BI実験と効果誘導に必要な認識:ベーシックインカム、実験導入事例紹介-2
前回、『AIとBIはいかに人間を変えるのか 』(波頭亮氏著・2018/2/28刊)を参考に、ベーシックインカムの実験導入事例を、以下で紹介しました。
◆ カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1(2021/3/6)
今回は、2回目。
『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(井上智洋氏共著・2021/1/21刊)から、BI実験導入事例を列記します。
前回の波頭氏の書に比べて、さほど詳しく内容が書かれていません。
そのレベルで整理しますので、ご容赦ください。
アメリカ、アラスカ州「アラスカ・パーマネント・ファンド」(1982年~)
<内容>
・アラスカ州が1982年以降、石油関連収入を積み立て、州住民に給付
・年間一人約10万円
・2011年以降、一人年間最大2000ドル(21.2万円)給付
アメリカ、ハワイ州「ベーシックインカム州法」2017年成立
<内容>
・2017年、民主党クリス・リー議員提出「ベーシックインカム州法」成立
・低収入1000世帯に対する減税
・介護労働者への1日最大9000円支給
アメリカ、全米11都市の市長によるベーシックインカム導入実験宣言
<内容>
・2020年6月29日時点。「保証された収入を求める市長たち」として、ロサンゼルス、アトランタ等全米11都市の市長がベーシックインカム導入実験宣言
コロナ禍の2020年6月には、ユニバーサルベーシックインカムを推進する米国の市長がこの市長連合MGIを結成。
現在、約40の市が参加しています。
⇒ 「所得保障制度のための市長連合」 (2021/3/15追記)
イタリア(2018年~)
<背景・内容>
・2018年3月、反EUとベーシックインカム導入を掲げる「五つ星運動」が第一党に
・同年12月、ベーシックインカム実施を含んだ予算案成立
・2019年4月、年収9,360ユーロ(117万円)以下の低所得者と失業者に、月額780ユーロ(約9万8千円)の支給を決定(条件付き)
スペイン(2020年~)
<内容>
・2020年6月、低所得者等85万世帯に、月額462~1015ユーロ(約5万8千円の
支給を決定(条件付き)。
ブラジル(2003年~)
<内容>
・2003年、労働者党政権により、世界最初の「市民ベーシックインカム法」が制定
・税制改正を通して、児童手当「ボウサ・ファミリア」が段階的に導入される。
ナミビア(2008~2009年)
<内容>
・2008年~2009年12月、オチベロ・オミタラ村で導入実験
・60歳未満910人に毎月1人100N$(ナミビアドル、約1400円)を支給
・授業料50N$、医療費4N$ も支給
<結果>
・40%だった進学率が100%に
・売春や犯罪が減少、多くの人が通勤できるようになった。
・ドイツルーテル教会、労働組合など5団体が運営
・実験終了以降も継続している。
イラン(2010年~)
<内容>
・2010年から、石油収入により月額一人4000円を7000万人に支給継続
韓国、京畿道行政区の「青年配当」(2019年4月~)
<内容>
・京畿道行政区で、「青年配当」<キョンギ青年ベーシックインカム政策>を、2019年4月から実施
・満24歳のすべての若者に年100万ウォン(9万円)を支給。
韓国、ソウル市の「若者手当」(2019年4月~)
<内容>
・2016年から、満19~34歳の未就労者で条件に該当する者へ毎月50万ウォン(4.5万円)の「若者手当」を6か月間支給
日本、「特別定額給付金」支給(2020年)
・2020年3月30日、新型コロナ対策として、政府が、一人あたり10万円の特別定額給付金の給付を決定
限定BIという実験条件の限定・限界性
前回と今回、2度にわたって、ベーシックインカムの実験導入、社会的実験と称した事例を紹介しました。
しかし、当然といえば当然ですが、ほとんどが
・給付対象者の人数が少数
・給付対象者が、失業者や低所得者など限定
・短期間のみの支給
・少額の支給 あるいは、一時金の類
などと、極めて限定されたものでした。
本来、BIと呼ぶには程遠いものまで、井上氏の著では、取り上げています。
特別定額給付金などその最たるものです。
本来のBIの考え方とあまりにもかけ離れている実験は、実験と呼ぶにふさわしくない
私は、そうした実験をさほど評価していません。
そうした場合に起きる影響・結果は、ほとんど想像できる範囲のモノ、コト。
意外なもの、ショッキングなものはほとんどありません。
限定条件でのBIでは、無条件BIの実験にはなりえません。
また、限定BIでは、関連する他の社会保障制度はそのままです。
無条件BI導入時に同時に、あるいは並行して行うことになる他の制度の改定を条件に加えて実験することにはなりません。
加えて、これも当然ですが、無条件BIでは、財源をどうするか、しっかり結論付けておく必要があります。
限定条件でのBIでは、初めから財源問題を棚上げして臨むわけで、それを「実験」と称することの合理性は著しく欠くと言えます。
結局、無条件BIの実験は、限りなく困難で、事前の多種多様な準備を十分に行うとともに、種々の予測も十分に行っておく。
その上で、種々の想定への対応策も、種々事前に検討し、準備しておく。
そういう点からも、私が提案するベーシック・ペンションの実現には、10年を想定しておくべきと申し上げています。
上記の実験で、BI現金給付が、受給者の望ましい行動に結びついた例が多々あったことで、BIの効能・効果に結びつけています。
しかし、それらは、100%良しという結果だったことを意味していません。
それとは異なる結果・事例も0ではなかったわけで、完全・完璧なものではなかったはず。
それも認めてのBIであることを前提・想定して、導入・実現を図るべきと考えています。
今後も、別の実験が行われれば、適宜紹介したいと思います。
今回は、2回にわたって紹介しました。
ベーシックインカムへのベーシックな効果期待と包摂すべき想定
最後に、前回の紹介の『AIとBIはいかに人間を変えるのか 』の中で、イギリス・ロンドンでの結果等を受けて、著者の波頭亮氏が締めくくりに記していた文章を紹介して終わりたいと思います。
(参考)
◆ カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1
所得格差が拡大するほどに、社会コストは増加していく。治安のための警備費、弱者救済のための社会福祉費など、(貧困層を生き延びさせ、トラブルを防ぐ」ためのコストは国家を安定させるための必要経費と考えられているが、それはマイナスを減らすための財源活用でしかなく、プラスを生みだすまでの作用は生み出しにくい。
その点、ケニアやロンドンのケースで顕著のように、無条件給付であれば、国家全体の経済や受給者の意識に対してプラスをもたらす可能性が十分にあるのだ.
同じコストを費やすのであれば、より社会に貢献できる形での活用が望ましいことは間違いない。
また、フリーマネーは人を怠惰にするという懸念がしばしば呈されるが、貧困層が貧困から脱するための手段や方法論は実は彼ら本人が一番良よく知っているとうことを、先のロンドンの実験は示している。
貧困層に属する人々は、お金が無いために人生の選択肢が限られ、それが貧困からの脱却を阻んでいる。逆に言えば、お金を得ることさえできれば、彼らは前向きに生きるための選択肢を手に入れ、社会生活と経済活動に積極的に関わることができるようになるのである。
実験結果からは、このように分析・解釈することが可能になります。
前段は、全面的に支持します。
しかし、後段も概ね同意しますが、そうではない人もいるかもしれない。
そういう想定もしくは結果をも包摂してのベーシックインカム。
そう考えて、ベーシックインカムにを考え、臨むべきと考えるのです。
ベーシックインカム実証実験事例紹介記事
◆ カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1(2021/3/6)
◆ BI実験と効果誘導に必要な認識:ベーシックインカム、実験導入事例紹介-2(2021/3/7)
◆ メディア美学者武邑光裕氏によるドイツの無条件ベーシックインカムUBI事情-1(2021/3/8)
◆ ドイツでUBI実証実験、2021年6月開始:武邑光裕氏によるドイツUBI事情-2(2021/3/9)
<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>
⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)
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