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2020・21年考察

ベーシック・ペンション実現に10年を想定する4つの理由

2021年2月8日に、https://2050society.com に
ベーシック・ペンション実現は10年がかりの夢、団塊の世代から次世代へのレガシーとして(2021/2/8)
という記事を投稿しました。
その中に、今日の記事の見出しである「ベーシック・ペンション実現に10年を想定する4つの理由」という項があります。
その内容をそのまま書き写したのが、以下です。


1.ベーシック・ペンション生活基礎年金は、専用デジタル通貨で支給するため、そのシステム開発、その運営管理基盤整備に、非常に時間がかかる。

2.従来の税金・保険料を財源とせず、日本銀行が政府の委託を受けて、財源不用のベーシック・ペンション専用通貨を発行・支給する、という方式・法律の理解と合意を得ることに、非常に多くの時間を要する。

3.そうしたベーシック・ペンション制導入を公約に掲げる政党・政治グループが形成され、国会議員選挙に多数の候補者を立て、当選者を輩出し、法案を成立させるまでに、相当の年数を要する。

4.加えて、ベーシック・ペンション導入に伴い行われる、日本の社会システム、社会経済システム改革、イノベーションを意味するさまざまな制度や行政システムの改革・移行にも、それを上回る相当の年数を必要とする。


これにもう少し手を加えて、整理してみました。


1.日本銀行発行権による財源外通貨方式に基づくペーシック・ペンションの目的・内容の理解と合意形成

2.それと関連する各種法律・制度の改定内容の整備・合意形成

3.ベーシック・ペンション法及び3.の各種法律改正等を成立させる政権政党または政治体制形成

4.専用デジタル通貨システム開発及び利用システム基盤整備

いかがでしょうか。
そう簡単にベーシック・ペンションが実現しそうもない。
あるいは、これは無理だ。
そうお感じになる方も多いのでは、と思います。

この4つのハードル、大きな壁を乗り越えて、なんとか合意・同意を取り付けてすべての法案を成立させるまでに、10年はかかるだろう。
仮に法律が成立し、すべての関連法も同時に改正するには、やはりそれとは別に数年必要になる。
移行と運用開始、運用軌道化に10年。
その成果を享受・評価でき、完成度の高い社会システム・社会経済システム、そして日本の文化となるまでに10年。
こんな想定です。

一応その困難な課題の中の1項目である法制化を想定しての法律案を少しでもイメージできるようにと
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案
で、一昨日2021年3月2日にまとめました。

そこで今回は、上記の4つの理由と関連して今思うところを、個々に簡単に述べるてみたいと思います。

コロナ禍による困窮と財政出動がベーシックインカム導入の根拠になることのリスクと懸念


初めに、
1.日本銀行発行権による財源外通貨方式に基づくペーシック・ペンションの目的・内容の理解と合意形成>
の部分について。

これを2つの難題に分けると、
1)財政健全化、税と社会保障の一体改革などとの関係での財源対策を不要とする日銀の専権としての通貨発行権に基づく通貨発行
2)ベーシック・ペンションが、現金ではなく、使途・期間などに規制・基準を設定したデジタル通貨での支給

というか課題です。

前者については、コロナ禍で世界各国が大規模な財政出動を余儀なくされていることもあり、日本でもMTT論者を筆頭に、かなり機運が高まっています。
それは、日銀の通貨発行権の議論はないまま、単純に、財政赤字は構わないんだ論での圧力です。

これに関しては、私は、これまでもお話してきていますが、一旦この方法が認められると、自民党政権では歯止めが効かなくなるリスクがあるのです。
これは仮に野党が政権をとっても同様です。
従い、何かしらの規制・基準が不可欠ということ。

もう一つは、本来その導入で必要な、次の「わけ」項目、社会保障制度等広い範囲で関連する改正などに関する事項です。

なお、後者の現金方式についての異論についても、問題提起してきていますが、例えば、以下があります。
現ナマは怖いという話と、ヒゲダンは良いという話と、UBIとベーシックインカム(2021/2/20)
私の考えについて、当然反対意見を持つ方がコメントをくださる方が既にいらっしゃいます。
その意見についての感想等も、別の機会に記していきます。

いうことで、ベーシック・ペンション内容自体について同意を得、合意形成することには相当の時間がかかると覚悟しているわけです。

関連する社会保障制度等に関する議論・提案がない現状への懸念

次の<2.関連する各種法律・制度の改定内容の整備・合意形成>については、先程触れましたが、当サイトで既に
ベーシック・ペンションで生活保護、児童手当、年金制度、健康保険、雇用保険、所得税等はどうなるか(2021/2/15)
において、どのような制度及び法律の改正などが必要かを概括しました。

コロナ禍による困窮、生活の逼迫を理由とすることは十分理解できます。
しかし、とにかくやるべき、論では、後手に回った課題は、結局すんなりと、改正へなどというわけにはいかないでしょう。
簡単に解決できる、結論が出る課題ではないからです。

本来、ベーシックインカムを議論・検討する中で、統合して改正案が示される必要があるのです。
いくらデフレ脱却だ、貧困対策だと強調したところで、社会保障制度改革の軸になる制度だからです。

そのために、時間が必要であり、当然時間がかかることを想定して取り組む必要があるのです。

ベーシックインカムを支持する、公約にする政党・政治グループがない現状とその打開の必要性


次に<3.ベーシック・ペンション法及び3.の各種法律改正等を成立させる政権政党または政治体制形成>の難しさです。

過去、ベーシックインカムを公約に掲げた政党があったそうです。
「そうです。」と言うのは、それぞれの折に、私が知らずにやり過ごしていただけ。
お恥ずかしいですが、主張した人の名前や今は存在しない政党について、まったくと言っていいほど知らななかったのです。
そして、その折々のBI提案については、時々話題にはなっても、本格的にその内容や法律案の提示までには、まったく至っていません。

そして現在。
コロナ禍における給付金支給要求の声の広がりにより、自民党国会議員になかにも、ベーシックインカム的に現金を配るべきという声も出始めている。
しかし、繰り返しになりますが、他の関連制度をどうするかの提起はありません。

7万円支給して生活保護制度も雇用保険制度も廃止などというネオリベ竹中暴論に対して、自民党自体はやるとも、やらないとも何とも言っていません。
仮にやるとなると、政権交代の決め手になるに違いありません。
野党第一党の立憲民主党も共産党も、ベーシックインカムに取り組む気はなし。
国民民主党はその気があるらしいですが、具体的にどうするのか、現実的な動きはありません。

要するに、コロナにより膨れ上がる財政赤字を、結局どうするのかに踏み込むことができないまま、ただ給付金を配るべき論だけが取り上げられているのです。

こういう状況ですから、真剣にベーシックインカムの導入を公約とし、加えて関連するさまざまな社会保障制度の改正にまで踏み込む政党・政治グループは、れいわ新選組だけらしい。
そのれいわ新選組自体、政党として今後拡大できるのか、どうにも心細い状況であり、実現活動の軸になるとは、私には思えません。
というか、その主張提案内容自体、しっかり提示されているようには思えないのです。

結局、ベーシック・ペンションに関しては、その目的・内容を十分理解し、公約にかかげて政治問題とする政党・政治グループが出てこないと始まらないのです。
既成政党が、現状の考え方を変えるとも思えない。
ならば、新しい政治グループが出てくるのを待つか、育成するか。
選挙権、投票数の過半数を占めるというアドバンテージを持つ女性が新党を形成し、ベーシックペンション実現を公約する。
こういう夢の実現に10年は掛かるだろう、と。

最大の難関です。

デジタル通貨の実験が始まったばかりの状況と特殊な専用通貨によるシステム開発にかかる年数と労力とコスト

そして最後の<4.専用デジタル通貨システム開発及び利用システム基盤整備>については、http://basicpension.jp の以下の記事で、専用デジタル通貨(JBPC)がどういうものか、そしてその開発に時間とコストがかかるかを確認頂けるとのでは、と思います。

なぜ日本銀行が、デジタル通貨でベーシック・ペンションを発行・支給・管理するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-3(2021/1/22)
◆◆ なぜ循環し、回収消却され、再生し、世代を継承していくベーシック・ペンションなのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-6~10(2021/1/24)

また、現在の法定通貨もいずれデジタル化されるに違いなく、その実証実験なども国内で始めることが予想されています。
その流れはありますが、ベーシック・ペンションは、より高度なシステムでの運用管理を必要としています。
日銀に全国民が口座を持つこと、その通貨が利用され、流通する事業所や利用環境の整備など、日銀のデータセンターなど、大規模なインフラの整備も必要です。

その実行に、相当の期間と労力とコストがかかることは、漠然とですが想像できるでしょう。

同じ時代に生きる異なる世代・年代が、共に、現在と将来を見据えて、ベーシック・ペンションを考え、実現に向かう

以上、ベーシック・ペンションの実現については、10年がかりのことと考えている理由をお話しました。
その間、恐らく、
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
で示した、以下のベーシック・ペンションの目的は、より必要性・重要性を増していることでしょう。
仮に先行して、現金給付が何らかの形で導入されていても、です。
むしろ、関連諸制度が改正など適切な対策がなされていない場合には、より一層深刻な問題、加えて新たな問題が発生していることも想定すべきと考えています。


 1)少子化社会の要因の一つである、結婚・出産・育児をためらわせる経済的不安の低減・解消を図る。

 2)種々の格差や貧困の要因とされる子どもの生活及び教育環境・条件上の問題の改善・解消を、経済的側面から支援する。

 3)義務教育以後の高等教育を自らの意志で受ける人びとが、自己実現・社会貢献等の目標実現のために、専門分野の能力・知識・技能技術・創造物等の習得・開発・制作等に必要な教育・学習・研究諸費用及び生活諸費用等に充当する。

 4)障害・老齢・生活保護、母子・父子・寡婦保護等社会福祉面からの支援を必要とする人びとが、安心し、安定した生活を送ることができる経済的基盤を提供する。

 5)日常発生しうる事故・事件・病気・怪我などにより生じる就労・所得の機会の喪失や想定外の費用負担に対応する。

 6)離職・解雇等失業時や、就職・起業等の準備・活動時などにおいて必要な生活諸費用に充当する。

 7)自然災害や伝染病等疫病など不測の事態の発生遭遇時に必要な生活基礎諸費用に充当する。

 8)社会経済上、非正規・臨時雇用、低賃金や厳しい労働条件・環境等を余儀なくされる職業等に従事し、その状態の改善・解決が即時可能ではない場合等において、経済生活への不安を改善・解消するための生活基礎諸費用に充当する。

 9)生まれてから死を迎えるまで、生涯にわたり、全国民が年齢・世代を問わず、平等・公平に恩恵を受けることができる全世代生涯型社会保障制度の基軸として給付金を受給し、より幸福で、より豊かな生活を営むための諸活動を可能にする


なぜなら、現ナマ、現金というカネですべてが解決できるモノ、ワケではないからです。
そして、世代が代わっていっても、真に社会システム、社会経済システムとして機能し、文化にまで高めるためには、十分な時間・年数・努力が、継続・継承して必要になるからです。
その予測・想定なしに、取り組むことは、さまざまなリスクと課題を先送りし、継承していくことにもなるからです。

ならば、同じ時代に生きる異なる世代同士が、10年かかっても、現実と将来に予想される問題について、しっかり議論し、望ましい在り方を形成していくべきと考えるのです。

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  1. zoritoler imol

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