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少子化対策、2025年児童基礎年金月6万円支給と幼稚園義務教育化(2020/9/25)

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少子化社会対策の致命的な欠陥

 「少子化社会対策大綱」とか「少子化社会対策白書」とか、一応やっている感だけは、常にこうした情報公開で示してはいる政府・内閣。
 しかし、2004年に最初の大綱を策定して以来、その成果は上がるどころか、より厳しい状況を継続しています。
 その状況や欠陥としての取り組みについては、先月は以下の投稿で批判しました。
◆ 「令和2年少子化社会対策白書」と86万ショックと出生率1.36の現実(2020/8/17)
少子化社会対策と少子化担当相を糾弾する(2020/8/18)

 また、それ以前に展開した批判は、本稿の最後に、その記事の一覧をメモしています。
 要するに、従来の少子高齢化社会対策は、まったく機能しない根本的な欠陥を抱えているのです。

長引くコロナ禍で予想される1.36を下回る出生率の大幅低下

 その取り組みとは言えない少子化対策は、昨年2019年度には、以下のショックを社会にもたらしました。
◆ 出生率1.36、出生数90万人割れ、総人口減少率最大:少子化社会対策大綱は効き目なし(2020/6/11)
 そして、迎えて既に1年の4分の3を経過しようという時期にも先が見えないコロナ禍。
 現在と将来への不安は増すばかりで、出生率の一段の低下は、避けられない状況にあります。
 就労と所得を得る機会を失い、子どもは保育所や学校に長く通えない状況も断続的に発生。
 新たに、あるいはもうひとり子どもを持ちたいと思う親、男女が減るのは当然と言えるでしょう。
 それ以前に、結婚さえもためらう男女が増えることも同様です。
 こうした時こそ政府の本気度が問われるのですが、新政府・新内閣において、少子化対策を強化するという話は漏れ聞こえてきません。
 極めて悲観的な状況を招くのでは、と思われるのです。
 そこで、以前から種々批判しつつ、提起している案を整理し、シンプルな提案にしたのが今回の内容です。

2025年から6歳児以下の乳幼児に毎月児童基礎年金6万円支給

 少子化要因として最も挙げられるのが、育児・教育にかかる費用負担の大きさです。
 これは、夫婦の一方または双方が非正規で働いている方々、保育士や介護士など低賃金職種の方々、困窮する母子世帯・父子世帯の方々、そしてコロナ禍で現在と今後の就労と収入への不安を一層高めている人々に共通するところです。
 一人1カ月1万5千円、1万円という現状の児童手当では、育児保育・教育にかかる負担をカバーするには雀の涙程度です。
 機能していないことが、出生率に示されているわけです。
 では、いくらならば、不安感を解消でき、子どもを持つ気になるか?
 一応今回は6万円としてみました。

児童基礎年金月額6万円とした理由

 その理由は、当サイトで8月に投稿した
衛藤少子化担当相、第3子以降児童手当月6万円提起:コロナ不安で少子化加速に危機感(2020/8/22)
にあります。
 すなわち、8月21日に前任の衛藤晟一元少子化担当相が、日本記者クラブで行なった会見で述べた金額を持ってきたのです。
 一応、少子化担当相の公の場での発言だったので、少しは期待したいと思ったのも束の間、菅内閣の組閣で、衛藤さんは過去の人となってしまいました。
 でも一応そのレガシーを利用させてもらって、6万円としたわけです。
 因みにベーシックインカム導入提案における私の理想とする額は、月額10万円、大人は13万円です。
ベーシックインカム「生活基礎年金法(略称)」私案:第3章 給付金給付及び利用管理

児童基礎年金(児童手当)財源は、消費税税収の約2割を充当

 コロナで相当予算修正を余儀なくされるでしょうが、2020年の政府予算における消費税の税収見通しは、所得税(19兆5290億円)、法人税(12兆650億円)を抜いて、21兆7190億円とされています。
 仮に、昨年約86万人に減少した年間の出生数が、毎年年間100万人に戻ったとすれば、毎月の支給額を6万円として年間の給付金総額は、7200億円。
 2025年に制度を導入し、ゼロ歳児から小学校未就学6歳児まですべてを支給対象とすると、年間5兆4百億円の財源が必要です。
 現状の児童手当制度では、3歳未満までは月1万5千円、3歳以上は月1万円支給されています。
 その額で1歳毎に100万人居るとして計算すると年間総額は、1兆2百億円であり、実質増は、4兆2百億円。
 この額は、上記の年間消費税収予算がコロナ禍で下回り、20兆円とすると、その21%です。
 但し、2019年の出生数は約86万人と100万人に満たない人数であり、2020年は、より減少するでしょうから、必要費用はもう少し少なくなります。
 逆に、2021年以降の出生数が100万人を上回れば、必要額も増えます。

 目的税である消費税の主な使途は、年金・医療・介護・少子化対策の社会保障4経費に充当することになっています。
 この中の少子化対策に分配の比重を移して、児童基礎年金に充当することとすれば、比較的合意が得やすいのではと思われます。

2026年以降の児童基礎年金と財源の在り方

 前項では、就学前の乳幼児の児童基礎年金の給付についてでした。
 当然、それ以降、小学生・中学生と学齢15歳終了まで児童基礎年金を支給します。
2025年からの導入なので、2026年以降は、先に年金を受給していた子どもたちが、順次小学校に入学していき、継続して年金を受給します。
 ということは、1年毎に7200億円ずつ追加財源が必要になります。
 この小学校就学時からの財源は、別の財源とするのが望ましいと考えています。
 すなわち、消費税を財源とする児童基礎年金は、未就学乳幼児分だけとし、それ以降は、他財源で賄うのです。
 では具体的にどうするか。
 所得税とするか、相続税とするか。
 次項で述べるベーシックインカムを導入できるかどうかとも関係しますが、一応現状では、それに関係なく、所得税を想定するか、以前小泉進次郎議員などが提案したこども保険的なものがよいか。
もう少し考えて、提案したいと考えています。

並行してベーシックインカム制導入と移行への検討も

 消費税を財源とすることで、合意形成と導入時期の早期化が可能と考えての提案です。
 ただ、私は、全国民が無条件で、同額の支給を受けるベーシックインカム制の導入を提案しており、児童基礎年金という名称は、全体としては生活基礎年金という括りとして、対象を子どもとした場合の措置です。
 またベーシックインカム制の導入については、種々の考え方・方法があり、一朝一夕では合意できないと予想されるため、少子化対策を優先させる目的で、本稿を準備しました。
 従い、万一ベーシックインカム制の導入検討が、異なる考え方の中、一致点が見い出せ、具体的に検討される段階になれば、この児童基礎年金の金額も含め、その在り方も、含めて検討・改訂等されることになるでしょう。

 私が現状考えているベーシックインカム制、生活基礎年金制度については、以下の2つの法律私案記事とそこで紹介している種々の課題に関する記事の一覧から、確認して頂ければと思います。
「生活基礎年金法・前文」私案まとめ(2020/9/15)
「生活基礎年金法・本文」私案まとめ(2020/9/16)

2025年幼稚園義務教育化と保育園再編で待機児童ゼロ化

 児童基礎年金の支給は経済的な不安を少しでも軽減するための支援策ですが、働く女性や共働き世帯にとっての仕事と育児の不安は、保活の厳しさや、結局解消される見通しがたっていない待機児童問題、そして学童保育問題の解消には繋がりません。
 経済的な不安の軽減に加えて、現実に子どもを安心して預けることができる社会基盤、幼育・保育・教育システムがあってこそ、子どもを持ち、育てることへの希望も持つことができるでしょう。
 2020年に実現した保育の無償化は、素晴らしいことですが、それにより一層女性の就労意欲が高まり(その理由の一つは、育児・教育への経済的な負担を軽減する目的を多くが持つのですが)、保育所利用希望者が増える傾向もあります。
 従い、どのような事情にあっても、また共働き世帯が多くを占める状況が継続し拡大していくなかでも、安心して子どもを預け、保育や教育を受ける権利を守ることができる社会システムの拡充が一層求められることになります。
 その決め手となるのが、小学校就学前の5歳児・6歳児の幼稚園義務化であり、それに伴って行う0歳児から4歳児までの保育システムの再編です。
保育行政・教育行政の大転換を行うことになるのです。
 諸外国との比較で子どもへの公的支出の低さが指摘され続けていますが、その対策・克服のためにも、先述した児童基礎年金制度の導入と合わせて行うことで、多少の挽回にはなるでしょう。

幼稚園は原則公立化し、小学校付属幼稚園制に

 以前から、保育園を義務教育化すべきという意見や議論はありました。
 その時掲げられる理由の最たるものが、幼児期からの教育が、成長後の所得を引き上げ、社会に貢献する可能性が、データ的に証明されているというものです。
 確かにそういう面はあるでしょうが、私はむしろ保育・教育格差の是正の方に意義を見出すべき思っています。
 子どもが平等に、保育・教育の機会を持つ。
 そのための保育・幼稚園教育の義務化です。
 そして、その幼稚園の設置は、小学校区・学区単位に行うこととし、原則として、小学校内または、隣接して設けることとします。
 お兄ちゃん・お姉ちゃんと一緒に通学できるわけです。
 スペース等物理的に制約がある場合は、既存の保育所を幼稚園に転換します。
 その保育所が民間ならば、自治体が買い上げて公立にするわけです。
 また、近くに廃校があれば、その中に転用できる物件もあるかもしれません。
 公営の保育所は、そのまま幼稚園に転換することも考えられます。
 こうして、新規の設備投資は極力抑制します。
 もちろん、幼稚園化した場合、対象以外の乳幼児の保育施設を別途確保するなど、以下で述べる、再編の課題の一つとなります。

0歳~4歳児保育園再編成で、待機児童ゼロへ

 5歳児・6歳児を受け入れていた民間保育所は、私立幼稚園に申請して認可を受けることができれば転換可能とします。
 保育所として継続する場合、幼稚園化で定員に空きが出た保育所は、4歳時以下の待機児童の受け入れが可能になりますし、定員を増加することも可能になります。
 また乳児の受け入れ基準を再設定し、乳児園への創設・転換も課題としたいと思います。
 すなわち、幼稚園義務教育化で、保育所の大再編成を行い、待機児童の解消と、乳児保育体制の拡充も合わせて実現しようということになります。 
 なお、学童保育問題は、付属幼稚園付設小学校の放課後活用システムの整備・拡充で一部解消を図ることを検討したいものです。
 もちろん、教員への負担を無くすべく、新たな管理形態を導入した上でのことになります。

幼稚園教員資格取得支援制度導入

 なお、幼稚園義務教育化で、幼稚園教員不足が生じます。
 保育士資格を持っている人が教員資格を取得するよう奨励支援すれば、問題はないと考えます。
 私立幼稚園を除けば、公務員となるので、当然処遇は改善されることになりますね。

保育士の准公務員制化による賃金の引き上げ検討を

 保育士に留まり継続して、あるいは新規に保育の現場で働いて下さる方々の処遇の改善は必須課題です。
 以前、保育や介護など社会保障に関わる職種の場合、准公務員制度を導入し、処遇改善に結びつけるべく、以下の案を提起したことがあります。
准公務員制度導入で潜在的労働力の発掘と活躍へ:専門職体系化による行政システム改革-3
保育の社会保障システム化による保育システム改革-2(2020/3/24)
 ある意味理想論ですが、検討に値する課題と思っています。
 一方、別の考え方として提案したいのが、次の項で取り上げている、ベーシックインカム制の導入です。

ベーシックインカム制導入で保育士低賃金対策の検討も

 ベーシックインカム制は、先に提案した児童基礎年金においても関連して取り上げました。
 ここでは、別の観点からのベーシックインカム導入の背景・目的の一つとして、保育士職の低賃金問題の解消策として取り上げています。
 以下に、この観点での根拠を提起しています。
働く人の格差是正と安心を目的としたベーシック・インカム:BI導入シアン-5(2020/7/2)
 ただ、いきなりベーシックインカムと言われてもどういうことか理解できないと思いますので、さらっと読み流して頂くか、興味関心をお持ちになりましたら、関連記事の一覧からチェックして頂ければと思います。
 宜しくお願いします。

2025年までを導入・実現準備期間として

 以上、少子化対策に本気で取り組むための緊急対策として
1.2025年6歳児以下の乳幼児に毎月児童基礎年金6万円支給
2.2025年幼稚園義務教育化と保育園再編で待機児童ゼロ化

の2つを提起しました。
 2025年には実現したい、少子化対策の決め手となるであろう提案です。
 2025年導入としたのは、これからの議論・法制化、施設・要員などの準備に必要な期間を想定してのことであり、それ以前の導入は、簡単ではないと考えるからです。
 もし、2025年から児童基礎年金(あるいは児童手当)月額6万円支給が決まれば、それまでの間に、子どもを二人設ける夫婦や、結婚そして出産に踏み出すカップルがでてくるかもしれません。
 そうなると喜ばしいですね。
 何かしらの形で、本提案が議論や話題の対象になり、何かが現実に動き始めればと願っています。

(参考):<少子化社会対策批判記事ラインアップ>

◆ 出生率1.36、出生数90万人割れ、総人口減少率最大:少子化社会対策大綱は効き目なし(2020/6/11)
◆ 「2020年少子化社会対策大綱」批判-1:批判の後に向けて(2020/6/18)
◆ 「少子化社会対策大綱」批判-2:少子化社会対策基本法が無効施策の根源(2020/6/25)
◆ 「少子化社会対策大綱」批判-3:少子化の真因と究極の少子化対策BI(2020/7/13)
◆ 「少子化社会対策大綱」批判-4:安心して子どもを持つことができるBI、児童基礎年金支給を早期に(2020/7/28)
◆ 「令和2年少子化社会対策白書」と86万ショックと出生率1.36の現実(2020/8/17)
少子化社会対策と少子化担当相を糾弾する(2020/8/18)
衛藤少子化担当相、第3子以降児童手当月6万円提起:コロナ不安で少子化加速に危機感(2020/8/22)

(参考):その他の関連ブログ

保育園義務教育化と保育グレード設定による保育システム改革-1(2020/3/23)
保育の社会保障システム化による保育システム改革-2(2020/3/24)
幼保無償化後の現実的課題:抜本的な保育行政システム改革への途 (2020/5/29)

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年9月25日投稿記事 2050society.com/?p=5373 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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