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2022・23年考察

途上国のベーシックインカム推奨よりも優先すべき問題先進国BI:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-11

少しずつ、よくなる社会に・・・

ベーシックインカムの教科書というべき、ガイ・スタンディング氏著『ベーシックインカムへの道 ―正義・自由・安全の社会インフラを実現させるには』(池村千秋氏訳、2018/2/10刊・プレジデント社)について紹介し、検討するシリーズ。

<第1回>:ガイ・スタンディング氏著『ベーシックインカムへの道』の特徴と考察シリーズ基本方針(2022/11/5)
<第2回>:ベーシックインカムの定義と起源・歴史を確認する:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-2(2022/11/10)
<第3回>:ベーシックインカム導入目的は社会正義の実現のため?:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-3(2022/11/13)
<第4回>:なじめない「リバタリアン、共和主義者による自由のためのベーシックインカム論」:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-4(2022/11/14)
<第5回>:貧困問題から生活の経済的不確実性対応のためのベーシックインカム重視へ:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-5(2022/11/29)
<第6回>:経済成長政策、AI社会雇用喪失懸念対策としてのベーシックインカム:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-6(2022/11/30)
<第7回>:経済学者のベーシックインカム経済論としては低評価:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-7(2022/12/3)
<第8回>:ベーシックインカム以外の選択政策評価基準「社会正義」の不都合:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-8(2022/12/4)
<第9回>:多くの財源論が展開されてきた欧米で未だ実現しないベーシックインカムのなぜ?:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-9(2022/12/6)
<第10回>:ベーシックインカム批判への反論の多くが「質問返し」の残念!:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-10(2022/12/8)

今回は第11回。
「第10章 ベーシックインカムと開発」を取り上げます。

『ベーシックインカムへの道』考察シリーズー11:「第10章 ベーシックインカムと開発」から

第10章 ベーシックインカムと開発」構成

第10章 ベーシックインカムと開発
 ・ターゲティング指向と選別指向
 ・条件付き現金給付と無条件現金給付
 ・現金給付プログラムから学べること
 ・試験プロジェクト
    ナミビア/インド
 ・財源の問題
 ・補助金からベーシックインカムへ
 ・人道援助の手段として
 ・紛争回避の手段として
 ・途上国のほうが有利?


本章の構成は、上記のとおりです。
最初にこの「ベーシックインカムと開発」というテーマを見たときには、どんな内容かイメージできなかったのですが、本章冒頭の以下の記述で、その意図が理解でき、かつ、大枠での話の筋が想像可能になりました。

 近年、途上国で「条件付き現金給付」(多くは多国間援助が財源)や、貧困世帯の高齢者や子どもを主な対象とする「無条件現金給付」が実施され始めた。
外国政府や、国連などの国際機関、NGO、慈善団体の資金援助により、広い意味でのベーシックインカムの試験プロジェクトも実施されている。
 世界銀行推計によると、2014年時点で、130の途上国の7億2000万人が何らかの現金給付プログラムの対象になっている。アフリカの48ヶ国中、無条件現金給付実施国は40ヶ国に上る。


いうならば、開発途上国の開発支援のための条件付きもしくは無条件現金給付を、ベーシックインカム実験プログラムとみなして、そのあり方を事例紹介するのが目的というわけです。
率直に申し上げて、当事国主体ではなく(一応この形式を取ることがある場合でも)、他国や国際機関が主体もしくは勧奨機関となるこうした支援プログラムは、例え実験的試みではあっても、ベーシックインカムがもつ本質とは掛け離れたプログラムであり、当事国の社会経済システムとして位置付けられるものではないと考えます。
なぜなら、本来ベーシックインカムは、貧困対策だけのために提案・導入されるものではありません。
他の社会保障制度がある程度自国内で整備され、経済的基盤も成長途上国等として整備・拡充されており、国民生活や地域住民生活上一定の所得レベルが保持され維持可能な政治的・財政的基盤があることが条件と考えます。
そうした基盤があるにも拘わらず多様な問題を抱えており、それらの改善・克服のためにベーシックインカムの導入の検討、是非の検討が行われることが望ましい。
私の思うところをこう提起させて頂いた上で、上記構成におおよそ従って、ガイ氏の論述を概括していきます。

将来的なベーシックインカム導入への橋渡しの可能性をもつ、「貧困者」対象の現金給付プログラムとその移行を妨げる4つの要素

私の懸念に実は答えているかのような表現として、文中から引用したのがこの見出し。
そして、その移行を妨げる4つの要素とは以下。
1)ターゲティング指向:貧困者だけに絞って現金を給付すべき
2)選別指向:特定の属性の人たちを優先的に対象とすべき
3)条件指向:特定の行動を受給条件とすべき
4)ランダム化指向:ランダム化比較試験による「エビデンス(科学的根拠)」の裏付けがある政策のみを実行すべき

ターゲティング指向、選別指向の問題点

この問題提起から、まずこの2種類の考え方についての問題点をガイ氏は指摘。
ターゲティング及び選別方式は、世帯単位の資力調査、代数資力調査(所得と相関関係がある他の要素から間接的に所得・資力を推量する手法)、地域単位・コミュニティ単位・自己ターゲティング等による何らかの「貧困ライン」を基準として対象者を決定する。
が、この基準は恣意的で客観性を欠くとして、インドでの実験例を示しつつ、この方法が「貧困の罠」を作り出すこと、資力調査は行政コストがかさむこと等も示し反対している。
結局、ここでのガイ氏の主張は、「すべての人に給付する制度のほうが、貧困者だけに給付する制度よりも貧困の削減と不平等の改善に効果を発揮する」と、これまでの繰り返し。
もうこれで、本章の同氏の結論は出ているわけ。
なお、もう一つのランダム化比較試験については、現金給付プログラムに関する膨大な量の研究の多くを占めており、同主義者たちがこの方法だけが「エビデンス」に基づく政策の土台になりうる科学的方法論と主張するが、他の手法によっても同様の内容や信憑性のある結論を得られる、とガイ氏。


条件付き現金給付、無条件現金給付及び「現金給付プログラム」の課題と効果

次に課題としたのが、「条件付き現金給付」と「無条件現金給付」、どちらが望ましいかの比較。
60ヶ国以上の途上国で採用されている「条件付き給付」も、貧困者対象がほとんど。
そこでは、子どもを通学させていること、定期的な健康診断・予防接種などを条件に母親に現金給付しする。
実施国がその2倍に上る「無条件現金給付」の場合は、高齢者向け年金や子ども手当など特定の属性に対象をしぼりかつ貧困者限定がほとんどと。
行動面の条件を付ける場合の問題も含め、結局、先述のガイ氏の結論に帰着する。
初めから、途上国の「貧困者」を対象としたプログラムであることの限界は想定されるところであり、ガイ氏のここでの「現金給付プログラム」研究の統計上の効果は、次の項目。
・所得貧困の緩和、食費・栄養否支出の増加、学校への登校率の向上、子どもの認知的発達の改善、医療サービスの利用増加、貯蓄を用いた(特に家畜と農機具への投資)の拡大、地域経済のささやかな成長。


真のベーシックインカム実験とされる2例紹介:だが短期間にとどまる

ここまでのターゲティング指向・選別指向・条件指向の現金給付プロジェクトではない、個人に対し、無条件に、定期的に現金を配る、真のベーシックインカムの2つの試験プロジェクトが、途上国、ナミビアとインドで実施されたことを、次に紹介している。
ただ、それが短期間にとどまるものであったため、実際にはBIとは異なるものだった。

(1)ナミビアの例
 概要:2008~09年。小村オトジベロオミタラの年金受給60歳以上を除く村民全員1000人対象。月額100ナミビア・ドル=12米ドル支給。貧困ラインの約3分の1相当額。実施主体:ナミビア・ベーシックインカム・グラント連合、寄付を財源)
 結果:先述の貧困者対象の現金給付実験プログラムとほぼ同様の効果。他、村民の自発的組織活動「ベーシックインカム助言委員会」による集団行動に基づく効果も。
 その後の顛末:2015年12月、同国大統領がBIを対策戦略として採用を宣言したが、2016年6月フードバンク・プログラム開始により、BIは棚上げ同様に。

(2)インドの例
 概要:2009年~13年。女性自営労働者協会主管による以下の3つの試験プロジェクト。国連開発計画、後、ユニセフが資金拠出。
1)西デリーの「BPL(貧困ライン以下)カード」保有の数百世帯に、従来の「公共配給システム」を通じて現物給付を受けるか、同等の価値のベーシックインカムの毎月受給かを選択。当初半数BI選択後、残りの多くもBIに変更を申し出。栄養状態・食習慣が改善。
2)マディア・ブラデシュ州8村約6000人の男性・女性・子どもに、家族のBI受給額合計が貧困世帯平均世帯所得の30%相当の金額のベーシックインカムを1年半給付。
受給前及び受給しない他の12村と比較。
 4つの成果:①賢明な活用と生活改善効果 ②社会の公平性の高まり ③仕事と労働量の増加 ④人々を解放 ⇒ 村のあり方を一変
3)ある少数民族の村を対象に、すべての住民にBIを12ヶ月間給付。他の給付しない村と比較。

ここまでの論述は、既に当シリーズ第5回のテーマであった「貧困、不平等、不安定の緩和」に関する以下の記事でも扱ったものといえます。
⇒ 貧困問題から生活の経済的不確実性対応のためのベーシックインカム重視へ:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-5(2022/11/29)


財源の問題、再論

途上国に対する実験的ベーシックインカムといわれる現金給付プログラムの財源のほとんどは国際機関からの拠出や寄付であり、低所得国が自らそのための予算を賄うことは困難とされる。
それに対して、ガイ氏は、給付水準は予算で可能な範囲から始め、可能ならば少しずつ増やせばよく、政治的意志さえあれば、次の4つの方法いずれかで財源は手当できると。
1)増税:ほとんどの途上国は税制度が整備されておらず、徴税率、所得税が非常に低い故
2)他の支出項目からの予算の付け替え
3)政府系ファンドの活用
4)国際援助や民間寄付の活用

こうした提案は、以下の第9回記事でテーマとした「財源問題」の章で述べられたことの繰り返しだ。
しかし問題は、そうした政治的意志決定が可能な政治体制が形成できるかどうか、安定した政治体制が維持できるかどうかにあり、ガイ氏の理想論は通用しないことは明らかだ。
⇒ 多くの財源論が展開されてきた欧米で未だ実現しないベーシックインカムのなぜ?:ガイ・スタンディング氏『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ-9(2022/12/6)
 

その他の途上国におけるベーシックインカム的試み

ナミビア、インドにおける主として貧困層向けの限定的実験的ベーシックインカムの他の例を、引き続き紹介している。
だが、エジプト、インドネシア、タイなどにおける、国際金融機関の強い要請に基づく、食料援助・燃料補助に替わる低所得者向け現金給付導入の試みはうまくいっていないという。

イランの燃料補助金から現金給付移行

そうしたなか、イランの具体的な2010年12月に行った、エネルギーコスト削減のための補助金支出削減に替えてすべての世帯への無条件の定期的な現金給付を開始。
但し、所得税課税対象者には税務申告を義務付けしたため、受給を申込まない者が多数。
結局成人の3分の2が受給し、物価上昇による負担増を上回る給付金を得、特に地方部で貧困と不平等が大幅に緩和された。
当初インフレが一挙に加速したが、政府の一時的措置により抑制され、現金給付コストは、以前の燃料補助金の半分ほどにとどまった。
しかし、財政赤字の拡大をうけ、2016年に、資力調査に基づく制度に転換。
これにより受給者数は半減すると予想されている、と。

人道援助手段としての現金給付

次は、自然災害や人為的災害の被災者や難民支援のための現金給付のケースの近年における増加について取り上げている。
ただ事例の多くは、そこで現金給付が行われていれば、というタラレバ論。
2004年のインド洋大津波被災、2003年のイラク戦争後のイランの混乱、2001年のアメリカのアフガニスタン攻撃後の対応等が現金給付で行われていれば、というものである。
このタラレバは、国連・世界食糧計画による4ヶ国での食料現物給付と現金給付の効果比較、100万人以上のシリア難民が暮らすレバノンにおける国連難民高等弁務官事務所による「越冬対策資金」配布結果の効果比較などに基づくものである。

紛争回避の手段としての現金給付

もう一つが、紛争回避手段としてというものだが、これは天然資源の利権の占有・独占等をめぐる紛争という人間の欲得がらみの問題の解決方法として、現金等を分かち合う、いわば直接配当型の給付についてである。
具体的事例として挙げているのが、「オランダ病」(または「資源の罠」)と呼ばれる、1960年代オランダでの天然ガス輸出で潤った結果・連鎖で、国内製造業が壊滅的打撃を受けたのだが、この資源収入を現金給付として利用することである。
翻訳上適切な用語がなかったためか、諸にこの意味での利用なのか分からないが、適切性を欠く事例紹介ではなかったかと思う。

主として途上国に見られるベーシックインカム導入機運の高まり

本章の最後に、近年ベーシックインカムの導入機運が高まっていることを提示。
・2016年メキシコシティの市政府が、ベーシックインカム導入を盛り込んだ市憲章を起草
・これに先立ち、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会が域内各国にBIの採用検討を勧告
・2017年1月インド、ジャム・カシミール州財務相がBIの段階的導入方針発表
・2017年インド中央政府定例経済報告でBIの是非を論じ、直後財務相が1年以内の試験プロジェクト開始の意向

こうした傾向は、豊かな国より途上国のほうがBIを導入しやすい、既存制度からの移行コストが少なくて済むことなどが要因ではないかと。
先進国は一部の人だけを対象とする給付制度が、何十種類・何百種類も複雑に絡み合っているのだ。
そして、途上国においては補助金制度の解体が困難で、現金給付への移行は簡単ではないことを繰り返すが、イランなどにみるように、現金給付への転換そしてベーシックインカム採用が、開発戦略の主流として認められ始めていると括っている。


開発途上国におけるベーシックインカム推奨論の罠


ここまで詳しく論じる予定ではなかったのですが、あまりにも中途半端ではまずいと思い、ほぼ構成に従って見てきました。
途上国における現金給付とそこから連想されるベーシックインカム政策との親近性、親和性が、ガイ氏が本章を設けた背景にあると推察・推論します。
その気持ち、意義は分からなくもないですが、歴史的に救貧に発した社会福祉や社会保障制度の先行モデルを導入・運用管理してきた先進国におけるベーシックインカムの実現をより早めるための方法論や理論の方に、より注力・優先すべきではないか。
これが、ガイ氏に対する率直な思いです。
途上国のほうが実現の可能性が高い、としていますが、あくまでも感覚的な捉え方であり、国際機関の要請・推奨が後押しするかのようですが、それらの国々の多くに共通なのが、国情や政情が不安定であることです。
そうした途上国レベルでは、貧困政策が最も重要で、かつアプローチしやすい課題と勝手に判断していると思わずにはおれません。
そうした国々でベーシックインカムが先行して導入されれば、先進国も追随せざるをえない。
こんな穿った見方さえしてしまいそうになります。
本筋としては、先進国がベーシックインカム導入のお手本を見せ、その導入ステップのモデルを途上国に提供するというのが望ましいあり方でしょう。
貧困政策の先も見据え、社会的経済的基盤の拡充・整備、そして開発をも現実的に構想・発想しうるベーシックインカム・モデル。
それなしに、途上国のベーシックインカム導入を何かしらの代弁・代言・代行をするかのように振る舞うことには賛成できない。
そういう意味からも、日本独自のベーシックインカム、ベーキック・ペンション生活基礎年金制度の考察・提案を継続していきます。

残すところあと2回となった次回第12回は、第11章 推進運動と試験プロジェクト及び「付録 試験プロジェクトの進め方」を取り上げます。

『ベーシックインカムへの道 ―正義・自由・安全の社会インフラを実現させるには』目次

はじめに 
  政治的な課題?
  本書について
第1章 ベーシックインカムの起源
 ・基本的なこと
   「ベーシック」とは?/「普遍的な」とは?/「個人への給付」とは?/
   「無条件」とは?/「定期的」とは?/
 ・注意すべき点
 ・ベーシックインカムとベーシックキャピタル
 ・ベーシックインカムの起源
 ・さまざまな呼称
   ベーシックインカム/ベーシックインカム・グラント(BIG)/
   ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)/無条件ベーシックインカム/
   市民所得/参加所得・参加給付金/社会配当・万人配当/
   ステートボーナス(国家特別手当)/デモグラント/
   フリーダム・グラント/安定化グラント/ステークホールダー・グラント
第2章 社会正義の手段
 ・社会共通の遺産 ー トマス・ペイント社会配当
 ・リバタリアンの議論
 ・ヘンリー・ジョージの遺産
 ・ミドルズブラの物語
 ・レンティア経済
 ・社会正義のための政策の原則
 ・税の正義
 ・家族関係と正義
 ・地球環境の保護
 ・市民精神の強化
 ・宗教的根拠
 ・まとめ
第3章 ベーシックインカムと自由

 ・リバタリアンの視点
 ・リバタリアン・パターナリズムの危険性
 ・共和主義的自由
 ・社会政策が満たすべき原則
    パターナリズム・テストの原則/「慈善ではなく権利」の原則   
 ・権利を持つ権利
 ・人を解放するという価値
 ・発言力の必要性
第4章 貧困、不平等、不安定の緩和

 ・貧困
    普遍主義と透明性
 ・給付金は浪費されるか?
 ・不平等と公平
    主要な「資産」に関する不平等
 ・経済的な安全 ー不確実な生活という脅威
 ・リスク、レジリエンス、精神の「帯域幅」
第5章 経済的議論

 ・経済成長
 ・自動安定化装置としての役割
 ・金融機関のための金融緩和から、人々のための量的緩和へ
 ・ユーロ配当
 ・AIロボット時代への準備
 ・経済面のフィードバック効果
第6章 よくある批判

 ・ハーシュマンの三つの法則
    「現実離れしている、前例がない」/「予算面で実現不可能だ」
    「福祉国家の解体につながる」/
    「完全雇用など、ほかの進歩的政策の実現がおろそかになる」/
    「お金を配れば問題が解決するという発想は単純すぎる」/
    「金持ちにも金を配るのは馬鹿げている」/
    「ただで何かを与えることになる」/「浪費を助長する/
    「人々が働かなくなる」/「賃金の下落を招く」/「インフレを起こす/
    「移民の流入が加速する」/「政府が選挙の人気取りに利用しかねない」/
第7章 財源の問題

 ・大ざっぱな試算
 ・イギリスの場合
 ・住宅手当の問題
 ・ほかの国々の財源問題
 ・経済に及ぼす好影響
 ・その他の財源
 ・政府系ファンドと社会配当
 ・財源問題は政治問題
第8章 仕事と労働への影響
 ・無給の仕事が増えていく
 ・お金を手にすると仕事量は減るのか?
 ・プレカリアートの仕事と労働
 ・性別役割分業が弱まる
 ・働く権利
 ・参加所得
 ・もっと怠けよう
 ・創造的な仕事と再生の仕事
 ・障がいと稼働能力調査
 ・仕事と余暇の優先順位
第9章 そのほかの選択

    最低賃金(生活賃金)/社会保険(国民保険)/
    資力調査に基づく社会的扶助食料などへの補助金/
    雇用保証/ワークフェア/給付型税額控除/
    ユニバーサルクレジット/負の所得税/慈善活動
 ・ベーシックインカム以外の選択肢が持つ欠陥
第10章 ベーシックインカムと開発

 ・ターゲティング指向と選別指向
 ・現金給付プログラムから学べること
 ・試験プロジェクト
    ナミビア/インド
 ・財源の問題
 ・補助金からベーシックインカムへ
 ・人道援助の手段として
 ・紛争回避の手段として
 ・途上国のほうが有利?
第11章 推進運動と試験プロジェクト

 ・ベーシックインカム世界ネットワーク(BIEN)
 ・2016年のスイス国民投票
 ・ユニバーサル・ベーシックインカム・ヨーロッパ(UBIE)
 ・過去の試験プロジェクト
    マニトバ州ドーフィン(カナダ)の実験/
    アメリカのチェロキー族 ー 偶然の実験/
    ナミビアとインドの試験プロジェクト
 ・進行中もしくは計画中のプロジェクト
    フィンランド社会保険庁/オランダの地方自治体/
    カナダのオンタリオ州/Yコンビネーター/
    ギブ・ダイレクトリー(ケニア)/クラウドファンディング/
    その他の計画
 ・効果は継続するか?
 ・結論
第12章 政治的課題と実現への道

 ・移行への障害
 ・世論の圧力
 ・政治的な必須課題
 ・小さな一歩?
 ・市民配当? 安全配当?
付録 試験プロジェクトの進め方

    ベーシックインカムとして適切な給付であること/
    実験の設計が明確で、持続可能であること/
    設計が常に一定であること/
    それなりの規模でおこなうこと/
    それなりの期間にわたり実験をおこなうこと/
    複製可能で拡張可能であること/
    無作為抽出した比較グループを用いること/
    ベースライン調査を実施すること/
    評価調査を定期的におこなうこと/
    有力な情報提供者を活用すること/
    多層的な効果を測る実験であること/
    検証したい仮説を実験開始前にはっきりさせること/
    コストの計算と予算の計画が現実的であること/
    サンプルをできるだけ変えないこと/
    現金給付の仕組みを監視すること/
    人々の自己決定権の要素も検討すること/
謝辞 
世界のベーシックインカム団体

<『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ>展開計画

<第1回>:ベーシックインカムの教科書『ベーシックインカムへの道』の特徴と考察シリーズ方針
<第2回>:「第1章 ベーシックインカムの起源」から

<第3回>:「第2章 社会正義の手段」から
<第4回>:「第3章 ベーシックインカムと自由」から
<第5回>:「第4章 貧困、不平等、不安定の緩和」から
<第6回>:「第5章 経済的議論」から
<第7回>:「第8章 仕事と労働への影響」から
<第8回>:「第9章 そのほかの選択」から
<第9回>:「第7章 財源の問題」から
<第10回>:「第6章 よくある批判」から

<第11回>:「第10章 ベーシックインカムと開発」から
<第12回>:「第11章 推進運動と試験プロジェクト」「付録 試験プロジェクトの進め方」から
<第13回>:「第12章 政治的課題と実現への道」から、及び、総括

少しずつ、よくなる社会に・・・

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