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2022・23年考察

生活保護の誤解、誤ったイメージを解消する解体論か:『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-2

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』より-2

 岩田正美氏著『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』(2021/11/5刊:岩波書店)を参考に、当サイト提案のベーシック・ペンションを再確認し、より深堀りすることを目的としたシリーズを始めました。

<『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション>シリーズ展開計画(案)

第1回:本シリーズ方針
第2回:<序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち>より
第3回:<第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界>より
第4回:<第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」>より
第5回:<第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する>よりー1
第6回:<第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する>よりー2
第7回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-1:医療制度・介護制度課題
第8回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-2:住宅手当制度問題
第9回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-3:教育制度・子ども制度課題
第10回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-4:高齢者・障害者制度課題
第11回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-5:失業及び就労関連課題
第12回:<第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか>より-6:第Ⅳ章総括
第13回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-1 :最低限生活課題
第14回:<終章 生活の「最低限」をどう決める>より-2:ベーシック・インカム
第15回:『生活保護制度解体』総括評価
第16回:ベーシック・ペンションと『生活保護制度解体』 との比較総括


 一応以上のシリーズを予定し、前回が以下の第1回。
岩田正美氏著『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション-1:本シリーズ方針(2022/1/8)

 今回は、第2回、 <序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち> を用います。


序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち>から

 まず、序章の節と項の構成は以下のようになっています。

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち>構成

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
1.パンデミックと「最後のセーフティネット」
 ・都内バス停にて ーホームレス女性殺人事件
 ・パンデミック下の生活保護利用と特別定額給付金
 ・「現金一律給付」と生活保護制度
2.誤解とマイナスイメージ
 ・社会扶助としての生活保護
 ・生活保護が増えると国の底が抜ける?
 ・高齢・単身利用者の急増
3.「必要な人」にどのくらい利用されているか
 ・生活保護が「必要な人」とは?
 ・ 生活保護は捕捉率が大事
4.もう生活保護は解体して出直したほうがいい
 ・近年の危機と第二のセーフティネット
 ・なぜ「最後のセーフティネット」であることにこだわるのか?
 ・生活保護の八つの扶助は、異なった生活ニーズに対応している
 ・「低所得者対策」と生活保護の関係を解きほぐす
5.これまでの改革案 ー 再構築の道筋
 ・生活保護改革案
 ・全国知事会・全国市長会の新たなセーフティネット案
 ・全国知事会・全国市長会提案と「わたしは、ダニエル・ブレイク」
 ・なぜ自治体は生活保護を押さえ込みたいのか
 ・提案にあたっての二つの原則
 ・カテゴリー別「制限扶助」の弊害
 ・ 本書の構成


 この序章の展開を私なりに整理・概略・要約し、以下のいくつかの視点・テーマで整理してみます。

生活保護制度の現状

必要な人に利用されていない生活保護

 生活保護は、社会保障の一手段である社会扶助制度。
 社会保険のように社会保険料の納付(拠出)を条件とし、一定特定のリスクに対して現金やサービス給付を行うのではなく、多様な原因で生じた「今、貧困である」状態に対して、租税から給付を行なう手法。
 そこで貧困状態の確認が行われ、貧困者を「選別」する「必要な人を選んで対応する」ことになるわけです。

 しかし、この「必要な人」に生活保護が届いていない。
 その実態を示す例として以下指摘しています。

・生活保護が必要な生活保護基準以下の低所得世帯の人々を実際に保護する保護率が、2019年で2%にも満たない低率であり、かつその「捕捉率」が15~30%程度と低率で推移している
・生活保護に割り当てられている予算額が、2019年度約2.9兆円、社会保障関係費の約8.5%という規模
・1990年代には保護者数が100万人近くに減少したのち増加に転じ、2010年代には200万人台に達し、そのうち高齢者が100万人を超えるに至っている
・またそこでは女性単身高齢者の増加が顕著である

 この高齢者に関する事項は、当然、年金制度と強く関係していることが想像でき、本書における解体推進案の大きな要因の一つになっているわけです。

マスコミを含む生活保護に対する誤ったイメージの広がり

 上記の構成にあるように、実は序章の立ちあがりは、コロナ禍における生活保護申請状況の変化や、例の<特別定額給付金>をめぐる当時の状況を生活保護と対比して問題提起しています。
 加えて、コロナ禍とは関係なく、日常的にマスコミが発する誤ったメッセージや、いつの間にか刷り込まれ、広がっている生活保護に対する誤解についても。
 例えば、日経の大林尚上級論説委員の「(略)それは、生活保護に気安く頼る人を生む副作用を生んだ」という発言、2011年3月NHKスペシャル「生活保護三兆円の衝撃」における貧困ビジネスや不正受給と関係づけての報道など。
 これらは、上述した生活保護制度が持つ本来の目的・機能が、公正に、適切に果たされていない遠因となってもいるといえるでしょう。
 そして、ベーシックインカムを提案するほとんどすべての論者・論述において必ず提示される、忌まわしき資力調査ミーンズテストがあります。
 こうして、生活保護を申請することへの心情的な圧力・圧迫・後ろめたさなどのスティグマを、本来受給できる所得条件をもつ人々に抱かせる直接の要因となり、多重多様かつ無言の負の影響を与え、この制度が堅固にガード化するに至っているわけです。

最後のセーフティ・ネット「生活保護」と第二のセーフ・ティネット「求職者支援制度」「生活困窮者自立支援制度」のはざま

 1950年の現行制度の導入以後、2000年の介護保険導入を除けば、抜本的な改革がほとんどなされることなく、いわゆる「最後のセーフティ・ネット」と位置付けられ、運用されてきた生活保護制度。
 その現状が、先述した低捕捉率、冷酷なミーンズテスト、表現することが困難なスティグマ問題に集約されています。
 こうした中、2008年の雇用保険の支給条件の緩和を経て、2011年「求職者支援制度」、2013年成立・2015年開始「生活困窮者自立支援制度」が第二のセーフティ・ネットとして導入され、位置付けられていることを示します。

 この2つの制度の文字面を見れば、筆者の指摘を待つまでもなく、貧困者対策というよりも、低所得者に向けた就労第一として雇用につなげようという「ワーク・フェア」政策に狙いがあることは明らかです。

 こうした第二のセーフティ・ネットの運用への期待が、社会保障分野の専門家からも示されていたことを今思い出しました。
 もちろん、残念に思ってのことです。
 ベーシックインカムではなく、ベーシック・アセットを提案する宮本太郎氏による『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021/4/9刊) における主張がそれです。
 少し、というか、かなり道が逸れてしまいますが、その書についての考察シリーズを参考までに以下転載しました。

ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-1(2021/8/20)
福祉資本主義の3つの政治的対立概念を考える:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』序論から(2021/8/30)
増加・拡大する「新しい生活困難層」:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー2 (2021/9/2)
ベーシックアセットとは?:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-2(2021/9/4)
貧困政治での生活保護制度と困窮者自立支援制度の取り扱いに疑問:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー3(2021/9/7)
貧困政治とベーシックインカム、ベーシックアセット:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-3(2021/9/8)

生活保護制度の異なる生活ニーズに基づく単品扱いできない8つの扶助

 岩田氏によれば、第二のセーフティ・ネットが必要とされるに至っているのは、現状の生活保護制度そのものが現状、そしてこれからの社会に適合しない社会保障・社会福祉制度になっているため。
 そして、生活保護制度が、元来、生活扶助・医療扶助・介護扶助・教育扶助・住宅扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助という、異なる機能・目的を持つ社会扶助制度であること、に原因があるということになります。

運用主体である地方自治体の保護適用抑制の方向性と運用案

 もう一つ、別の観点からの岩田氏の指摘も以下に取り上げておきましょう。

 生活保護支給の捕捉率の低さを進めている要因に、実際に制度運用実務を担う自治体の方針を取り上げています。
 全国知事会・全国市長会による2006年発表の「新たなセーフティネットの提案 ー「保護する制度」から「再チャレンジする人に手を差し伸べる制度」へ。
 2010年の指定都市市長会の生活保護改正案ともども、<稼働層の就労支援とボーダーライン層の生活保護移行に対する防止措置>が考え方の基本にしていると。
 前者の方針を理解する上で、以下の認識をも加えています。

少子高齢化・人口減少社会、家族機能の弱体化、ワーキングプアの拡大、という社会変化を大前提とし、稼働期と高齢期の貧困の原因は異なること、保護基準、最低賃金、非正規労働者の収入との均衡を図り、ワーキングプアの生活保護移行防止が必要。


 こうした基本方針に基づいての運用ですから、ミーンズテストの厳格な運用や、それ以前に、門前払いに近い対応を行なう姿勢は、当然の帰結であり、それらがスティグマの連鎖を引き起こしてきたことも容易に想像できるというものです。
 そして、この非人間的な姿勢・方針は、運用実務の前線にある自治体の生保財政・財源に関係していることにあると指摘します。

 元来、生活保護は、国家が最低生活を保障する制度。
 保護の決定及び実施が自治体の長に委ねられ、その事務は福祉事務所が担当する。
 すなわち、国からの法定受託事務にあたるものが、現在、給付費の75%を国が負担している状況。
 そこで、負担を必要とする自治体が、適用・運用を慎重に行い、「濫給」を抑制することになる、というわけです。
 但し、実際には地方負担の25%と事務費は、国からの地方交付税交付金から充当されており、生保給付負担が、財政難に至らせるものではない、と指摘しています。
 確かに交付金がない自治体や財政面で不安を持つ自治体もあるのですが。
 要は、自治体財政において、生活保護関連よりも経済対策その他の政策への充当を優先・強化させたいという意識が働いている結果といえるでしょう。

 いずれにしても、政治・行政が問題の根源にあることは明白です。

本書における筆者の生活保護改革基本方針

 以上の確認を元に、筆者は、本書における解体・改革に関する基本的な考え方を以下のように示しています。

 本書の提案は、制度利用を押さえ込むのではなく、生活保護を解体して福祉国家の制度全体の中に再配置し、貧困への生活保障力を高めることを目的に、以下を方針とする。
1)社会扶助の目的は生活の最低限保障であり、「自立助長」と一緒にしないという判断に立つ。
2)解体の基点を初めから「稼働能力」に置くことは避ける。

3)「今、貧困である」とき、使える社会扶助を、生活の基礎ニーズの違いから、分解し、そこから社会保障のいくつかと組み合わせて、再構築する。

 ただ、1)については誤解を生みやすいので、筆者の説明を付け加えておきます。

「今、貧困である」状態に対して、生活の最低限度まで貨幣給付やサービス給付で底上げすることが重要であり、社会扶助の役割がそこにある。

 また3)における使える社会扶助とは、先述した8種類の扶助を指していることはいうまでもありません。
 いずれにしても、この基本認識・基本方針のもと、解体論が展開されていきます。


ベーシック・ペンションにおける生活保護の位置付け-1

 本シリーズでの各回のテーマに関連させて、ベーシック・ペンションにおける生活保護制度の位置付け・関係について若干述べていきたいと考えています。
 今回はまず、地方自治体の財政負担意識と担当者の心情的負担が解消されるベーシック・ペンションであることを申し上げておきましょう。
 そして、岩田氏の主題である「今、貧困である」という前提には立たず、「いつ、貧困状態になっても」あるいは「いつどんな状態になっても最低限の生活が維持できる」という前提に立つベーシック・ペンションであることを付け加えておきたいと思います。

参考:ベーシック・ペンションの基礎知識としての5記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)

 当然といえば当然ですが、この序章で、生活保護制度を解体すべきという筆者の認識の要因の多くが語られています。
 では、その生活保護制度とは、どういうもの、コトなのか。
 次回 <第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界> を取り上げて、生活保護制度そのものを再確認することにしたいと思います。

 なお、以下に、本書全体の構成を参考までに再掲しました。

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』 構成-1

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
1.パンデミックと「最後のセーフティネット」
2.誤解とマイナスイメージ
3.「必要な人」にどのくらい利用されているか
4.もう生活保護は解体して出直したほうがいい
5.これまでの改革案 ー 再構築の道筋

第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界
1.生活保護とはどういうものか?
2.古い「貧困理解」と、生活保護としての不徹底
3.運営の二重原則
4.具体例で考えてみると
5.いくつかの謎 ー 生活扶助の「加算」と住宅扶助基準
6.何が社会扶助の保障機能を弱めているか

第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」
1.社会保険と社会扶助
2.国民皆保険と「低所得者対策」
3.国民皆保険の保険料免除・軽減制度と福祉年金
4.「皆保険・皆年金」以外の低所得者対策
5. 低所得基準と生活保護基準

第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する
1.基礎的生活ニーズに着目して八つの扶助をグループ化する
2.原理問題(1)保険と扶助の区別をどう考えるか
3.原理問題(2)普遍と選別の多様性と「選別的普遍主義」
4.時代の変化に対応した制度に ーその他の課題

第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか
1.医療・介護サービスニーズの「標準」保障
2.住宅手当の新設
3.教育扶助の解体と子ども養育費の保障
4.高齢期・障害のあるときの生活扶助はどうするか
5.失業時の生活保障と就労支援 ー求職者支援制度の全面改定
6.多様な方法での最低生活保障を

終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
4.ベーシック・インカムのほうが早い?

『生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす』 構成-2

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
1.パンデミックと「最後のセーフティネット」
・都内バス停にて ーホームレス女性殺人事件
・パンデミック下の生活保護利用と特別定額給付金
・「現金一律給付」と生活保護制度
2.誤解とマイナスイメージ
・社会扶助としての生活保護
・生活保護が増えると国の底が抜ける?
・高齢・単身利用者の急増
3.「必要な人」にどのくらい利用されているか
・生活保護が「必要な人」とは?
・ 生活保護は捕捉率が大事
4.もう生活保護は解体して出直したほうがいい
・近年の危機と第二のセーフティネット
・なぜ「最後のセーフティネット」であることにこだわるのか?
・生活保護の八つの扶助は、異なった生活ニーズに対応している
・「低所得者対策」と生活保護の関係を解きほぐす
5.これまでの改革案 ー 再構築の道筋
・生活保護改革案
・全国知事会・全国市長会の新たなセーフティネット案
・全国知事会・全国市長会提案と「わたしは、ダニエル・ブレイク」
・なぜ自治体は生活保護を押さえ込みたいのか
・提案にあたっての二つの原則
・カテゴリー別「制限扶助」の弊害
・ 本書の構成

第Ⅰ章 生活保護という不思議な世界
1.生活保護とはどういうものか?
・生活保護の目的と責任
・「誰」が利用できるか ー無差別平等
・必要な生活費をどう計算しているか
・資産調査(ミーンズテスト)と他の要件
・「親族扶養」はマストなのか?
・日本的特徴 ー新しい考えと古い考え
2.古い「貧困理解」と、生活保護としての不徹底
・「生活困窮者」への「全一的」保障という設計
・貧困の原因を区別する
・社会保障と社会福祉のあいだで
3.運営の二重原則
・申請保護/職権保護
・世帯単位/個人単位(世帯分離)
・ 基準表/必要即応
・非現実的な「すべて現物給付」
4.具体例で考えてみると
・A子さんの保護申請と要否の判定
・医療・介護の計上の仕方と収入充当順位
・生活保護は「差額」の支給にすぎない
・貧困の大きなファクターとしての医療費
5.いくつかの謎 ー 生活扶助の「加算」と住宅扶助基準
・生活扶助と加算
・年金・手当に連動した加算の再配置
・「特殊需要」というロジックのあいまいさ
・障害者加算の複層構造と「その場限りの需要」
・さらに不思議な住宅扶助基準
・住宅の特別な位置
6.何が社会扶助の保障機能を弱めているか

第Ⅱ章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」
1.社会保険と社会扶助
・ベヴァリッジ報告と社会保険中心主義
・奇跡か、冒険か
2.国民皆保険と「低所得者対策」
・生活保護利用者の国保「適用除外」
・国民健康保険の基本問題 ー三重の均質性の欠落
・低所得層への保険料の軽減・減免策と高齢者医療無料化
・国保加入世帯の半数以上が保険料軽減対象
・高額療養費「特例該当」と医療扶助単給
3.国民皆保険の保険料免除・軽減制度と福祉年金
・「基礎年金」は「最低生活費」を意味していない
・国民年金の低所得者対策 ー福祉年金としてのスタート
・二つの福祉年金
・国民年金の保険料免除・軽減策
・「皆保険・皆年金」内部の低所得者対策の意味
4.「皆保険・皆年金」以外の低所得者対策
・生活保護への移行を防止する「境界層措置」
・「ボーダーライン層」への貸付制度と第二のセーフティネット
5. 低所得基準と生活保護基準
・多様な「低所得者」の定義
・「基礎控除」と「非課税限度額」 ー何が違うのか?
・ 基礎控除、「非課税限度額」、生活保護基準はどのような関係にあるのか
・低所得基準は保護基準より上でなければおかしい

第Ⅲ章 解体・編み直しの戦略と指針 ー 「原理問題」を整理する
1.基礎的生活ニーズに着目して八つの扶助をグループ化する
・義務教育なのに生ずる教育費用
・社会生活の基盤としての住宅扶助と、情報インフラの重要性
・医療・介護はなぜ現物給付か
・「妊娠・分娩・産褥・新生児管理」と出産扶助
・出産期の女性を支える包括的な施策が必要
・「死後の保障」としての葬祭扶助
・増加する葬祭扶助
・自立助長のための生業扶助
・一歩手前での対応が可能な制度設計に
・日本の既存の制度体系の中に溶け込ませる
2.原理問題(1)保険と扶助の区別をどう考えるか
・社会保険と社会扶助の教科書的整理
・公助・共助・自助
・保険と扶助は共に「互恵的」なもの
・社会保険は「対価的」というより、はじめから「社会的賃金」
・保険料を税的に使う ー社会保険における支援金
・社会保険は「共助」で税による生活保障は「公助」なのか?
3.原理問題(2)普遍と選別の多様性と「選別的普遍主義」
・目標はあくまでも問題解決
・普遍主義の枠組みの中に選別政策を配置する
・「選別的普遍主義」というありかた
・国民皆保険・皆年金の低所得者対策と選別的普遍主義
4.時代の変化に対応した制度に ーその他の課題
・「多様な働き方」に中立的な社会保険の改革を
・対象は国民限定か ー国際的な相互関係のなかで

第Ⅳ章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか
1.医療・介護サービスニーズの「標準」保障
・生活保護費のほぼ半分は医療扶助
・医療や介護サービスはなぜ「標準化」されるのか
・二つの編みなおし案
・医療扶助と国保合体への反対論
・「無料低額診療制度」「行旅病人死亡人法」
・医療扶助と介護扶助の編みなおし 二つのイメージ
2.住宅手当の新設
・住宅手当のない国・日本
・住宅手当こそ全世代型社会保障の代表だ
・施設や宿泊所の問題
・一時的なダイレクトシェルターは必要だが、「ホームレス施設」はいらない
・英国の住宅手当と施設
・「住居確保給付金」を拡張し、恒久化する
・ 公正家賃という考え方
・国交省か厚労省か、財源をどう考えるか
・住宅手当創設の提案のイメージ
3.教育扶助の解体と子ども養育費の保障
・就学援助支援制度を発展させる
・一元化にあたっての三つの課題
・高校・大学も視野に
・子どものいる世帯の生活費への配慮 ー児童手当と児童扶養手当
・「ひとり親」による子の養育への支援に
・ 遺族基礎年金を「ひとり親世帯等基礎年金」へ
・ ひとり親世帯等基礎年金の提案のイメージ
4.高齢期・障害のあるときの生活扶助はどうするか
■ 高齢期の場合
・個人単位+夫婦(ペア)単位で設計する
・高齢世帯の資産の考え方
・高齢期における生活扶助のイメージ
■ 障害のあるとき
・障害年金で「なんとかなる」のか?
・日本の障害年金認定の特徴は
・所得保障の確立が意味すること
・障害者加算分を「福祉手当」に
・保護の決定状況からみた不足額
・障害のあるときの最低生活保障のイメージ
5.失業時の生活保障と就労支援 ー求職者支援制度の全面改定
・失業=貧困とならないために
・失業給付の中心 ー「求職者給付」の基本手当
・保護行政の「ねじれた反応」
・二つのハロトレくんと生活保護
・求職者支援法の給付金を、「求職者支援給付へ」
・求職者支援制度における求職者支援給付の提案
6.多様な方法での最低生活保障を
・「生計維持給付」としての「一般扶助」の存続と一時扶助
・利用者自身がニードを組み立て、保障を請求できる制度に

終章  生活の「最低限」をどう決める
1.生活の「最低限」の意味と保障水準
・残された問題
・妥当な「公的貧困線」として機能する制度 ー政府のMIS
・G-MISとしての生活保護
・生活扶助基準改定の「妥当性」とその変遷
・最低生活は相対的なもの
・格差縮小への合意の時代から「水準均衡」の確認へ
・「格差の時代」の扶助基準の引き下げ圧力
2.唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
・新たなマーケット・バスケット方式による算定
・日本での取り組み
・別のアプローチ ー主観的生活費の研究
・低所得単身世帯の把握と家計実態アプローチの可能性
・複数の基準から生活保護基準を検証
3.「資産ベース」の福祉へ ー転換は可能か?
・資力調査か、課税資料か
・個人単位を原則に
・世帯認定と扶養問題
・人間の生活にそくした家計の見方を
・家計における「運転資金」の意味
・破産法における自由財産の考え方を参考に
・資産は「プラス思考」で
・社会扶助の効果を高めるという発想
4.ベーシック・インカムのほうが早い?
・パンデミック以後のリアリティ
・所得保障は完璧な手法ではない ー方法がすべてを解決するわけではない
・公共財としての所得保障
・「共同財源」と「私の家計」をリンクさせていくことが重要
・時代は変化している

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