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日本在住移民・外国人へのベーシックインカムをどうするか:BI導入シアン-19(2020/8/7)

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 前回、
ベーシックインカム導入で予想される社会構造の変化:BI導入シアン-18
と題して、ベーシックインカムを導入することで、社会経済にどういう影響を与えるか、ごく一部の視点で考えうることをメモしてみた。
 これまで、種々ベーシックインカム制のあり方について考えてきたが、まだ一度も触れていなかった課題がある。
 それは、社会経済という大きな括りの中の課題の一つでもある、外国人・移民に対するベーシックインカム政策である。
 今回は、その1回目なので、漠然とではあるが、議論検討のきっかけ作りとして考えてみたい。


新刊書『移民の経済学』『移民と日本社会』で考える移民、外国人と日本社会の望ましい関係のあり方


 随分、大仰なタイトルを付けたが、ここで議論することなど今の私にはムリ。
 いずれ、この問題にも視点を当てて考え、何かしらの提起・提案をと思い、この2冊
・『移民と日本社会-データで読み解く実態と将来像 』(2020/2/25刊、永吉希久子氏著)
・『移民の経済学 雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか 』(2020/1/25刊、友原章典氏著)
を、なんとか6月には斜め読みし終えてはいる。

 正直、結構読みづらかった。
 その理由の一つは、移民・外国人の受け入れと言っても、高技能・高度専門職として、というのと、低技能職労働者として、という受け入れでは、まったく別の論点での議論になること。
 また、ヨーロッパなど、過去の植民地統治時代からの移民・外国人との歴史的な関係がある各国と日本とでは、これもまったく思想・背景などが異なること。
 加えて、最近のこうした専門分野の論述では、データを重視しており、本書も同様だった。
 種々の調査データが紹介されても、当然、まったく同一条件を設定し、異なる要素を投じて調査することなど不可能なので、その真実性・正確性・確率などには、絶対性がなく、真反対の意見・分析結果を招くことが多いことが示されている。
 こういうこともある、こうなることも考えられる、となり、要は、結局、わからないのだ。
 ということで、自分なりの整理には、もう少し時間をかけたいと思っている。

日本独自のベーシックインカム制の基本条件としての日本国籍と例外利用規定

 日本政府が、日本国民の合意を得て制定導入する日本のベーシックインカム制は、当然、日本国籍をもつ日本国民だけに支給される。
 これは自明のことだ。
 ただ、ここで、日本国籍を持つ人であっても、海外での生活や活動に、このベーシックインカム、生活基礎年金・児童基礎年金を使うことはできないという規定をもうけるべきと考えている。
 その理由は、日本政府が支給するベーシックインカムは、日銀が発行する、ベーシックインカム用として独自のデジタル通貨とするからだ。
 生活基礎年金・児童基礎年金という名が付くことで分かるように、憲法で保障された基本的人権として保障された生活レベルを送るための給付である。
 衣食住及び社会保険関係支出に用いられることを前提・条件とした自国内独自管理通貨なので、海外での利用はできないものとする。
 すなわち、海外への持ち出しはできないBIデジタル通貨である。

偽装結婚、偽装養子縁組のリスクと防止策の必要性

 ベーシックインカム受給の絶対条件としての日本国籍の保有。
 この時懸念されるのは、日本国籍を持つ者と外国人との結婚が、ベーシックインカム受給目的で偽装的に行われることである。
 その防止策として考えられるのは、結婚したことで無条件にベーシックインカムを受給できる例外規定を設けておくことだろうか。
 例えば、具体的には、どちらかまたは双方に一定以上の所得や納税実績、社会保険料納付実績があることなどだ。
 また、外国籍の成人との結婚ではないが、児童基礎年金受給目的で、日本人の子どもを偽装養子縁組するケースも現れそうだ。
 これも、何らかの厳しい承認規定が必要になる。
 頭の痛いことだが、こうした懸念は想定内のこととして対応・対策が必要になる。

社会経済に貢献した市民的外国人・市民的移民へのベーシックインカム支給

 「日本は、これまで一貫した移民統合の理念や、それを具現化したものとしての政策を持たずに来た。」(『移民と日本社会』から』
 しかし、ベーシックインカム制を導入することになれば、当然、移民政策との関係で、日本国籍付与の条件の見直しや、ベーシックインカム制そのものの関連規定を設けることになる。
 ベーシックインカム制は、発展途上国や、低所得社会の構成員である外国人にとって非常に魅力ある制度だ。
 日本がその導入国になれば、移民希望者が相当増加することは間違いない。
 労働人口が減少する国としては、労働力として期待できる移民の受け入れは、積極的に行いたいところだ。
 しかし、先にも述べたが、日本が求める労働力がどういう種類のものか、受け入れ後どうするのかのビジョンや方針が欠かせない。
 外国人・移民の日本への融合・統合の方針として、彼らが持つ異文化・多文化をそのまま受け入れようとする「多様化・多様性主義」は、日本では単純には受け入れがたいのではないかと思う。
 ましてや政府が掲げる「多文化共生」も、いざ社会保障制度の適用やベーシックインカムの支給基準となれば、言葉の持つ意味そのままの方針を具現化することには、絶対に反対するはずだ。

 そうではなく、
「移民が「市民のような」あるいは、市民的スキルを身につけることを通じて、統合が生じる」という「市民的統合」(『移民と日本社会』から』)を基本方針とするのが望ましいと思う。
 もう少し具体的に言うと
「移民・外国人が、受け入れ国である日本の言語や歴史、社会の仕組みについての知識、さらには自由民主的価値を身につける」(『移民と日本社会』から』)ことを意味し、条件とするのだ。

 加えて、私は、日本での就労年数・居住年数と納税・保険料納付実績等の基準を設け、日本国籍保有者に準じて、べーシックインカム支給を認めることにすればと考える。
 まあ、議論百出が予想される課題である。

日本人の良識・良心が反映される移民・外国人へのベーシックインカム制

 少子高齢化と結びつく形での労働人口の減少。
 その対策としての外国人労働者の受け入れ促進。
 ここまでは、雇用と関連する労働保険と基本的な社会保険制度の適用・運用など、どちらかというと既定の制度上での対応となる。
 改正出入国管理法を起点としての課題である。
 ここに日本人と同次元・同レベルでの社会保障制度の適用の問題となると、現状の生活保護制度においても問題が多いし、ベーシックインカムとなると、かなりハードルが高い課題となる。
 こちらに都合がよいばかりの社会保障制度、社会経済システムなどあるはずがない。

 ベーシックインカムは、ある意味社会システム改革であり、多面的に、種々考えうる課題、考えるべき課題をすべて洗い出し、すべてが一つの制度系・生態系のように綴られ、連繋されて完成していく必要がある。
 感情的になりがちが課題であるが、また、基本的には日本の国内だけに適用する社会保障政策であるが、今回の観点から考えるならば、当然グローバル社会に何らかの範を示し、日本の良心を示す大切な課題なのだ。
 それは、国としての良識・良心として示されるが、本質的には、日本人個々人と日本人が構成する日本社会の良識・良心でもあることを心しておきたい。

 次回は、べーシックインカム制導入に伴う、雇用保険のあり方について思案する。

(参考):<BI導入シアン>シリーズ

1.所得がある個人を別人格とみなす社会経済システム
2.現状の年金生活者もベーシック・インカム受給者のようなもの
3.中国がベーシック・インカム制を導入したら
4.公務員の給料の一部は、ベーシック・インカム性を持つ
5.働く人の格差是正と安心を目的としたベーシック・インカム
6.不測の事態に備え、機能するベーシック・インカム
7.夢のある人、夢の実現をめざす人のためのベーシック・インカム
8.高額納税者も当然の権利として受け取るベーシック・インカム
9.ベーシック・インカム制導入で国民年金制度は廃止へ
10.所得税を主財源とするベーシック・インカム制で所得税法改正へ
11.週刊エコノミスト「ベーシック・インカム入門」で終わらせないために
12.ベーシック・インカム制と同時に改革・導入する社会保障保険制度
13.ベーシック・インカム制導入に伴う厚生年金保険制度改革
14.ベーシックインカムは独自の電子通貨で支給・管理を
15.ベーシックインカムとは最低所得保障か
16.ベーシックインカムの適正額はいくらか
17.ベーシックインカム制は、大家族化・多子家族化を招くか
18.ベーシックインカム導入で予想される社会構造の変化

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年8月7日投稿記事 2050society.com/?p=1476 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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