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2020・21年考察

れいわ新選組のベーシックインカム方針:デフレ脱却給付金という部分的ベーシックインカム

既存政党が具体的にベーシックインカムについて綱領や政策に謳っている例はほとんどないのですが、その中からベーシックインカムと理解できる、あるいは関係していると思われる内容を拾って、確認・検討していきます。
1回目は、最も明確にベーシックインカム(以下BIと表現することがあります)と理解できる政策を示している「れいわ新選組」です。

恥ずかしいのですが、同党がBIを主張しているということは一応知っていましたが、今回初めて同党の公式ホームページを見て、その内容を確認しました。

ベーシックインカムという表現は使っていませんが、最も具体的で、分かりやすく、実現可能な内容と読みました。
その政策の基本となるのが同党の綱領。
以下に、原文のまま転載します。(太字は当サイトで加工しました)

れいわ新選組綱領(決意)

政権とったらすぐやります
今、日本に必要な緊急政策

れいわ新選組は、
ロスジェネを含む、
全ての人々の暮らしを底上げします!

<私たちの使命>
日本を守る、とは
あなたを守ることから始まる。

あなたを守るとは、 あなたが明日の生活を心配せず、
人間の尊厳を失わず、
胸を張って人生を歩めるよう
全力を尽くす政治の上に成り立つ。

あなたに降りかかる不条理に対して
全力でその最前に立つ。
生きているだけで価値がある社会を、
何度でもやり直せる社会を構築
するために。

20年のデフレで困窮する人々、
ロスジェネを含む人々の生活を根底から底上げ

中卒、高卒、非正規や無職、障害や難病を抱えていても、
将来に不安を抱えることなく暮らせる社会を実現
する。

私たちがお仕えするのは、
この国に生きる全ての人々。

それが、
私たち「れいわ新選組」の使命である。

当サイトが提案するベーシック・ペンションの理念・思想と重なる部分が多々あります。
(参考)
⇒ なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ-1(2021/1/20)


デフレ脱却目的の部分的ベーシックインカム「デフレ脱却給付金」、財源は赤字国債

こうした理念のもとに、部分的ベーシックインカムと言えるかと思いますが、同党が明確にBI支給を公約として打ち出しているのが、以下です。

お金配ります 〜デフレ脱却給付金・デフレ時のみ時期をみて〜

この政策ならば、確実にデフレ脱却は出来ます。
一人あたり月3万円を給付。二人ならば月6万円、4人ならば月12万円。
インフレ率2%に到達した際には、給付金は終了
次にデフレ期に入った際にまた再開します。

インフレ率2%に達するまでという条件付き、かつ金額は、一人月額3万円という比較的低額の支給です。
人口が約1億2500万人として計算すると、1年間に必要な金額は、39兆円。
財政赤字を問題視する上では、法外な金額ではない分、理解・合意は得やすい金額と言えるでしょうか。

ただ、問題は、基本的には経済対策としてのBIであり、この金額で貧困や格差、生活保護制度等が抱える問題にどれだけプラスの影響を与えることができるか。
疑問が残ります。

財源については、以下としています。

財源はどうするの? ~デフレ期にしかできない・財政金融政策~

日本総貧困化を防ぐためには、まとまった財源が必要です。
財源は税収、が一般的ですが、私は、
デフレ期には別の財源も活用します。

新規国債の発行です。確実に足りない分野と人々に大胆に、
財政出動を行い、生活を支え積極的に経済をまわします。
経済成長すれば当然、税収は増えます

国債発行は無限ではありません、リミットがあります。
インフレ目標2%に到達するまで、です。
到達後、金融引き締めで増税まで必要な場合には、
税の基本(応能負担)に還ります。
法人税にも累進性を導入
します。

国債をBI財源調達手段としてはっきりと謳っています。
但し、国債発行は無限ではなく、リミットすなわち一定の規律・基準に基づくとしており、望ましい在り方です。

ただ、単純にそれにより起きうる経済成長ですが、すべての人に公平に所得・収入をもたらすとは限りません。
当然所得格差は残りますし、一部では格差が拡大する可能性も十分あります。
その懸念に対するごく一部の対策となりうるのが、後述する他の政策です。

また、インフレなどの影響で金融引き締め策として利上げや増税が必要になる場合、税の応能負担、法人税の累進課税化を掲げていることを確認しておく必要があります。

部分的ベーシックインカムと繋がる政策提案

金額的にも、デフレ脱却目的という限定条件が付けられていることからも、同党のBIは、その効果も限定的になります。
従い現存するさまざまな社会問題の改善・解決には、これを補完する制度の導入や既存制度の改定が必要です。
同党の良さは、部分的ではありますが、れいわBIを補完するいくつかの政策も掲げていることにあります。
以下に順次見ていきます。

1)全国一律!最低賃金1500円「政府が補償」
最賃1500円でも月収では24万円程度。
決して高すぎる賃金ではありません。現状が酷いだけなのです。
これまで政治主導で壊してきた労働環境や処遇を改善するためには、
賃金の最低水準を強制的に引き上げる必要があります。
中小零細企業に影響がない様に、不足分は国が補填。
最賃との整合性をかんがみ、生活保護基準も引き上げます。 年収200万円以下世帯をゼロに。
地方活性、景気回復、東京一極集中是正の切り札です。

2)奨学金徳政令:
奨学金に苦しむ555万人の借金をチャラに。
教育は完全無償化へ。

3)公務員を増やします
保育、介護、障害者介助、事故原発作業員など公務員化

「公務員の数を減らせ」という政治家もいますが、
実際は世界から見て日本は公務員の数が少なく、現場は過酷です。
1万人あたりの公務員数をみると日本は、
英国の約3分の1、米国の約2分の1です。
公務員を増やす。安定雇用も経済政策です。

3)の保育・介護・障害者介助職の公務員化については、共通した考え方を当サイト運営者である私も持っています。
関連する別サイトhttps://2050society.com の以下の記事で、確認頂ければと思います。
⇒ 准公務員制度導入で潜在的労働力の発掘と活躍へ:専門職体系化による行政システム改革-3(2020/3/21)
⇒ 保育園義務教育化と保育グレード設定による保育システム改革-1(2020/3/23)
⇒ 保育の社会保障システム化による保育システム改革-2(2020/3/24)
⇒ 幼保無償化後の現実的課題:抜本的な保育行政システム改革への途(2020/5/29)

1)の最低賃金の引き上げも、ベーシック・ペンション導入時の改定必要課題としています。
⇒ ベーシック・ペンションによる雇用保険制度改革・労働政策改革:安心と希望を持って働くことができる就労保険制度と労働法制を(2021/2/13)

2)の奨学生への対策ですが、ベーシック・ペンションでは、学生等基礎年金や生活基礎年金の支給により奨学金自体が不要になることを想定しています。
既に奨学金を受け取り、返済が必要になっていれば、ベーシック・ペンションで返済可能となります。

もう一つ、以下の政策も社会保障・社会福祉関連政策として、BIとの関連で確認しておきたいと思います。

4)障がい者への「合理的配慮」を徹底、
障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直し


障がいを持つ方々は、社会生活を送る上で様々なバリアに直面しています。
障がい者が社会生活を送りやすいようにする「合理的配慮」を受ける権利が障害者権利条約、そして障害者差別解消法で求められています。
障がいの度合いや種類はさまざまです。
障がい者の立場に立った合理的配慮を更に徹底させます。

また、とりわけ重度障がい者の方を苦しめているのは、現在の障害者総合支援法の第7条にある、「介護保険優先原則」です。この条文のせいで、それまでの充実した重度訪問介護などのサービスが利用できず、65歳になると利用時には原則一割負担を求められるうえ、サービスの幅も狭い介護保険の利用が求められています。障がい者の生活に不自由を強いる、障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直していきます。

この政策については、残念ながらベーシック・ペンションでは踏み込んでいません。
医療保険と介護保険との統合を提案していますが、障害者福祉の領域については、等しくベーシック・ペンション生活基礎年金を受けることに加えて、障害者福祉として、再構成した制度が必要と考えています。

れいわ新選組ベーシックインカム政策総括

以上、同党のホームページにある「綱領(決意)」と政策から、ベーシックインカムと認めることができる内容を見てきました。

基本的には、現状の社会保障制度・福祉制度に上乗せする形での部分的ベーシックインカムを導入することを掲げています。
これは、「デフレ脱却給付金」と言っているように、デフレ対策を第一義としていることからも理解できます。
従い、現在の社会保障制度を総合的に、かつ個別にどう改善するかについての具体的な政策にまでは踏み込んでいません。
ベーシックインカムらしきものの理解には役立つでしょうし、その金額の範囲での経済効果も期待できます。
しかし、デフレから脱却した後の貧困・格差問題や社会保障・社会福祉制度の改善・改革は、それからということになります。
このフレームでの部分的BIでは、UBI、ユニバーサル・ベーシックインカムの目的と思想にはかなり乖離していると言わざるを得ません。
また、政策として掲げる保育や介護等に従事する職務を公務員化することは、それらの事業を公営化することになります。
そこまでは踏み込んでいませんし、そうでない場合の対策も示されていません。

すなわち、ベーシックインカムの考え方の一部は反映していますが、これがベーシックインカムと捉えられることにも大きな課題が残されていることを指摘しておきたいと思います。

ただ、どうしても理想的な、完全BIの実現のハードルが高いため、可能なところから、手の届く範囲からまずスタートする、という選択肢としては、十分検討する価値があると思っています。

こちらも参考に
⇒ 立憲民主党のベーシックインカム方針:ベーシックサービス志向の本気度と曖昧性に疑問(2021/4/6)

<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

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