ベーシックインカム「生活基礎年金法(略称)」私案:前文その1-本法制定の背景(2)(2020/9/7)
「日本国民の基本的人権に基づく生活保障のための生活基礎年金給付に関する法律」(別称「ベーシックインカム法」)私案シリーズ-2
今回は、以下の、前回<前書きその1-本法制定の背景(1)>の続きです。
◆ ベーシックインカム「生活基礎年金法(略称)」私案:前文その1-本法制定の背景(1)
新型コロナウイルス感染症パンデミック等による就労・所得機会の減少・喪失による生活基盤の脆弱化対策
日本においては、2020年第1四半期に端を発した新型コロナウイルス感染症の全国への広がりと継続化は、日常生活と社会経済活動へ甚大な影響を与えました。
国内全都道府県への緊急事態宣言の発令にもより、人・物等の移動が制約され、同時に経済活動の停止や抑制により、働き、収入を得る機会も奪われることになりました。
このコロナ禍を契機として、アフターコロナにおいても、日常的にこうした疫病に対する予防や発生時の対応などを心がけるとともに、緊急時・想定外事態発生時においても、日常最低限の生活を送ることができる社会的基盤、あるいは社会保障制度を整備する必要性も感じることとなりました。
大規模自然災害被災リスクと生活基盤の脆弱化・喪失対策
また、ここ数年来、地球温暖化等が要因とされる、想定外の大規模自然災害が多く発生し、多くの被災者を出しています。
もちろん、東日本大震災や熊本地震などによる被災の大きさと悲しみも忘れることはできません。
こうした災害被災時とそれ以降の、先を見通せない生活・就労不安に対する最低限度の経済的支援が、継続して保障・提供される制度の必要性・有効性も十分理解・検討すべきと言えましょう。
日常における不測・不慮の事故、ケガ、解雇等による就労不能と所得減少・喪失時への対応
先の2項目では、非日常における厄災・災害発生時への不安対策としての社会保障ニーズを考えました。
こうした想定外の非日常への対応ではなく、日常的に十分起こりうるリスクへの備えとして、医療保険や雇用保険、労働者災害補償保険等の社会保障制度の領域における救済・支援策が用意・提供されています。
しかし、現状のそれらの制度で、不安の一部は軽減されるでしょうが、長期にわたる場合や重篤な場合などは、実際には、十分とは言えない問題も残っています。
社会保障制度全体の中で改善・解決策を見出していくべき課題と言えましょう。
共働き夫婦世帯の増加と仕事と育児・介護などの両立生活基盤への不安
核家族化が進み、夫婦共働き世帯が普通になっています。
しかし、共働き社会においては、働き方や生活様式は多様で、それぞれに対応できる子育てや介護の社会化が十分に実現してはいません。
就労する企業の支援制度に依存する場合も多く、やむなく、出産時の離職、子育てのための離職、介護離職などを余儀なくされる例もまだまだ多い状況です。
仕事とそれらの両立等を可能にする社会保障制度の確立は、企業などに雇用される世帯にとってだけでなく、自営や個人事業を形態とする夫婦世帯においても求められるものです。
雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、児童手当など種々の社会保障制度と合わせて、可能な施策を検討する必要があります。
高齢単身世帯、高齢夫婦世帯、中高齢家族世帯の増加と生活基盤への不安
超高齢化が進み、単身で暮らす高齢者、夫婦とも高齢な世帯、単身中高齢者とその親で構成する世帯が増え続けています。
その世帯構成高齢者の多くが、介護や看護を必要としており、受給する年金のみに頼った生活を送る世帯も多く、不安な日常生活を送っているでしょう。
老老介護生活を送る高齢者夫婦世帯や親の年金収入に頼る単身中高齢親子世帯の不安もあります。
健康保険や介護保険などの保険給付サービスは、多くを現役世代の負担で支えられ、低い自己負担額で済みますが、それでも心身の不安とともに経済的な不安も、加齢とともに増していきます。
それは、その高齢者を介護・監護すべき家族も持つ不安でもあります。
少なくとも、最低限の生活を送ることができる内容の社会保障制度の整備拡充も望まれている現状があります。
IT社会・AI社会進展による雇用構造・職業職種構造の変化と所得格差拡大
高度経済成長期を経る中で、景気拡大・停滞・後退などを繰り返しつつ、産業構造が、第一次産業から第二次産業である製造業主体へ、次いで第三次産業である流通サービス業主体へ、そして第四次産業とも言うべき情報システム業の拡大など、大きく変化を遂げてきました。
そして、情報システム技術革新の高速度化と深化がもたらすAI技術が、次の大きな経済社会構造の変革を招くと予想されています。
先の構造変化で、企業などでの雇用労働が当たり前になり、職種も製造現場従事者が大幅に減り、流通サービスの現場で就労する人が増加し、今は拡大一方の産業であるIT関係のスキルを持つ人材が多く不足しています。
そして、今もより深化の速度を速めているAIが、多くの職種・職業を不要とし、雇用機会を奪い、収入を得ることも困難になるという予想もあります。
そうした分野への投資を行なう投資家にのみ不労所得による富・収入が集中する傾向が一層強まるという主張が、現実味を帯びさせるように思わせます。
もしこれが現実になれば。
これまでの社会経済構造の変化が、資本の拡大と集中・偏在とともに起きてきたことを思えば、やはり、想定すべきこととして、その時代・その社会に応じた社会保障制度を整備しておく必要性を感じます。
多様な生き方選択のための能力・適性・希望に応じた就労機会創造・付加価値創造を支援
もし最低限の日常生活を送ることができる収入・所得が保障されていれば。
自分の性格や能力・適性、希望に合わない仕事を辞めて、合う仕事、やりたい仕事を探す、調べる、研究する、創る、起業の準備をする。
より生きがいや働きがいを求めて、自由な生き方を探して、時間を使う、人と会う、なにかを創造する。
現状に不安や不満、息苦しさを感じたり、心身の健康に不安を感じたりした場合、一時退避し、次に備える時間と心の余裕を持つことができれば。
そういう人も社会にいるでしょう。
新しい事業機会や仕事を創造し、あるいは付加価値のある芸術・文化を創造する。
それらが可能である社会も、社会保障制度の在り方で、実現できれば素晴らしいと思います。
貧富の格差をもたらす就労雇用格差、結婚格差、教育格差の抑制のための社会保障制度による所得再分配政策
これまで見てきた、国民一人ひとりが基本的人権に基づいて生活していく上で発生し、存在しているさまざまな社会経済上の問題や課題は、種々の要因で生じる格差に起因していると理解できます。
所得格差は、就労・雇用機会の有無や不平等、教育訓練等により能力・適性を身につける機会の有無や不平等、結婚の有無、望む相手と出会い結婚に至るまでの機会の有無などの格差に大きく起因します。
それらの多くは、自助努力、自己責任で解決・克服できるものではありません。
が、多くは、政治・行政の在り方を改善・変革することで可能になるものです。
特に、冒頭述べた憲法第25条による、基本的人権と社会保障・社会福祉に基づく政策・法律の改定や制定により可能です。
ただそれらは、当然国費を投じて行なう政策であり、その原資は、税金や保険料であり、それを負担しているのは一定以上の所得がある国民、個人個人と事業を営む法人・団体などです。
その原資を国費として、適切な社会保障制度に配分するわけで、これがいわゆる「所得の再分配」を、国が成り代わって、国民個人個人のために行なうわけです。
従い、資金源である税金・保険料を納付する国民一人ひとりの同意・合意があることが前提となっています。
それは、国民が選出する国会議員による議会制民主主義と議院内閣制に基づき制定される法律が、その行為を代行していることを意味し、その法律に基づき、行政により施行されるのです。
世代間負担の不公平・不平等対策と全世代型社会保障制度改革の必要性
貧富の格差の原因としてのさまざまな要因とほぼ同様の問題の中に、種々の社会保障の給付サービスを受ける人と、そこにかかる費用を多く負担する人との不公平性・不平等性があります。
老齢年金制度、医療保険制度、介護保険制度などの給付を受ける高齢者は、本人が負担する金額が、実際に受ける給付サービスの額に比べ著しく低額に抑えられています。
一方、保険料や税金を負担する現役世代が高齢になった時に受ける給付は、それまでの負担に比べて、現在の高齢者よりも著しく低くなることが想定され、不満と不安が強くなっています。
こうした不公平性を抑制・解消するために、全世代型社会保障制度への転換が課題となっていますが、まだ十分にその基盤や制度が整備されてはいません。
そこには、現役世代の子どもや孫を対象とした次世代を担う子どもたちへの社会保障も必要です。
この視点での社会保障制度改革も、希望を持つことができる安心社会の実現のためにも早期に実現すべきです。
コロナ禍で深刻さ・必要度を増した、安心安全な生活を送るための安全弁としての最小限度の経済的社会保障制度
特別定額給付金10万円をすべての国民に無条件で支給する。
コロナ下に行われたこの政策が、国民に、国はこうしたことができるんだ、という感想を抱かせたと考えられます。
そして、一回だけでなく、必要に応じて、何回もやってくれてもいいのではないか、何回でもできるんじゃないか、という思いを持った人も大勢いたのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の拡大リスクは、すべての国民が共有し、拡大防止のための緊急宣言や必要なマナーの遵守など、協調性をもって臨んだことは十分評価すべき、貴重な経験でした。
そこで共有できたことに、こうしたリスクへの対策、協調・自粛・忍耐等への対価として、現金を全国民に条件をつけることなく支給する法律が作られ、施行された経験があります。
ただ、自然災害を含めこうした非常時・想定外の厄災・被災時だけでなく、これまで種々見てきたように、現在存在する種々の社会経済状況と関係している諸事情や、日常起きている、あるいは、これから起こりうる種々の出来事への対応・備えとして、すべての国民が利用・享受できる給付金のような制度があれば、と思い、願うのは自然なことと考えます。
社会保障制度改革における基軸としてのベーシックインカム制導入の意義・有効性
これまでに述べてきた、さまざまな現状と今後の生活・生き方への不安を少しでも抑制し、将来に明るい希望を持つことができる社会保障制度を整備拡充することは、すべての国民が望むものであり、国が責任感と使命感をもって実現すべき課題と考えます。
国と国民・個人個人は、対等の社会契約関係にあるものです。
決して一方への従属関係に基づくものではありません。
国は、国民・個人から国民と国を安全で安心できる豊かな国と社会を創造する政治と行政の仕事を委嘱されているのです。
国民住民はその権利を持ちますが、一方で、その権利を行使するための、最低限度の義務を負います。
収入・所得に応じた税金や保険料などを納める義務です。
国は、納付された税や保険料を効率的に有効に利用すべく、適切に配分するとともに、不足する財源について、種々配慮した制度・政策により調達し、活用する責任を、関連する法制の改定・新設と合わせて持っています。
そして、その新しい社会保障制度は、すべての国民に、給付及び受給上の条件を課すことなく、平等に給付することが基本となります。
これまで、ベーシックインカムと表現され、多少は議論検討されてきた、現金給付制度があります。
わが国では、これまで述べ、問題提起した、現状と将来の課題の改善・解決・解消と、現役世代と次世代の人びとが、希望と夢を持ち、安心して暮らすことができる国・社会を創造するための、新しい社会保障制度を法律として制定します。
これが本法「日本国民の基本的人権に基づく生活保障のための生活基礎年金給付に関する法律」(略称「生活基礎年金法」、別称「ベーシックインカム法」)です。
ベーシックインカム制実現に必要な配慮を法律に:社会保障財政赤字、国際社会における経済への影響を考慮
しかし、この理想とする法律の設定・施行には、当然配慮し、組み込むべき、あるいは関連させるべき重要な条件があります。
一つは、社会保障制度運営上問題となっている、財政赤字への対策です。
この問題を改善・解決・克服する具体的な方法とその根拠を、本法または関連法において規定することが、本法導入の条件となります。
二つ目は、本法の制定・施行において、同時または、先行あるいは追って、現行の種々の社会保障制度と関連する種々の法律を、廃止・改定あるいは新設する必要があることです。
例えば、国民年金制度や児童手当制度の廃止と本法への代替条項の組み入れ、厚生年金保険法の改定、雇用保険法の改定、所得税法等税法改定、などがあります。
もう一つは、無条件で全国民に相当額を支給することが、国際社会経済上問題を引き起こしてはならない、ということです。
例えば、外国為替法及び取り引きに大きく影響し、自国のみに効果を及ぼす制度となってはいけないこと、日本国内在住の外国国籍者への適用問題などがあります。
これらを含めて、多面的な検討・議論を経て、法的な手順を踏んで、本法制定に至ったことを喜びたいと思います。
この法律の施行により、わが国の現在と未来に希望と期待をもって、世代が継承され、平和で豊かな国と社会が形成され、国際社会においても範となる社会保障制度が永続することを希求するものです。
(以上、2020/9/7 初稿)
<参考>:「日本国民の基本的人権に基づく生活保障のための生活基礎年金給付に関する法律」私案の構成
前文
前文その1 本法制定の背景
前文その2 本法の構成
第1章 総則
第1条 目的
第2条 定義
第3条 方針
第4条 対象者
第5条 所管
第2章 給付金の管理方式
第6条 給付金管理所管
第7条 給付金形態
第8条 受給口座
第9条 特例管理方式
第3章 給付金の給付・利用方式
第10条 基礎年金の種別
第11条 生活基礎年金の給付方法
第12条 児童基礎年金の給付方法
第13条 生活基礎年金の利用方法
第14条 児童基礎年金の利用方法
第15条 利用先登録
第16条 利用先の給付金の取り扱い
第17条 利用有効期間
第18条 権利資格喪失時の取り扱い
第19条 利用禁止事項
第4章 給付金の財政管理方式
第20条 給付金の基礎財源
第21条 給付金の二次的財源
第22条 給付金の予備的財源
第23条 給付金の回収及び消却
第24条 給付金特別会計
第5章 社会保障制度体系との関係
第25条 総合的社会保障制度と本法の位置付け
第26条 厚生年金保険制度との関係
第27条 雇用保険制度との関係
第28条 健康保険制度との関係
第29条 社会福祉制度との関係
第30条 その他の社会保障制度との関係
第6章 その他
第31条 罰則
第32条 特例規定
第33条 本法関連法令
第34条 本法規定外関連事項の取り扱い
付則
1. 本法施行日
2. 本法施行計画及び日程
以降、順次必要事項付加
(2020年9月6日:第1次案)
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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年9月7日投稿記事 2050society.com/?p=5273 を転載したものです。
当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。
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