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「教育格差」対策としてのベーシック・ペンション:『新型格差社会』から考える格差・階層社会化抑止のBI論-2


家族問題を軸にした社会問題をこれまで取り上げ、パラサイト・シングルや婚活などの用語を用いて問題提起してきている山田昌弘氏が、コロナ禍で加速する格差を、新しい型とした新著『新型格差社会』(2021/4/30刊)。

以下の5つの種類に区分しての格差論を対象として、ベーシックインカム、ベーシック・ペンションと結び付けて考えるシリーズを始めました。

1.家族格差 ー 戦後型家族の限界
2.教育格差 ー 親の格差の再生産
3.仕事格差 ー 中流転落の加速
4.地域格差 ー 地域再生の生命線
5.消費格差 ー 時代を反映する鏡

前回の1回目は
「家族格差」拡大・加速化対策としてのベーシック・ペンション:『新型格差社会』から考える格差・階層社会化抑止のBI論-1(2021/5/8)

今回第2回は、<教育格差>がテーマです。

<第2章 教育格差~親の格差の再生産>から

この章は、以下で構成されています。

1)中流意識を支えてきた教育
2)世帯減収による学習格差
3)コロナ禍が広げる教育力の差
4)デジタル格差、コミュ力格差、英語格差
5)コロナ禍で可視化された親の格差
6)小学四年生で人生が決まる
7)教育格差による大学淘汰

軸は、コロナがどのように教育に影響を与え、将来にわたって日本社会に「階級の固定化」をもたらす恐れがあるかを考えること。
ただ、本章のサブタイトルに、<親の格差の再生産>と付けているとおり、教育格差は、前回の家族格差で示したいくつかの要素が重なり、繋がっていることは、当然と言えます。
まず、この各項における分析・主張を順番に見ていきます。
筆者の基本的な認識・分析を要約しながら、少し私の意見を挿入する形で進めます。

中流意識を支えてきた教育


1980年時点で8割を超えていた、日本社会に根付いていた「中流意識」が、1990年頃以降次第に崩れ、格差化を推し進めてきたものが、コロナで更に加速し、固定化・階級社会化に行き着いてしまう。
その問題意識と観点から具体的な事例を示していきます。
その中流意識を醸成し、現実に中流世帯・中流家庭を作り上げてきた要因が「教育」であったと言います。
教育で、努力が報われ、普通に頑張れば高い教育機会も得、そこそこの収入を得ることができる企業などに就職できた。

まあ、まさに構成比・構成人数が塊としてマスを形成した団塊の世代が辿ってきた道を一括りにすれば、そう言えるのでしょうが、いかにも紋切り型で、そうではない人々も存在したことは完全に無視されてしまいます。
中流が大多数を形成すれば、階級はないに等しい。
単純にそう結論付けているわけです。
しかし、100%に近い婚姻率であった社会においては、次第に核家族化が進み、横並びの教育システムにおいても近い将来における問題の芽は、必ず潜んでいたはず。
すなわち教育がすべてではなかったですし、団塊の世代において、それなりの競争や淘汰もあったはずです。

世帯減収による学習格差

この項では、1970~90年前後に生まれた、現在子育て期にある世代とその子どもについて取り上げます。
すなわち、高校生の塾や家庭教師にかかる学校外学習費が、1994年比で、2018年の方が減少している。
自分が子ども時代にかけてもらった費用ほど、自分の子どもにはかけることができない。

これは、バブル経済破綻後のデフレ経済、非正規雇用の増加、世帯収入の低下・減少などにより起こっている<学習格差社会化>が進んできたことを意味するわけです。

コロナ禍が広げる教育力の差


実は、学習外費用を考える前に確認しておくべき教育費負担の問題があります。
受験料、参考書代、パソコン購入代などが、あります。
そしてコロナで、新たに浮かび上がったものは、リモート学習・オンライン学習などを受けるためのの通信回線、WiFiルーターなどのネット環境整備などにかかる費用の負担など。
その費用負担が可能かどうかが、学習機会と学習による知識やスキル習得の度合いに格差となって現れることになるわけです。
短期的、中期的、長期的に影響を及ぼす要素・要因です。

また、コロナの影響による親のテレワークの状況や親子のコミュニケーションなどの違いも、教育格差の拡大・固定化に影響を与える可能性も示唆します。
しかし、そこまで格差要因を追及して、どうしよう、どうすべきというのでしょうか。

加えて、個々の家庭の違いだけでなく、地域・地方の小中学校や個々の高校・大学の教育・学習環境や取り組み条件などの違いによる影響も指摘しています。
ここで、公的に足並みを揃えた対策・取り組みのが必要性を主張することになるわけですが、踏み込みはありません。
本来、こうしたIT時代の教育政策としては、児童・学生にそのインフラ部分を平等に無償で提供すべきことを、筆者は主張・提案すべきなのです。

そして、結局ここでは、子どもを持つことでかかる教育費負担への不安・懸念が少子化の大きな要因とし、「(さらに)子どもを生んでもらうには、行政面からの経済的なバックアップが不可欠」と一応問題提起の体裁を取り繕って終わっています。

デジタル格差、コミュ力格差、英語格差


同様の視点での分析が続きます。
コミュニケーションを重視する社会では、ITスキルや英語・中国語などの語学力など従来の教育では重視されなかったスキルが求められるが、これらの能力は、学校に通っているだけでは身につけることが難しい。
ITや外国語などが自然に家庭環境や成長環境に溶け込んでいるのとそうでない環境とで、自ずと格差が生じるわけです。

しかし、ならばまったくそうしたスキルを高等教育や大学教育で新たに学習することが不可能と断定することには疑問を感じます。
前者での必須あるいは選択科目への組み入れや、大学での自身による科目選択が可能であれば、意欲や取り組み度合いにより、ハンデは克服できるでしょう。
教育及び教育を受けることでの可能性を、単純に親や家庭の格差で否定する必要があるかどうか。
あるいは、データ、構成比をもってエビデンスとして、全体傾向論で結論づけることにも同意しかねます。


コロナ禍で可視化された親の格差

筆者は、コロナ禍で加速する教育格差の要因として、モノづくり中心の工業型社会における教育やコミュニケーションのあり方と現在のそれらとの違いを強調します。
しかし、工業型社会から第3次産業、第4次産業への移行が行われてから、どれだけの期間・年数が経過していることでしょう。
工業型社会においては、言われたことをやれば良い、という教育だったと断定していることには、大きな疑問を感じます。
例えば、トヨタなどの大企業においては、QCサークルなどを通じて、業務改善・作業改善のスキルの継続的な向上を図る取り組みが組み込まれていました。
決して、一元的な学校教育で親の世代のスキルが停滞したままだったわけではありません。
その社会での切磋琢磨や競争はあったわけで、ただそれらが家庭で可視化されることがなかっただけです。

また、製造業以外の業種・職種や、技能専門自営業、自営サービス業などの伝承も一部家庭内や親子関係を通じて伝承されたものもあります。
やはり、一元的、単眼的に、経済的視点からの教育論に押し込めてしまうことには反対です。
親子のコミュニケーションの問題とともに、子ども自身の意識・意欲にもそれなりの要因がありうることも確認しておくべきでしょう。
しかし、結局

新型コロナウィルスは、親の格差が子どもの教育格差につながる実態をも浮き彫りにした。
このように、コロナ禍が顕在化させた親の状況による教育格差を、公的に埋める手立てを考える時期に来ている。

というまとめで、ここもスルーです。

小学四年生で人生が決まる

この項では、都市部家庭の私立中学受験志向を例に上げ、そのためにかかる高額な費用負担の可能性の有無が、早期に、子どもの将来への影響を決定づけるとします。
しかし、そうした道を辿る人は、実際にどの程度いるのでしょう。
その対極として、一般の公立中学の教室のレベル・内容の酷さをも引き合いに出しつつ、
「親の所得が子ども世代に影響し、格差が再生産されている状態」
と言います。

これも、一面ではそういう現実があるのでしょうが、果たしてこれをもってして、全体の傾向とすることには甚だ疑問が残ります。
しかし、親の所得の問題は、親の学歴や結婚格差問題と直結するケースが多く、その根本的な改善・対策を講じることは困難です。
公的な支援云々以前に、親の子に対する姿勢、子自身の人生や仕事に対して向き合う姿勢や考え方なども課題としたベーシックな教育のあり方を議論する必要性を感じます。
教育プログラム、教育カリキュラム、より広げて教育システムに組み入れるべき課題とすべきです。



教育格差による大学淘汰

最後のこの項では、出生数の減少すなわち1学年の児童・学生数の減少が、大学定員数を下回る応募者数になる可能性を指摘。
それが、人材面から国の将来に及ぼすマイナスの影響を提起します。
大学の淘汰とは、不要な大学がなくなることを主に意味するのならば、それはそれで望ましいことでしょう。
学生数の減少は、人材と能力の質の向上、そして教育の質の向上でカバーすればよいと考えます。
少数精鋭です。
但し、いきなり大学教育の質的向上をめざしても、前段階の高校教育の質が高まっていない限り、画に書いた餅。
保育園義務教育化を起点として、初等・中等教育、そして高等・大学教育と統合しての教育改革が不可欠です。

本章の最後であるこの項のまとめにはこうあります。

コロナ禍が加速させている少子化は、この国の教育にも、将来にわたり決定的な影響を与えることが確実。
(略)
教育とは何か。生涯にわたる学びとはどのようなものか。
格差が広がる時代こそ、一人ひとりの賢明な選択がこれまで以上に求められていくのは間違いない。


選択することができない、選択肢が示されない状況になってきている時、一体どうしろというのでしょうか。
なんとも曖昧で、いい加減な提起で終わっています。
前回も述べたように、山田氏の種々の論に共通のスタンスであり、具体的、現実的な方法・対策の提案がありません。

階層化社会抑止の政治・行政の基盤としての教育の重要性


そもそも、教育格差問題をテーマとするには、より多面的な視点での考察が必要です。
家族社会学を軸とした議論では、どうしても家族・親子関係と、家族・世帯・親の経済的要素を対象としてのものに制約され、偏ってしまいます。

従い、そのことを前提での論述であることを筆者は、明示・明記しておくべきと思います。
その観点から考える場合、私がこれまでに斜め読みしたことがある以下の新書を参考にして、教育格差問題にどう取り組むべきか、本書における「階層化社会」化を抑止すべく、政治と教育行政をどう改革するかを考えることが適切と思います。

・『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』(吉川徹氏著・2018/4/30刊)
・『教育格差 ─ 階層・地域・学歴 』(松岡亮二氏著・2019/7/10刊)
・『教育は何を評価してきたのか 』(本田由紀氏著・2020/3/19刊)
・『教員という仕事 なぜ「ブラック化」したのか (朝日新書)』』(朝比奈なを氏著・2020/11/30刊)

なお、その3冊目を題材として
高校教育の多様化を教育の水平的多様性実現の起点に:『教育は何を評価してきたのか』から考える(2020/6/26)
を過去投稿しています。

個人・個性の可能性、潜在能力を引き出す教育改革を


折角ですから、上述した本書の内容と関連させたいくつかの提案を、以下行います。
まず、こうした類型化に反対すると同時に、個々人の可能性・潜在能力、そして潜在的な意欲を顕在化させるための基本的な教育・学習基盤を、国及び地方自治体が整備し、無償で提供すべきと考えます。

例えば、自宅での学習環境の確保は今後の教育において必須です。
学校における学習端末の無償供与は、早急に実施すべきであり、その端末は、当然、在宅学習、リモートラーニングにも用います。
当然、端末だけでは動きませんから、最低限のインターネット環境の整備・無償提供も行うべきです。

そして、当然、教育カリキュラム改革も必須です。
その内容は、親サイトhttps://2050society.com でのテーマとなりますのでここでは取り上げません。

現時点では、例えば先述の『教育は何を評価してきたのか 』(本田由紀氏著・2020/3/19刊)を元にした
高校教育の多様化を教育の水平的多様性実現の起点に:『教育は何を評価してきたのか』から考える(2020/6/26)
をお読み頂ければと思います。

なお、教育におけるIT、インターネット環境の整備・拡充は、昨年設置された「デジタル庁」と、現在検討準備が進められている「こども庁」両方に関係する課題です。
それぞれが横断的に、かつ統合的にという目的で設置するものですが、このテーマをどちらが主導権をとるかなど、従来のバカげた縄張り・利権争いなどにならぬよう、早急に、効果的に取り組んでほしいものです。
こんな記事も書いています。
デジタル庁に次いで子ども庁か。縦割り打破狙いの新庁設置は成功するか – 2050 SOCIETY(2021/4/5)

家族格差と教育格差の抑止のために児童基礎年金・学生等基礎年金として支給するベーシック・ペンション


最後にようやく、本稿の目的・主題部分です。
前回同様、教育格差の加速化・拡大化抑制と階層化社会の固定化抑止に、最優先で取り組むべき政策。
それは、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金を給付することです。

それですべてが改善・解決するわけでは当然ありません。
しかし、コロナで一層加速する、拍車をかけるという格差社会問題の改善の起点には間違いなくなるものです。
前回同様、ベーシック・ペンションとは何かを、以下に挙げました。

1.すべての日本国民に、個人ごとに支給される。
2.生まれた日から亡くなった日まで、年齢に応じて、無条件に、毎月定期的に生活基礎年金(総称)として支給される。
3.基礎的な生活に必要な物品やサービスを購入・利用することを目的
支給される。
4.個人が、自分の名義で、日本銀行に、個人番号を口座番号として開設した専用口座宛に支給される。
5.現金ではなく、デジタル通貨(JBPC、Japanese Basic PensionCurrency)が支給される。

6.このデジタル通貨は、国の負担で、日本銀行が発行し、日本銀行から支給される。


このベーシック・ペンションを、教育格差を生む大きな要因である、種々の教育・学習に必要な費用に充てるための児童基礎年金及び学生等基礎年金として、以下の金額のデジタル通貨を、児童・学生個人個人に、毎月振り込みます。

1.0歳以上学齢15歳まで     児童基礎年金  毎月8万円
2.学齢16歳以上学齢18歳まで  学生等基礎年金 毎月10万円
3.学齢19歳以上満80歳未満まで  生活基礎年金  毎月15万円
4.満80歳以上          高齢者基礎年金  毎月12万円

そのデジタル通貨は、以下に利用できます。

(生活基礎年金の限定利用)
第11条 生活基礎年金は、日本国内に限って利用できる。
2.また、第3条の目的に沿い、主に以下の生活諸費用に限定して利用できる。
  1)食費・住居費(水道光熱費含む)・衣類日用品費等生活基礎費用
  2)交通費・国内旅行費、一部の娯楽費 
  3)入学金・授業料・受験料、教育費・図書費
  4)健康関連費・市販医薬品
  5)医療保険・介護保険等社会保険等給付サービス利用時の本人負担費用
3.前項により、JBPC利用時は、マイナカードまたは決済機能アプリケーション付き指定端末を用いて、支払い決済を行う。


小学校時代に用いた端末は、そのまま中学・高校生になっても、成人しても、ベーシック・ペンションの決済管理用端末として利用できるものとします。
上記のように、ベーシック・ペンションは、マイナンバーカードと紐付けして日銀にデジタル通貨専用口座を開設し、通貨の管理を行うからです。
当然、機能の向上などで、端末も新しいものを支給することになるでしょう。
マイナポータル機能もアプリとして搭載しており、種々の社会保障や住民手続き、申請・申告用の端末としても活用します。

ベーシック・ペンションの多様な目的や機能、そのあり方などをテーマに、以下のように提案して来ています。
時間があれば確認してください。


母子家庭の貧困、子育て世帯の不安、結婚し子どもを持ちたい人たち、すべてに機能するベーシック・インカム制の議論・検討を(2020/5/20)
全国民が持つ、近未来のマイナンバーカード:ベーシック・インカムカードとして(2020/6/5)
ベーシック・ペンションによる児童手当・児童扶養手当廃止と発生余剰財源の保育・教育分野への投入(2021/2/7)
マイナンバーカードを専用デバイス無償配布と共に行政システム改革の必須ツールに(2021/2/23)

またこちらも参考に。

参考:<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

最後は駆け足になってしまいましたが、今回は以上とします。

次回は、<第3章 仕事格差~中流転落の加速>をテーマにして考えます。

※<山田昌弘氏執筆関連書>
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)』(2007/3/1刊)『結婚不要社会 (朝日新書)』(2019/5/30刊)『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書)』(2020/5/19刊)

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