恒久的戦時経済が示唆する平時経済のあり方とベーシック・ペンション:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー9
20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書)を参考にしての【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズ。
<第1回>:リベラリズム批判と米国追随日本のグローバリゼーション終焉リスク:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー1(2023/1/17)
<第2回>:TPP批判・安倍首相批判による食料・エネルギー安保失政を考える:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー2(2023/1/18)
<第3回>:デマンドプル・インフレ、コストプッシュ・インフレ、貨幣供給過剰インフレを知る:『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー3(2023/1/22)
<第4回>:ベーシック・ペンション、インフレ懸念への基本認識:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー4(2023/1/24)
<第5回>:主流派経済学におけるケインズ派と新自由主義派の異なるインフレ政策と課題:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー5(2023/1/26)
<第6回>:ベーシック・ペンション起因のインフレ対策は利上げのみか。新たな視点へ:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー6(2023/1/28)
<第7回>:主流派経済学派からポスト・ケインズ派のインフレ論へ転換を:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー7(2023/1/29)
<第8回>:ベーシック・ペンション財源論は現代貨幣理論MMTが参考に。インフレ論は?:【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー8(2023/1/31)
以上のように、第1章から第4章まで本書の内容を参考にして考察を進め、いよいよ最終章「第5章 恒久的戦時経済」に今回から入ります。
5.「第5章 恒久戦時経済」から考える21世紀の総合的・体系的・恒久的安保とベーシック・ペンションモデル
「第5章 恒久戦時経済」構成
第5章 恒久戦時経済
第五波インフレで、世界は政治的危機へ
中世ヨーロッパ文明に終焉をもたらした第一波インフレ
格差拡大、反乱、革命、戦争を引き起こした第二波・第三波
冷戦の終結をもたらした第四波インフレ
すでに危険な状態にあった世界を襲った第五波
内戦が勃発する可能性が高まっているアメリカ
債務危機のリスクが高まりナショナリズムが先鋭化するEU
成長モデルの根本的な変更を余儀なくされている中国
中国の行き詰まりから東アジア全体で地政学的危機勃発か
日本は最優先で何に取り組むべきか
・安全保障を強化し、内需を拡大させる産業政策を
・国内秩序を維持するための「大きな政府」
・特定の財に限定した「戦略的価格統制」の有効性
・世界秩序の危機は長期化し、戦時経済体制も長期化
「恒久戦時経済」構築以外に生き残る道はない
おわりに 悲観的積極主義
5-1 恒久経済システム確立のためのポスト・ケインズ派理論に基づく新しい資本主義及び財政政策改革
本章冒頭で中野氏は、歴史家ディヴィット・ハケット・フィッシャーの書『大波動ー物価革命と歴史のリズム』(1996年発表)を用いて12世紀から20世紀末までの800年間に、物価革命ともいうべきインフレの波が4回あったとし、それぞれの要因・状況・背景などを整理しています。
その項目が、上記構成にある、
・中世ヨーロッパ文明に終焉をもたらした第一波インフレ(1180年~1350年)
・格差拡大、反乱、革命、戦争を引き起こした第二波(1470年~1660年)・第三波(1729年~1820年)
・冷戦の終結をもたらした第四波インフレ(1869年~)
に当たりますが、ベーシック・ペンション論との直接的な繋がりはないのでその内容は省略します。
そして、現在が、第5波のインフレ段階にあるとしているわけです。
2020年代第5波インフレがもたらす世界の政治的危機、ナショナリズム、地政学的リスク
すなわち、同様上記構成を用いると
・第五波インフレで、世界は政治的危機へ
・すでに危険な状態にあった世界を襲った第五波
と転換点に至った現状を表現した上で、グローバル社会の終焉と重ね合わあせて、以下の危機的な状況を俯瞰しています。
・内戦が勃発する可能性が高まっているアメリカ
・債務危機のリスクが高まりナショナリズムが先鋭化するEU
・成長モデルの根本的な変更を余儀なくされている中国
・中国の行き詰まりから東アジア全体で地政学的危機勃発か
これらのそれぞれの項目の中に、注視すべき重要な表現がいくつか示されています。
しかし上記項目を読めば概ねイメージできる事象・状況なので省略し、本章そして本書の主張の総括にあたる内容に入っていくことにします。
恒久的戦時状況にあるとみなすべき時代の日本の最優先課題とは
2008年以降のグローバリゼーションの終焉を迎え、第5波インフレを迎え、多様・複雑で困難な地政学的リスクが内在かつ顕在化する状況にあって、日本は最優先で何に取り組むべきか。
こうした状況を、中野氏は「恒久的戦時下」にあると認識すべきとしているわけです。
私なりに少し柔らかくいえば、想定外とされていたことが、いついかなる時に起きるか、いつ起きても不思議ではない世界にある中で、日本はどうすればよいか、何に、どう備えていけばよいか考える必要がある、ということでしょう。
絶対不可欠の安全保障強化戦略
まず最優先で取り組むべきは、安全保障の抜本的な強化。
ここでは言うまでもなく<防衛力>を指します。
その論拠として「グローバリゼーションによる平和の幻想が破れ、安全保障をアメリカの覇権に依存できなくなった」ことをあげます。
本稿では軍事的防衛力云々を論じることは目的外なので省きますが、ここで中野氏がそこに付け加えるべきとするのは、これも当然ながら<資源とエネルギーと食料の安全保障>。
この課題については、既に親サイトである https://2050society.com の主要なテーマのひとつなので、そちらで確認頂けます。
同サイトでも展開していますが、安全保障は対象が多岐にわたっており、特に本章では、恒久的戦時「経済」としていることで想像できるように、経済視点では課題は深く、広くなっていきます。
内需拡大のための産業政策
それを示すのが、「内需拡大の産業政策」の必要性の主張です。
半導体、人工知能、量子コンピュータ等の先端技術、医薬品・医療機器その他の生活必需品とその対象は、いうならば産業全体、経済全般に及ぶのもイメージできるでしょう。
それらのサプライチェーンを、安全保障の観点から再構成する。
そのためには、大規模で長期的かつ計画的な投資を必要とし、それが可能なのは政府だけであると。
そして、単純に公共投資を増やせば済むはずがなく、重要産業や重要技術への重点投資や保護・育成等総合的な産業政策に取り組むべきことも自明である。
但し、重要なのは、政府に大きな財政支出の裁量を与えると、政府・政治家・民間企業等との癒着・不正・利益誘導などの弊害・リスクが生まれ、これらを監視・管理する仕組みが必要であり、ゆえに一層政府の高い能力が求められる、と付け加えています。
いつの時代にも、どんな政治体制においても想定すべきリスク。
お金と利益が絡む政策・予算業務にからむ、首相・内閣・政権与党をはじめ、関係する組織・機関・個人の責任が問われるのですが、残念ながらその抑止力を絶対化できる方策を人間は未だ持ち得ていません。
本題から外れました。中野氏はこう続けます。
この場合の産業政策は、従来のような国際競争力の強化目的ではなく、グローバリゼーションが終焉した世界における産業政策は、あくまでも、安全保障という戦略目的を達成するために行う。
またその戦略目的の他に、地球温暖化対策、防災対策、地域間格差の是正等の目的を含む「ミッション志向」も含むと。
内需拡大と産業政策。
ここでは、それが、ベーシック・ペンション導入において自ずと結びつき、共通の目的・目標となり、結果的にそうなるということを申し上げておきたいと思います。
「大きな政府」の必要性
こうした産業政策の必要性を示した後、
・グローバリゼーションが終わった世界では、国内投資が旺盛で、国民の購買力が高い内需主導型の国が優位に立つ
・政府が、公共投資や減税等の財政政策により、可能な限りの内需拡大に向かうことで「大きな政府」が不可欠になる
と明示します。
また、これまでのインフレ論と結びつけ
・コストプッシュ・インフレが、経済活動に悪影響を及ぼすことに加え、所得が低い社会的弱者により大きな打撃を与え、格差拡大、社会の不安定化を招来
・それが、外敵の攻撃以前に、国内の不安定化・崩壊リスクに繋がる
・従い、国内秩序維持のためにも、コストプッシュ・インフレ要因である供給制約の緩和とそのための企業経営や産業構造の合理化・効率化が必要
・しかし(以前に述べたように)すでに陥っている株主重視型企業統治の是正や長期的投資が求められ、現状の金融化と市場の流れを変革することも必要
と求める条件が次々に提起されます。
「大きな政府」形成・維持の条件
防衛力強化、エネルギー・食料の安全保障という論述の展開を見ると、中野氏は保守派バリバリと感じさせられるのですが、ポスト・ケインズ派志向の同氏。
提起・主張する考え方・政策の基本は、格差拡大への反対や大きな政府是認に見られるように、むしろバリバリ、リベラル的です。
先述した、即効性のある対策による社会的弱者救済、格差拡大防止などを進め、社会安定化を図るために、所得税の累進性を高めることや、コストプッシュ・インフレの打撃を受ける個人や企業・産業への財政的支援が必要と。
そして極めつけは、消費税も所得に占める消費支出の割合が高く、低所得者に不利な逆進性のある税制で、有害でもあり、廃止すべきという強い主張です。
こうしたもろもろに要請される財政政府支出は、GDPの半分を超えるような「大きな政府」が必要になることを示しているわけです。
そのための財源は、前章において示された、貨幣循環理論と現代貨幣理論に基づく政府と日銀の統合政府が行う、信用創造による資金拠出によるわけです。
このあたりの考察になればなるほど、中野氏の主張とベーシック・ペンションの基本的な考え方の間に親和性が増してくることを感じるのです。
特定財限定の「戦略的価格統制」の必要性
最終章の最終コーナーに差し掛かるにあたり、ここで中野氏は、主流派経済学派とポスト・ケインズ派との考え方の違いを引き合いに出します。
まず通貨安リスク対策の選択肢としての<資本移動規制>に反対する主流派経済学に対して、ポスト・ケインズ派として中野氏は、自由な資本移動は金融市場を不安定化させはするが、経済成長に貢献するとは言えない、と。
次に、資本移動の規制にとどまらず、<価格統制>、但し、<インフレの原因となっている特定の財に限定しての価格統制>の導入提唱にポスト・ケインズ派は支持し、主流派はこぞって反発・反対した、と。
私もべーシック・ペンションにおいて、それが決して恒久的戦時体制における制度では決してないのですが、そして「戦略的」と表現するレベルでもないのですが、ベーシック・ペンション導入で懸念されるインフレ対策として、この特定品やサービスについては、「政策的」価格統制が採用されてもよいと考えています。
この件については、次回・次々回で再度述べたいと思います。
世界秩序危機の長期化が必要とする戦時経済体制の長期化、そのための「恒久戦時経済」構築
コロナパンデミックの長期化と第5類適用への変化、NATO対ロシア戦争の様相を強めてきたロシアによるウクライナ侵攻及び戦争そしてその長期化、伴っての民主主義国家グループと反民主主義・反欧米主義及び覇権国家グループ等との一層の分極・分断・多極化。
こうした地政学的リスクを一層感じさせる、中国や北朝鮮の半ば挑発、半ば野心むき出しの軍事的発言と行動。
そしてそれらの多様かつ複雑な要因を前提としてのエネルギー・食料・希少物等の供給不足・制約に伴うコストプッシュ・インフレの継続。
こうした観点から、展開した、大規模な積極財政による資源動員、産業政策による資源配分、資本規制、価格統制。
これが、まるで戦時経済体制ではないか。
こう本書の最後に中野氏は例えて示し、実際そうあるべきとします。
端的に言えば、現在は、ある種の戦争中なのだ!であれば、それは当然必要であり、しかもこの世界秩序の危機は長期化し、その戦時経済体制も長期化する。
よって、結論する。
恒久戦時経済、これこそが21世紀の日本経済のあるべき姿である。
この後も最後のホームストレッチに向かって、中野氏は、戦時体制状況とその体制の必要性の主張・強調に邁進しています。
その熱い思いは、「インフレの第5波により、世界の政治経済秩序が著しく不安定化し、エネルギー、食料、水、重要技術さらに労働力までもが希少化している」とし、それゆえの「恒久戦時経済」であると述べていることで、シンプルに受け止め、共感するものです。
もう一つ、余計なことですが、最後に及んでなお、こうした皮肉を故人に浴びせていることに、不遜ですが、同意を示したくもなるのです。
本書の分析と結論が悲観的過ぎると思うのであれば、今から10年程前の総理大臣がどれほど楽観的で、どれほど的外れな見通しを披露していたのかを再度確認するとよい。
こういって、その折のTPP礼賛パフォーマンスを揶揄し、その後わずか10年後の現在、今の危機的状況を比べるのです。
最後は、ようやく安全保障上の危機的状況に慌てて対策として防衛費大幅増を掲げはじめた政権が、あいも変わらずその財源をどうするかとあたふたとしている状況にも、ポスト・ケインズ派とその理論をバックに、皮肉たっぷりに批判して本書を終えています。
これでは正直、力が抜けてしまうまとめになってしまいました。
中野氏が掲げる「悲観的積極主義」
本文の最後が、私にとっては残念な締めくくりでだった、と終わってしまうのは中野氏に失礼なので、「おわりに」に記された以下の文章をお伝えしておきたいと思います。
これから我々に必要なのは、非現実的な将来ビジョンを夢想して、そこに逃げ込むことではない。
厳しい現実を直視し、その上で、危機に立ち向かうべく、断固として行動することである。
未来を悲観しつつも果敢に行動する「悲観的積極主義」こそが、危機の時代の指針となる政治哲学なのだ。
最後に用いたのが「政治哲学」でした。
そう。
本書は、経済を論じた政治哲学書であったのです。
本シリーズの中で既に述べたように、本書は、ベーシックインカムについて論じたものではまったくありません。
一度もベーシックインカムという用語は出てきませんし、財政政策としても、貧困格差解消対策としても引き合いに出されることはありませんでした。
本書へのアプローチは、いつに、インフレ懸念論に対して、そこで展開されるインフレ特性と抑制政策等になにかしらのヒントを見出すことができればと考えてのことでした。
ベーシック・ペンションは、恒久戦時経済と結びつくのか
加えて、ベーシック・ペンションは、グローバル社会とその地政学的リスクに備えるための制度として導入実現することを提案しているわけでも、当然ありません。
しかし、「恒久的戦時」という表現を「恒久的生活安全安心安定状況」を想定し、「戦時」を「いついかなる時に生活困難になるかもしれないリスクがある状況時」と無理を承知で置き換えてみましょう。
自然災害や交通事故、労務災害によるケガ・死亡、失業、心身の不調による就労不能、そして万が一の侵略・戦争・・・。
心配し出せばキリがないくらい、不安や不確実性やリスクは、日常に存在します。
だから、戦時の替わりに、さまざまなリスクや不安や不確実性を想定して、生活や社会、経済の望ましいあり方を考え、議論・検討し、準備・構築していく。
そこでは共通して考えるべき課題、取り組むべき課題があることは明らかでしょう。
そして、その取り組みと本書が提起・主張する「恒久的戦時」経済主義とが、どこかで結びついている、結びつくことがあるかもしれない。
それを敷衍、俯瞰して考えれば、「平時経済」のあり方、「平時政治」のあり方を想定し、考察することと繋がる。
本章は、そうした観点から、あるいはベーシック・ペンションが当初から持っていた方針・考え方を確認する上で、示唆に富んだ内容を含むものだったと考えます。
なお、最後の最後に、今回のテーマに手を加えて、「5-1 恒久経済システム確立のための新しい資本主義及び金融システム改革構想」とあったのを「5-1 恒久経済システム確立のためのポスト・ケインズ派理論に基づく新しい資本主義及び財政政策改革」と「ポスト・ケインズ派理論に基づく」という表現を加え、「金融システム改革構想」を「財政改革改革」としました。
ですが、中野氏が「新しい資本主義」論を提起することを企図したわけではないことは明らかです。
しかし、先の記事で「新しい資本主義」と勝手に言い換えて、その本質が持つ要素と想像してのことであり、これについてはまた機会があれば踏み込んで述べることにしたいと思います。
今回を受けて、残り2回となった当シリーズ。
次回そして最終回、
・「5-2 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的基礎生活及び社会保障安保」
・「5-3 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的社会経済システム安保」
というテーマで、2023年のベーシック・ペンション論の整理に着手するための総括そして序章と位置づけて取り組みます。
【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズ展開計画(案)
1.「第1章 グローバリゼーションの終焉」から考える21世紀上期の安保政策課題
1-1 地政学・政治体制リスクと国家安保をめぐるコンセンサス形成ニーズ
1-2 グローバリゼーション終焉の現実としての食料・エネルギー安保政策
2.「第2章 二つのインフレーション」から考えるベーシック・ペンションとインフレリスク
2-1 デマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレ、それぞれの特徴
2-2 ベーシック・ペンションにおけるインフレ懸念の性質とリスク回避の可能性
3.「第3章 よみがえったスタグフレーション」から考える21世紀上期の経済安保とベーシック・ペンション
3-1 過去のインフレ、スタグフレーションの要因・実態と金融政策経済安保
3-2 インフレ対策としての利上げ政策の誤りとベーシック・ペンションにおける想定対策
4.「第4章 インフレの経済学」から考える21世紀上期の経済安保とベーシック・ペンション
4-1 財政政策がもたらす需要・供給と経済成長循環と国家財政の基本
4-2「貨幣循環理論」「現代貨幣理論」から考えるベーシック・ペンションの財源論
5.「第5章 恒久戦時経済」から考える21世紀の総合的・体系的・恒久的安保とベーシック・ペンションモデル
5-1 恒久経済システム確立のためのポスト・ケインズ派理論に基づく新しい資本主義及び財政政策改革
5-2 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的基礎生活及び社会保障安保
5-3 ベーシック・ペンションがめざす、総合的・体系的・恒久的社会経済システム安保
『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』目次
はじめに 物価高騰が示す世界の歴史的変化
第1章 グローバリゼーションの終焉
ロシアのウクライナ侵攻で迎えた終焉
終わりの始まりは2008年の金融危機
最初から破綻していた、リベラリズムという論理
「中国の平和的な台頭」などあり得なかった
東アジアの地政学的均衡を崩した、アメリカの失敗
ウクライナ侵攻もリベラル覇権戦略破綻の結果
・金融危機、格差拡大、排外主義の高まり
・物価高騰は一時的な現象では終わらない
防衛費を抑制し続けた2010年代の日本
世界情勢の変化を把握せず、安全保障を軽視
・TPPは日本の食料安全保障を脅かす
・エネルギー安全保障も弱体化させた安倍政権
・電力システム改革が電力不安を不安定化した
中国の地域覇権の下で生きていくのが嫌ならば・・・
第2章 二つのインフレーション
グローバリゼーションが終わったからインフレが起きた
先進国ではインフレにならないことが問題だった
・デマンドプル・インフレ ー 需要過剰で物価が上昇
・コストプッシュ・インフレ ー 供給減少で物価が上昇
コストプッシュで持続的な物価上昇が起こる経緯
一時的な物価上昇も「インフレ」か
・原因も結果も対策も大きく異なる二つのインフレ
ノーベル経済学者十七人が長期のインフレ対策として積極財政を支持
・資本主義経済の正常な状態はマイルドなデマンドプル・インフレ
コストプッシュ・インフレの言い換え
第3章 よみがえったスタグフレーション
第二次世界大戦後に起きた六回のインフレ
過去六回と比較し、今回のインフレをどう見るか
2022年2月以降はコストプッシュ・インフレ
FRBによる利上げは誤った政策
IMFは利上げによる世界的景気後退懸念
・コストプッシュ・インフレ対策としては利上げは逆効果
・1970年代よりはるかに複雑で深刻な事態
世界的な少子高齢化から生じるインフレ圧力
気候変動、軍事需要、長期的投資の減速
・「金融化」がもたらした株主重視の企業統治
・企業が賃金上昇を抑制する仕組みの完成
なぜ四十年前と同じ失敗が繰り返されるのか
インフレ政策をめぐる資本家と労働者の階級闘争
七〇年代のインフレが新自由主義の台頭をもたらした
・ケインズ主義の復活か新自由主義の隆盛か
第4章 インフレの経済学
主流派経済学の物価理論と貨幣理論
貨幣供給量の制御から中央銀行による金利操作へ
コストプッシュ・インフレを想定していない政策判断
問題の根源は、貨幣に対する致命的な誤解
・注目すべき「貨幣循環理論」と「現代貨幣理論」
・財政支出に税による財源確保は必要ない
政府が財政赤字を計上しているのは正常な状態
・政府は無制限に自国通貨を発行でき、財政は破綻しない
・財政支出や金融緩和がインフレを起こすとは限らない
・ポスト・ケインズ派は「需要が供給を生む」と考える
「矛盾しているのは理論ではなく、資本主義経済である」
経済成長には財政支出の継続的な拡大が必要
ハイパーインフレはなぜ起きるのか
・コストプッシュ・インフレは経済理論だけでは解決できない
第5章 恒久戦時経済
第五波インフレで、世界は政治的危機へ
中世ヨーロッパ文明に終焉をもたらした第一波インフレ
格差拡大、反乱、革命、戦争を引き起こした第二波・第三波
冷戦の終結をもたらした第四波インフレ
すでに危険な状態にあった世界を襲った第五波
内戦が勃発する可能性が高まっているアメリカ
債務危機のリスクが高まりナショナリズムが先鋭化するEU
成長モデルの根本的な変更を余儀なくされている中国
中国の行き詰まりから東アジア全体で地政学的危機勃発か
日本は最優先で何に取り組むべきか
・安全保障を強化し、内需を拡大させる産業政策を
・国内秩序を維持するための「大きな政府」
・特定の財に限定した「戦略的価格統制」の有効性
・世界秩序の危機は長期化し、戦時経済体制も長期化
「恒久戦時経済」構築以外に生き残る道はない
おわりに 悲観的積極主義
参考:「2022年ベーシック・ペンション案」シリーズ
<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)
20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
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