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2022・23年考察

生活保護解体論者によるベーシック・インカム論:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-10

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』より-10

 岩田正美氏著『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』(2021/11/5刊:岩波書店)を参考に、当サイト提案のベーシック・ペンションを再確認し、より深堀りすることを目的としたシリーズを進めてきました。

<『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション>シリーズ

第1回:本シリーズ方針
第2回:<序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち>より
第3回:<第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界>より
第4回:<第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」>より
第5回:<第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する>より
第6回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-1:医療制度・介護制度、住宅手当課題
第7回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-2:教育制度・子ども制度、高齢者・障害者制度課題
第8回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-3:失業及び就労関連課題、最低生活保障課題
第9回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-1 :最低限生活課題
第10回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-2:ベーシック・インカム

第11回:『生活保護制度解体論』総括評価


 この計画に従って、
第1回:岩田正美氏著『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-1:本シリーズ方針(2022/1/8)
第2回:生活保護の誤解、誤ったイメージを解消する解体論か:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-2 (2022/1/12)
第3回: 不思議で矛盾に満ちた生活保護を考えた結果としての解体:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-3 (2022/1/14)
第4回:社会保険と生活保護の関係性からの解体視点:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-4 (2022/1/16)
第5回:生活保護解体に先立つ社会保険・社会扶助と選別・普遍主義原理問題とは:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-5 (2022/1/18)
第6回: 医療扶助・介護扶助、住宅扶助解体による国民健康保険・介護保険改革、住宅手当創設:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-6(2022/1/20)
第7回: 子どもの教育扶助・生活扶助、高齢者・障害のある人の生活扶助の解体・再編方法と残る課題:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-7(2022/1/22)
第8回:失業による生活保護・生業扶助の編み直しは求職者支援制度改定による生活給付で:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-8 (2022/1/24)
第9回: 生活保護基準から、新たな生活扶助基準作りへの改革法:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-9 (2022/1/26)
と進み、今回は第10回。

 最終章<終章  生活の「最低限」をどう決める>の2回目であり、本書の最後・まとめにも当たる <4.バーシックインカムのほうが早い?>を取り上げ、岩田氏によるベーシックインカムに関する意見と解体論のまとめを確認します。。

終章 生活の「最低限」をどう決める>-4

4. ベーシック・インカムのほうが早いから

4.ベーシック・インカムのほうが早い?
・パンデミック以後のリアリティ
・所得保障は完璧な手法ではない ー方法がすべてを解決するわけではない
・公共財としての所得保障
・「共同財源」と「私の家計」をリンクさせていくことが重要
・時代は変化している


以上の構成の節ですが、私の受け止め方を元にして、その内容を整理・確認することにします。

解体論者のベーシック・インカム理解と誤解

「すべての個人に無条件で保障される基本所得」ベーシック・インカム。
新型コロナ対策で配られた10万円給付金のようなもの、と考えると理解しやすいかもしれない。

 こういう書き出しで始まる岩田氏自身による生活保護解体論と比較してのベーシック・インカム(以下BIとすることがあります)論。
 しかし、そもそも、1回ポッキリの、コロナ禍における、特定目的の給付でBIをイメージすることはまったく適切ではありません。
 誤った見方・考え方・印象を与えてしまい、実際既に多くの人々が誤解しています。

 そしてこうつなぎます。

このような構想は多様な形で展開されており、イデオロギーを問わず、またその財源についての考え方も一様ではない。

 そうです。
 でもあるから、BIの理解が望ましい形で進められ、広がっていかないという事情があります。
 そしてこうとも言っています。

本書のようなややこしい生活保護解体などを考えずに、一挙にBIを導入すれば、おそらく個々人の働き方や社会のありかたに、革新的な変化がもたらされることは必至だろう。
私も、生活扶助部分の解体には、BIがあれば、ここにあてはまると思った。

 そしてその理由も含めて、こう言います。

社会扶助では資産調査もある程度含まざるをえず、労働能力の活用や、扶養照会の問題点が指摘されるが、そうした負の側面を一挙に解決し、「選別」を行わない点で、BIはもちろん今後の重要な検討課題になる。


 そこでBIについて学ぶ上で参考になる論述として、小沢修司氏の『 福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平 』、山森亨氏の『 ベーシック・インカム入門 』を取り上げています。
 が、そう簡単にBIがすべてを一挙に解決するわけではなく、岩田氏解体論の作業のように、いや、より多くの面倒な制度改廃検討作業などが必要になるはずです。
 小沢氏や山森氏の論は、意外にも考察が狭く浅く、それらをもってしてベーシック・インカムと理解されるのも、ある意味偏っていますし、誤解や無理解を生むことになることさえあると思うからです。
 というか、やはりそこでもすでに誤解を生んでいるのです。

岩田氏のベーシック・インカム疑問・懸念論の基本:所得保障は完璧な手段ではない

「所得保障は完璧な手段ではない」
 それでは、このタイトルから始まる岩田氏の反対論をみてみましょう。
 そのタイトルにサブ的に「方法がすべてを解決するわけではない」とあるのも気になります。

 まず自身の解体論展開に戻り、ニーズからの生活保護構造の捉え直す方向で行った取り組みと比較して論じます。

ニーズだけでなく、ニーズを充足する手段も含めて考えると、(BIという)「所得保障」手段は、無条件であれ選別であれ、ニーズ充足の完璧な手段ではなく、医療・介護・教育・保育などのニーズはどう(なるだろう)か。
住宅も特殊な財であり、葬祭扶助・出産扶助なども考えると、所得保障だけではなく、市場とは一線を画した社会サービスをどのくらい、どのように前提とするかが問題になる。


 そして、前述の小沢論とその中の小沢試算を用いての意見が付されます。

1)生活扶助水準レベルの金額を想定・設定
2)機能別社会保障給付費統計から、労働災害・医療・住宅を除いた現金給付部分を合計すると1)の40%をカバー
3)不足する60%の財源として、税制改革により所得税率50%とすれば1)の確保が可能
という小沢論。
 これにおいても、現金給付以外の社会保障部分は現状維持としていることから、介護保険、障害者の介助人確保、本丸の健康保険などによる現物財・サービス給付の費用をどこまで見込むか、そして保険料負担も必須。
 多くのベーシック・インカム論では、ここに踏み込んでいない、というか、無視しているのか忘れているのか、無責任な、提案とは呼べないレベルにとどまっている例が多いのです。

 少し専門的な表現の部分を引用すると、こうなります。

もし医療や教育をすべて市場化してしまえば、基本所得を高くせざるを得ず、それらを「脱商品化」した財として提供することへの合意が必要になる。
このように、消費財やサービスの市場/非市場の配分と基本所得との関係をどう整理するか問われる。

 残念ながら、ベーシック・インカムに関しての記述は、この程度でおしまいでした。
 それも已むを得ないことではあります。
 小沢氏や山森氏のベーシックインカム論を対象としている限りは、その程度で話は済みます.
 岩田氏自身の解体論においても、ほとんど財源問題には触れていませんし、8つの扶助は、形を変えて機能することを想定しており、一応ムリがないところでの解体再編提案ですから。
 小沢論における所得税の50%改定など、論外のことになるでしょうから。

 ところで、小沢修司氏著の『 福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』 (2002/10/30刊・高菅出版) の内容についての私の受け止め方・評価などについては、既にシリーズ化して記事にまとめています。
 こちらで確認頂ければと思います。
⇒ 小沢修司氏著『福祉社会と社会保障改革 ベーシック・インカム構想の新地平』(2002年刊)を読む (2021/10/14)

 また同様、山森亮氏著の『ベーシック・インカム入門』(2009/2/20刊・光文社新書)についても、こちらで見て頂けます。
⇒  ベーシック・インカムとは-1:歴史から学ぶベーシック・インカム(2020/6/2)
  山森亮氏のベーシックインカム財源論(2021/4/3)

 

ベーシック・インカムに代わるべき「共同財源」と「私の家計」とのリンクによる社会保障を提起

 そして財源問題には、岩田氏の切り札?となる考え方が一応提起されます。
 それが「共同財源」論です。
 こんな言い回しが目に止まります。

保険と扶助は、それぞれの手法のために存在しているのではなく、共に「共同財源」による充足の手段でしかない、というところから本書は出発し直してている。
本書のような現実主義的なみみっちい改革(それでも全部は実現しそうもないが)の繰り返しの中に、ベーシック・インカム的なものを導入しつつ、変革していくしかないとみている。
例えば、児童扶養などはすぐにでも取り組めそうなニーズ。
この解体提案も、その一里となるかもしれない。


 ここで、その共同財源となる所得税の捕捉の方法について問題提起と提案が行われています。
 「所得情報のリアルタイム把握」により、種々の給付を行なうことを可能にすることについてです。
 その主旨・目的とシステム構築の必要性には、ベーシック・ペンション導入に伴い、併せて、すべての所得の把握と所得税納付義務付けを提案しており、そのためにも同意します。
 但し、ここでの提案などについては省略します。

 省略した所得税捕捉説ですが、その納付が共同財源化原資になるわけですから、筆者が用いる観念とは違うかもしれませんが、ある意味、「共同財源」と「私の家計」が繋がっている状態で、社会保障や社会扶助、社会手当などが議論される習慣を育むべき、という主張には、それなりに共感を覚えます。
 

本書・本論の問題意識

 現行生活保護法が成立してからすでに70年以上、皆保険・皆年金体制確立からも60年が経過。
 この間、生活保護は、社会扶助の性格を強くもった低所得者対策が、後者内部に中途半端に取り込まれるなど二重の社会扶助の仕掛けの中に組み込まれ、機能不全に近づいていった。
 また、1990年代初めのバブル崩壊以降、社会保障制度として先に取り込まれていた「日本株式会社」仕様とその産業構造、人口構造、家族世帯構造の変化、非正規雇用の蔓延や下請構造の拡大等による若年層の長期失業化・雇用機会の喪失、貧困・格差拡大など新たな社会問題が発生・継続。
 こうした危機に対し、高齢化・少子高齢社会への対応以外に抜本的改革に取り組んでこなかった。
 リーマンショックへの対応も、第二のセーフティネットという、それらしいが小手先の対応に終始。
 生活保護以外の短期給付や貸付、ワークフェア主義へのしつこいばかりの誘導とサポート(らしきもの)。
 それもこれも生活保護を「最後のセーフティネット」という位置に抑え込んできたため。
 それさえも「不正受給」などを口実に攻撃され、基準は下げられつつある。

 こう問題の本質、問題意識を列記しています。
 しかし、少し文句を言わせてもらえるなら、高齢化・少子高齢社会への対応など、決して評価できるものではないことも強調しておくべきでしょう。
 また、上記の社会状況に合った生活保護をという意味でしょうが、「時代は変化している」と捉え、それに応じた制度改正の必要性を語ります。
 しかし、根本的な問題は、社会保障や社会福祉の理念・方針について、突き詰めて考え、望ましい在り方を長期的視点と合意形成に基づき、短期・中長期的な実現計画・実行計画にまで落とし込むことを怠っていたことにあるのです。
 すなわち出発点に立ち戻って、本質的には実際には変わらずに存在・顕在する貧困・困窮・格差問題に向かい合っていなかったことを認識すべきで、時代の変化は、そうした本質・根源を写照したものだからです。
 それが行われてこなかったゆえに、常に小手先の対応で済ませてきたのです。
 どうも岩田氏の着眼は、そこかしこで、ずれている気がした本書でした。

 ただ、以下も岩田氏の根源的な意識ですので、引用しておきたいと思います。

本書の主題は、格差を是正しつつ、そこから落ちないほうがよい生活の「限界」を明確につくること。
所得情報の明確化は、格差是正ばかりでなく、その最低限および最低限より少し上の低所得基準を明らかにしていくように用いられなければならない。

生活扶助の配分や条件を決めるべき「私たち」とは一体誰か、どのように決めるのかを問う

 いよいよ本書のクライマックスです。

貧困解決において中心的な手段は所得保障である。
日々の暮らしのお金が足りないのに、サポートや自立支援ばかり強調するのはいい加減にすべきだ
社会扶助は、貧困解決のために、もっと使えるように、社会保険や社会手当と組み合わせて、柔軟に配置したほうがよい。
そうしてはじめて社会保障が成り立つ。
生活保護を「公助」の代表のように扱うことがおかしい。
私たちの「共同財源」から配分されるものであり、その配分や条件は、私たちが決めるべきである。

 この「私たち」が曲者です。
 私たちには、岩田氏が入るのは至極もっともなことですが、そこの「私」も入れらるのか。
 どこまでの「私」が、入るのか、入れられるのか。
 その「私たち」は、どうやって解体再編された社会手当としての「生活扶助」の基準や金額や対象範囲を決めるというのか。
 この「私たち」責任論は、結局、だれにも責任はなく、だれもこの問題に取り組まない状態に放置することになるでしょう。
 そこかしこで、議論はなされるでしょうが。

 名誉教授の役割はここまでということになるのでしょうか。
 提案したひとりの「私」である岩田氏は、それ以外の「私たち」すべてにその役割・責任を委ねて。
 ここまでの真摯な考察・提案に対しては、大きな敬意を払うものですが、その内容とその最後には、少しばかりの落胆を感じざるをえません。

 なお、蛇足ですが、上述分の中の
日々の暮らしのお金が足りないのに、サポートや自立支援ばかり強調するのはいい加減にすべきだ。」という言葉は、左派的立場の論者の社会保障・社会福祉制度、ベーシックインカムではなくベーシックサービス、あるいはベーシックアセット提案者にそっくりそのまま伝えたいところです。
 井手英策氏提唱のベーシックサービス論については、こちらで
⇒  『ベーシックインカムを問いなおす その現実と可能性』(2019年刊)より:<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-4 (2021/10/22)
 宮本太郎氏に拠るベーシックアセット論については、こちらで、それぞれ確認頂ければと思います。
⇒  『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021年刊)より:<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-5 (2021/10/23)

次回、ベーシック・ペンション提案者による岩田氏解体論総括と比較論へ


 解体が適切と考えた現行制度は、生活保護法に基づき運用管理されています。
 その法律の改廃は、立法府によって可能であり、国会議員数が多数を占める政党が、その活動を主導するわけです。
 だれを指すのか分からない「私たち」が、念力を用いて行なうわけではありません。
 そのために「私たち」は先にやらなければいけないことがあります。
 解体論考は、立法府に直接の活動の場を持つ政党や政治家に伝わり、理解・賛同を得て検討されることになるか、自ら政治イシューにすべく何らかの活動を行なうなどに展開される必要があります。
 「私」も含めて、種々の論者は、そこを認識した上で、何かしらのアピールや行動を実践・実行すべきことを肝に銘じる必要があるのです。

 以上で直接本書の内容を用いてのシリーズは終わりました。
 本書全体を通しての総括は本稿では行わず、次回、8つの扶助の解体・再編提案の整理を踏まえ、ベーシック・ペンションとの総合的な比較と組み合わせて、行なうことにします。

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』 全体構成

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
1.パンデミックと「最後のセーフティネット」
・都内バス停にて ーホームレス女性殺人事件
・パンデミック下の生活保護利用と特別定額給付金
・「現金一律給付」と生活保護制度
2.誤解とマイナスイメージ
・社会扶助としての生活保護
・生活保護が増えると国の底が抜ける?
・高齢・単身利用者の急増
3.「必要な人」にどのくらい利用されているか
・生活保護が「必要な人」とは?
・ 生活保護は捕捉率が大事
4.もう生活保護は解体して出直したほうがいい
・近年の危機と第二のセーフティネット
・なぜ「最後のセーフティネット」であることにこだわるのか?
・生活保護の八つの扶助は、異なった生活ニーズに対応している
・「低所得者対策」と生活保護の関係を解きほぐす
5.これまでの改革案 ー 再構築の道筋
・生活保護改革案
・全国知事会・全国市長会の新たなセーフティネット案
・全国知事会・全国市長会提案と「わたしは、ダニエル・ブレイク」
・なぜ自治体は生活保護を押さえ込みたいのか
・提案にあたっての二つの原則
・カテゴリー別「制限扶助」の弊害
・ 本書の構成

第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界
1.生活保護とはどういうものか?
・生活保護の目的と責任
・「誰」が利用できるか ー無差別平等
・必要な生活費をどう計算しているか
・資産調査(ミーンズテスト)と他の要件
・「親族扶養」はマストなのか?
・日本的特徴 ー新しい考えと古い考え
2.古い「貧困理解」と、生活保護としての不徹底
・「生活困窮者」への「全一的」保障という設計
・貧困の原因を区別する
・社会保障と社会福祉のあいだで
3.運営の二重原則
・申請保護/職権保護
・世帯単位/個人単位(世帯分離)
・ 基準表/必要即応
・非現実的な「すべて現物給付」
4.具体例で考えてみると
・A子さんの保護申請と要否の判定
・医療・介護の計上の仕方と収入充当順位
・生活保護は「差額」の支給にすぎない
・貧困の大きなファクターとしての医療費
5.いくつかの謎 ー 生活扶助の「加算」と住宅扶助基準
・生活扶助と加算
・年金・手当に連動した加算の再配置
・「特殊需要」というロジックのあいまいさ
・障害者加算の複層構造と「その場限りの需要」
・さらに不思議な住宅扶助基準
・住宅の特別な位置
6.何が社会扶助の保障機能を弱めているか

第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」
1.社会保険と社会扶助
・ベヴァリッジ報告と社会保険中心主義
・奇跡か、冒険か
2.国民皆保険と「低所得者対策」
・生活保護利用者の国保「適用除外」
・国民健康保険の基本問題 ー三重の均質性の欠落
・低所得層への保険料の軽減・減免策と高齢者医療無料化
・国保加入世帯の半数以上が保険料軽減対象
・高額療養費「特例該当」と医療扶助単給
3.国民皆保険の保険料免除・軽減制度と福祉年金
・「基礎年金」は「最低生活費」を意味していない
・国民年金の低所得者対策 ー福祉年金としてのスタート
・二つの福祉年金
・国民年金の保険料免除・軽減策
・「皆保険・皆年金」内部の低所得者対策の意味
4.「皆保険・皆年金」以外の低所得者対策
・生活保護への移行を防止する「境界層措置」
・「ボーダーライン層」への貸付制度と第二のセーフティネット
5. 低所得基準と生活保護基準
・多様な「低所得者」の定義
・「基礎控除」と「非課税限度額」 ー何が違うのか?
・ 基礎控除、「非課税限度額」、生活保護基準はどのような関係にあるのか
・低所得基準は保護基準より上でなければおかしい

第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する
1.基礎的生活ニーズに着目して八つの扶助をグループ化する
・義務教育なのに生ずる教育費用
・社会生活の基盤としての住宅扶助と、情報インフラの重要性
・医療・介護はなぜ現物給付か
・「妊娠・分娩・産褥・新生児管理」と出産扶助
・出産期の女性を支える包括的な施策が必要
・「死後の保障」としての葬祭扶助
・増加する葬祭扶助
・自立助長のための生業扶助
・一歩手前での対応が可能な制度設計に
・日本の既存の制度体系の中に溶け込ませる
2.原理問題(1)保険と扶助の区別をどう考えるか
・社会保険と社会扶助の教科書的整理
・公助・共助・自助
・保険と扶助は共に「互恵的」なもの
・社会保険は「対価的」というより、はじめから「社会的賃金」
・保険料を税的に使う ー社会保険における支援金
・社会保険は「共助」で税による生活保障は「公助」なのか?
3.原理問題(2)普遍と選別の多様性と「選別的普遍主義」
・目標はあくまでも問題解決
・普遍主義の枠組みの中に選別政策を配置する
・「選別的普遍主義」というありかた
・国民皆保険・皆年金の低所得者対策と選別的普遍主義
4.時代の変化に対応した制度に ーその他の課題
・「多様な働き方」に中立的な社会保険の改革を
・対象は国民限定か ー国際的な相互関係のなかで

第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか
1.医療・介護サービスニーズの「標準」保障
・生活保護費のほぼ半分は医療扶助
・医療や介護サービスはなぜ「標準化」されるのか
・二つの編みなおし案
・医療扶助と国保合体への反対論
・「無料低額診療制度」「行旅病人死亡人法」
・医療扶助と介護扶助の編みなおし 二つのイメージ
2.住宅手当の新設
・住宅手当のない国・日本
・住宅手当こそ全世代型社会保障の代表だ
・施設や宿泊所の問題
・一時的なダイレクトシェルターは必要だが、「ホームレス施設」はいらない
・英国の住宅手当と施設
・「住居確保給付金」を拡張し、恒久化する
・ 公正家賃という考え方
・国交省か厚労省か、財源をどう考えるか
・住宅手当創設の提案のイメージ
3.教育扶助の解体と子ども養育費の保障
・就学援助支援制度を発展させる
・一元化にあたっての三つの課題
・高校・大学も視野に
・子どものいる世帯の生活費への配慮 ー児童手当と児童扶養手当
・「ひとり親」による子の養育への支援に
・ 遺族基礎年金を「ひとり親世帯等基礎年金」へ
・ ひとり親世帯等基礎年金の提案のイメージ
4.高齢期・障害のあるときの生活扶助はどうするか
■ 高齢期の場合
・個人単位+夫婦(ペア)単位で設計する
・高齢世帯の資産の考え方
・高齢期における生活扶助のイメージ
■ 障害のあるとき
・障害年金で「なんとかなる」のか?
・日本の障害年金認定の特徴は
・所得保障の確立が意味すること
・障害者加算分を「福祉手当」に
・保護の決定状況からみた不足額
・障害のあるときの最低生活保障のイメージ
5.失業時の生活保障と就労支援 ー求職者支援制度の全面改定
・失業=貧困とならないために
・失業給付の中心 ー「求職者給付」の基本手当
・保護行政の「ねじれた反応」
・二つのハロトレくんと生活保護
・求職者支援法の給付金を、「求職者支援給付へ」
・求職者支援制度における求職者支援給付の提案
6.多様な方法での最低生活保障を
・「生計維持給付」としての「一般扶助」の存続と一時扶助
・利用者自身がニードを組み立て、保障を請求できる制度に

終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
・残された問題
・妥当な「公的貧困線」として機能する制度 ー政府のMIS
・G-MISとしての生活保護
・生活扶助基準改定の「妥当性」とその変遷
・最低生活は相対的なもの
・格差縮小への合意の時代から「水準均衡」の確認へ
・「格差の時代」の扶助基準の引き下げ圧力
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
・新たなマーケット・バスケット方式による算定
・日本での取り組み
・別のアプローチ ー主観的生活費の研究
・低所得単身世帯の把握と家計実態アプローチの可能性
・複数の基準から生活保護基準を検証
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
・資力調査か、課税資料か
・個人単位を原則に
・世帯認定と扶養問題
・人間の生活にそくした家計の見方を
・家計における「運転資金」の意味
・破産法における自由財産の考え方を参考に
・資産は「プラス思考」で
・社会扶助の効果を高めるという発想
4.ベーシック・インカムのほうが早い?
・パンデミック以後のリアリティ
・所得保障は完璧な手法ではない ー方法がすべてを解決するわけではない
・公共財としての所得保障
・「共同財源」と「私の家計」をリンクさせていくことが重要
・時代は変化している

参考:ベーシック・ペンションの基礎知識としての5記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

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