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2022・23年考察

児童手当は、子どもを対象としたベーシックインカム:ベーシック・ペンションでは児童基礎年金

少しずつ、よくなる社会に・・・

柴田悠氏「子育て支援」論における児童手当の認識

先月5月に、柴田悠氏著の
・『子育て支援が日本を救う(政策効果の統計分析)』(2016/6/25刊・勁草書房)
・『子育て支援と経済成長』(2017/2/28刊・朝日新書)
2書を参考にして「子育て支援」と「少子化対策」について考えるシリーズを以下の5回にわたって投稿しました。

<第1回>社会学者が行う子育て支援政策提案への経済学アプローチの違和感:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-1(2022/5/20)
<第2回>保育サービス支出総額だけの統計論のムリ筋:子育て柴田悠氏「子育て支援論」から考える-2(2022/5/22)
<第3回>気になる出生率向上と子育て支援との関係性の希薄さ:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-3(2022/5/23)
<第4回>増税・財源確保の子育て支援政策のムリ筋:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-4(2022/5/24)
<第5回>子育て・保育の本質から考えるべき政治行政と財政政策:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-5(総括)(2022/5/25)

元来、こうした子育てをめぐる政治行政課題の社会保障制度および保育・教育制度として私が向かう方向の一つは、提案している日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金制度の導入にあります。
特に、子育て・保育・教育には、養育義務をもつ親の経済的負担問題、少子化対策としては、やはりその前提としての結婚・出産行動に結びつける経済的基盤の整備問題の改善・解決策として、ベーシック・ペンションが有効に機能すると考えるからです。

しかし、柴田氏の子育て支援論では、前提として、保育政策の拡充には新たな財源が必要とし、そのためには、労働生産性の向上、女性就業率の向上が必須であり、そのために保育サービスの拡充が有効、と循環論法に帰着させています。

以下の論述では、柴田氏の『子育て支援と経済成長』の内容を参考にしています。

子どもの貧困対策としての「児童手当」制度か?

従い、子育て支援政策においての<児童手当>に対する認識は、上出書第3章の中の以下の記述で読み取ることができます。

注目すべきは、児童手当よりも保育サービスのほうが、子どもの貧困を減らす効果が大きいこと。
それは、「家計の保育支出が減ることで、親の生活の質と勤務状況が改善して、子どもの貧困が減る」という直接的な効果と同時に、「保育サービスがあると、お母さんが働けるようになって家計が安定する」という間接的な効果があるから。

子どもの貧困問題とその対策について課題とした章における記述ですが、いわゆるワークフェア的な考え方が根本にあり、非正規雇用とそれによる所得などの不安については、そこでは触れられていません。
そしてこう続けています。

とはいえ、児童手当を減らして、その分、保育サービスを増やしたほうがいいのかというと、そういうわけではありません。
保育サービスの需要にも限界があります。(略)
つまり、保育はそれぞれの地域でのサービスの需要が満たされるところまでしか、増やせないということです。
それから、もう一つ、保育サービスが受けられるのは、小学校入学前の子どもに限られます。
しかし、子どもの貧困は、小学校以上の子どもも含んだ問題です。
小学校以上の子どもにとっては、保育サービスの拡充は無関係ですから、むしろ児童手当のほうが有効な方法だといえます。


このように、<児童手当>は、子どもの貧困対策として運用・支給されているかのような扱いに、ここではなってしまっているのです。
この考えを受けて、柴田氏がどうこの項をまとめたか。

次に、先述の5つの記事の最後
子育て・保育の本質から考えるべき政治行政と財政政策:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-5(総括)(2022/5/25)
の中で彼が述べた部分を、私が書き加えた内容と共にそのまま転載します。

基本的に、財政規律主義、税と社会保障の一体改革に従っての子育て支援策・少子化対策を、誠実に、突きつめて考察する柴田氏は、そのためには相当の財政出動が不可欠とみ、社会保障の拡充には経済成長が条件とする立場です。
ですから、ベーシックインカムを用いそれらの政策に充てるという発想は持ち得ないでしょう。
しかし、実は、新書の方に、興味深い箇所・記述があります。
それは、「児童手当」についての経済学者アンソニー・アトキンソンの考えを引用している部分です。
(ここまでは私の文章)
(以下が、柴田氏の記述部分)

 児童手当については、経済学者のアンソニー・アトキンソンがとても興味深い提案をしています。
すべての子ども(の養育者)対して、児童手当を十分に給付し、その給付金額を所得税の課税対象に含めれば、結果的に、貧困家庭の子どもに焦点を絞って、救済することができる。」とう提案です。
 不安定雇用が増加した現代において、このような児童手当、いわば子どもを対象としたベーシックインカム(政府が無条件で定期的に支給する定額給付)こそ、社会保障制度の中心に据えるべきだ、とアトキンソンは提言しているのです。


これでこの項はおしまいにし、アトキンソン氏の提案についてそれ以上言及していません。
柴田氏は、どういう気持ちからこの引用を行ったのでしょうか。
単純に「興味深い」だけであって、真剣に論じるほどのものではなかったということでしょうか。

15歳以下のすべての子どもに無条件で、平等に支給するベーシック・ペンション児童基礎年金

児童手当自体がベーシックインカム。
まさにすべての児童に無条件に、平等に支給するものですから、児童へのベーシックインカム。
私が提案するベーシック・ペンションは、包括的には「生活基礎年金」と呼びますが、児童に対する生活基礎年金は「児童基礎年金」と呼ぶとしています。
そして当然のことですが、児童基礎年金は、子どもの貧困対策が目的ではなく、すべての国民が、安全安心して生きることができる基本的人権の保障を目的として支給される生活基礎年金の、子どもバージョンということです。

その財源は、柴田氏が工夫して提案する増税に頼らない、所得の再分配も必要としない、政府発行の専用デジタル通貨システムによるものです。
そして保育サービスの拡充や保育職の処遇改善は、国と自治体の行政予算システムにおいて行われ、育休制度等も必要法制の改革等で拡充が図られ、実現されるべきことを、ベーシック・ペンション制度提案に総合的に組み込んで提案しています。

その児童基礎年金の支給額は、一人月額8万円。
子どもの基礎的な生活費と教育費等に利用することを目的とし、可能とする金額であり、現状の児童手当の中途半端な金額とは違います。
そしてこの金額は、第一次導入段階で想定している、65歳もしくは70歳以上のすべての高齢者に支給するベーシック・ペンション高齢者基礎年金の月額8万円と同額です。
この8万円という金額は、現状の国民年金、老齢基礎年金の最大受給額を上回る額であり、導入時には、現状の老齢基礎年金制度を廃止し、厚生年金保険制度の一本化等の年金制度大改革を同時に行うことを想定するものです。

無論、現役世代すべてに生活基礎年金は支給され、正真正銘の全世代型社会保障制度モデルが、このベーシック・ペンション制度を軸として構築される提案です。
世代間での財源の取り合い、配分合戦という馬鹿げたゼロザム、マイナスサムの社会保障制度運用管理を財政健全化や税と社会保障の一体改革などの実行不能なスローガンは降ろしましょう。
そしてまた、「子育て支援は次世代への投資」等という、取ってつけたような看板も、言う必要がない当然のこととして、外しておきましょう。


当サイトが提案している、今年2022年提案のベーシック・ペンションは、以下のとおりです。

<参考:2022年版ベーシック・ペンション案>
ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

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