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同床異夢のベーシックインカム論から共通性を見出す :BI導入シアン-22(2020/8/29)

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 自分なりのベーシック・インカム制の一定レベル以上の提案のまとめ作業に入る前段階として、種々思いつき、思い浮かぶ事項をメモ書きし、整理していくための<BI導入シアン>シリーズ。
 今回を最終回にと考えていたが、安倍首相辞任報道を受けて、今回分は徒然な記事として、次回を最終回に。
 今回はシリーズ第22回になります。

安倍辞任で政治は変わるか

 昨日自ら発表した安倍首相辞任を受けて、否が応でも新しい首相・内閣による政治体制のもとでの政治が、2020年9月から始まる。
 まあ、自民党政治は変わらないので、現実的には、コロナ禍での社会経済対策がどうしても優先課題となり、かつ自民党の体質を考えれば、大きな変化などありようもないのは明らかだが。
 最大の問題は、コロナでも明らかになった、従来の政治・社会システムが、望ましい形で機能しなくなっていることにある。
 そして、そうした問題の大きさ、複雑さ、危うさに対する意識が、あまりにもなさすぎることが、そこに覆いかぶさっていることだ。
 それらに対する認識は、政治的・行政的に責任ある立場にあればあるほど、危機感として持つべきなのだが、むしろそうした立場の者ほど、視野が狭く、自己組織中心主義であることが、問題なのだ。
 それが、与党だけならまだしも、野党も大同小異であるから、悲惨なのだ。
 右は、懐古・復古主義を本質とし、左は、単純に、与党反対主義の本質から脱却できず、同じような時間の浪費を繰り返している分、たちが悪い。
 言うならば、「異床異夢」の政治だ。
 民主主義政治には程遠い。

コロナ禍で注目されたベーシックインカム、その理由

 実は、今月8月15日付日経のあるコラムに、「ベーシックインカム 同床異夢」という小文が載った。
 今回は、これを参考にメモ書きレベルを、と思う。
「最近日本のエコノミスト誌が、ベーシックインカムについて特集した。」と書き始めている。
 これは、先月7月16日に投稿した
◆ 週刊エコノミスト「ベーシック・インカム入門」で終わらせないために
で取り上げた 週刊エコノミスト7月21日号特集『ベーシックインカム入門』 のことを言っている。

 確かに、その特集は、コロナによる「10万円特別定額給付金」の給付をきっかけにしてのものだった。
 しかし、あくまでも定額給付金は、1回だけのものであり、考え方として参考になったのは、国・政府が、国民全員に無条件でそうした給付を行ったという事実である。
 「ああ、そういうこともできるんだ」「あり、なんだ」、という感覚だ。
 そして、もしそれが一回ポッキリのことではなく、継続的に行われるとしたら、とか、ベーシックインカムというのは、ずっと死ぬまで続けてもらえる制度ということだが、実際に可能なのか、とつながっていく。
 そこで、同紙筆者は、ベーシックインカムについてこう言う。
「国家の役割をより拡充し、個人や事業者のリスクを可能な限り肩代わりすることで、国民や経済社会に安心感を広げていくという政策の延長上に位置付けるならば、今後議論をしていくべき思想・考え方だ。」

 日経紙では、その小文よりも先に、コロナ禍における定額給付金支給に関する記事の中で、海外の同様の動きも引き合いに出しつつ、ベーシックインカムについて論じていた。
 だから、流れの中での本稿であって、突然問題提起したものでもなかったのだ。

同床異夢のベーシックインカム、思想的背景に大きな違い

 そして、遡って、べーシックインカムについて、主張の源泉を見て「同床異夢」の性格を持つとする。
 それは、ベーシックインカムを主張する以下の異なる性質の主体の存在が関係している。
・経済的な安定により人間らしさを取り戻す政策として提案する左派
・社会保障を極小化し自己責任による、小さな国家を目指す右派
・AIの発達に伴う失業者の増加や格差拡大への対応策を国が取るべきとする米シリコンバレーの勝ち組等新勢力

ベーシックインカム導入上の2つの課題

 そして、加えて以下の2つの課題を挙げている。
1.最低限の生活が保障されれば誰もが嫌う職場は誰が支えるかなど、勤労に与える影響
2.1人当たり毎月8万円とすると必要な120兆円の財源対策

 この問題に対しても、同床異夢をかこつ各主張派の考え方やレベルは、責任を持つものとみなすことも、一致点を見出すこともできないとする。
 そこで求められるのは、個人では取り切れないリスクを国家がどうカバーし、温かい国家をつくるかということであり、よって立つ思想を統一しなければ、ベーシックインカムは政策論として一顧だにされない、と結んでいる。

見出すべき、ベーシックインカムの普遍性、共通理念

 日経紙(氏?)が言わんとしていることは分かる。
 しかし、コロナが発生し、問題が拡大・拡散しているからベーシックインカムの必要性が論じられるようになったわけではない。
 そこから議論を出発させることは、ムダではないが、合理的な近道を通ることと単純に認めることに適切でもない。
 コロナの類への備え・対応だけでなく、広く、目的や意義として認識しておくべき、また認識が可能な要素・要件を、一つ一つ取り出し、検証していくことが重要であり、欠かせない。
 それが、政策上の共通点として認識され、まさに共有できるようになればと思う。
 そのヒントになりそうな論述を、以下に加えた。

ベーシックインカム推進派学者ガイ・スタンディングのBI導入論

恒久的最低所得保障が社会の安定回復に寄与する 

 先述の日経紙小文よりも少し前の同紙記事に、ベーシックインカム推進派学者である、ロンドン大ガイ・スタンディング教授へのインタビュー記事があった。そのエッセンスを参考にしておこう。

「コロナ前から所得格差の拡大や家計の債務の増加、それに伴うストレスなどで常に不安定な状態があった。」
「人と国家が脆弱になったところにコロナと経済の急速な悪化が襲い、世界はさらにもろくなった。我々や国家の安定を取り戻すには、社会が強靱性や復元力を持つ必要がある。その有効な手段が国民全員に一定の生活を保障するベーシックインカム。」

 そのとおりである。
 コロナは、ベーシックインカムの実効性を示すであろう一つのケースであり、そのためだけにベーシックインカムがあるわけ、必要なわけではない。
 個々人毎に、何かしらの不安やリスクに遭遇する可能性が高く、それに備える有効な制度・政策は必要だ。

全員一律給付の理由

「受給資格のある低所得層をどの段階のどの収入で判断するのか。その特定は困難であり、行政効率も悪い。」
「所得が制限ラインを超えた時に、現金支給が止まったり減額されれば、より良い職に就いて生活水準を改善しようという動機づけが失われる。貯蓄基準も同様で、こうした線引きは人々を不安定な状態に固定化する『貧困のわな』をもたらす。」

 ここにも合理性・公平性がある。

理想とするベーシックインカム財源

「制度の持続可能性を高めるにはノルウェーの年金基金のような国家ファンドや公的基金の構築が欠かせない。その基金の投資から得られるリターンで支給を賄うのが理想だ。」

 私も、この考え方に賛成だ。
 一見、一読、社会主義的考え方だが、私はこの考え方は、資本主義及び民主主義国家においてこそ、共有し、包摂し、制度・法律として具現化すべきものと考えている。
 この基盤が形成・構築できるまでには、それなりに時間・年数を要するだろう。
 従い、それまでの経過措置・経過制度として、所得税や相続税など財源に一部頼ることにすることは選択肢の一つだろう。
 いわゆる所得の再分配政策であり、富裕層にも一定の理解は得られるのではないかと思う。
 それとは別に、ベーシックインカムは、受給者だけが、国内社会経済でのみ利用できる特別の国内循環特定デジタル通貨とし、利用後日銀に回収され、消却する通貨とする方式も検討の価値があると考えている。
 9月以降の一段レベルアップした議論・提案の中での課題とするつもりだ。

異なる政治思想・政策においてもベーシックインカムの共通理念・方針を見出す努力を

 ごく一部の根幹になる課題について、共通認識をもつためのヒントを挙げてみた。
 実際には、こうした基軸とフレームだけで制度が設計できるわけではない。
 思想・方針として、社会保障制度全体をどう再構築するかという視点が起点になる。
 そして、関連する社会保障制度が、ベーシックインカム制導入でどう変わるか、変えるべきか、詳細設計も当然必要だ。
 共通理念・方針の統合・統一を図りつつ、全体体系をフレームとして形成する。
 そしてその全体を形成する部分部分の制度の整備、改革案の策定を積み上げていく。
 加えて、それらの施策の導入・展開スケジュールを長期・中期・単年度単位で作り込む必要があるわけだ。
 情報システム改革も、セキュリティ重視で進めることになる。

 創意工夫と熱意・誠意と忍耐がその作業を進める上で、大きな要素を占めるだろう。
 不可能と思われる営為が、不可能と思われるコミュニケーション活動を通じて、脈々と、連綿と続けられ、形となっていくことを夢見ている。
 もちろん夢が実現する正夢である。

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年8月29日投稿記事 2050society.com/?p=1110 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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