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2022・23年考察

生活保護基準から、新たな生活扶助基準作りへの改革法:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-9

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』より-9

 岩田正美氏著『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』(2021/11/5刊:岩波書店)を参考に、当サイト提案のベーシック・ペンションを再確認し、より深堀りすることを目的としたシリーズを進めてきました。

<『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション>シリーズ展開修正計画

第1回:本シリーズ方針
第2回:<序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち>より
第3回:<第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界>より
第4回:<第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」>より
第5回:<第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する>より
第6回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-1:医療制度・介護制度、住宅手当課題
第7回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-2:教育制度・子ども制度、高齢者・障害者制度課題
第8回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-3:失業及び就労関連課題、最低生活保障課題
第9回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-1 :最低限生活課題

第10回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-2:ベーシック・インカム
第11回:『生活保護制度解体論』総括評価


 この計画に従って、
第1回:岩田正美氏著『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-1:本シリーズ方針(2022/1/8)
第2回:生活保護の誤解、誤ったイメージを解消する解体論か:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-2 (2022/1/12)
第3回: 不思議で矛盾に満ちた生活保護を考えた結果としての解体:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-3 (2022/1/14)
第4回:社会保険と生活保護の関係性からの解体視点:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-4 (2022/1/16)
第5回:生活保護解体に先立つ社会保険・社会扶助と選別・普遍主義原理問題とは:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-5 (2022/1/18)
第6回: 医療扶助・介護扶助、住宅扶助解体による国民健康保険・介護保険改革、住宅手当創設:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-6(2022/1/20)
第7回: 子どもの教育扶助・生活扶助、高齢者・障害のある人の生活扶助の解体・再編方法と残る課題:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-7(2022/1/22)
第8回:失業による生活保護・生業扶助の編み直しは求職者支援制度改定による生活給付で:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-8 (2022/1/24)
と進み、今回第9回です。

 今回から、最終章<終章  生活の「最低限」をどう決める>に入り、 <1.生活の「最低限」の意味と保障水準 >< 2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない > <3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?> を取り上げます。

終章 生活の「最低限」をどう決める>の構成


終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
・残された問題
・妥当な「公的貧困線」として機能する制度 ー政府のMIS
・G-MISとしての生活保護
・生活扶助基準改定の「妥当性」とその変遷
・最低生活は相対的なもの
・格差縮小への合意の時代から「水準均衡」の確認へ
・「格差の時代」の扶助基準の引き下げ圧力
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
・新たなマーケット・バスケット方式による算定
・日本での取り組み
・別のアプローチ ー主観的生活費の研究
・低所得単身世帯の把握と家計実態アプローチの可能性
・複数の基準から生活保護基準を検証
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
・資力調査か、課税資料か
・個人単位を原則に
・世帯認定と扶養問題
・人間の生活にそくした家計の見方を
・家計における「運転資金」の意味
・破産法における自由財産の考え方を参考に
・資産は「プラス思考」で
・社会扶助の効果を高めるという発想
4.ベーシック・インカムのほうが早い?
・パンデミック以後のリアリティ
・所得保障は完璧な手法ではない ー方法がすべてを解決するわけではない
・公共財としての所得保障
・「共同財源」と「私の家計」をリンクさせていくことが重要
・時代は変化している


終章 生活の「最低限」をどう決める >-1

【1.生活の「最低限」の意味と保障水準 】から

終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
・残された問題
・妥当な「公的貧困線」として機能する制度 ー政府のMIS
・G-MISとしての生活保護
・生活扶助基準改定の「妥当性」とその変遷
・最低生活は相対的なもの
・格差縮小への合意の時代から「水準均衡」の確認へ
・「格差の時代」の扶助基準の引き下げ圧力

 以上の構成の節ですが、実質的には、<生活扶助>の算定・算出基準についての検討考察、そして提案という作業を始めることになります。
 まず、第1項です。

 前章までの生活保護解体・編み直し検討と考察作業を進めてきた上で、筆者は、十分に議論してこなかった
1)保障水準
2)資産調査(ミーンズテスト)
の、2つの課題があるとします。
 そこで、最終章で、(前回の記事でのテーマとした中での<生活扶助>における)年金及び求職者支援法で結びつけた「支援給付」と「生計維持給付」の水準と、資産保有の考え方についてまとめるとしています。
 それは、本書がめざす最低生活保障の再構築における最も大きな課題への回答につながるというわけです。

一定の「歯止め」としての生活の最低限の考え方、捉え方

 最低限を考えるに当り、生活をどこまでも下げられるものではなく、自ずと「限界点」があり、その「限界点」の妥当な水準設定こそが、最低生活保障の基礎。
 それは、貧困世帯にとって意味があるだけでなく、一定の「歯止め」を持つ意味で、社会全体にとって重要とします。
 憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の権利規定と繋がっているわけです。
 初めの言い回しは漠然としていますが、第25条と結びつけることは、理念ベースで合理性があり、理解納得できるものと思います。

政治的判断としての最低社会保障の種類

 では、社会におけるその「最低限」としての妥当な線はどうか。
1)社会扶助
2)(最低)年金制度
3)最低賃金
などを取り上げ、これらは、それぞれの当該制度において行われる政治的判断に基づき規定された「最低限」といいます。

最低所得保障 MISとは

 それらに対して、英国のファイトーウィルソンにより提起された政治的判断調査時に用いた概念、Minimum Income Standard「最低所得水準」を提起し、それが「ある社会の「まともな decent 」生活の最小限に見合った所得」を意味すると紹介しています。
 「まともな」には、「人間の尊厳が保たれ、ある社会に十分参加できる」という意味が込められていること。
 MISには、 あまり複雑でなく、行政にとって実行可能で、財政的にも実施可能であることも求められ、「公的貧困線」と呼ばれ、貧困についての科学的な事実把握とは区別されるとしています。

日本におけるMISと生活保護の関係、

 で、日本では、生活保護が、日本のMISとして機能してきており、国民健康保険や国民年金の「低所得者対策」や「境界層措置」「満額年金支給額設定」、市町村民税の「非課税基準」、最低賃金設定などに、生活保護基準が参照されているといいます。
 それぞれの最低額設定上、生活保護基準がお墨付きになってきたわけです。


「生活保護基準」としての「生活扶助基準」とその改定方式の妥当性

 結局、現在の生活保護制度における<生活扶助>基準は、生活保護基準を意味しているわけで、それが適切かどうか、定期的検証されに、改定が行われているわけです。

 改定のための「検証」方式

 検証は、「標準世帯」で行い、多様な世帯に当てはめるべく、年齢別、世帯人員別の「基準表」を級地別に作成し実施。
 それに基づいて行なう<生活扶助基準>の改定方式は、これまで「マーケットバスケット方式」「格差縮小方式」等の変遷があり、「水準均衡方式」を経て、現在は、「平均指数法による基準表の一括改定など、多様な均衡の模索」状態にあるとしています。
 と言われても、ほとんどピンときませんが。
 これまでの方式についての説明もありますが、省略します。

終章 生活の「最低限」をどう決める>-2

2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではないから

終章  生活の「最低限」をどう決める
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
・新たなマーケット・バスケット方式による算定
・日本での取り組み
・別のアプローチ ー主観的生活費の研究
・低所得単身世帯の把握と家計実態アプローチの可能性
・複数の基準から生活保護基準を検証

 要するに、最低生活は、絶対的に基準化・規定化できるものではなく、相対的なものであることから、次の「唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない」という節に導かれます。
 ここでの展開は上記のとおりですが、ここは整理して簡単に。
 基本的には、何かしら、最低限度額の設定を試みようというものですが。
 但し、めざすべきことは明確です。

生活保護を解体しても、年金支援給付、求職者支援給付。生活維持給付などの生活扶助部分に対応する給付水準は、少なくとも現状維持、できれば、MISとしての位置を保つべき。

ということです。

 その目的実現のために、この項で、筆者は、以下の複数の基準設定調査の方法・特徴などを展開しています。

多様な方式による最低生活費算定結果と今後の在り方

 その部分は省略し、それぞれの試算・調査結果に基づく最低限生活費の額を以下に転記しました。

1)労働総研マーケット・バスケット試算 119,310円
2)三鷹 MIS 女性      106,758円
        男性     115,878円
3)主観的生活費K調査   146,000円
        T調査    102,000円
4)家計調査部会試算   107,642円
5)村上試算     90,309円
※ 生活保護基準(1級地、単身世帯) 85,139円


 随分金額に違い・差があります。
 それぞれの算定方法を比較して、その差が生じる要因・要素を確認すべきですが、こうして比較データとして用いるからには、論外の条件設定の違いはないはず。
 要するに、最低額の算定が、非常に基準化することが困難であることを示しています。

 それで最終的に岩田氏はどうすべきとしているのか。
 上表でわかるように、生活保護基準が最低額となっており、ここから、同氏は、複数の基準からアプローチしてその在り方、設定方法を進化していくべき、というに留めています。
 当然といえば当然ですね。

終章 生活の「最低限」をどう決める>-3

3.「資産ベース」の福祉へ ー 転換は可能か?から

終章  生活の「最低限」をどう決める
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
・資力調査か、課税資料か
・個人単位を原則に
・世帯認定と扶養問題
・人間の生活にそくした家計の見方を
・家計における「運転資金」の意味
・破産法における自由財産の考え方を参考に
・資産は「プラス思考」で
・社会扶助の効果を高めるという発想

生活保護で問題の<ミーンズテスト>は、解体再編後どうなるか

 上記の構成でのこの項の主なテーマは、積み残していたもう一つ「ミーンズテスト(資力調査)」についてです。

 悪名高い?生活保護の異常ともいえる捕捉率の低さの最大の原因とされる<ミーンズテスト>。
 8つの扶助の解体と編み直し論を展開してきたなかで、個別の解体・再編した事項についても、やはり、資産の保有の有無・多少により、支給される・されない、の適用の違いが存在していました。
 私にとっても、結局なにかしらの調査・審査が残されている、残さざるをえない岩田氏論に対しての懸念材料の一つでした。

 解体し、再構築した扶助は、児童養育などを一部を除き基本的には社会扶助であるため、何らかの貧困証明が必要で、この点がベーシックインカムと異なる。

 (ここで初めて<ベーシックインカム>という用語が出てきました。)

 こう述べている岩田氏は、どう締めくくりの提案をおこなうでしょうか。
 まずは、所得調査か、資産調査かについて。

ミーンズテストは、信憑性のある課税資料把握と非課税基準の活用による所得調査で簡易に

 資産調査ではなく、このように所得調査方式を提案し、個人税の情報が地方自治体に集中していることから、個人住民税の非課税基準などによる所得把握を薦めています。
 但し、行政のデジタル化が進めば、これにこだわる必要はない、とも。
 その他に配慮すべき事項の提案・説明もありますが、省略します。

世帯単位から、個人単位を原則に

 次は、やはり問題になる、基本を、世帯を対象とするか個人とするか、です。
 ここも当然、個人単位を原則とし、これに「夫婦単位」を付加することを提案します。
 子どもの<教育扶助>は、他制度に移行するため、ここでは必要ないわけです。
 但し、「住宅手当」は世帯単位であることは当然です。
 これまでの提案やこれらのことから、「扶養」という概念は不要としているのも当然ですね。

資産・貯蓄面から考慮すべき「家計運転資金」概念と「自由財産」概念

 1ヶ月の保護費を全部使って、次の保護費で生活を営むという設計を想定した現在の生活保護は、実際の人間の生活とまったくかけ離れている。

 こうした現状の制度を変えるためには、日々の生活における若干のゆとり、蓄え的な「運転資金」が必要であることを認めるべき。
 その観点から参考にすべきは、破産時の差し押さえから免除する「自由財産」の考え方を参考にし、採用すべきと提案しています。

すこしでも「まともな生活」を送ることができる、社会扶助の効果を高める生活保護・生活扶助を

 ここでの議論は、生活保護申請時と保護利用時の資産・蓄え、双方の観点から論じています。
 そこで共通して持つべきと提案しているのが、「プラスの思考」で考えること。
 すなわち「まともな」生活を送るために必要な資産という考え方で、反対の、何をもってはいけないという「マイナスの思考」ではいけない、というものです。
 そして、その考え方を一歩進めれば、解体し再編した生活保護基準・生活扶助基準が、一定の資産要件を認めることで、社会扶助としての制度の効果を、個人の自由の増大の実現にも及ぼすことができるようになる。

 少し私の脚色も差し挟みましたが、そんなまとめになるのではと考えます。

ベーシック・ペンションにおける最低限の生活保障とミーンズテストの考え方

 すでにご理解頂いているでしょうか、ベーシック・ペンション生活基礎年金の完成形の支給額は、専用デジタル通貨ですが、一人月額15万円です。
 学齢15歳以下の児童と、学齢18歳以下の学生等、65歳以上の高齢者は、それぞれ設定している児童基礎年金、学生等基礎年金、高齢者基礎年金を受給します。
 その15万円は、上述の<最低生活費算定>例に比べると最も高額です。
 但し、一応住宅費用や医療費自己負担費用もその中から支出するものですが、先の表現を用いると、多少の余裕は、生活の仕方次第で可能な金額を想定しています。
 具体的な公開されている調査や試算方法を用いてのものではありませんが。

 すべての国民無条件で支給されるので、ミーンズテストなどありようもないわけです。
 また、そのデジタル通貨は、使途が決められており、一定期間内(4年ないし5年以内)に利用しなければならず、譲渡や相続はできません。
 但し、利用期間中は蓄えることができ、必要時にまとめて利用することができるのです。
 未使用分は、発行元である日本銀行が、無償で自動的に回収するシステムを想定しています。

 そして当然ですが、生活保護制度は、このベーシック・ペンションにより廃止されます。
 但し、社会保障制度・社会福祉制度は、ベーシック・ペンション導入に伴い、本書で課題となった8種類の扶助及び関連する諸制度の多くが、改革・改廃されます。
(これまでに提案済みの種々の関連改革・改定提案記事を、当サイト及び https://2050society.com でご覧頂くことができます。)
 
 

参考:ベーシック・ペンションの基礎知識としての5記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

 いよいよ次回テーマは、最終章<終章  生活の「最低限」をどう決める>の2回目であり、本書の最後・まとめにも当たる <4.バーシックインカムのほうが早い?> になります。
 それが終われば、これまでのシリーズ全10回を総括する最終回を迎えます。

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』 全体構成

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
1.パンデミックと「最後のセーフティネット」
・都内バス停にて ーホームレス女性殺人事件
・パンデミック下の生活保護利用と特別定額給付金
・「現金一律給付」と生活保護制度
2.誤解とマイナスイメージ
・社会扶助としての生活保護
・生活保護が増えると国の底が抜ける?
・高齢・単身利用者の急増
3.「必要な人」にどのくらい利用されているか
・生活保護が「必要な人」とは?
・ 生活保護は捕捉率が大事
4.もう生活保護は解体して出直したほうがいい
・近年の危機と第二のセーフティネット
・なぜ「最後のセーフティネット」であることにこだわるのか?
・生活保護の八つの扶助は、異なった生活ニーズに対応している
・「低所得者対策」と生活保護の関係を解きほぐす
5.これまでの改革案 ー 再構築の道筋
・生活保護改革案
・全国知事会・全国市長会の新たなセーフティネット案
・全国知事会・全国市長会提案と「わたしは、ダニエル・ブレイク」
・なぜ自治体は生活保護を押さえ込みたいのか
・提案にあたっての二つの原則
・カテゴリー別「制限扶助」の弊害
・ 本書の構成

第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界
1.生活保護とはどういうものか?
・生活保護の目的と責任
・「誰」が利用できるか ー無差別平等
・必要な生活費をどう計算しているか
・資産調査(ミーンズテスト)と他の要件
・「親族扶養」はマストなのか?
・日本的特徴 ー新しい考えと古い考え
2.古い「貧困理解」と、生活保護としての不徹底
・「生活困窮者」への「全一的」保障という設計
・貧困の原因を区別する
・社会保障と社会福祉のあいだで
3.運営の二重原則
・申請保護/職権保護
・世帯単位/個人単位(世帯分離)
・ 基準表/必要即応
・非現実的な「すべて現物給付」
4.具体例で考えてみると
・A子さんの保護申請と要否の判定
・医療・介護の計上の仕方と収入充当順位
・生活保護は「差額」の支給にすぎない
・貧困の大きなファクターとしての医療費
5.いくつかの謎 ー 生活扶助の「加算」と住宅扶助基準
・生活扶助と加算
・年金・手当に連動した加算の再配置
・「特殊需要」というロジックのあいまいさ
・障害者加算の複層構造と「その場限りの需要」
・さらに不思議な住宅扶助基準
・住宅の特別な位置
6.何が社会扶助の保障機能を弱めているか

第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」
1.社会保険と社会扶助
・ベヴァリッジ報告と社会保険中心主義
・奇跡か、冒険か
2.国民皆保険と「低所得者対策」
・生活保護利用者の国保「適用除外」
・国民健康保険の基本問題 ー三重の均質性の欠落
・低所得層への保険料の軽減・減免策と高齢者医療無料化
・国保加入世帯の半数以上が保険料軽減対象
・高額療養費「特例該当」と医療扶助単給
3.国民皆保険の保険料免除・軽減制度と福祉年金
・「基礎年金」は「最低生活費」を意味していない
・国民年金の低所得者対策 ー福祉年金としてのスタート
・二つの福祉年金
・国民年金の保険料免除・軽減策
・「皆保険・皆年金」内部の低所得者対策の意味
4.「皆保険・皆年金」以外の低所得者対策
・生活保護への移行を防止する「境界層措置」
・「ボーダーライン層」への貸付制度と第二のセーフティネット
5. 低所得基準と生活保護基準
・多様な「低所得者」の定義
・「基礎控除」と「非課税限度額」 ー何が違うのか?
・ 基礎控除、「非課税限度額」、生活保護基準はどのような関係にあるのか
・低所得基準は保護基準より上でなければおかしい

第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する
1.基礎的生活ニーズに着目して八つの扶助をグループ化する
・義務教育なのに生ずる教育費用
・社会生活の基盤としての住宅扶助と、情報インフラの重要性
・医療・介護はなぜ現物給付か
・「妊娠・分娩・産褥・新生児管理」と出産扶助
・出産期の女性を支える包括的な施策が必要
・「死後の保障」としての葬祭扶助
・増加する葬祭扶助
・自立助長のための生業扶助
・一歩手前での対応が可能な制度設計に
・日本の既存の制度体系の中に溶け込ませる
2.原理問題(1)保険と扶助の区別をどう考えるか
・社会保険と社会扶助の教科書的整理
・公助・共助・自助
・保険と扶助は共に「互恵的」なもの
・社会保険は「対価的」というより、はじめから「社会的賃金」
・保険料を税的に使う ー社会保険における支援金
・社会保険は「共助」で税による生活保障は「公助」なのか?
3.原理問題(2)普遍と選別の多様性と「選別的普遍主義」
・目標はあくまでも問題解決
・普遍主義の枠組みの中に選別政策を配置する
・「選別的普遍主義」というありかた
・国民皆保険・皆年金の低所得者対策と選別的普遍主義
4.時代の変化に対応した制度に ーその他の課題
・「多様な働き方」に中立的な社会保険の改革を
・対象は国民限定か ー国際的な相互関係のなかで

第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか
1.医療・介護サービスニーズの「標準」保障
・生活保護費のほぼ半分は医療扶助
・医療や介護サービスはなぜ「標準化」されるのか
・二つの編みなおし案
・医療扶助と国保合体への反対論
・「無料低額診療制度」「行旅病人死亡人法」
・医療扶助と介護扶助の編みなおし 二つのイメージ
2.住宅手当の新設
・住宅手当のない国・日本
・住宅手当こそ全世代型社会保障の代表だ
・施設や宿泊所の問題
・一時的なダイレクトシェルターは必要だが、「ホームレス施設」はいらない
・英国の住宅手当と施設
・「住居確保給付金」を拡張し、恒久化する
・ 公正家賃という考え方
・国交省か厚労省か、財源をどう考えるか
・住宅手当創設の提案のイメージ
3.教育扶助の解体と子ども養育費の保障
・就学援助支援制度を発展させる
・一元化にあたっての三つの課題
・高校・大学も視野に
・子どものいる世帯の生活費への配慮 ー児童手当と児童扶養手当
・「ひとり親」による子の養育への支援に
・ 遺族基礎年金を「ひとり親世帯等基礎年金」へ
・ ひとり親世帯等基礎年金の提案のイメージ
4.高齢期・障害のあるときの生活扶助はどうするか
■ 高齢期の場合
・個人単位+夫婦(ペア)単位で設計する
・高齢世帯の資産の考え方
・高齢期における生活扶助のイメージ
■ 障害のあるとき
・障害年金で「なんとかなる」のか?
・日本の障害年金認定の特徴は
・所得保障の確立が意味すること
・障害者加算分を「福祉手当」に
・保護の決定状況からみた不足額
・障害のあるときの最低生活保障のイメージ
5.失業時の生活保障と就労支援 ー求職者支援制度の全面改定
・失業=貧困とならないために
・失業給付の中心 ー「求職者給付」の基本手当
・保護行政の「ねじれた反応」
・二つのハロトレくんと生活保護
・求職者支援法の給付金を、「求職者支援給付へ」
・求職者支援制度における求職者支援給付の提案
6.多様な方法での最低生活保障を
・「生計維持給付」としての「一般扶助」の存続と一時扶助
・利用者自身がニードを組み立て、保障を請求できる制度に

終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
・残された問題
・妥当な「公的貧困線」として機能する制度 ー政府のMIS
・G-MISとしての生活保護
・生活扶助基準改定の「妥当性」とその変遷
・最低生活は相対的なもの
・格差縮小への合意の時代から「水準均衡」の確認へ
・「格差の時代」の扶助基準の引き下げ圧力
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
・新たなマーケット・バスケット方式による算定
・日本での取り組み
・別のアプローチ ー主観的生活費の研究
・低所得単身世帯の把握と家計実態アプローチの可能性
・複数の基準から生活保護基準を検証
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
・資力調査か、課税資料か
・個人単位を原則に
・世帯認定と扶養問題
・人間の生活にそくした家計の見方を
・家計における「運転資金」の意味
・破産法における自由財産の考え方を参考に
・資産は「プラス思考」で
・社会扶助の効果を高めるという発想
4.ベーシック・インカムのほうが早い?
・パンデミック以後のリアリティ
・所得保障は完璧な手法ではない ー方法がすべてを解決するわけではない
・公共財としての所得保障
・「共同財源」と「私の家計」をリンクさせていくことが重要
・時代は変化している

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