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MMT論から考えるベーシックインカム制:BI導入シアン-21(2020/8/20)

 自分なりのベーシック・インカム制の一定レベル以上の提案のまとめ作業に入る前段階として、種々思いつき、思い浮かぶ事項をメモ書きし、整理していくための<BI導入シアン>シリーズ。
 今回で21回目を数えます。

思案から私案・試案へ

 前回は、不十分と承知の上で、ベーシックインカム制導入においての課題の一つ、導入後の雇用保険制度の改革の必要性について、以下で考えてみた。
ベーシックインカム導入で行なうべき雇用保険改革:BI導入シアン-20

 この<BI導入シアン>シリーズも、「思案」レベルから、そろそろ「私案」および「試案」レベルに段階を上げるべく、今回とあと1回で終わる予定でいる。
 9月から、ベーシックインカムについて専門的に研究・発表している事例なども情報収集と評価・批判しながら、より積極的に情報発信していきたいと考えている。

 で、今回だが、べーシックインカムの理論的支柱と言われている(という)MMT(現代貨幣理論)について、最新刊である『MMTが日本を救う』(森永康平氏著:2020/6/24刊)を参考にして考えてみることにしたい。
 同書の著者である森永氏は、以前
週刊エコノミスト「ベーシック・インカム入門」で終わらせないために
で取り上げた週刊エコノミスト7月21日号特集『ベーシックインカム入門』の中で、<Q4 格差の現状は?>という項で執筆している学者だ。
 その見出しは「新興国の成長や巨大IT勃興、中間層没落と富の集中が加速」だった。

MMTとはなにか

 正直、同書を一度読んでも、MMTを理解することができていない。
 そもそも、個人的には、MMT の Modern Monetary Theory の Modern の 「現代」という意味での利用が、好きでないと言うか、ピンとこないからだ。
 既に、過去投稿した
◆ ベーシック・インカムとは-3:AIによる脱労働社会論から学ぶベーシック・インカム
で、MMTについて理解済みでなければいけないのだが、恥ずかしいことに、他人に説明できない。
 で、再整理・再チャレンジで、MMTとは何かを少しでも理解しておきたい。
 そう思い、決意して何度か読み直すが、やはりストンと腑に落ちてこない。
 他人のせいにして申し訳ないが、本書では、MMTとは何かを、順序立て、体系立てて論じてはいない(ように思える)。

 「商品貨幣論」ではなく「信用貨幣論」としてのMMTというのも分かりにくい。
 その貨幣が納税の際の支払い手段として使えるかどうかが、その貨幣が流通するかどうかを決める際に重要な要素になる。
とあるが、それで? という感じだ。
 何かをする際に財源があるかどうかを議論したり、財源を作るためには税収が必要だという考え方にMMTは反論する。
という。
 そして、
 国民が税金を納めるにしても、納める貨幣がなければ納税はできない。
 つまり、まず国が支出をして貨幣を供給しなければ、その後に税金として回収する貨幣を国民は持たない。
と。
 やはり、みな、「それで?」という感じを持つ話が続く。
 まあこんなレベルを繰り返していても、時間とスペースのムダなので、結論じみた内容にポイントを絞ろう。

 「誰かの赤字は別の誰かの黒字」なので、ある程度の財政赤字は必要であり、財政黒字の発生は、民間の赤字が膨らんだ状態ということになる。
 財政赤字のどこが、何が悪い、というある意味開き直りみたいな考え方が、MMTの軸にある。
 ちょっと乱暴で、短絡的かもしれないが、これがベーシックインカムの方針と財源をめぐる裏付けとなるMMTの考え方の軸ということになる。

MMTにおける税金の考え方

もう一つ、触れておくべき部分があった。
それは、MMTにおける「税金」の考え方だ。
先に触れた、租税のための貨幣という目的以外に、以下の「税の4つの目的」を挙げている。

1.税によって購買力を奪い、総需要を減少させることで、インフレを抑制させる。
2.累進的な所得税などにより、富と所得の分配を変更する。
3.大気や水質汚染、喫煙や飲酒など悪い行動を抑止する手段としての税。(悪行税)
4.特定のプログラムのコストをその受益者に割り当てる。

これは、それなりに分かる。
それに付け加えて、以下を「3つの悪い税」とする。

1.社会保障税
2.消費税
3.法人税

 詳しい説明は省くが、その理由は何となく分かるようだが、何となく分からない気もする。
 中途半端で申し訳ないが、ここは、ここまでとしておきたい。

ベーシックインカム制に適用できるMMTの特徴

 正直なところ経済学者ではない私には、MMTとは何かを理解するよりも、MMTの特徴を知り、それがベーシックインカムにどうフィットするか、なぜベーシックインカムに合理性と、とりわけ、継続性があるかに結びつけることの方に関心がある。
 そういう面から考えて、同書から、気になった点をいくつか引用したい。

「自国通貨を発行できる政府は、自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、デフォルト(債務不履行)に陥るリスクもない。」とするMMT

 この内容からイメージするのは、ベーシックインカムによる給付は、日本国内でのみ利用可能なデジタル通貨で行なうこととし、国内経済・内需にのみ貢献する使途限定型経済決済手段ということだ。
 グローバル経済上の規律に反する政策ではないことが肝心だ。

「財政政策は財政収支や政府債務を軸に考えるのではなく、完全雇用や物価の安定という経済的な目標のために考えるべき」という「機能的財政論」としてのMMT

 次に、このことから思い浮かぶのは、ベーシックインカムで増える財政赤字は、一時的には負債とされるが、その結果消費や内需拡大、経済成長などに寄与し、そのことから、赤字は消却・解消されることになる、ということ。
 まだまだ何か所も気になる内容はあるが、本書を紹介することが目的ではないので、ここも、ここで留めておきたい。

日本はMMTを実証済み、という

 物価上昇率2%実現のために、マイナス金利さえ導入した日銀(と政府)。
 要するに、極端な景気刺激策を取ったのだが、最近では、日銀も政府も、そしてかのマスコミも、そのことを話題にすることはなくなっている。
 金がジャブジャブあり余っている状態なのに、市中に金は回らず、景気が良くなる気配がまったくない。
 賃金も、ずーーーーーっと上がらないままである。
 これが鳴り物入りのアベノミクスの正体であり、結果である。
 財政赤字を食い止めるべく、消費増税で増え続ける社会保障財源を賄おうとしたが、その結果は、一層景気を冷やし、当然物価の引き上げにも寄与しない。
 金融政策では埒が明かず、財政政策も空振り。
 これが、MMTの正しさを証明した。
というわけだ。
 因みに、MMTは、金融政策に重点を置かず、財政政策を重視するという。

ベーシックインカム財源シアンからMMTへの道筋

 もともと私がベーシックインカムに興味関心を持ち、その導入をすべきと考えたのは、MMTを知ったからではない。
 れいわ新選組がBIの導入の提案をした、国民民主党も提案、ということ自体、まったく恥ずかしいが知らなかったし、その背景がMMTだったということもだ。
 むしろ所得再分配の面からのBIを考えていた。
 しかし、所得税だけを財源とすることにやはり相当のムリを感じたし、それ以外の財源か特別の方法が必要と考えた。
 そこでの思いつきのレベルの財源は、国自体の何らかの事業収益の配分によることが一つ。
 もう一つは、BI給付のために発行した国債を日銀が回収し、それを自国で消却するという方法である。
 この後者の方法が、MMTに通じていたことになる。

MMTが日本を救う』をどう読むか

 同書は、ベーシックインカム推進論の書ではない。
 コロナ禍にある現在から将来を見通したとき、従来の財政政策や金融政策では、日本が豊かさを取り戻すことは不可能であること。
 その根本的な要因は、景気対策としての金融緩和や、財政健全化という名のもとに行なう増税などにあり、これらは従来の経済理論・経済政策の限界を示している。
 そこで考えうる理論・政策として、MMTそしてベーシックインカムを考えてみてもよいのではないか。
 そんな感じであろうか。

 タイトルは『MMTが日本を救う』とあるが、日本を救うのか、日本国民を救うのか、一体何から救うのか、いささか無責任なタイトルである。
 また付けられた帯には「コロナ大恐慌を阻止するための現代貨幣理論が一気にわかる」とあるが、これも、大げさで、無責任なアジテーションだ。
 現代貨幣理論も、ベーシックインカムも、コロナ対策のために考えられたものでもなく、コロナがなければ、見向きもされなかった理論・政策でもない。
 富の集中が引き起こす格差や貧困、社会経済の変化がもたらす雇用や所得の不平等・格差などの合理的、民主的な改善・解決策として参考にできそうな考え方なのだ。
 ウイズコロナ、アフターコロナが、当面の課題となる中で、労働・所得・生活への不安の増幅、見通せない将来を考える時、特別定額給付金や事業継承給付金などのこともあって、財政出動と財政規律のせめぎ合いについて考えざるを得ない状況がある。
 そこでの格好のテーマであるMMT論。
 だが、やや物足りなさと理解し難い内容、消費増税や景気論からのアプローチであることもあって、別の著者の書も読んでおくべきかと今は思っているところだ。

MMTに依存しないBI論と政策根拠の構築を

 すべての理論に、合理的な実証結果が伴っているわけではない。
 ゆえに、右にしろ左にしろ、警戒すべきは、偏見あるいは盲信である。
 しかし、現実の社会で、これだけ多種多様な問題を抱え、将来の成長や発展への期待や希望が薄く、小さくなっていく状況には、できるだけ早く対策を講じるべきだろう。
 これだけ長きにわたって、経済成長が見られず、賃金も上がらず、膨大な資本の投資と流通だけであまりにも極端な所得と保有資産の格差を招き、それが今後も継続・拡大すると予想されること。
 その問題解決・改善には、間違いなく、これまでに行っていない改革、政策の検討と導入が必要だろう。
 そのためのヒントに、間違いなくMMTはなると思う。
 但し、MMTもベーシックインカムも、理論の列挙や正しさの主張に終始せず、必要性と制度の持続可能性、そして導入が真に公平・公正に可能であることを分かりやすく示す必要があることを、確認しておきたい。
 そのために、必要な時間と労力は、惜しまず負担していくことを共通の認識としたいものだ。
 その結果が、MMTにも、他の特定の理論にも与しない、日本独自の理論と政策として、まとめられ、現実の制度として誕生することを期待したい。

 次回は、前掲「週刊エコノミスト」のベーシックインカム特集を受けて、最近日経紙が掲載した記事を参考にして、このシリーズの最後としてまとめ、9月からの展開に備えることにしたい。

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年8月20日投稿記事 2050society.com/?p=1470 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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