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ベーシックインカムとは最低所得保障か:BI導入シアン-15(2020/8/3)

 自分なりのベーシック・インカム制の一定レベル以上の提案のまとめ作業に入る前段階として、種々思いつき、思い浮かぶ事項をメモ書きし、整理していくための<BI導入シアン>シリーズ。
 8月第1週も、従来の延長線上での思いつきの整理としてのシアン思案を継続します。

 8月2日(日)の日経に「勢いづく所得保障論」と題した一文が掲載された。
 コロナ禍において、実験的な取り組みを含め、ベーシックインカムを導入する国や都市が増える傾向にあることをレポートしたものだ。
 新型コロナウイルスが低所得層を直撃したことや、経済構造の急速な変化が雇用を不安定にしていることが背景にある。
 その概要から考えたことを、今回はメモしようと思う。

ベーシックインカムを最低所得保障とすることの違和感

 日経紙のその記事は、「最低所得保障(べーシックインカム)をはじめとした所得保障制度の導入論が先進国で再び勢いづいている。」という書き出しで始まる。
 まず「最低所得保障」という表現が適切かどうか。
 ベーシックを「最低」と捉え、インカムを「所得」としたわけだが、「保障」という概念は、ベーシックインカム自体にはなく、ベーシックインカムを、社会保障制度の一種とみなすゆえ「最低所得保障」としたのだろう。
 これは、日経記者が独自に表現したわけではなく、一般的に表現されるものとしてのことだ。
 私は、「最低」という用語を用いることに反対だ。
「最低」とする基準に、絶対的な合理性・公平性を持たせることが極めて難しいと考えるからだ。
 例えば、最低賃金は、地方・地域によって異なるように。
 年齢・世代、健康状態、地域などによって、社会保障としての最低レベルを同一とすることにはムリがあるだろう。

ベーシックインカムを「生活基礎年金」と呼ぶ

 私は、ベーシックを、本来の意味の通り、「基礎」「基本」という意味を示すと考えたい。
 そして社会保障制度の基本としての生活保障の意味・意図から、「生活基礎」と意味に解釈・置換する。
 インカムは、収入・所得に違いないが、敢えて、全世代型社会保障、生涯型社会保障という意味・意義から給付される「年金」と解釈する。
 従い、「生活基礎年金」と呼ぶことにしてはどうかと提案している。
 加えて、義務教育終了まで、学齢15歳までの子どもに対するベーシックインカムを「児童基礎年金」としてはどうかと考えている。
 今回は、これが本題ではないので、日経紙の概要に戻ろう。
 まず、同紙は、コロナ禍で取ったスペインのベーシックインカムを紹介する。

一定所得水準に届かない世帯へのベーシックインカム制の課題

 コロナ禍、スペインが導入を決定し、6月中旬に受付けを開始した独自のベーシックインカム制度というか所得保障制度。
 一律の所得を保障し、他の収入で届かない差額を支給する制度の導入を決めた。
 世帯人数に応じて所得保障水準を設定。
 単身世帯は、月462ユーロ(約5万7千円)、5人以上世帯はは月1015ユーロ。
 給与などの収入がその水準に届かない世帯に対し差額を支給する。
 要は、困窮世帯救済策だ。
 人口の5%の230万人が対象となるという。
 その財源として必要な、年間約30億ユーロは企業の優遇減税縮小、新設のデジタル課税での調達を想定している。

 考え方は十分理解できるが、運用上問題が大きいと私は思う。
 所得が一定水準に達した場合必要な適用除外措置が、問題になるだろう。
 まず、その実態を確実に捕捉できるかどうか。
 本人が必ず届け出るかどうか疑わしいし、賃金などを支払う企業にその責任を追わせるのも難しい。
 チェックするための組織・人とコストが馬鹿にならないだろう。
 その所得水準が、状況により変更する必要が必ず発生することも問題になる。

 日本では、生活保護制度自体が、問題視されており、ベーシックインカム導入目的の一つに、生活保護制度の廃止を組み入れていることで、困窮救済の運用の難しさが示されているわけだ。
 私は、基本的には、無条件に全員に一律に支給することが望ましいと考えている。
 スペインの制度は、ベーシックインカム制ではないのだ。
 信じられないようなことだが、あのアメリカのLA等11都市が、市民に無条件でベーシックインカムを支給する実証実験をすることを6月に宣言した。
 アイルランドも全国民に一定の現金を給付する実証実験をすることを公約とした。

ベーシックインカムを意識した他の社会保障制度の有効性と課題

 ベーシックインカム制の過激性ゆえか、前例・成功例がなく、やってみないとわからないためか、各国それぞれ社会保障制度の一環として、類似・近似した制度の導入事例はある。
 例えば、英国では、勤労意欲を重視し、低所得者支援策のユニバーサル・クレジット(UC)を導入。   
 仕事のない人には求職活動を求めた。
 スウェーデンでは、低所得者への現金給付に加え、成人向け奨学金を支給する。
 フィンランドで2017年から2年間実験導入されたのは、失業者に限定した手当の支給だった。

 日本でも、雇用保険制度において、教育訓練に補助金などを支給する制度はある。
 しかし、私は、この制度には基本的には反対だ。
 理由は、提供するプログラムには限度があるし、受講する人の適性と意欲が基本的に重要であり、求職・求人がマッチする可能性はそう高くないと考えるためだ。
 ムリとは断定できないが、ムダが生じるリスクが高いだろう。
 まして、かかる費用と受講中の生計費をすべてカバーするまでの制度ではないためだ。

財源問題と公平性課題

 多くが、実験であったり、限定的な社会保障制度であったり。
 ベーシックインカムが現実に、国家レベルで導入されない、あるいは導入できないのは、結局財源の問題であり、果たして導入した場合、恒常的に維持運営できるかどうかのまさに保証がないためだ。
 例えば、日本で全国民に1人月5万円のベーシックインカムを支給するためには、年間で70兆円以上必要になる。
 10万円の特別定額給付金のように、1回ポッキリということではない。
 毎月、ずーっと継続して支給するのだ。
 私は、月10万円以上とすべきと思っているので、140兆円以上になる。
 また、導入に反対・抵抗する大きな要因として、不公平が生じることへの不満がある。
 条件をつけて、ある人には支給され、ある人には支給されない。
 これは、平等性を原則とすることから生じる不公平性への不満を招く。
 もともと、社会保障には、所得再分配が思想・方針として盛り込まれている。
 不満は、その所得再分配の仕方・程度に原因があることで生じることが多い。
 だから、公平性を確保すべく、ベーシックインカムで、すべての国民に一律に同額を支給する方法が、最も合理性があるわけだ。
 細かい条件を付けない、ということは、管理運用法がシンプルで、ランニングコストを抑制できるのだ。
 敢えて、ランニングコストとしたのは、私は、わが国でベーシックインカムを導入するためには、個人番号(マイナンバー)との紐付けと日銀一元管理、デジタル通貨の発行、国内・内需等限定使途、など、わが国だけでの運用と管理に限定したシステム構築のためのイニシャルコストが必要と考えるからだ。
 このシステムで、財政問題と公平性課題に応えられる、わが国独自のベーシックインカム制、「生活基礎年金」「児童基礎年金」を継続して考えていきたい。

 次回は、実際に、いくらがベーシックインカム「生活基礎年金」「児童基礎年金」として適切かを考えることに、再度チャレンジしてみたい。
 なお、これまで当サイトで、取り上げてきたベーシックインカム論のラインアップを、以下に掲載しています。
 興味を持って頂けるタイトルがありましたら、チェックしてみてください。

(参考):<BI導入シアン>シリーズ

1.所得がある個人を別人格とみなす社会経済システム
2.現状の年金生活者もベーシック・インカム受給者のようなもの
3.中国がベーシック・インカム制を導入したら
4.公務員の給料の一部は、ベーシック・インカム性を持つ
5.働く人の格差是正と安心を目的としたベーシック・インカム
6.不測の事態に備え、機能するベーシック・インカム
7.夢のある人、夢の実現をめざす人のためのベーシック・インカム
8.高額納税者も当然の権利として受け取るベーシック・インカム
9.ベーシック・インカム制導入で国民年金制度は廃止へ
10.所得税を主財源とするベーシック・インカム制で所得税法改正へ
11.週刊エコノミスト「ベーシック・インカム入門」で終わらせないために
12.ベーシック・インカム制と同時に改革・導入する社会保障保険制度
13.ベーシック・インカム制導入に伴う厚生年金保険制度改革
14.ベーシックインカムは独自の電子通貨で支給・管理を

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年8月3日投稿記事 2050society.com/?p=1456 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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