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マルクス・ガブリエル氏が描いたベーシックインカムとは:『つながり過ぎた世界の先に』から-2

 昨日、別サイト https://2050society.com で、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏へのインタビューを編集した書『つながり過ぎた世界の先に (PHP新書)』(2021/3/30刊)を取り上げての記事
倫理資本主義の理想実現は可能か:マルクス・ガブリエル氏「つながり過ぎた世界の先に」からー1(2021/6/29)
を投稿しました。
 今回、それを受けて、同書を当サイトでも取り上げます。

 マルクス・ガブリエル氏は、1980年(ドイツ)生まれの哲学者。
 史上最年少29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の正教授に就任。
 西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新しい実存論」を提唱して世界的に注目されており、著書『なぜ世界は存在しないのか』が、世界的ベストセラーに。

 当サイトで同書を取り上げたのは、その<第1章 人とウイルスのつながり>の<第6節 コロナ後のビジョン>で、ベーシックインカムと呼ぶことができる内容の提案を行っているからです。
 以下、その概要・ポイントを引用・転載し、考えるところを添えたいと思います。

人が倫理的に行動できる倫理的社会、ジットリッヒカイト Sittrlichkeit 「人倫」社会

ガブリエル氏はこう言います。

 人々が倫理的に行動できる社会の条件は何か。
 人が非倫理的な行動をとる原因は、恐怖であることが多い。
 例えば、ビジネス界で非倫理的なことをするのは、競争相手に負けることや、収入を失うことを恐れるから。
 誰しも自分や家族を守りたいし、それは政党な願望であり、尊重されるべき。
 しかし、そもそも家族の生命を失う恐れがあってはならず、生命に対する権利は基本的人権です。

 「ヘーゲルが『人倫』Sittrlichkeit = ジットリッヒカイトと呼んだ倫理的な社会が必要であり、それは市民社会ではなく、人生の意味をより多く引き出す意思決定プロセスを重視する倫理的な社会」といいます。 


 この基本的人権という考え方を、当サイトが提案するベーシック・ペンションの原点としていることをこの記事で確認して頂けます。
憲法の基本的人権に基づくベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-1(2021/6/12)
憲法第三章基本的人権と自由・平等に基づき支給されるベーシック・ペンション(2021/2/21)
憲法で規定された生存権と「社会保障」:全世代を対象とする社会保障システム改革-1

ジットリッヒカイト 人倫社会に必要な、完全な持続可能性を持つ最低限の所得(ベーシックインカム)の必要性

 その倫理的な社会においては、「あらゆる人が、貧困のラインを越える基本となる最低限の所得を得る必要があり、「完全な持続性可能性」が求められている。

 すべての人が、無所得になる心配をしなくて済む社会とは、人生でどんなことが起きても、誰もが一定の生活水準を保てる社会。
 最低限の所得が保障されれば、裕福ではなくとも、そこそこのワインを買ったり、子供たちと外食する程度のことはでき、またたとえ働かなくとも、まずまずの住宅を持てます。


 ガブリエル氏は、当書の中ではベーシックインカムという用語、表現を使っていませんが、この最低限の所得保障は、一般的な意味で、ベーシックインカム、あるいはユニバーサル・ベーシックインカムを想定していることは間違いないでしょう。
 その保障される所得の持続可能性は、まさにユニバーサル・ベーシックインカムの要件ですから。

 ベーシック・ペンションでは、その最低保障所得については、現行の生活保護制度の支給基準などを参考にして設定・提案しています。
 その基本的な考え方は、以下で確認いただけます。
生活保護制度を超克するベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-2(2021/6/15)

 ガブリエル氏は、その基本所得金額について、次の例を提示します。


最低の階級が中産階級になる最低所得保障政策とその基本所得額試算

 ドイツにいるすべての人間、国民が、子供を含め一人当たり、毎月1500ユーロ(約18万9千円)もらえたとすると、4人家族ならば毎月6000ユーロ、約75万6千円。(年間約907万2千円

これだけの基本所得があって、その上に仕事をすれば、ドイツでは上流階級に近い暮らしができる。
これなら仕事をしたくないと思う人もいるかもしれない。
仕事をしなければ中産階級
つまり提唱するモデルでは、最低所得保障政策によって、最低の階級が中産階級になる。
このような基盤の上に経済を築くのです。


 当サイトで提案するベーシック・ペンションの金額は
・児童基礎年金 (学齢15歳以下)   一人月 8万円、年間 96万円 
・学生等基礎年金(学齢16~18歳)     月10万円、年間120万円
・生活基礎年金(学齢19歳以上満80歳未満) 月15万円、年間180万円

 従い、上記の4人家族が、15歳以下の児童2人と夫婦で構成されれば、月額合計が46万円、年間合計額が652万円
 ガブリエル氏の例えに倣うと、仕事をしなければ、日本では一応中間所得層、中産階級に属すると言え、その上に仕事をすれば、中間層から上級クラスへの挑戦が可能になると想像できると思います。
 こうした類似し、親和性をもつ考え方については、以下で提示しています。
貧困撲滅と中間層の拡充を期待するベーシック・ペンション(2021/3/10)

 たとえ最低所得が保障されたとしても、私は創造的なことをして、コミュニティに参加し続けたいと思います。
 おそらくほとんどの人が同じように考えるでしょう。
 このような社会では倫理観がとても重要になります。

この認識は、次の項の認識と一緒に読み合わせてください。


最低所得保障政策による持続可能な事業活動や社会奉仕活動

 今計画している社会には労働局のようなところがあり、そこに「今後数年間に持続可能な牧場を作りたい」と申し入れる。すると労働局は銀行からの融資を斡旋してくれ、その企画に関心を持った投資家と引き合わせてくれる。こうして得た資金で牧場を作る。
 また、今夢見ているのは、哲学トレーニングのためのセミナールームを併設したホテルの建設。
 もし最低所得が保障されれば、貧困に陥る心配がないので、今すぐにでもホテル建設は可能になりホテル業に挑戦できる。

 社会に必要な仕事はどうなるかと疑問に思われるかもしれないが、そのような仕事はできるだけ自動化を進め、その上で市民による奉仕活動でカバーする必要がある。市民が奉仕活動をした月には給与が支払われ、そうすれば、人に不当な低賃金でこのような仕事をさせる必要はない。
 場合によっては、誰もがこの「奉仕活動月間」を嫌がるかもしれないが、逆に奉仕活動をするとみんなが優しくしてくれるので楽しい1ヶ月になるかもしれず、お互いに感謝し合う文化が生まれるかもしれない。


 前項や当項に関する考え方については、当サイト開設前にベーシックインカムについて考察・提案していたサイト https://2050society.com で以下の記事を投稿しています。
ベーシックインカム、モラル論争にも終止符を打ち、安心希望社会の実現へ(2020/10/31)
夢のある人、夢の実現をめざす人のためのベーシック・インカム:BI導入シアン-7(2020/7/4)

 一概に「倫理」として片付けられる、あるいは結論化・決着化できる課題ではありませんが、ガブリエル氏提案の最低所得保障政策でも、ベーシックインカムでも、ベーシック・ペンションでも基本的には同じ感覚で認識して良いのではないかと考えます。

 またこうした人の生き方・働き方などに広く関わる形での、価値観や考え方について、以下のベーシック・ペンションの法律案を提示している記事で確認頂けます。
 一度ご覧頂くことで、ガブリエル氏の想いも理解頂けるのではと思います。
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)


 


ヘリコプターマネー利用で実現可能な理想的な資本主義社会システム

 前回の別サイトでの記事
倫理資本主義の理想実現は可能か:マルクス・ガブリエル氏「つながり過ぎた世界の先に」からー1
では、ガブリエル氏をほとんど批判する形になってしまいました。
 しかし、この<第1章 人とウイルスのつながり><第6節 コロナ後のビジョン>で、ベーシックインカム構想を提示していることで、それらの批判の殆どを帳消しにしてしまってよいのでは、と思っています。
 この章の最後を、こう結んでいます。

 このような理想的な社会システムは実現可能だと思います。
 すべての人になぜこのようなシステムが必要なのかを説明すれば、きっと納得するはずです。
 このようなシステムを望まない人がいるとしたら、考えられる唯一の理由は、その人が非倫理的だということです。私の構想は明らかに正しい解決法なのです。
 それは共産主義じゃないかと言う人もいるかもしれませんが、違います。
 これは環境に優しく、持続可能な、完全な資本主義です。
 市場は今と同じように機能しますが、ヘリコプターマネーのようなツールを利用する点だけが異なるのです。


 ヘリコプターマネーについて触れた記事としては、別サイトで昨年投稿した以下の記事があります。
ヘリコプターマネーではなく、ファンダメンタルマネー:全国民受給のベーシック・インカム制へ
MMTに基づくベーシックインカム反対理由:歯止めが効かなくなるヘリコプター・マネーの政治的リスク、グローバル社会リスク(2021/2/12)



UBI理念発祥のヨーロッパでガブリエル氏提案はどう扱われていくのか


 このシステムを望まない人。
 残念ながら、日本では、これぞ、というベーシックインカム案を提案している政党はもちろん、グループも個人もありません。
 望みはしないが、反対をしている人が多いのは、論じられ、流布している内容そのものの質が低く、理解度も低く、貧困と富裕の格差の反目、財源の再分配問題の未消化、建設的提案の不在など、日本のベーシックインカムに関する未成熟度に起因するものと考えています。
 
 ガブリエル氏はドイツ人。
 ある意味、ユニバーサル・ベーシックインカムの発祥のヨーロッパで、その考え方や動向をつぶさに見、考察も重ねてきているはずです。
 その彼が考える財源政策は、例えて述べている「ヘリコプターマネー」。
 その管理運用などについては、本書で述べられていないのが残念ですが、万一、同氏の倫理資本主義や倫理社会の考え方が、コロナ後の世界、社会に新たな支持層を生み出し、同氏の最低所得保障政策が、はれて現実的ユニバーサル・ベーシックインカムとして再認識、もしくは新たに認識され、一歩でも具体化に近づくことになれば。
 そう淡い期待も抱きつつ、この国日本で、独自の取り組みを重ねていくべく、一つの励みを抱かせてくれる内容でありました。

(参考)ユニバーサル・ベーシックインカムとは
⇒ 2002年アイルランド政府「ベーシック・インカム白書」によるBI定義・特徴

2021年6月、今月始まるドイツでのUBI実証実験に注目!

 実は、淡い期待どころか、今年6月今月から、ドイツでユニバーサル・ベーシックインカムの実証実験が始まっているはずなのです。
 その関連記事は
ドイツでUBI実証実験、2021年6月開始:武邑光裕氏によるドイツUBI事情-2(2021/3/9)
 いずれネット上で、そのレポートが取り上げられることになると思います。
 非常に楽しみです。

 なお、本稿が、今年開設した当サイトの上半期の最後の投稿になります。
 下半期は、現状シリーズ化している、法律案前文の解説シリーズを差し挟みながら、主に、現実的に早期にベーシック・ペンションを実現するための方策・方法の検討、ベーシック・ペンション導入で避けられないと批判されているインフレ対策の検討、そして政治イシュー化及びベーシックインカムまたはベーシックペンションを公約とする政治グループの形成へのアプローチなどをテーマとして取り組んでいく予定です。
 どうぞ今後とも宜しくお願いします。

(参考):ベーシック・ペンションについて知っておきたい基礎知識としての5つの記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

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