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誤解を招く発言への客観的自己評価ができない竹中平蔵氏のベーシックインカム論、弱者切り捨て論


無責任ベーシックインカム論に端を発して「私が弱者切り捨て論者というのは誤解」と言い訳を繰り返す竹中平蔵氏


日本の格差、貧困を議論するうえで、よく名前が挙がるのが竹中平蔵氏だ。

東洋経済オンラインで、貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」において、2021年12月2日に、 竹中平蔵氏へのインタビュー記事を掲載していた。
同氏は、小泉政権下で構造改革を推し進め、2004年の製造業への派遣解禁など、非正規労働者を拡大した政策の旗振り役とされている。

今回のインタビューの中でも「ベーシックインカムは究極のセーフティーネット」と言う同氏のBI発言及びBI論について、当サイトでは、これまでも以下の記事を投稿してきた。

竹中平蔵の暴論はシカトすべき!:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-1 (2021/1/14)
宮内義彦氏の話を耳をかっぽじって聞け、竹中平蔵:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-2 (2021/1/15)
ベーシックインカムを突き詰めて考えたことはない竹中平蔵氏 (2021/8/17)
『ポストコロナの「日本改造計画」』における竹中平蔵氏のベーシックインカム論(2021/8/21)

それらは、マスコミが報じた内容から、あるいは同氏自身の著書の内容に基づくものであった。

今回も同様だが、果たして、従来とは異なる、あるいはこれまでの反省・自己評価を踏まえて、何かしら新しい切り口での発言や提案があるかどうか。
以下、ベーシックインカムに関する部分に焦点を当て、その質疑応答内容を一部簡略化して引用し、それに対する意見感想を加えていく形で進めていきたい。

「思い切って挑戦するために必要なベーシックインカム」とは言うが


 インタビュー冒頭から、ベーシックインカムが課題とされました。

<東洋経済Q>:2020年秋に、TV番組で「ベーシックインカム」に言及し、賛否両論を巻き起こした。

これはコロナ禍で急に出た話ではなく、以前から貧困対策として「負の所得税」、給付付きの税額控除(低所得者に対して減税や現金給付を組み合わせて割り当てる)を提唱している。
それを個人に対する毎月の現金給付という形でわかりやすくしたのがベーシックインカム。

日本は第4次産業革命に直面しており、いろいろな人にチャレンジしてもらわなくてはならない。
チャレンジをすれば成功だけではなく、失敗する場合もあり、思い切ってチャレンジするためには、失敗しても大丈夫な「究極のセーフティーネット」が必要で、それがベーシックインカム。
コロナ禍でも、困り方は多様で、状況は違っても、個人の基本的な生活を同じように救済する(BIは)きわめてフェアなやり方だ。 


 究極のセーフティネットと呼ぶには力不足の月額7万円案。
 その根拠・論拠は、以下に示された、いかにもイージーな考え・姿勢にあったのです。

<東洋経済Q>: TV番組では、具体的に月7万円という額を提示。

あれは日本銀行審議委員も務めた原田泰さんの試算で、今の年金や生活保護の予算を小さくできるので、月7万円程度であれば大きな財政負担にならずに実施できるという、1つの基準として出している額。
ほかの税金を上げて歳入を増やせばもっと高額にでき、そこまで必要ないということであればもっと少なくもでき、それは国民の政治的判断、チョイス。


 究極も何も、その金額決定は、財政上の制約を前提としつつ、国民の判断によると、原田案持ち出しから逃げ出す姿勢がはっきり。
 この程度の浅い考え方から、本質や現実性を欠いたBI論の消費がまたそれ相当のレベルで行われることになったと言えるでしょう。

(参考):原田泰氏著『ベーシック・インカム – 国家は貧困問題を解決できるか』(2015/2/15刊)

「年金や生活保護がなくなる」は悪意の議論という竹中論は、議論にならない無責任論

こう言うとまた「年金がなくなる」「生活保護がなくなる」と言われるが、それは悪意の議論で、そんなこと一言も言っていない。
現在のような生活保護の制度はなくなる


 と、はやり言っているんです。
 だから悪意で解釈しているわけではなくて、厳にそう言っているのは間違いないのです。
 そして、こう付け加えています。

でも生活保護の一部、例えば疾病のある方の医療費を無料にするといったことはまた別の救済措置が必要で、そんなに単純な議論ではない。
今はうっぷんを持っている人が、他人の悪口を言って溜飲を下げてそれで終わり。一部のネットやメディアがまたそれをあおる。これは何も生み出さない。
こうしたら日本全体がよくなる、自分の生活がよくなる。そういう建設的な議論にならなくなっているのが、私が今この社会で一番心配していること。


 建設的な議論にならないことが心配、と言うけれど、建設的な提案をせず、金額は他者の提案を借用するだけで、その具体的な内容・方法については、次の釈明のように、他人任せにしていることこそ問題なのだという自覚がまったくないのです。

<東洋経済Q>:ベーシックインカムを導入した場合、生活保護の何を残し、何をなくすかについては、どんな構想を?

それは制度設計の話で、どの制度設計がよいとは言っていない。
さまざまな考え方があるから、その議論を始めたらいいと言っている。


 まあ、こういうスタンスは、竹中氏に限らず、経済学者であろうと社会保障・社会政策学者であろうと、日本のBI論者に共通するもので、彼だけを責めるわけにはいかず、当サイトでは、さまざまなBI論を取り上げるたびに必ず指摘してきています。
 すなわち、BIと関連するすべての制度・法律など幅広く、体系的・総合的かつ個別政策課題については具体的に考察し、提案することがなく、単なる総論、単なる意見で終わっているのです。

 ただ、竹中氏は、以下のようにくだらない言い訳をして、見苦しく、聞き苦しい自己防衛を図るのです。

ただ、まず日本に絶対的貧困層がどのぐらいいるのかが正確にはわからない。
第1次安倍内閣時、塩崎官房長官に調査を提案したが、短期政権で実現できなかった。
貧困にはいくつかの要因があり、働きたいが仕事がない場合に必要なのは雇用対策。
働いているが給料が安いという問題は、最低賃金(問題)。
働きたいが体が悪いという場合は、医療の問題。
それぞれの問題に該当する人に対して、ベーシックインカムで賄いきれない部分に別途どんな措置をするのか、総合的な議論が必要
だがこれは非常に難しい議論
BIが高すぎれば働くインセンティブがなくなり、低すぎるとセーフティーネットにならない。
5年ほど前にスイスで国民投票があったが、月額28万円で、高すぎると反対され否決された。
日本でも「私の政党の支給額はこのぐらい、その代わり税金はこのぐらい」というチョイスを各政党が競って、国民に選んでもらえばいい。

 
 難しいからこそ、議論検討し、具体的にどうするか、どうあるべきかを提案すべきなのです。

 ここでは、他人の論であろうが、7万円という金額を持ち出すからには、その論拠・根拠と関連する諸制度の改正・改革案も、ある程度のところまで具体的に示すのが、学者の責務でしょう。
 ことのついでに、こういうことまで持ち出します。



<東洋経済Q>:今はその議論すらない。

そうだ。
これは究極の社会保障と税の一体改革でもあり、実現すれば国税庁と年金機構をデジタル歳入庁とでもいうべき機構に統一できる。
どちらも国に払っているのに、税金は税務署、年金は年金機構、別々に払うのはおかしい。
アメリカもイギリスも歳入庁を設けています。そういう当たり前の議論が必要だと思います。


 BIを、<社会保障と税の一体改革>と結びつける意志があるならこそ、関連諸制度について具体的な方法論こそ提案すべきであり、歳入・歳出問題は、BIとは直接関係のない話。
 支離滅裂のひとり議論に終わらせているのです。

未だ明確な提案がないベーシックサービスを簡単に支持するという、新たな無責任

 そして、インタビューアーが持ち出したベーシックサービスについて話は及びます。

<東洋経済Q>:現金を支給するのではなく、教育や子育て、医療、介護などのサービスを無償で提供する「ベーシックサービス」という考え方もあるが?

ベーシックサービスは公務員がサービスを提供する。
公務員がやるほうがいいサービスができるか? 国鉄は民営化してよくなった。
民間でサービスを競ってもらって、お金を自分で選んで自由に使えるほうがいい。

 
 ベーシックサービスは公務員がサービスを提供するもの、という前提そのものがまだ認定されておらず、そもそもベーシックサービスとはどういうものかさえ、体系的・制度的に、具体的に提示・提案はされていないはず。
 加えて、選んで自由に使うお金は、どうやって手に入れるのか、だれもがそのお金を持ちうるのか、持っているのかという原点の問題があります。

<東洋経済Q>:(ベーシック・サービスを)提供するのが公務員でなければ、考え方としてはあるか?

考え方としてはあるが、重要なのは、使う側にチョイス、選択肢があるのかと、選ばれるためにいいサービスを提供しようと競うことによって、民間産業が発展すること
もちろん医療のように公共性の高いものについてはバウチャーでやる方法もある。そこは細かく見て制度を作っていけばいい。


 先に述べたように、そもそも、ベーシック・サービスを提案している研究者も政党も、具体的にベーシック・サービスとはどういうものか、どういう制度・法律に基づき、なにを論じている財源とし、どの規模の財政支出を必要とし、どのように運営・管理するのか、提示・提案していないのです。
 その状況で評価し、自論を述べるのもいい加減なものです。

 それにしてもまあ、上記の認識に、新自由主義者とみなされる彼の考え方が見事に示されています。
 民営化がすべてを解決し、理想を実現する、という。
 公務員をどんどん削減し、公的サービスを民間に委ね、競争原理を働かせれば、みな幸せになれる、式の。

 分割された国鉄の一つJR北海道は赤字続きで多くが廃止路線化。
 大手電力は、既得権益に守られ、誤った電力自由化政策でも、なんら国民にメリットをもたらすことはない。
 公定価格制で未経験者も多数参入した介護業界は、零細・中小規模事業者の多くが倒産の憂き目にあっている。
 競争に生き残る企業は、国会議員や官庁との関係作り・関係維持に腐心し、あるいは相変わらずカルテルを結ぶことで、それが可能な企業が権益を占め、公正な競争から排除され、格差が一層拡大していく。

 そういう現実は、彼にはまったく見もせず、見えてもおらず、自ら権益の権化と化しているのです。
 その実態は、以下のやり取りで一層明らかになります。

多様な弱者、多様な若者にとっても有効なベーシックインカムの有効性・有意義性を展開すべき

<東洋経済Q>: 非正規雇用に関連して、「弱者切り捨て論者」と見られがちだが。

それは単なる誤解。
働き方、雇い方は本来自由でないといけない。
今製造業が占める割合は20%弱で、それ以外では多様な雇い方、多様な働き方ができたほうがいい。
終身雇用・年功序列前提でない制度にしていかなければならないわけです。
派遣で働いている人にアンケートを取ると、派遣がいいからこれで働いていると答える人も多く、これは多様な働き方・多様な雇い方を可能にしている。

ただし、多様な働き方をするうえで不平等があってはならない。
残念ながら現在は、正規・非正規の間の「同一労働同一賃金」がまったく実現されていない
ここが大きな問題です。

今の構造はある意味単純で、正規社員が非正規社員を搾取している。
生産性に合わせて賃金が支払われなくてはならないのに、自分の生産性より高い賃金をもらっている正規と、自分の生産性より低い賃金しかもらえない非正規の二重構造になっている。

不平等を解決するための方法、例えば労働時間ではなく成果に対して賃金を支払うとか、解雇の問題が起きた際の金銭解雇のルールを作るといったことに対して、既得権益を持った人たちがずっと拒み続けて今日に至っている。今、一部の人たちがその割を食っているわけだが、その背後にある大きな構造問題をちゃんと変えていかないと。
一部の派遣がどうこうという話ではない。


 自身が一企業の会長職を務める派遣労働業自体が、派遣労働者の収入の一部を仲介手数料として入手するビジネスモデル。
 その事業で利潤がでていなければ搾取しているとは言えないでしょうが、とんでもないことで、コロナ禍でもしっかり稼げる、人間をピースとして活用するシステムビジネスです。
 正規・非正規雇用システムの恩恵を最も受けている業種であり、みずから「同一労働同一賃金」課題に取り組むことなどありません。
 
 非正規雇用は、働く人の意志。
 そういう人ももちろん居るにはいますが、正規雇用を望む人が圧倒的に多い現実は、しっかり認識しているはず。
 「一部の派遣がどうこうという話ではない。」などとよく白々しく言えたものです。

 私自身あまり新自由主義云々と批判することを好みません。
 しかし、竹中氏の発言は、こうした○○主義という十分な(時に偏った)思索に基づくようなものではなく、むしろ上っ面な、軽薄な意味・響きしか伝わってこないようなもの、こととしか思えないことが多くなってきているのです。

竹中氏に対するマスコミの姿勢・評価が変化していかない不思議

 このインタビューが元々若者の貧困問題テーマとしており、以上のやり取りの他、教育問題や被選挙権の年齢引き下げ提案を含む政治への関心についてなどが続きます。
 それらは、当サイトの課題であるベーシックインカムとは直接的には関係がないため割愛します。

 しかし、先の非正規雇用の人々の低賃金・低所得、雇用と所得の不安定や、若者の貧困と格差問題、教育を受けるための経済的な不安などを改善・解消し、安心して生活できる、安心して教育を受けることができるようにするための政策として、ベーシックインカムは非常に重要で、成果・効果がもたらされることは、容易に想像できます。
 それを竹中氏は、「挑戦するために必要なベーシックインカム」としているのですが、純粋にそうと見ているだけではないことも、その無責任性に、一層疑心暗鬼を抱かせることに繋がっています。

 問題視された竹中BI暴論を、これからも取り上げるマスコミがでてくるのでしょうが、もうそろそろ、正面切って同氏論を批判する、あるいは批判的にインタビューするところが出てきてもよさそうなものです。
 しかし、期待すること自体ムダと考えています。
 数回重ねてきた竹中BI論問題。
 そろそろ今回で打ち止めにし、建設的な検討・考察に戻すべきと今回の取り組みで、再度確認した次第です。

 そういう竹中氏を、岸田内閣が懲りずに、いわゆる有識者として各種専門会議メンバーに選抜していることを、苦々しく思いつつ、何一つ革新的な社会制度・社会保障制度が実現されないまま終えようとしつつある2021年です。

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