1. HOME
  2. BI 歴史・理論・動向、図書・法規
  3. 20,21世紀の思想・行動・動向
  4. カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1
20,21世紀の思想・行動・動向

カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1

ベーシックインカムに関する著書のいくつかでは、過去のベーシックインカムの実験導入事例について紹介されています。
今回から2回に分けて、参考図書を用いて、その概要を紹介します。

まず今回は、『AIとBIはいかに人間を変えるのか 』(波頭亮氏著・2018/2/28刊)を参考に、整理してみました。

カナダ・マニトバ州施行のミンカムの実験(1974年)

ミンカムとは、Mincome =Minimum Income 。
同州で50年近く前に、カナダのマニトバ州で施行されたBIの実験プログラム。

<目的>
・無条件に支給される所得によって人々の労働意欲は削がれてしまうのか否か
・ミンカム(BI)の導入により働かない人が増えはしないか
という懸念に対して、実証的に検証を試みたもの。

<内容>
・収入が一定以下であれば、参加希望者全員に現金を支給
・マニトバ州ドーフィンとその周辺住民約1万人中3割程度が参加
・一人当り年間最大1.6万カナダドル(約131万円)を現金給付
・他に所得があれば、所得額に応じて最大で半額までに引き下げ

<結果>
・計画にインフレ率が考慮されていなかった
・オイルショックによる不況で財政問題が生じ、1979年政権交代を機に廃止
・施行期間5年間内で、不安定な農業を営む多くの住民を貧困から救った。
・歴史的成果を達成
・但し、その成果が発表されたのは、制度廃止後30年以上後の2011年

<評価>
・懸念は杞憂で、労働時間を減らした住民は、男性1%、既婚女性3%、未婚女性5%で有意なものはほとんど認められず
・時間と生活にゆとりができ、母親は育児に専念可能
・学生は勉学に、より時間を費やすことが可能に
・精神疾患、犯罪件数、家庭内暴力の件数が減少
・学業成績向上
・病院入院期間が8.5%減少し、医療の公的支出削減し財政的にメリット
・労働者の立場が強くなり、賃金の上昇が示唆された

<総括>
・「国民の豊かさ」と「社会的コスト削減」に貢献した制度と、高く評価


高く評価されながら、なぜ結果の公表が当時なされなかったのか、21世紀に入って、再検討されることがなかったのか。
そこに言及していないこともなぜか。
疑問を残したまま、というのがなんとも摩訶不思議です。

フィンランドの試験的BI(2017年1月~2018年12月)

<目的>
・BIが新しい社会保障として機能しうるか
・BIにより生産性やモチベーションがどのように変化するか
を確認する

<内容>
・2000人の失業者に対して毎月560ユーロ(約7万3千円)支給
 この金額は、持ち家の場合十分に暮らしていける水準の金額
・対象者が期間中に再就職しても支給が打ち切られることがない

この実験結果については、昨年2020年5月6日にフィンランド政府から発表がされており、その概要が、同年5月11日のNewsweek日本版で、
ベーシックインカムはどうだったのか? フィンランド政府が最終報告書を公表
と題した記事で報告されています。
以下に概要を紹介します。

<結果>
(実験期間終了直後実施のアンケート調査)
・受給者の方が、生活への満足度が高く、精神的なストレスを抱えている割合が少なかった
・他者や社会組織への信頼度がより高く、自分の将来にもより高い自信を示した
(受給者81名対象インタビュー調査)
・多くが「ベーシックインカムが自律性を高めた」と回答
・経済状況を自らコントロールしやすくなり、経済的に守られていると感じるようになったとみられる
・ボランティア活動など、新たな社会参加を促すケースもあった

<総括>
・2017年11月~2018年10月までの平均就業日数は受給者が78日、失業手当受給者では73日、とベーシックインカムが雇用にもたらす影響は限定的
・ただし、実験期間中の2018年1月に失業手当の給付要件を厳格化する「アクティベーション・モデル」を導入したため、今回の社会実験では、ベーシックインカムが雇用にもたらした影響のみを検証することは難しい
・この結果を受けて、フィンランド国民は、ベーシックインカムの導入に前向きな姿勢を示している
・国民アンケートでは、導入に46%が「賛成」もしくは「部分的に賛成」と回答している

今後のフィンランドの動向、注視していきたいですね。

オランダ、ユトレヒト市のBI試験導入(2016年1月~)

<内容>
・失業給付や生活保護受給の一部の人々に毎月900~1300ユーロ(約12万円~17万円)を給付
・課税対象の収入とはみなさない
・追加的な労働により収入を得ても受給額は減らない

<結果>
・未発表

スイスのBI国民投票、否決(2016年)

もう5年も経っていますが、2016年に、スイスで、ベーシックインカムの導入について国民投票が行われました。
結果を述べると、否決されたのですが、国民投票にまで持ち込んだことは、相当レベル、国民の間にBIが認知されていることが明らかです。
それだけでも意味・意義があるかとは思いますが、今後果たしてどうなっていくのか、気になるところです。

<内容>
・成人に対して毎月2500フラン(約28万円)、未成年者同625フラン(約7万円)無条件に支給

<国民投票否決理由>
・元々租税負担率が低く、BI導入に伴う増税への心理的抵抗が大
・現行社会保障制度下でも経済的格差が比較的小さく、多くの国民にとって必要性が感じられない・
・BI目当ての移民の流入への懸念

カナダ、オンタリオ州BI導入実験(2017年~)

<内容>
・貧困ライン以下(全住民の13%)の4000人を対象
・単身者年間1.7万カナダドル(約139万円)、夫婦年間2.4万カナダドル(約196万円)支給
・労働収入がある場合、最大で収入の半分が減額
・医療給付、障碍者手当など従来の給付制度はBI受給と併用可能
<結果>
・未発表

イギリス・ロンドンで、ホームレスへの現金支給社会実験(2009年)


<目的>
・ホームレス対応と社会的コスト増大対策検討目的
・ホームレスに直接現金を与えると何が起こるかを実験テーマに

<内容>
・男性ホームレス13人に、破格の一人月3000ポンド(約45万円)を無条件で支給
・それ以外の特段のサポートを行わず、使途などすべて委ねる

<結果>
・実験開始1年半後、13人中7人が屋根のある生活へ、2人がアパートへ移ろうとしていた
・支払い能力の獲得、個人的成長に繋がる社会的リハビリ、講座の受講、将来計画立案など、”良き”方向に全員が動き出していた
・実験前に13人に費やしていた年間40万ポンド(約6千万円)かかっていたソーシャルワーカー等の社会的コストが、実験後年間5万ポンド(約750万円)にと、給付金(合計約7千万円)以外の行政コストが大幅に削減

<総括>
・「単に生きているだけの人生」から「前向きに生きる人生」「生産活動に関わる人生」への転換をもたらすなど、画期的な成果を上げた

アメリカ、ベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」による実験(2016年~)

<目的>
・AI社会を想定して「個人の時間・お金の使い方、精神面と身体面の健康状態、子供や社会生活への影響」を評価するため

<内容>
・被験者2000人に月2000ドル(約22万円)、コントロールグループとして他の2000人に50ドル(約5500円)を支給

NY拠点のNGO「ギブ・ディレクトリ」によるケニアでの実験(2016年10月~)

<内容>
・約100人に、12年間計画で、当地の平均収入の半額程度、月23ドルを支給

<2017年3月進捗報告>
・収入を「漁網と浮きを購入」「食糧の購入と貯金」「学校への支払い」など、建設的な目的に使用
・仕事を辞めたりアルコールなどに使用することはなかった

今回は、以上の紹介に留めます。
次回は、井上智洋氏共著の『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(2021/1/21刊)に挿入された事例紹介を用い紹介するとともに、各著者の意見に、若干の私の意見を添えることにします。

ベーシックインカム実証実験事例紹介記事

カナダオンタリオ州ミンカム等ベーシックインカム、実験導入事例紹介-1(2021/3/6)
BI実験と効果誘導に必要な認識:ベーシックインカム、実験導入事例紹介-2(2021/3/7)
メディア美学者武邑光裕氏によるドイツの無条件ベーシックインカムUBI事情-1(2021/3/8)
ドイツでUBI実証実験、2021年6月開始:武邑光裕氏によるドイツUBI事情-2(2021/3/9)

<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。