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「家族格差」拡大・加速化対策としてのベーシック・ペンション:『新型格差社会』から考える格差・階層社会化抑止のBI論-1

家族問題を軸にした社会問題をこれまで取り上げ、パラサイト・シングルや婚活などの用語を用いて問題提起してきている山田昌弘氏が、コロナ禍で加速する格差を、新しい型とした新著『新型格差社会』(2021/4/30刊)を書き表しました。

以下の5つの種類に区分して、コロナによる格差拡大の加速化が、社会を不可逆的に変化させ、階層社会化をも推し進めることを懸念しての問題提起書です。

1.家族格差 ー 戦後型家族の限界
2.教育格差 ー 親の格差の再生産
3.仕事格差 ー 中流転落の加速
4.地域格差 ー 地域再生の生命線
5.消費格差 ー 時代を反映する鏡

一応、5つのテーマごとに記事を投稿する予定で、今回の第1回目は、「家族格差」についてです。

<第1章 家族格差~戦後型家族の限界>から

この章は、以下で構成されています。

・震災以上のコロナ禍の衝撃
・若年女性の自殺者増加
・ますます加速する少子化
・夫婦間で広がる愛情格差
・コロナ禍で深化する家族格差
・新型ドメスティック・バイオレンス
・コロナが顕在化させた戦後型家族の行き詰まり

本稿では、先ず以上のテーマを2~3に集約し、山田氏の論点を要約し、私が考えるポイントを少し加えます。
その後で、この章を私なりの視点で要約し、問題提起するかたちをとることにします。

自殺者数の推移で見るコロナ禍の衝撃的影響

まず、コロナ禍で増えている自殺者数について、筆者の指摘を整理します。

1990年代、1992~93年のバブル経済崩壊と続く通貨危機により、「一億総中流」社会の前提が崩れ、格差社会化への移行・拡大が進行。
その背景には、非正規雇用化が同時に進み、雇用・所得面からの格差化が進んだことがあります。
このことから、1998年に、前年2万4千人だった自殺者数が、一気に3万2千人に激増し、2011年まで毎年3万人超の状態が継続。
その間、リーマンショックによリストラや企業倒産等によるで中高年男性の自殺者数の増加が顕著。
その後、景気回復などで2010年~19年にかけては減少。
しかし、コロナにより、2020年7月頃から自殺者数が前年を大きく上回る増加に転じている。
中でも、10代から30代の若年女性の増加は著しく、2020年通期での女性総計約7000人中、40歳未満女性の数は1643人に。
その大きな要因は、非正規労働を余儀なくされている経済的弱者たる若年女性に増える、収入減や失職などにあることは想像可能です。

そして、この自殺者数の増加を、コロナ禍が、社会の「下層」で生きる人々にもたらす影響の大きさを示すものとしています。
ただし、その下層化は、コロナ以前に進んでいた中流生活者及びその家族の非正規雇用化や、デフレ経済の長期化による低所得化が、コロナにより、中流生活者の、隠れ貧困世帯化、真の貧困生活者化への転落へ拍車をかけたことによるものです。

加速する少子化による家族格差

次に、これも、長期的に社会問題とされながら、一向に有効な対策が取られることがなく推移してきた少子化問題です。
これはもう、コロナ禍でより顕著にその傾向は現れると予想されたところです。

まず出産よりも先、の婚姻数自体が、すでにコロナ禍で、2020年は2019年比で12.7%減少しています。
・コロナ禍で結婚という新生活に踏み出すカップルが大きく減った
・コロナ禍の生活ルールで、結婚に至る出会いが減少する
・コロナ禍で、より結婚を望む女性は増える可能性があるが、一層経済的条件を重要視することで、その条件を満たす男性は増えず、可能性はより低下する
などの理由が挙げられます。

そして当然ですが、少子化、出生数の減少については、本書の指摘を待つまでもなく、より厳しい予想が出ており、関連サイトで、以下投稿しています。
コロナ禍1月出生数世界で急減、2021年日本の出生数80万人割れ(2021/4/10)

出生数の減少理由は、長く、繰り返し指摘されている未婚率の高まり、結婚年齢の高まり、教育費その他経済的な不安、出産適齢期にある女性数の減少など、多種複合的要因があります。
コロナ禍で、これに加え、妊娠時の感染、健康上のリスク懸念、病院などへの外出時の感染懸念、医療体制への不安なども要因になりうることも本書では指摘しています。

いずれにしても、来年2021年80万人割れ予測は、そのとおりになると思います。
その上、翌2022年移行も、今年の状況を考えると、より厳しく見るべきでしょう。
コロナ感染リスクにとどまらず、雇用や所得問題、関連する社会保障制度改革対応のスピードと内容等、当分の間望ましい方策・手立てが打たれることが期待できないことから、少子化においても加速すると見ておくべきでしょう。


<参考:少子化社会対策批判関連記事リスト>

なお、少子化対策については、https://2050society.com で何度も取り上げてきています。
基本的には、本書でも指摘している雇用・所得などの経済的不安、それらによる将来への社会的不安に大きく起因することを指摘しているのですが、それらの記事は、以下で確認頂けます。

◆ 出生率1.36、出生数90万人割れ、総人口減少率最大:少子化社会対策大綱は効き目なし(2020/6/11)
◆ 「2020年少子化社会対策大綱」批判-1:批判の後に向けて(2020/6/18)
◆ 「少子化社会対策大綱」批判-2:少子化社会対策基本法が無効施策の根源(2020/6/25)
◆ 「少子化社会対策大綱」批判-3:少子化の真因と究極の少子化対策BI(2020/7/13)
「少子化社会対策大綱」批判-4:安心して子どもを持つことができるBI、児童基礎年金支給を早期に(2020/7/28)
◆ 「令和2年少子化社会対策白書」と86万ショックと出生率1.36の現実(2020/8/17)
◆ 少子化社会対策と少子化担当相を糾弾する(2020/8/18)
結婚しない理由、結婚できない理由:少子化社会対策白書から(2020/8/27)
子どもを持たない理由、子どもを持てない理由:少子化社会対策白書から(2020/8/28)


コロナ禍で顕在化・拡大化した家族・夫婦間愛情格差


この他、家族間の愛情格差の広がりについて、話が及びます。

昭和の時代に比べると「仲のいい夫婦」が増えているといいつつ、セックスレス夫婦の増加を引き合いに出して、「仲のいい夫婦」と「仲の悪い夫婦」の格差が大きくなり、それが併存しているのが最近の傾向とします。
まあ、そのことについてとやかく言う必要はないでしょう。
夫婦の数だけ、夫婦のあり方があります。
同様、家族(世帯)の数だけ、家族(世帯)のあり方が異なります。

コロナで、その愛情についてや、普段考える必要もなかった夫婦や家族のあり方、その関係等について意識し、考える機会が増えた。
これは、紛れもないことです。
テレワークでそうした経験をした夫婦や家族は多いでしょうし、労働時間の短縮や失業等で所得が減少し、多々影響を受けた夫婦・家族も同様です。
仕事を持たない高齢者夫婦間においても、コロナは、何かしらの影響を与えているでしょう。
コロナでより絆を深め、愛情を深めあった夫婦・家族もあれば、その逆もある。
とすれば、家族格差もコロナにより深化・拡大した。

ただそれが、単純に、経済的要因によるものとは言えないのですから、個々人、個々の夫婦・家族内の問題。
それで収め、それぞれが今後どうするかを考え、話し合うしかないこと。
無論、話し合わない夫婦・家族であっても致し方ないこと。
プライベートな問題としておけばよいでしょう。

但し、この章で筆者が付け加えている、新型ドメスティック・バイオレンスなど、刑事事犯になりうるトラブルの発生やその抑止については、別のこととして、対応・対策が必要であることは言うまでもありません。

限界点に来ているという「戦後型家族」とは

ところで、戦後型家族が、コロナで限界点に来ている、と筆者はしています。
それは、「主に夫の収入で中流生活を維持する」家族を意味するとのこと。
戦後型家族システムは、高度成長期に普及したが、1990年頃から行き詰まりが明らかになり、コロナでその維持が不可能になった、とします。
それぞれの節目が、昭和から平成、平成から令和への転換期に当たることを、筆者はなぜか指摘します。
未婚化、少子化が始まったのは高度成長期が終わった1975年頃で、平成元年1989年の合計特殊出生率が1.57となったことでそれと認識されたのが1990年。
こう紐付けして、年号との因縁・めぐり合わせを強調するのです。
西暦年で経過を追えば、さしたる意味はないことなのですが、社会学者のなせるところなのでしょうか。

それだけの視点をもって「戦後型家族」とすることには、疑問を持ちます。
家族社会学専門家ならば、当然、家父長制の名残としての「戦後型家族」と位置付けるかと思ったのですが、労働経済視点を軸としての論ならば、どうもインパクトが弱く感じられるのです。

経済的要因に、愛情など情緒的要因をも内包させて、というか取り込みかつ消し込んで、戦後型家族を位置付けるのは、やや無理があるというものでしょう。
あたかも、結婚による夫婦・家族形成が、経済面だけで成立し、愛情や家族個々人の人間性は、その属性的なものとされてしまうかのように思うのは、深読みし過ぎでしょうか。
そうならば、随分ドライな家族社会学者と思ってしまいます。
なのに、夫婦・家族間愛情格差を持ち出すことに、違和感を感じたのです。


家族格差拡大の根幹にある夫婦・家族形成、夫婦・家族生計維持のための経済的不安

今回の家族格差を加速する大きなきっかけとなったコロナ禍。
結局、その最大の要因は、コロナがもたらした、現在とこれからの生活上の経済的不安が、まったく解消されないことにあると思います。
解消可能になるであろう時期、タイミングも、格差拡大・加速化を止める方策も、未だに見出すことができません。
その一方、コロナ禍で、より経済的基盤が強まり、豊かさを加速・拡大する人もいるわけです。
そのことから、筆者は、社会階層化が、より深く、より鮮明になるとします。

とすると、その進む速度を弱めるか、変化を食い止めるには、経済的対策をもって行うしかない。
そういう次元に進むしかないのではと考えます。

家族格差拡大による社会階層化抑制に必要な、経済対策としてのベーシックインカム、ベーシック・ペンション


所得減少・所得喪失がもたらす家族格差。
その影響・結果としての、自殺者数増加、少子化、家族・夫婦関係の危機。

それらの要因であり、それらの結果でもある、
・孤独・孤立不安
・結婚や出産を躊躇させる不安
・家族間・夫婦間の揺らぎや不満、家族・夫婦生活上の不安
・子どもを持つことで増す子どもの将来への不安

その多くに、経済的不安が、何かしらの影響を与えていることは間違いないでしょう。
ならば、経済的側面からの支援で、それらの不安の抑制や解消を図ることが、最優先・最善の方策。
そう考えます。
それが全てではないですが、それから始めるしか有効な手立てはないでしょう。
すべての人に有効ではないかもしれないが、すべての人に平等に経済的に支援することが、最も合理的であり、最も効率的でもあります。

それが、ベーシックインカム、当サイトで提案する「ベーシック・ペンション」です。

ベーシック・ペンションとは


詳しくは、以下の記事で確認頂ければと思いますが、ここでは、その中から要点だけ以下に転載しました。
⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)

1.すべての日本国民に、個人ごとに支給される。
2.生まれた日から亡くなった日まで、年齢に応じて、無条件に、毎月定期的に生活基礎年金(総称)として支給される。
3.基礎的な生活に必要な物品やサービスを購入・利用することを目的
支給される。
4.個人が、自分の名義で、日本銀行に、個人番号を口座番号として開設した専用口座宛に支給される。
5.現金ではなく、デジタル通貨(JBPC、Japanese Basic Pension

Currency)が支給される。
6.このデジタル通貨は、国の負担で、日本銀行が発行し、日本銀行から支給される。

その金額は、年齢により以下のように支給するというものです。

1.0歳以上学齢15歳まで     児童基礎年金  毎月8万円
2.学齢16歳以上学齢18歳まで  学生等基礎年金 毎月10万円
3.学齢19歳以上満80歳未満まで  生活基礎年金  毎月15万円
4.満80歳以上          高齢者基礎年金  毎月12万円

解決法・対策提案に至らず、調査分析にとどまる山田論


話は変わりますが。
学者・研究者ならば、そして書として世に問うならば、調査分析で留めることなく、その改善・解決策、とりわけ政治・行政上の政策・対策を提案・提示することが、必要かつ求められるものではないかと思うのです。

2019年に『結婚不要社会 (朝日新書)』、2020年には『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書)』、そして今年本書と矢継ぎ早に新書を出版している山田氏。
本書を購入してから知った先の2冊のうち前者は、即注文して入手。後者もすぐに注文する予定です。
それぞれの書で、果たして、政治・行政への提言・提案レベルの内容を見ること、読むことができるかどうか。
本書での取り組みの総括は、最終回の<消費格差>において行うことにしますが、どうやらあまり期待できそうにないと思っています。

経済対策だけでなく、基本的人権と社会保障制度の基軸としてのベーシック・ペンション


今回は、直接的には経済対策として有効なベーシック・ペンションとして取り上げました。
しかし、お気づきのように、家族格差視点は、社会問題である少子化対策や自殺者対策、孤独・孤立不安対策、加えて雇用・労働問題とも繋がっています。

本稿では触れていませんが、当サイトで多面的に展開している、社会保障制度全体や労働・雇用政策と直接関係し、それらの軸・起点となるベーシック・ペンションであることを、最後に申し添えておきたいと思います。


参考:<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)


なお、本書『新型格差社会』は、どちらかというと、https://2050society.com で取り上げるべき書です。
しかし、根本的に5つの格差問題に、少しでも確実に触れ、多少なりとも改善・解決に有効な共通の政策・提案としては、いわゆる「ベーシックインカム」、当サイト提案では「ベーシック・ペンション(生活基礎年金)」しかない。
そう考えて、当サイトで先行して取り上げることにしたわけです。
機会があれば、本書及び先述の書を含め、関連する政治・行政問題、そして社会問題として、https://2050society.comで別途取り上げたいと考えています。

次回は、<第2章 教育格差~親の格差の再生産>をテーマにして考えます。


※<山田昌弘氏執筆関連書>
結婚不要社会 (朝日新書)』『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書)』『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)

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