に入れるべきと考えています。

しかし、そうした思いや目標・目的をもって諸課題に取り組むためには、まず自国内だけで取り組むためのお金が絶対的に必要です。
その調達を、国民・市民の稼ぐ所得や納付する保険料、種々の課税ですべてを賄うという従来の考え方は、グローバル社会という理想概念を一旦横にやって、日本というローカル社会に限定して転換する。
その新たな方法として、現状の財政赤字が将来世代にツケを残す、負担を強いるという考え方を不要なものとして排除し、日本国内のみ流通・消費・回収・消却される専用デジタル法定通貨を発行することで対応する。
そこにおいて参考になるのが、本書の中野氏によるMMTに基づく財源・財政論でした。
また同様の考え方について、過去山口薫氏著『公共貨幣』(2015/9/24刊・東洋経済新報社)』(同共著)『公共貨幣入門』(2021/10/12刊・集英社インターナショナル新書)を参考にしての全20回シリーズでも取り上げてきています。
(参考)
⇒ <『公共貨幣』による「公共貨幣論」の理解考察とベーシック・ペンション>シリーズ:2022年書籍記事シリーズ紹介ー3(2022/8/1)


緩やかなベーシック・ペンション導入、移行方法を探る

なお、ベーシック・ペンションの膨大な金額の支給で懸念されるインフレ抑制策として、少ない金額の支給から開始し、少しずつ増額していく方法もあると、先に述べました。
こうした、物価動向やインフレ動向を注視しながら、政策・対策を反映して進めていく方法は、これまでもベーシックインカム提案者から提起されています。
そうした事例として、以下の記事で紹介した、井上智洋氏著『』を参考図書とした
【『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』から考えるシリーズ】があり、以下の記事で報告しています。
(参考)
⇒ 井上智洋氏著『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』(2021年刊)を読む(2021/11/3)

ベーシック・ペンション実現に不可欠な政治改革と新しい時代の政治家輩出

そして最後に申し上げるべきこと。
これも定番のように最後に必ず付け加えていることです。
いずれにしても、ベーシック・ペンション、ベーシックインカムでもよいのですが、その考え方と内容、導入方法などについて十分理解し、その実現を公約に掲げる国政レベルの政党・政治グループが絶対必要であること。
そのために、先ずはそうしたグループのリーダーとなるべき人の出現もまた必須であること。
とすれば、既成政党や既成政党のリーダーには到底無理であることは明らかです。
当サイトの現状は、とてもそこまでに持ち込む強固な理論的基盤も組織的可能性も持ちえていないことも自明。
新たなグループ形成は、若い世代中心のグループか、女性主体のグループ、その両方が合わさったグループに期待するしかないのではと考えるのです。
いずれにしても、そういう状況を客観的に認識した上で、2030年、2040年、そして2050年を見据えて、今年2023年の考察と取り組みを進めてまいります。
そのためのインフレ及び財政問題へのヒントを確認するシリーズを、以上で終えることにします。

次回以降、また新たな視点で、あるいは従来の視点からの再確認も加えて、継続していきます。
今後とも宜しくお願いします。


【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズ展開計画(案)

1.「第1章 グローバリゼーションの終焉」から考える21世紀上期の安保政策課題
 1-1 地政学・政治体制リスクと国家安保をめぐるコンセンサス形成ニーズ
 1-2 グローバリゼーション終焉の現実としての食料・エネルギー安保政策
2.「第2章 二つのインフレーション」から考えるベーシック・ペンションとインフレリスク
 2-1 デマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ、それぞれの特徴
 2-2 ベーシック・ペンションにおけるインフレ懸念の性質とリスク回避の可能性
3.「第3章 よみがえったスタグフレーション」から考える21世紀上期の経済安保とベーシック・ペンション
 3-1 過去のインフレ、スタグフレーションの要因・実態と金融政策経済安保
 3-2 インフレ対策としての利上げ政策の誤りとベーシック・ペンションにおける想定対策
4.「第4章 インフレの経済学」から考える21世紀上期の経済安保とベーシック・ペンション
 4-1 財政政策がもたらす需要・供給と経済成長循環と国家財政の基本
 4-2「貨幣循環理論」「現代貨幣理論」から考えるベーシック・ペンションの財源論
5.「第5章 恒久戦時経済」から考える21世紀の総合的・体系的・恒久的安保とベーシック・ペンションモデル
 5-1 恒久経済システム確立のためのポスト・ケインズ派理論に基づく新しい資本主義及び財政政策改革
 5-2 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的基礎生活及び社会保障安保
 5-3 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的社会経済システム安保

世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』目次

はじめに 物価高騰が示す世界の歴史的変化
第1章 グローバリゼーションの終焉
  ロシアのウクライナ侵攻で迎えた終焉
  終わりの始まりは2008年の金融危機
  最初から破綻していた、リベラリズムという論理
 「中国の平和的な台頭」などあり得なかった
  東アジアの地政学的均衡を崩した、アメリカの失敗
  ウクライナ侵攻もリベラル覇権戦略破綻の結果
 ・金融危機、格差拡大、排外主義の高まり
 ・物価高騰は一時的な現象では終わらない

  防衛費を抑制し続けた2010年代の日本
  世界情勢の変化を把握せず、安全保障を軽視
 ・TPPは日本の食料安全保障を脅かす
 ・エネルギー安全保障も弱体化させた安倍政権
 ・電力システム改革が電力不安を不安定化した

  中国の地域覇権の下で生きていくのが嫌ならば・・・ 
第2章 二つのインフレーション
  グローバリゼーションが終わったからインフレが起きた
  先進国ではインフレにならないことが問題だった
 ・デマンドプル・インフレ ー 需要過剰で物価が上昇
 ・コストプッシュ・インフレ ー 供給減少で物価が上昇

  コストプッシュで持続的な物価上昇が起こる経緯
  一時的な物価上昇も「インフレ」か
 ・原因も結果も対策も大きく異なる二つのインフレ
  ノーベル経済学者十七人が長期のインフレ対策として積極財政を支持
 ・資本主義経済の正常な状態はマイルドなデマンドプル・インフレ
  コストプッシュ・インフレの言い換え
第3章 よみがえったスタグフレーション
  第二次世界大戦後に起きた六回のインフレ
  過去六回と比較し、今回のインフレをどう見るか
  2022年2月以降はコストプッシュ・インフレ
  FRBによる利上げは誤った政策
  IMFは利上げによる世界的景気後退懸念
 ・コストプッシュ・インフレ対策としては利上げは逆効果
 ・1970年代よりはるかに複雑で深刻な事態

  世界的な少子高齢化から生じるインフレ圧力
  気候変動、軍事需要、長期的投資の減速
 ・「金融化」がもたらした株主重視の企業統治
 ・企業が賃金上昇を抑制する仕組みの完成
  なぜ四十年前と同じ失敗が繰り返されるのか
  インフレ政策をめぐる資本家と労働者の階級闘争
  七〇年代のインフレが新自由主義の台頭をもたらした
 ・ケインズ主義の復活か新自由主義の隆盛か 
第4章 インフレの経済学
  主流派経済学の物価理論と貨幣理論
  貨幣供給量の制御から中央銀行による金利操作へ
  コストプッシュ・インフレを想定していない政策判断
  問題の根源は、貨幣に対する致命的な誤解
 ・注目すべき「貨幣循環理論」「現代貨幣理論」
 ・財政支出に税による財源確保は必要ない
  政府が財政赤字を計上しているのは正常な状態
 ・政府は無制限に自国通貨を発行でき、財政は破綻しない
 ・財政支出や金融緩和がインフレを起こすとは限らない
 ・ポスト・ケインズ派は「需要が供給を生む」と考える
 「矛盾しているのは理論ではなく、資本主義経済である」
  経済成長には財政支出の継続的な拡大が必要
  ハイパーインフレはなぜ起きるのか
 ・コストプッシュ・インフレは経済理論だけでは解決できない 
第5章 恒久戦時経済
  第五波インフレで、世界は政治的危機へ
  中世ヨーロッパ文明に終焉をもたらした第一波インフレ
  格差拡大、反乱、革命、戦争を引き起こした第二波・第三波
  冷戦の終結をもたらした第四波インフレ
  すでに危険な状態にあった世界を襲った第五波
  内戦が勃発する可能性が高まっているアメリカ
  債務危機のリスクが高まりナショナリズムが先鋭化するEU
  成長モデルの根本的な変更を余儀なくされている中国
  中国の行き詰まりから東アジア全体で地政学的危機勃発か
  日本は最優先で何に取り組むべきか
 ・安全保障を強化し、内需を拡大させる産業政策を
 ・国内秩序を維持するための「大きな政府」
 ・特定の財に限定した「戦略的価格統制」の有効性
 ・世界秩序の危機は長期化し、戦時経済体制も長期化
  「恒久戦時経済」構築以外に生き残る道はない 
おわりに 悲観的積極主義

参考:「2022年ベーシック・ペンション案」シリーズ

<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

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