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2020・21年考察

ベーシックインカム財源に関するNI氏論とのWEB対論

今回は、運営する運営し提案するFACEBOOKグループ
「ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング」
に時々ご意見を頂いているNI氏からのコメントを紹介し、感じたところ、考えたところを回答として記してみました。
焦点は、「ベーシックインカムに対する財源」です。
以下原文のまま、転載し、私の考えをメモする形です。

NI氏提案のベーシックインカム基本認識・提案

1. ベーシックインカムは国民全員に無条件に給付する概念で有り、殆どの国民が給付を必要とする社会状況が生まれない限りは、経済的に困窮する人に限定して給付する現在の社会保障制度が継続するかと思います。その方が当面の税収を基礎とする限られた財源を真に必要な人に給付する事になろうかと思います。

2. 殆どの国民が給付を必要とする社会は、AI化・ロボット化が進行し、国民の多くが失業状態になり、需要が低下し、資本主義が行詰まる状況下で必須になると考えられます。
今回のコロナ禍により、相当の数の人が失業状態になり、国家が全員に給付したことはその状況を予兆すると考えられます。

3. 必要資金の大きさと持続可能性を考えると必要な貨幣の捻出の検討が最重要課題です。


この3項目は、NI氏の現状でのベーシックインカムの基本的な考え方を示しています。
読み取れるとおり、部分BI、限定BIです。
よりストレートに申し上げれば、ベーシックインカムではなく、社会保障に組み入れられる時限的な制度です。
一方で、完全BIの必要性、実現可能性は、AI社会の到来にあるという不確定な要素に求めています。
すなわち、現状の社会保障制度を評価する立場であると読み取れるわけです。
この認識時点で、私が提案するベーシック・ペンションにおける基本認識と異なることが確認できます。

まあ、それはそれとして、今回の主題である、財源面からの同氏の意見を以下見ましょう。

インフレ必定の各種ベーシックインカム提案に対する不信と不安、それによる否定

4.税収財源とは無関係の政府のデジタル通貨による支給又は赤字国債の買い上げは、必ず、インフレを招くと思います。日本の場合で、国民全員に10万円支給すると必要貨幣は約160兆円、15万円だと240兆円になります。国家予算が100兆円、GDP約500兆円に比較して、巨額です。

5. これだけの巨額の貨幣を市中に毎年、継続的にばらまくのですから、インフレ対策としての銀行による信用創造を無くす手段も効果は発揮するとは思えません。

6. 生産能力は対応出来るので、需要と供給の関係からのインフレは無いという人がいます。
貨幣が市中に大量に滞留し、需要が増加しても、科学と技術に支えられた生産能力があり、十分に供給されるので、インフレは起こらないと言う説です。
鉱物、エネルギ-・食料等の有限性を考慮する必要があります。
不動産や株も有限です。それらの要素を考えれば、必ず、インフレは起こります。

7. 一国で税収に無関係な貨幣を大量に発行した場合も、その国の通貨安となり、輸入物価の高騰によるインフレが発生します。

8. 自国で通貨を発行できる国はいくらでも発行できるので、財政破綻は無いとと言う説があります。又、国債を発行し、その国債を中央銀行に買わせれば、財政破綻は無いと言う説もあります。
しかし、財政破綻は無くとも、上記6,7項のインフレが起こり、ベーシックインカムでは生活できない状況に陥るかと思います。

9. 市中に出回る貨幣は税という手段で回収する方法でしかインフレを抑制出来ないと思います。
課税は所得税と事業税を累進制とし、相続税100%(相続は認めない)適用です。


NI氏の提案の根源は、インフレリスクへの懸念と財源問題を根底にするゆえの富裕層への給付不要論にあります。
そして、BI支給の基準の審査管理業務のコストは、一応基準をゆるくという条件は付していますが、恐らく相当の事務コストが発生するでしょうし、漏れや裁量制の問題も大きくなることはあれ、縮小することはないのではと私は思います。
種々の支援金や給付金にまつわる不正・違法の発生が、その可能性を示しています。
厳罰をもってしても、です。

さて最大の課題は、インフレ発生リスク絶対論と、そのリスク抑制機能あるいはシステムへの不信感です。
私の提案するベーシック・ペンション案に対して、かねてから当然NI氏は、絶対インフレ発生を主張されています。
私自身、そのリスクを当然認めていますし、絶対的な処方を提示することも現状できていません。
その事情等については、先日、以下の記事で書き記しました。
ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

また、インフレ抑制システムの一助となるようにと、デジタル通貨化や使用方法の限定、通貨の回収と消却(バーン)などの手段などもアイディア・レベルと、論者の多くには評価に値しないかもしれませんが、他に見られない方法や配慮を加えています。

そして中長期的に、エネルギーや食料等の生活基礎消費部分においての国内での自給自足経済の実現を目標として、このベーシック・ペンションを施行することもです。

これまでのNI氏とこうした面でのやりとりがありましたし、私の以下の提案もご覧頂いているはずです。
しかし、上記の問題提起が繰り返し行われていることで、到底理解・納得できないものと評価されていることが明らかです。

日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金「10のなぜ?」を始めます(2021/1/19)
なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ?-1(2021/1/20)
なぜすべての個人に、平等に、無条件にベーシック・ペンションを支給するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-2(2021/1/21)
なぜ日本銀行が、デジタル通貨でベーシック・ペンションを発行・支給・管理するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-3(2021/1/22)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
なぜ循環し、回収消却され、再生し、世代を継承していくベーシック・ペンションなのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-6~10(2021/1/24)

正直を申せば、意見・見解の相違が交わることはないかと思っています。
ただ、絶対にインフレが起きるかどうか。
その断定には私は多少なりとも疑問を持っています。
仮に完全雇用が実現した場合には、当然GNI(国民総所得)は増え、GDP(国民総生産)も増えます。
それは、税収が増えるためインフレ抑制要因となる、望ましい経済成長という評価になるのでしょうが、その成長が、貧困や格差の解消に直結するかどうかの確証はありません。
むしろ拡大するリスクの方が高いのではと思います。
べーシック・ペンションの先行給付で、経済が活性化され、成長が促され、新たな税収増を期待できるようになることもほぼ間違いないと思われます。
ニワトリが先かタマゴが先か、的な課題と言えます。

また、インフレに対応できる額ではなくなってしまうリスクも指摘されますが、緊急事態措置として給付額を増やし、収まれば、未使用分を回収・消却するシステムも組み入れ可能です。
デジタル通貨ゆえできるシステムです。
現金給付では、この対応ができません。

まあ、こうした種々の準備や対策を事前に検討し、インフレリスクの抑制対策を引き続き検討していくつもりです。
その中に、不動産投機などの規制など法制化する選択肢もあることは、上記の先日の記事にも加えています。

「相続税100%」論に対する反対論

次に、同氏が提案する税財源確保方法のうち、以下の相続税100%提案についてです。

9. 市中に出回る貨幣は税という手段で回収する方法でしかインフレを抑制出来ないと思います。
課税は所得税と事業税を累進制とし、相続税100%(相続は認めない)適用です。

10. 相続税100%(相続は認めない)というのは、新しい価値観を大多数が認める事です。
本来、相続は親が自分の才覚と努力で稼いだ資産であり、子供とは無関係です。
親が資産を子孫に残そうとするのは、不安のない生活を送ってもらいたいと思うからです。
政府がベーシックインカムで住居、教育を保障し、贅沢ではないが豊かな生活を送れること保障をすることで、安心してもらうことです。
イメージとして支給額は現状の生活保護の1.5倍程度は最低限必要かと思います。
人生は貨幣を通じての一種のゲームで有り、各個人は人生が終われば、社会に戻すとの概念です。
又、多額の遺産で、子孫が自分の人生を誤る(色んな意味で)ことも配慮に入れるべきです。
各個人はベーシックインカムの保障で安心し、その上で、自分の能力を発揮し、更に多くの貨幣を手に入れた人は贅沢でも何でも、自分一代でやれば良いとの考えです。


NIさんにしては、珍しく、狭量かつ視野の狭い判断と言わざるを得ないでしょう。
まず相続は、子どもだけではなく、配偶者も相続する權利をもつことが欠落していること。
また、子どもにも例えば障害を持つ子どももいること。
こうした事情に配慮せずに、相続は認めない、というのはどういうものでしょうか。
それよりも子どもの将来のために資産を残したいという考え方自体、否定することはできないということ。
万一それを否定するならば、何らかの対処を人は行うでしょう。
生前、贈与税適用対象にならないよう、種々工夫するでしょうし、資産で法人を作り、(成人の)子どもを法人の役員にして、報酬を支払う形にすることも可能です。
(もちろんその報酬に源泉徴収税がかかりますが、相続税として100%取られるよりもメリットは大きいです。)
極論を言うと、突然の死去で、相続対策を講じていない場合を除いて、当てにした相続税収が限りなくゼロに近くなるということも想定内のこととしておくべきでしょう。
また文章では多額の遺産、とありますが、すべてが多額とは限りません。
そこまで否定して相続税100%とすることは、私権否定の共産主義に繋がる側面を持つものと私個人としては考えます。
また、「住居、教育を保障し、贅沢ではないが豊かな生活を送れること保障をする」金額と支給対象者および基準についての、具体的な提案も、その財源を含めて知りたいところです。

人生は貨幣を通じての一種のゲーム」というのも、いかがなものでしょうか。
少なくとも私自身は、そんな感覚や動機で人生を考え、生きてきた記憶はまったくありませんが。

NI氏によるベーシックインカムの実現可能性

こうした事情から、同氏は、BIの実現性について、こう語ります。

11.以上を考えるとベーシックインカムが導入される時期と状況は、以下だと思います。
(1)AI化、ロボット化が進行し、大量失業者が出て、購買力を喪失し、資本主義が成立しなくなる時期
(2)その様な状況を踏まえ、多くの国民が上記9,10項の概念を認めるようになる状況
(3)グローバル化経済では、一カ国単独では、ベーシックインカムは成立出来ないので、少なくとも、主要経済先進国での同時適用に合意する状況。
理想的には、世界の出来るだけ多くの国の適用が望ましいが。


そもそも大量失業者が出てからでは遅いです。
資本主義が成立しなくなる時期があるという仮説を用いるならば、その時の社会あるいは国家及び経済のあり方を、仮説としてでも示すべき(不可能なことではありますが)でしょう。
グローバル化経済での制約・限界については、ベーシック・ペンションは、極力グローバル経済の枠外、日本国内経済の枠内に収める、収まる形でのシステム化・制度化を追求するものです。
(ゆえに、デジタル通貨システム化の課題を含めて、10年がかりの課題としています。)
但し、その進め方・基準については、各国に説明し、できる限りの理解を得ることを求めています。
また、その実証により、他の諸国へのベーシック・ペンションのシステムを移管できるモデルとなるよう取り組むことも目標としています。
すなわち、残るは、NI氏が最も懸念し、BIもしくはBP実現の最大のネックとする、先述したインフレ問題に集約されます。

最後にこう締めくくります。

12.ベーシックインカム適用はまだ先のことでしょうが、その前段階として、世界の主要国がその概念の普及を進め、一党独裁国家が民主化し、国連が改革され、地球が国際連邦化に近い状況になっていくことだと思います。日本に未来のビジョンとしてベーシックインカムと国連改革を掲げる政党が出てくる事に期待したいものです。

見果てぬ夢ですね。
同氏がロマンチストであることを示す内容ですが、それよりも少し現実主義である私としては、先ず日本でそのモデルを創造できないものかと・・・。

FACEBOOKグループにおける追論紹介

ついでと言っては失礼ですが、やはり私が運営するFACEBOOKグループ
「ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング」
にコメント頂いた中でのやり取りを以下に転載しました。
初めにMAさんのコメント、次に、NI氏のそれに対するコメントです。

(MAさん)
デフレが20年以上も続き、コロナパンデミック騒動で多くの人が職を失い、収入が無くなり、一家離散やホームレスになって、おカネが無いことで追い詰められていますから、最底辺の生活を底上げするために今は積極的な財政出動で、貧困者が一人もいなくなるように『健康で文化的な生活』を保障する現金給付を、早急に今月から始めなければなりません。 
『健康で文化的な生活』をするには、一人当たり毎月15万円と仮定すれば、とりあえず全国民に15万円ずつ毎月政府が現金給付することです。
すでに去年一回、特別給付金という形でやっていますから、その時の登録した口座に振り込む形で、マイナンバーと紐付けにすることなくすぐに給付できるはずだから、補正予算を今の国会で大至急くんで、今月中に第一回の給付をやれるでしょう。そして皆の生活が活気を取り戻すまで様子を見ながら、金額や給付対象者を調整しつつ、現金給付を継続するのです。
この事は、今の国会で最優先で実行すべき事で、デジタル政府の推進などよりはるかに緊急を要し、貧乏人にとっては生存権のかかった最重要案件です。
現金給付の財源は、国債を臨機応変に発行して第一回の補正予算で20兆円ほどは必要で、状況に応じて毎月途切れなく給付金を、特に非課税証明が出る人(生活保護受給者を含む)等の底辺の人たちには、余さずおカネがわたるようにしなければなりません。
そして給付金は所得として総合課税として、富裕層特に大富豪からは最大80%の税率で所得税を徴収して、所得の再配分を実行できるように、税制大綱を見直す必要があります。
日本ばかりか地球人類がこれから永久に続く幸福な世界を創るとしたら、政治に携わる者は大慈悲心=宇宙の法則に素直な精神を持っていなければ、全人類を包含、総括する資格は無いです。
スガ内閣が躍起となる『デジタル政府』はトップの為政者が利他愛に立っていない限り、国民を不幸にするのは間違いありません。
参考に、柿沢未途衆議院議員の主張をご覧ください。https://mainichi.jp/…/20210329/pol/00m/010/008000c…

MAさんのお考えについての私の意見は、別の機会にさせて頂きます。
目的は、NI氏との対論ですので。

(NI氏)
主旨には大賛成です。
全国民に一律15万円は、疑問です。
年金受給者や公務員、更に今回のコロナで収入が逆に増加した人まで、一律に給付するのは馬鹿げております
本当に困っている人に限定し、毎月(例えば8万円)給付すべきです。
区分けが難しいと言う話や速さから一律という話は、本当に困っている人への援助額の不十分さという問題があります。
給付基準を明確にし、審査は簡便にし、多少の不正は諦めればよいかと。
但し、違反が見つかった場合の罰則と年末調整での是正を併用すればある程度の不正防止にはなります
真に困っている人に継続性をもって支給することが大事です。
財源については、MMT理論で政府はいくら支出しても良いという説もありますが、多数の了解や合意はありません。
現状は、税収が財源という考えで現実的対応を早期に実施することが大事かと思います。


基本的には、税収財源主義による、富裕層排除の論理になっているわけです。
結局、この方式で取り組むと、ゼロサム社会保障方式で、だれかが割の合わない立場になるわけです。
富裕のレベルがブレる可能性が高いですし、本当に困っているレベルの基準がブレることと重なって、ダブルで問題が拡大し、不満も、解消するよりも拡大するリスクが高まるのでは、と思っています。
むしろ意図する富裕層の不満にとどまらず、中間層の、給付を受ける困窮層への不満が高まる可能性が高くなることも想定されるのです。

生活保護制度の根本的な改善・解決も先送りであり、他の社会保障・社会福祉制度の問題への取り組みも、ほとんど触れられることがなく、モラトリアム政策にとどまるわけです。
前項に見られた理想を掲げることに比して、疑問を感じさせられる点です。

運営し提案するサイトやそのリンクを貼って問題提起しているSNSにおけるベーシック・ペンションに対する種々のご意見は、非常に有益なものと考えています。
見落としや配慮が欠落していることなどを理解・発見できるチャンスであり、再考や考察を深めるべき問題点の指摘を受けているとも考えています。

今後とも、ご意見・ご指摘、そしてご質問等宜しくお願いします。

<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

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