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日銀の通貨発行権によるQE量的緩和をベーシックインカムの財源に:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-2

少しずつ、よくなる社会に・・・

先日、以下の記事で、ベーシックインカムに関する3冊の未読書を紹介しました。
『ベーシックインカムへの道』『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』等ベーシックインカム関連書3冊購入(20212/10/1)

1)『ベーシックインカムへの道 ―正義・自由・安全の社会インフラを実現させるには』(ガイ・スタンディング氏著・池村千秋氏訳、2018/2/10刊・プレジデント社)
2)『ベーシックインカムから考える 幸福のための安全保障』(西野卓郎氏著、 2021/5/28刊、幻冬舎ルネッサンス新書)
3)『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』(苫米地英人氏著、2021/12/16刊、サイゾー社)


そしてこの中からページ数が少なく、興味関心が最も強かった苫米地英人氏著『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』を読み終え、前回、その内容を紹介すべく、まず
ベーシック・ペンションと苫米地氏デジタル・ベーシックインカムとの類似点:『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』より-1(2022/10/7)
を投稿しました。
この記事は、同氏が提案する<デジタル・ベーシックインカム>と当サイト提案の<日本独自のベーシックインカム、ベーシックペンション生活基礎年金>との共通点・類似点を取り上げ、紹介することを目的としたものでした。

そして今回と次回、以下の同書の目次に沿って、苫米地デジタル・ベーシックインカム論を確認することにしました。

『デジタル・ベーシックインカムで日本は無税国家になる!』 目 次

まえがき
第1章 ベーシックインカムで国民を救え
 ・2020年からのコロナ禍で起こったこと
 ・コロナ禍の特別定額給付金
 ・浮上する「ベーシックインカム」待望論
 ・ベーシックインカムは勤労意欲を減退させるのか?
 ・「ベーシックインカム導入で人は働かなくなる」は根本的に間違い
 ・財源はどうするのか?
 ・財源はどこにある?
 ・マネタリーベースと現金
 ・QEを財源に

第2章 消費を促す「デジタル半減期通貨」
 ・半減期通貨で消費は活性化する
 ・半減期通貨というアイディアは昔からあった
 ・苫米地式「半減期通貨」のしくみ
 ・減ったお金はどこへ行くのか?
 ・ダイアスポラの通貨

第3章 無税国家・日本への道
 ・半減期通貨が無税国家を実現する
 ・想定される懸念への反論
 ・「無税国家」は「財政ファイナンス」なのか?
 ・ベーシックインカムと無税国家で経済大国日本が復活する

今回は<第1章 ベーシックインカムで国民を救え>、次回に第2章 消費を促す「デジタル半減期通貨」>及び<第3章 無税国家・日本への道を取り上げます。

<第1章 ベーシックインカムで国民を救え>から


最近のベーシックインカム導入論者の多くは、失われた30年説を掲げての長引く不況対策、これに続いた新型コロナ禍における各種対策の有効性の欠如などを批判し、経済対策からの主張が目立ちます。
しかし、ベーシックインカムの本質は、経済対策にあるのではなく、人としての基本的な生きる権利、最低限の生活保障など社会システム、社会保障制度の目標・手段にあると私は考えています。

苫米地氏の本書も、コロナ禍による経済的ダメージの大きさ、事業者や被雇用者への救済策や全国民への一時金、特別定額給付金支給等が実体経済への影響力不足、それらがもたらす雇用情勢の悪化、自殺者の増加などを先ず掲げます。
そうした背景から、ベーシックインカムが求められ、議論される状況にあるとして、本書が執筆されたかのような展開になっています。

従い、この第1章が、ベーシックインカム論者の多くがまず提起する、その制度の必要性と、反対論に対する反論から始まっていることには、苫米地氏への期待としては少々物足りない、別の意味で意外性を感じてしまったのですが、重点は後半以降にあります。

一応、どちらかというと一般論的なベーシックインカム導入の目的として、苫米地市は以下の5つのメリットを挙げています。

日本におけるベーシックインカム導入の5つのメリット

1)(『GoToキャンペーン』のような政策よりも)全国民にとって公平
2)最低限の所得を得るために、嫌な仕事、ブラックな仕事をしなくてよくなる
3)起業など、リスクのある仕事がしやすくなる
 (含、学問や芸術、基礎研究などに専念しやすくなる)
4)生活保護などよりも実効性が高い
5)働くことの意味が変わる

この類のものは、書き出せばまだまだありますが、苫米地氏もそこそこにとどめています。

ベーシックインカム反対論に対する反論

次いで、これも定石通りの筋書きですが、ベーシックインカム反対論者が最も強調する、「ベーシックインカムを導入すると働かなくなる者が増える。勤怠意欲を減退させる」的議論に対する、苫米地氏の反論です。
と言っても、同氏独自の反論ではなく、他書でも用いられている既に他で行われたベーシックインカムの社会実験の結果を引用してのものです。
2017年からフィンランドで2年間行われた、失業者2,000人に対する月額560ユーロの支給と、2019年2月から1年間米国カリフォルニア州で人に月500ドル支給した結果事例です。
どちらにおいても、そうした断定は根本的に間違っていたというわけです。

私は、この類の議論には中立的です。
ベーシックインカムを受け取っても、堅実に働き収入を得ること、健康に配慮し、望ましい生活を送る人が多数いた。
多数を占めたでしょうが、すべての人がそうだったという結果ではなく、中にはやはり逆の行動・生活態度をとった人もわずかでもいるでしょうから、全肯定・全否定ではなく、一つに結果を集約することには反対ですから。
そして何よりも、あくまでも実験です。
ベーシックインカム本来の、(一定の地域の)すべての人に、無条件で、という給付要件を満たした支給事例とその結果評価はないのです。
故に、ベーシックインカム反対論とそれへの反論論争は、一国・一地域をカバーした数年以上にわたる取り組みでない限り、どんな社会実験結果及び分析評価があっても、あくまでも参考に過ぎないものと考えています。

増税や社会保障費の移し替えを財源とするベーシックインカムは論外

さて肝心な点に移りましょう。

財源論展開に当り、まず苫米地氏は、種々の増税や他の社会保障費からの転用によるベーシックインカムの財源確保・充当案には反対します。

<税と社会保障の一体改革>や<財政規律主義>に基づくベーシックインカム議論は、ゼロサム・ゲームの様相を呈し、誰かの負担が増え、誰かの受益が減るという構図での議論が繰り返されるばかりで、望ましい結論には至らないことが目に見えています。
かといって件の<所得の再分配>論でも同様で、負担が増える富裕層からは、「どうして努力もせず、働きもしない者の費用負担を自分たちがしなければいけないんだ」的反論が必定で、建設的な落とし所を得ることを期待できません。
こう思っている私ですが、結論的には、苫米地氏も同様かと思います。

QE(量的緩和政策)を財源とする苫米地論

で、苫米地氏が着目したのが、かの黒田バズーカ「異次元の金融緩和政策」で名を馳せた多額の赤字国債発行と日銀の国債買上げによる「量的緩和」Quantitative Easing 。
インフレターゲットとして、物価上昇率2%を目標に掲げ、アベノミクスのお先棒を担ぎ、じゃぶじゃぶお金を市場に流通させようと試みたのですが、一向に市中には回らず、長期デフレ経済が持続化。
そしてコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻による影響で、量的緩和とは無関係に、単純に海外産品の高騰により、今値上げ、物価高の嵐。
国債買い上げに日銀が支払うべく刷った日銀券・お金は、日銀当座預金に留まったままで、市中に流通し、消費等に用いられることなく、発生するのは、格差ばかりという状況でした。

苫米地氏が着目したQE。
マネタリーベースの大半を占める日銀当座預金(他は流通する現金)は、「マネタリーベースの増加=QEによる金融緩和」と捉える。
そのマネタリーベースが急激に増えている時期の一つが、2013年第二次安倍政権発足以降、黒田日銀総裁就任による異次元のQE宣言後。
もう一つがコロナ禍における日銀による2020年春以降、加えて2021年春、そして更なる追加のQE。
それぞれが、デフレ経済脱却にもコロナ禍による景況回復にも寄与しなかったわけだが、特に2020年4月から2021年4月にかけて日銀が増やしたマネタリーベースの額が120兆円で、これと同額のQEを行なったことになる。
しかし、大半が日銀当座預金に収まったままそのお金は、使われないまま。
企業も個人も日銀当座預金から取り崩すことができる銀行から融資を受けること、借金をすることが(少)なく、実体経済にお金が回っていかない。
そこで誰かがこの金を、それならば政府がこのお金を、国民に平等に配布すれば、消費に使われるようになり、経済が活性化するというわけです。

QEにより日銀が国債買い取りに用いるお金は、通貨発行権を持つ日銀発行の日本銀行券

そして極めつけは、日銀が主に銀行保有の市中にある国債や、国が発行する赤字国債を買い取る(買いオペ)時に必要なお金は、無から、すなわち、通貨発行権を持つ日銀が、自ら発行する日本銀行券ということです。
但し現状の法律では、日銀は勝手に通貨を発行できるわけではなく、QEでしかできないのだが、実質的には、財源の心配はない、と言えるわけです。
これを理解した上で、先の120兆円を、日銀当座預金として眠らせずに消費に直結する活用法を考える。
あるいは、政府のムダな、効率の悪い、あるいは場合によっては虚偽の申請にも補助金を支給してしまう馬鹿げた運用もあったダメ政策ではなく、有効需要に結びつく、お金が市中・市場に間違いなく循環し、経済が活性化し、収入・所得・賃金の増加に繋げる。
こうした意図をもっての以下によるベーシックインカム、財源フリー、財源無用論。
当サイトで提案の日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金案も同様の考えに基づいていることは、前回の記事で申し上げたとおりです。

QEを財源に!


苫米地氏は、第1章の最後をこう締めくくっています。

2020年に、国債の買い取りのためのQEとETF買い等の合計で約130兆円を通貨発行。
このお金を全額ベーシックインカムとして全国民に配る。
マネタリーベースを増やす目的は通貨供給、すなわち景気刺激。
QEで発行される通貨を「日銀当座預金」に眠らせずに、国民に直接配り消費に使ってもらい、確実に景気刺激に役立たせるのがベーシックインカム。

日本のGDPのおよそ6割は、民間消費。
この民間消費を刺激することで、GDPは大きく増える。
デフレ対策と景気刺激のためのQEを国民に対して、直接行うことで、GDP上昇(経済対策)とベーシックインカム(福祉対策)を同時に実現できることになる。


一応最後に、福祉対策としてのベーシックインカム、と明確に示している点が重要と考えます。
但し、この社会福祉・社会保障関連での論述は、生活保護よりも実効性が高い、社会保障費の付け替えで財源を確保すべきではない、という程度でしか本書では見られません。
本書の目的・方針ゆえにやむを得ないかもしれませんが、私のベーシック・ペンションでは、その関連での提案・主張が相当の重みと意義を持っていることをここでお伝えしておきたいと思います。

なお、本章での財源不要論ですが、その運用にはまだまだ配慮すべきことが多く、第2章以降で述べるとしています。
今回は、ここまでとし、次回、ベーシックインカムの実際の運用方法を確実にするためのデジタル・ベーシックインカムと採用するロジックについて、そして、その方法を用いた時に想定される「無税国家」についての苫米地氏論を確認します。

参考:「2022年ベーシック・ペンション案」シリーズ

<第1回>:ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
<第2回>:少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
<第3回>:マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
<第4回>:困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

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