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ベーシックインカムの適正額はいくらか:BI導入シアンー16(2020/8/4)

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 自分なりのベーシック・インカム制の一定レベル以上の提案のまとめ作業に入る前段階として、種々思いつき、思い浮かぶ事項をメモ書きし、整理していくための<BI導入シアン>シリーズ。
 今回で16回目を数えます。

現状BI論におけるBI給付額と必要原資

20歳以上月額7万円、20歳未満月額3万円案

 元日銀の原田泰氏が書いたことで注目を集めた『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか 』。
 この中で、原田氏が設定したベーシックインカムの額は、20歳以上(約1億500万人)が一人月額7万円、20歳未満(約2250万人)が同3万円として、必要総額は、約96.3兆円。
 財源は、所得税方式を提案している。
 現行所得税法を改定して、税率を30%とした場合に得る所得税収額の見積もりが、77.3兆円。
 改正前所得税収が、13.9兆円で、差し引き63.4兆円。
 次に、現状の社会保障制度等で既に支給されている、生活保護費、老齢基礎年金、児童手当、雇用保険等生活保障的な給付額の合計が約23兆7千億円。
 それにその他の政府支出から移転できる財源分を加えると、総額が35.8兆円。
 63.4兆円と35.8兆円の合計が99.2兆円となり、ベーシックインカムに必要な96.3兆円を満たすことになる。
 但し、この数字は、同書執筆・出版時の数字をそのまま用いるとともに、集計値に少し手を加えていることを了承頂きたい。
 人口減少は当然だし、所得税率を簡単に一律30%としている点など、そのままの数字を公式のものとするのではなく、あくまでも参考程度に考えたい。
(参考)
◆ ベーシック・インカムとは-2:リフレ派原田泰・前日銀政策委員会審議員から学ぶベーシック・インカム

一律月額8万円案

 次は、やはり先日紹介した2020/7/21号<週刊エコノミスト>の特集「ベーシックインカム入門>において、小沢修司京都府立大名誉教授の小論における提案例。
 そこでは、月額8万円を前提として論じている。
 この場合、年間総額は、1億2千万人への支給で、115兆円となる。
 その理由・根拠は、現行の生活保護制度において、都市部で生活の30代・40代単身者の<生活扶助>額が、約8.5万円であることだ。
 この場合、所得税率を56%にする必要があるとしている。
 しかしこの所得税率も、簡便法をとって一律としていることには検討の余地がある。
 また、8万円では、現状の年金受給夫婦の年金額を下回ることも示されており、問題がある。
 そもそも、現状の生活保護制度において受け取っている支給額が、8万5千円を上回る人がかなりの比率でいると考えられる。
 それは、<生活扶助>だけでは、現実的に最低限度の生活を維持することが不可能な困窮者が多いためである。
 生活扶助以外に、<住宅扶助>を加えて初めてそれが満たされるのだ。
 持ち家で生活保護を受けている人の割合がどの程度か分からないが、多くの受給者は、賃貸住宅を利用しているのではなかろうか。
 持ち家ならば、売却処分などすれば、生活保護世帯から除かれることになるだろうから。
 とすると、月額8万円の<生活扶助>に<住宅扶助>を加えた額が、現実的な生活保障としてのベーシックインカムの金額設定の基準になると考える。
 2つの例を挙げたが、それ以外では、月額5万円案(総額60兆円)も見られ、同7万円案(総額84兆円)もあり、調べれば他の案もあるだろう。
 しかし、私としては、やはり、ベーシックインカムの導入意義・目的をしっかり考えると、現状の生活保護世帯の平均的な受給額を、ベーシックインカムの額にすることが適切と考える。
(参考)
週刊エコノミスト「ベーシック・インカム入門」で終わらせないために

現状生活保護制度の問題点

 ベーシックインカムの導入目的の重要な目的・意義の象徴とされるのが、「生活保護手当」制度であり、社会福祉・社会保障としてのその実態に関する問題にある。
 生活保護給付を受ける所得基準を満たしてはいても、実際には、種々の理由・事情で、申請せずに、貧困生活に身を委ねている人や世帯が非常に多い。
 生活保護を受給できるはずの世帯のうち、実際に受給している世帯の割合である<捕捉率>は、日本では、多くが50%を超える他諸国に比して著しく低く、20%レベルなのだ。
 その理由として、申請の審査が厳しく、かつ審査の際の担当者の態度や受給決定審査の恣意性などが挙げられている。
 ベーシックインカムが、そうした現実の生活保護制度の問題を解決する上で、その代替制度になることが、ある意味で「ウリ」である。
 そして、生活保護制度に代わる、すなわち、恣意的な基準や公平性に問題がある生活保護制度自体を廃止できる程度の額であることが、ベーシックインカムの導入上、「キモ」になるわけだ。
 では、現状の生活保護制度とその給付額は、どうなっているのか見ておきたい。

生活保護を受けるための要件と扶助の種類

生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先する。」
 これが、生活保護を受けるための要件とされている。
 もう少し、具体的に見ておこう。

資産の活用により、預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てる。
能力の活用により、働くことが可能ならば、その能力に応じて働く。
あらゆるものの活用においては、年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用する。
扶養義務者の扶養として、親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受ける。
 そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用される。
としている。
 そして、一口に生活保護といっても、以下のように、数種類の扶助から成り立っていることをこの機会に知っておきたい。

生活保護における<生活扶助>等の算定基準

 上記の複数の扶助を、それぞれの基準に従って適用・計算・合計されたものが、生活保護費になる。
 世帯が対象であり、世帯構成員の数、年齢、小中高どの学校の在籍者か、障害者か否か、母子世帯かなどの条件を加味して、給付金額が決められる。
 その基準となる図表が以下だ。


図表が小さいので、こちらのリンクからの通常のサイズで見て頂ける。
生活扶助基準額について
住まいの地域の級地

 非常にややこしく、簡単には計算できない。
「生活扶助基準額表」にある、
<第1類>とは、 食費等の個人的費用 (年齢階級別に個人単位で定められた金額の世帯合計)
<第2類>とは、光熱水費等の世帯共通的費用 (世帯人員別に定められた金額) 

のことだ。

 これまでに目にしたことがある、現実的な生活保護費の額としては、12~13万円程度という印象・イメージが残っている。
 だが、世帯を対象として運用されているので、単身者や世帯構成人数によって当然金額は異なる。
 で、調べて見ると、その世帯情報を入力すると、自動的に現行の生活保護費が計算されるサイトを見つけた。
 以下が、そのサイトだ。
生活保護自動計算サイト https://seikatsu-hogo.net/


 世帯条件が同じでも、地域によって掛け率が異なり、当然支給額も違ってくる。
 そこで、試しに、私が住む愛知県岡崎市(2級地1)を選んで、いくつかの条件を設定して支給額を調べてみた。


60~69歳単身高齢者の生活保護費(岡崎市:2級地1)

 <生活扶助>は、第1類費が、35,230円、第2類費が36,880円、計72,110円。
 <住宅扶助>が、37,000円。
 合計で、109,110円だった。

 これが、1級地1で調べると、133,490円となった。
・1級地2が、130,070円。
・2級地2が、107,450円。 
・3級地1が、108,210円 3級地2が、100,480円。
 該当する地区をアトランダムに一つ選んでやってみただけなので、実際の自治体ごとにもしかしたら金額が違うかもしれない。
 また、年齢帯によっても金額の違いはある。
 一応、この単身生活保護受給者の受給額が、ベーシックインカムの額を設定するガイドラインになると思う。
 次に、ベーシックインカムを導入する大きな目的の一つである、母子世帯・父子世帯の貧困対策に関してのチェックだ。
 3歳以上で小学校就学児童1人を持つ母子世帯の現状の生活保護費だ。

3歳以上小学生以下のこども一人の母子世帯(岡崎市:2級地1)


 次に同じく、2級地1の岡崎市の場合。
<生活扶助>は、第1類が、65,830円に0.8850を掛けて58,260円、第2類が45,360円、計103,620円。
・<児童養育加算>が、10,000円
・<母子加算>が、21,200円
・<住宅扶助>が、44,000円。
合計で、178,820円 となった。
 親子2人の最低生活費としての生活保護支給額だ。
 どうだろうか。
 かなり厳しい額に思える。

同じように、同条件で、地区級ごとにみると
・1級地1は、211,420円、1級地2が、206,520
・2級地2が、176,410円 
・3級地1が、169,330円、3級地2が、165,260
となる。
 ベーシックインカム<生活基礎年金>を12万円、<児童基礎年金>を8万円とすると2人合計で20万円。
 1級地の合計額よりも少なくなると問題が残る。
 ここは何かしらの配慮が必要で、<児童基礎年金>を、10万円に変更しておきたい。

生活基礎年金月額12万円、児童基礎年金10万円を想定

 ということで、当面の提案としては、生活基礎年金を月額12万円、児童基礎年金を月額10万円と設定しておきたいと思う。
 確認になるが、現在の生活保護給付のうち、<生活扶助>基準額すなわち食費・光熱費等、と、<住宅扶助>すなわち家賃補助額の合計額を、ベーシックインカム額設定のガイドライン、基準として用いる。
 そして、その財源は、所得税と国からのベーシックインカム特別給付制に基づくものと一応しておき、細部は継続して検討し、後日提起したい。
 とりわけ、コロナ禍で、従来の感覚・実績に基づく所得税収が、ある面では非常に厳しくなっており、その観点から再考し、どんなことがあっても継続可能なベーシックインカム制を構築すべきと考えるからだ。
 そのため、この<BI導入シアン>シリーズは、今週一杯で終了し、他の専門家や組織の提案などにこれからアクセスし、それらと突き合わせをしながら、9月から、次のシアン(私案もしくは試案)のまとめ段階に入っていこうと考えている。

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年8月4日投稿記事 2050society.com/?p=1886 を転載したものです。

当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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