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コロナ禍経済対策としてベーシックインカム導入を主張することの異質性と違和感:ハーバー・ビジネス・オンライン記事から

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ハーバー・ビジネス・オンラインによる、年間120万円現金給付記事を読む

既に数日経過していて、新鮮味がないのですが、1月18日に、<ハーバー・ビジネス・オンライン>で
コロナ禍の今こそ、国民全員に毎月10万・年間120万円の現金給付を行え!?
というタイトルで、志葉玲氏による記事が掲載されていました。

この記事は、国債による資金調達でのベーシックインカム導入を主張する、日本ベーシックインカム学会副会長で駒澤大准教授の井上智洋氏と同学会理事の小野盛司氏の共著『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』の発刊の紹介も兼ねたようなものです。

同氏グループのBI論については、やはり井上氏の著による『AI時代の新・ベーシックインカム論 』や『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』である程度分かります。
新著もその内容から離れることはないと思うので、改めて購入する必要がないと考えています。
しかし、多少は違うことも読み取れるかもしれないと、購入しようかどうか思案中です。

基本的に、新書の新刊ならば関心があるテーマであれば購入していますが、新書でなく、1,430円もする本書などは、急がずとも中古本が出ればという区分に入れているのですが。
(特別ポイントが付く日に注文しそうな感じです。)

加えて、同氏のグループは、昨年のコロナ禍支給された、10万円の特別定額給付金実現に、国に請願したことで貢献したと自ら評価しています。
そして、第三波の感染拡大で、再度の同給付金の支給を提案するよう現在も活動。
その様子を頻繁に自ら発信し、拡散を呼びかけています。

今回の出版とWEBサイトでの情報発信による、恒常的なベーシックインカム導入主張は、その延長線上でのことです。

詳細は、その記事
コロナ禍の今こそ、国民全員に毎月10万・年間120万円の現金給付を行え!?
で確認頂ければ宜しいかと思いますが、少しだけ私の意見感想を述べたいと思います。

ベーシックインカム本来の目的を論じず、経済対策から議論・提案を始めることの異質・違和感



同記事は、
「一律現金給付の効果で、GDP押し上げ・失業率低下」「現金給付の額が多ければ多いほど、日本経済の回復は早くなる」「給付が行われなかった場合、経済の落ち込みは長期間にわたる」「企業にお金をばらまくよりも、個人に直接ばらまいたほうが効果的」
という小見出しで分かるように、コロナの影響で低下した「経済」への処方箋・対策という視点でのレポートです。

この主張は、もともとは、コロナとは無関係に、一昨年まで長く続いている経済の停滞、不況状況における金融政策・経済政策が一向に機能しないことを背景としているものです。

すなわち、ベーシックインカムを導入するため、赤字国債をどんどん発行しても、インフレにはならない。
それは、マイナス金利政策をとっても、インフレが起きないことはもちろんのこと、経済の回復が見られないことで示されている。

こういうロジックでの主張です。
そして、基本的には、生活保護制度や社会保険制度などの見直しに、考察や発言は及びません。

共著者の小野盛司氏による、支給額が大きければ大きいほど経済の回復は早い、という主張は、特に日経NEEDSの経済モデルを用いずとも、素人の私でも、だれでも想像がつくものでしょう。

そもそも、経済回復により何がどうなるのか。
経済の落ち込みで、どんな不都合があったのか。
そして、どこまで経済が回復すれば良しとするのか。
これらは、新著を読まなければ分からないことかしれません。

まあ、同記事の中では、年間120万円の給付金が、個人消費を促し、経済が活性化して求人が増えることによる失業率の改善を取り上げています。
しかし、どの程度改善されるかは、日経NEEDSでは計算不可能で、「大幅に低下」と曖昧にしているのが面白いですね。

また、井上氏の主張として、財政健全化との絡みで、政府・日銀が株価の引き上げなどに公的資金をつぎ込んできたことを挙げ、それならば個人への給付金が有効、と紹介。
これも、金額レベルと公的資金の出どころを考えれば、焦点がズレているのですが。

要するに、元々は本来、基本的人権や社会保障制度などの視点で考えるべきベーシックインカムを、副次的な経済政策・対策を主命題として提起することに、違和感・異質性を感じるのです。


Facebook上での興味深いやりとり


面白いのは、元々はそうした人間的な視点で活動をしてきているはずの、新著の編集にも携わった同グループの中心的存在である増山麗奈氏が、小野盛司氏のFacebookアカウントに、新著発刊のお知らせを投稿。

そこでの、やはりこのグループのバランスを欠いた主張・活動に批判的な日本ベーシックインカム学会理事の山中鹿次氏の書き込みに対して、記事執筆者の志葉玲氏が
「本書での提案は、生活保護や失業者への支援を否定するものではなく、既存の社会補償制度と両立して給付を行うべきだという内容です。本を読まずして、「とことん批判」とは穏やかではありませんね。批判するにしても、内容をキチンとお読みいただければ幸いです。」
とカバーしているのです。

なるほど「生活保護や失業者への支援を否定するものではない」
「既存の社会補償(保障の誤りと思われる)制度と両立して行うべき」と。

ではどこまでその考え方が深堀りされ、具体化されているか。
ここはやはり新著で確認すべきかと、考えています。
しかし、井上氏の先述した2冊では、それらについては論じられていなかったので期待はしていませんが。

入手し、読み終えたら、紹介・報告したいと考えています。

それにしても「日本が幸せになる」などと、随分安っぽい、情緒的・抽象的なタイトルを付けるものですね。
AI云々を論じる学者が付ける書名ではないと思うのですが・・・。
編集者のセンスかな?

なぜ、ハーバービジネス・オンライン記事では、ベーシックインカムと表現されていなかったのか、謎?



と書き終えたところで、実は、志葉氏による今回の記事では、一言も「ベーシックインカム」という用語・表現が使われていないことに気がついたのです。
その理由は何か?
まさか、井上氏・小野氏の共著、増山氏編集協力の新著の中でも「ベーシックインカム」という言葉が使われていないなどということはないはずですが。
志葉氏に聞いてみたいところですね。

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