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2020年BP考察

ベーシック・ペンション宣言!-3:なぜベーシック・ペンションが必要かつ有効か(2020/12/3)

2020年BP考察

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 当サイト運営の軸となってきたベーシックインカム提案。
 これまで日本型ベーシックインカム生活基礎年金と長い呼び方で論じてきましたが、今月12月から、「ベーシック・ペンション」と呼ぶことにしました。
 その呼称を用いて、本提案の次のステップに歩みを進めたいと思い、「ベーシック・ペンション宣言!」という5回のシリーズを考え、これまでの整理を行い、次への展開のスタートとしたいと考えました。
 前々回、前回が、以下の記事です。
ベーシック・ペンション宣言-1:日本独自のベーシックインカム生活基礎年金導入を(2020/12/1)
ベーシック・ペンション宣言-2:JBP導入で、社会保障制度や関連法はこう変わる!(2020/12/2)

 今回は、3回目で、「なぜベーシック・ペンションが必要かつ有効か」と題して、ベーシック・ペンション導入の目的・背景などをもう一度整理し、確認することにします。
 その思いと内容は、既に、まだ「ベーシック・ペンション」という名称を思いついていなかった段階で、以下で一度整理して述べています。
ベーシックインカム「生活基礎年金法(略称)」私案:前文その1-本法制定の背景(1)(2020/9/6)
ベーシックインカム「生活基礎年金法(略称)」私案:前文その1-本法制定の背景(2)(2020/9/7)

 この2回に分けて提起した、ベーシックインカム導入の目的・背景を示した法案の前文の小見出しすべてを抜き出したのが以下です。

・憲法に規定する最低限度の生活を営む権利
・生活保護制度の運用と実態
・社会の要因としての結婚・出産・育児等に対する経済的不安
・非正規労働者の増加と雇用及び経済的不安の拡大
・母子世帯・父子世帯の困窮支援の必要性
・保育職・介護職等社会保障的職業の労働条件等を原因とする慢性的人材不足
・子どもの貧困と幸福度を巡る評価と課題
・国民年金受給高齢者の生活基盤の不安・脆弱性
・高等教育を受ける世代の教育費負担を軽減し、学究に専念し、社会的成果・貢献を期待へ
・新型コロナウイルス感染症パンデミック等による就労・所得機会の減少・喪失による生活基盤の脆弱化対策
・大規模自然災害被災リスクと生活基盤の脆弱化・喪失対策
・日常における不測・不慮の事故、ケガ、解雇等による就労不能と所得減少・喪失時への対応
・共働き夫婦世帯の増加と仕事と育児・介護などの両立生活基盤への不安
・高齢単身世帯、高齢夫婦世帯、中高齢家族世帯の増加と生活基盤への不安
・IT社会・AI社会進展による雇用構造・職業職種構造の変化と所得格差拡大
・多様な生き方選択のための能力・適性・希望に応じた就労機会創造・付加価値創造を支援
・貧富の格差をもたらす就労雇用格差、結婚格差、教育格差の抑制のための社会保障制度による所得再分配政策
・世代間負担の不公平・不平等対策と全世代型社会保障制度改革の必要性
・コロナ禍で深刻さ・必要度を増した、安心安全な生活を送るための安全弁としての最小限度の経済的社会保障制度
・社会保障制度改革における基軸としてのベーシックインカム制導入の意義・有効性
・ベーシックインカム制実現に必要な配慮を法律に:社会保障財政赤字、国際社会における経済への影響を考慮

 今回は、その内容を、別の視点で整理し、加筆修正してまとめるものです。

憲法に規定する「基本的人権」を起点として

 私たちが暮らす日本社会には、憲法第11条及び第25条で規定された基本的人権、社会保障・生活保障が実現されていない、保障されていないさまざまな現状があります。
 またこの基本的人権を起点として、第13条で、個人の尊重、生命・自由・幸福の追求の権利も規定していますが、基本的人権と共に、同様、その実現・保障が果たされず、多くの社会問題が発生しています。
 しかも多種多様な社会問題は、簡単に改善・解決・解消されることなく、拡大・拡散する可能性もあり、国家社会をあげて取り組む必要があることが明らかです。

<参考>:憲法 第11条、第13条、第25条

第11条 国民は、すべての基本的人権を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことができない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

憲法に規定する「法の下の平等」を拠りどころとして

 また、憲法第14条では「法の下の平等」を掲げ、すべての国民が、政治的、経済的または社会的関係において差別されないことを宣言しています。
 しかし、やはり、現存する様々な社会問題のほとんどは、この平等の精神・方針にそぐわないものであり、貧困、格差、ジェンダー不平等などの拡大・拡散に繋がっているのです。
 こうして、さまざまな人の命と生活に関する部面で、違憲状態にある社会を改善・改革する上で、大きなきっかけとなり、多くの改善・問題解決に寄与するに違いないベーシック・ペンションを、「基本的人権」と「法の下の平等」を根拠として提案すべく、その具体的な目的と背景について、以下考えて行くことにします。

<参考>:憲法 第14条

第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、心情、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない

<仕事・労働・働き方>の視点

 よく、ベーシックインカムを論じる中で、脱労働、仕事をしない・働かない自由という表現を用いたり、BIにより、所得と仕事・労働の分離をもたらすという主張があります。
 ベーシックインカムが支給されれば、働く必要がなくなり自由を得る。
 生きるためには、働かなければいけない、働くことは義務であり、尊いことであるという勤労の精神に至ります。
 それは、「働かざるもの食うべからず」という精神を基調とする一般論と言えるでしょう。
 しかし、脱労働、非労働を前提とした社会において導入するBIは、「働かなくても食ってよい」という真反対の考え方を基本とするものです。

 しかし、BIで支給される金額によっては、働かざるを得ない場合や、

◆ 介護職・保育職・社会福祉職その他、低賃金等厳しい労働条件で就労する職業に就いている、またはこれから就こうと考えている人々
◆ 非正規雇用により必要な賃金収入を得られない低賃金就労者
◆ 長時間労働・低賃金など劣悪な労働環境で働くことを強いられている人々
◆ 解雇や雇い止めなどで働く場を失い賃金収入を得ることができない人々
◆ 心身の病気・障害、怪我などで働くことが困難な人々
◆ 家族の育児や介護で、思うように働いて必要な収入を得ることができない人々
◆ 就労や起業に必要な技能技術・知識などを学習し、備えようと考える人々
◆ 自分に合った仕事を探したい人
◆ 自分で事業を始めるために調査や準備をするために、一定期間、働いて収入を得ることができない人

など、
 働きたくても働けない人、
 この仕事、この職場、この時間、この雇用形態では働きたくなくても働かざるを得ない人、
 働く場所、働く仕事がなくなってしまった人、
 まだ自分に合った仕事が見いだせない、見つからない人、
 思い願う通りに働くことが叶わない人がなんと多いことでしょう。

 ベーシック・ペンションは、仕事や労働、働き方を考え、実践する上で、あるいはそのプロセスで、それが途切れた時、終わった時、さまざまな場面・局面で、すべての人々に、時に必要であり、時に有効、役に立つに違いありません。

<暮らし・生活・生き方>の視点

 前述した<仕事・労働・働き方>は、その前提が<生き方>にあります。
 どう生きるかの中に、どう働くか、が含まれています。
 但し、ベーシック・インカムの金額によっては、働かないという生き方も選択できることにはなります。
 ここで<暮らし・生活・生き方>の視点でベーシック・ペンションの目的・背景を考えると、その多くは、<仕事・労働・働き方>と直接・間接に繋がっていることは当然です。
 それも少し意識しながら、どんな暮らしや生活状態にある時、あるいはどういう生き方をしたいと考える時、ベーシック・ペンション生活基礎年金があれば助かるか、あるといいのにと考えられるか、以下、列記してみました。

◆ 生活保護を受給していても厳しい生活を余儀なくされている。
◆ 本来生活保護を受けることができる要件を満たしていても、受給の申請や審査における様々な手続き、担当所管の態度、精神的な不安、などで、受給を諦める、申請自体行わない、あるいは行えない。
◆ シングルマザー、シングルファーザとして厳しい生活を余儀なくされている。
◆ 子どもの保育費用・教育費用を賄うことができる収入に不足し、必要な保育や教育の機会を与えることができない。
◆ 結婚したいという希望を持ちながら、収入が少ない、住む家がないなど経済的な理由で、その機会を持つことができない。
◆ 子どもを持ちたいという希望を持ちながら、子育てや教育に必要な費用を仕事で得ることができるかという不安から、諦めている。
◆ 収入が必要でも、家族の子育てや高齢者・障害者の介護・看護等で、希望するように働くことができず、厳しい生活を余儀なくされている。
◆ 年金だけを頼りに生活している高齢単身者や高齢夫婦が介護を必要としている状態、あるいはいずれ介護が必要になることへの不安
◆ 高校や専門学校、大学など進学し、将来のための知識・技術・技能などを学びたいけれども、経済的な事情でそれが困難
◆ 家事や育児、介護などの無償の家庭内仕事に多くの時間を取られ、自身の賃金などの収入を得ることができず、精神的・経済的に不安な生活を余儀なくされている。
◆ 生活費を確保するために限られた時間にのみ非正規職で働き、その上家事・育児・介護など無償の家庭内仕事に追われて、心身の不安や経済的不安に苛まれている。
◆ 病気や災害など非常時や予測できない状況に遭った場合に備えて貯金することが、現状とこれからの仕事や生活を考えると不安を感じている。
◆ 老後の生活や介護が必要になった時に備えるための貯蓄などに不安を抱き、困難を感じている。
◆ 家事・育児・介護等をもっぱら担っているのに、専業主婦生活では、夫に経済的に依存しているように思われ、心身ともに自分の存在が認められていないことに不満・不安を感じ、それが解消されない人生に疑問を感じている。

 以上、<働くこと>と<生きること>2つの視点から、ベーシック・ペンション生活基礎年金が必要で、有効であることを、事例として示してきました。

 今現実的に、それらの状況にある方はもちろん、ベーシック・ペンションの必要性とそれが役に立つことは容易に理解できるでしょう。
 そうではない方々も、いつかは自分が、あるいは家族がそうなる可能性、リスクがあると、理解・想定できるのではないでしょうか。
 どちらの区分でも、これら以外に、さまざまな事情・状況が現にあり、あるいは想像・想定もできると思われます。
 こういう場合、こういう時・・・。
 他に思いつくこと、考えうること、考えるべきことなどありましたら、どうぞ提示・提案頂きたいと思います。
 お待ちしています。

<社会及び経済>の視点とその向こう

 このベーシック・ペンションは、日本という国を単位とする社会が、憲法、国民との社会契約、及び新たに制定する「生活基礎年金法」(別名ベーシック・ペンション法)に基づき施行する社会保障事業です。
 支給された年金は、国民の基本的な日常生活に費消されることで、国内の経済の安定と持続、そして成長に寄与します。
 その経済のプロセスと展開において、新たな労働・雇用そして事業が生み出され、継続され、個人と多様な社会の維持・発展へと循環します。
 その一連の活動は、冒頭述べた、憲法に規定した基本的人権と法の下の平等の実現に、着実に繋がるものに違いありません。
 実は、ベーシック・ペンションは、すべての国民が、生まれてから死ぬまで、唯一経験できる「平等」そのものなのですから。

望ましいグローバル社会創出のモデルとなるベーシック・ペンション実現へ

 ベーシック・ペンションは、日本国内でのみ使用され、まず国内社会経済基盤の安定に貢献しますが、その事業と活動は、グローバル社会における社会経済活動と貢献に繋がります。
 願わくば、この日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンションが、多くのあるいはすべての国と地域で、いずれ展開されるベーシック・インカムのモデル、ユニバーサル・モデルになれば理想と考えています。

 次回第4回は、
<ベーシック・ペンション実現の方法・スケジュール>について整理します。

「ベーシック・ペンション宣言!」シリーズ

今月1日から始めた「ベーシック・ペンション宣言!」シリーズ全5回。

<第1回>:日本独自のベーシックインカム生活基礎年金導入を
<第2回>:JBP導入で、社会保障制度や関連法はこう変わる!
<第3回>:なぜベーシック・ペンションが必要かつ有効か
<第4回>:ベーシック・ペンション実現の方法・スケジュール
<第5回>:補足 - 他のベーシックインカム論等との調整および協調・競合

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: BPヘッダー-1024x670.jpg

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年12月3日投稿記事 2050society.com/?p=7161 を転載したものです。
当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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