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2020年関連図書考察

ベーシック・インカムとは-2:リフレ派原田泰・前日銀政策委員会審議員から学ぶベーシック・インカム(2020/6/6)

本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年6月6日投稿記事 2050society.com/?p=2268を転載したものです。

『ベーシック・インカム入門』『ベーシック・インカム』『AI時代の新・ベーシックインカム論』から(中編)

ベーシック・インカム関連新書3冊入手

 これまでの持論を、そろそろまとまりがついたものに。
 そのためには、多少なりとも専門書、それもできれば新しくて、入門的なもの、高度過ぎず、ページ数も多すぎず、かつ値段が高くないお手頃なものを入手し、参考にしたい。
 そんな条件で検索し、買い求めたのが以下の3冊。

1)ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える(2009年初版:山森亮氏著)
2)ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか(2015年初版:原田泰氏著)
3)AI時代の新・ベーシックインカム論(2018年初版:井上智洋氏著)

 私にとっての入門書となった、2009年初版のベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考えるをまず読み終えて、感覚的にまとめて投稿したのが以下。
ベーシック・インカムとは-1:歴史から学ぶベーシック・インカム

 今回は、それに続いての2冊目、原田泰氏著ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか(2015年初版)を、同様斜め読み、走り読みしてのまとめとなる。

『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』から考える


 原田氏は、安倍内閣の経済政策=アベノミクスの基軸となるデフレ脱却、緩やかなインフレを目標とする「リフレーション」を掲げる一派「リフレ派」に属する経済学者。
 本書発刊の時には、アベノミクス推進の歯車とも言える日銀政策委員会の審議員を務めていた人物。
 黒田日銀総裁のもとゼロ金利等金融緩和策を進め、2%という「インフレターゲット」を設定したが、実現せぬまま今日を迎え、重ねてコロナ禍にも見舞われ、アベノミクスの評価に影を落としている。
 アベノマスクという皮肉語が多用されることになった因果関係が明確なのは皮肉である。
 そのリフレ派に属する原田氏によるベーシック・インカムは、緩やかなインフレ=リフレーションに寄与できるという考えがベースに多少なりともあるのではないかと推察する。

ベーシック・インカムの財政懸念を否定する

 ベーシック・インカムを巡って、最も反対者から危惧される財政問題への反論に力を入れているのが、本書の最大の特徴と言えよう。
「バラマキは正しい経済政策である」。
 そう明言する一方、バラマキは、財政赤字にそう影響はしないと、数字を上げて証明する。
 それを可能にする財源の一部として、決して有効ではない公共事業や、ムダな補助金投入などの保護行政批判にページを費やしていることも特徴である。
 ベーシック・インカムの妥当性主張よりも、それらの悪政・悪行政批判が目的かのように思えるほどだ。
 元経済企画庁の官僚でもあった彼がだ。
 しかし、勢い余って、というか、きっといつかは書きたいと思っていたことなのだとは思うが、第二次大戦の帝国主義失政の元凶として近衛首相とその「富」に関する考え方を持ち出し、第2章の「ベーシック・インカムの思想と対立軸」に20ページ余も費やしたことには、疑問を抱かざるを得ない。
 ほとんどベーシック・インカムの議論には関与しないものと言えるからだ。
 ということで、本書でもっとも注目すべきは、ベーシック・インカムを可能とする金額と財源に関する部分である。
 その主張の概要を見ることにする。

20歳未満月3万円、20歳以上月7万円のベーシック・インカム年間総額96兆3千億円とその財源

 原田氏の、以下のベーシック・インカム実現可能試算は、2012年度のデータに基づくものであることを事前に理解しておきたい。

<ベーシック・インカム給付額と年間総額>
1.20歳以上人口1億490万人:月7万円(年84万円)
2.20歳未満人口2260万人:月3万円(年36万円)
3.必要年間総額:年96.3兆円

<必要財源試算>
1.所得税:77兆3千億円
 
1)ベーシック・インカム導入で、各種所得税控除が不要
 2)雇用者報酬・自営業者報酬合算の混合所得257.5兆円
 3)所得税率30%
2.現状の政府支出:以下3項目合計19兆9千億円 
 
1)老齢基礎年金:16兆6千億円
 2)子ども手当:1兆8千億円  ※現在では児童手当
 3)雇用保険:1兆5千億円
3.その他社会福祉費・補助金等から移転可能分:15兆9千億円
 
1)生活保護費:1.9兆円
 2)民生費のうち福祉費:6兆円
 3)公共事業予算のムダから:5兆円
 4)中小企業対策費:1兆円
 5)農林水産業費:1兆円
 6)地方交付税交付金:1兆円
以上、1.2.3の合計額は、113兆1千億円


 これで、必要なベーシック・インカム総額年間96兆3千億円にお釣りが来る(机上の)計算となる。
 すなわち、ベーシック・インカム制導入が可能な財政的基盤があっという間にできてしまったわけだ。
 どうだろうか?
 私の最初の感想は、
 この程度のベーシック・インカムでは、ほとんど意味をなさない!
 話にならない!

 実は、同氏のこのベーシック・インカム提案を、端から論外と評している人がいる。
 現在、多面的に活躍している蛯原嗣生氏が昨年2019年11月に発刊した
年金不安の正体 (ちくま新書)』第五章の中で、原田氏の本書を紹介しており、以下の理由で一刀両断である。
・7万円は中途半端な(少)額で、行政サービスは削減不可能
・行政サービスをスリム化できる金額(13万円)では、所得税率80%で、現実的に不可能

 これに対して私が直感的に感じたのは、
 そう簡単に結論付けるなよ!
 もっといろいろ考えようがあるだろう!
 意外と頭が硬いんだなぁ!
 海老原氏の執筆・考えは、ネットや新聞、新書などで比較的目にしていたので、ちょっと残念に思えたわけ。
 話を、原田氏の方に戻そう。

ベーシック・インカムは、バラマキではない!

 原田氏の本書の帯に「バラマキは正しい経済政策である」とある。
 また、ベーシック・インカムという「バラマキ政策は悪くない」と言う。
 ? 「バラマキ?」
 ベーシック・インカムは、決してバラマキではないぞ!
 バラマキとは、バラバラに撒くことではないのか。
 ならばベーシック・インカムは、バラバラに、バラつきが生じるように撒くわけではないのだから、  バラマキではないはずだ。
 政治の世界で、票目当て・票目的に狙いを付けて多数に配ることを意味する、とも、ネットで調べたらあった。
 広い範囲ではあるが、多数ではなくて、全員が対象、全範囲だ。
 だからやはり、決してバラマキではない。
 ヘリコプター・マネーでもない。
 ファンダメンタル・マネーだ。
 この考えについては、1ヶ月ほど前に、以下で述べた。
ヘリコプターマネーではなく、ファンダメンタルマネー:全国民受給のベーシック・インカム制へ

 公共事業や補助金行政のムダを偏りの観点から指弾する同氏にしては、不思議な発想だ。
 この辺りが、右か左、どっち?となったとき、間髪入れずに「右」という本質を表しているんだろうなと感じる。
 決して、そのことを批判する気はないのだが。
 良い方の「右」だから。

財政面で明確な提言をしたことの大きな意味

 リフレ派のエコノミストかつ経済学者、かつもと官僚。
 こうした経歴を持つ原田氏に拠る書ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか
 この書の最大の功績は、内容の評価や意見は別にして、はっきりと財源面からのベーシック・インカム批判・否定に対する回答を提示したことにある。
 その1項目1項目の提案や、一つ一つの事項や数字に対して、異論・反論を加えることに意味はない。
 大切なのは、より多くの人々の理解・納得が得られるものに、知恵を出し合って創り上げていくことだ。
 その参考情報として、非常に意味がある書と言えるだろう。

 1冊目で、ベーシック・インカムの歴史的背景、思想の多様性を学んだ。
 2冊目で、決して空論・暴論としてではなく、日本における現実としてベーシック・インカムについて考えてみる価値があることを学んだ。
 起承転結で例えるなら、1冊目が起、2冊目が承、今度の3冊目が転。
 そして、それらを受けて、私自身の「結」へ、と向かう。
 ちょうど、昨日から3冊目AI時代の新・ベーシックインカム論を読み始めたのだが、2冊のまとめとしての3冊目、という意味に加え、私にとって、まとめ作業に入るための情報のインプットと整理、即ち「結び」に繋がる重要な書になる予感がしている。

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当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から、冒頭のWEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を開始。
同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、冒頭のリンクから確認頂けます。

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