相続税・譲渡税100%でいずれ財源確保不能にならないか?:NI氏のベーシックインカム論を考える-2
20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
私の提案するベーシック・ペンションにも関心をお持ち頂き、常にその膨大な支給額による過剰な貨幣の流通が、インフレ、ハイパーインフレを発生させることへの懸念を示し、対策や考え方を要求なさっているNI氏。
同氏が、「未来党宣言」というFacebookグループを昨年開設。
その中で、ベーシックインカムについての持論を発信・配信していらっしゃいます。
私が運営するFacebookグループ「ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング」にも投稿頂いたその提案資料を、以下のように整理しました。
【NI氏提案ベーシックインカム論構成】
<序論-1>:未来社会の経済原則を考察するに当っての視点と答え
1.今後も予想される人口増加下での資源枯渇化、地球温暖化、環境破壊を抑止していく視点と答え
2.資本主義経済か共産主義経済かの選択と答え
3.新自由主義がもたらす行き詰まりという視点と答え
4.ロボット化・AI化が進化した社会で増加する経済困窮者救済と購買力低下という視点を答え
<序論ー2>:政府財源の国債依存体質は問題ないのか
1.現在の国債に依存している政府財政に対する危機感
2.国債はいくらでも発行可能か
3.税は政府財源ではないのか
4.国債依存の政府財政がもたらす問題点=過大なインフレ
5.現在の日本の政府財政状況と今後の対応
以下<本論>
Ⅰ ベーシックインカム制度は人間を堕落させるか
1.未来社会にベーシックインカム制度は必須となるのでは
2.ベーシックインカム制度は人間の堕落をもたらすか
Ⅱ 生活保護とベーシックインカム
1.現行の生活保護の実態
2.現時点でベーシックインカムは実現可能か
3.ベーシックインカムが必須となる状況
4.ベーシックインカムを実現するには、発想の転換が必須
Ⅲ ベーシックインカム私案例に対する私の疑問
1.れいわ党山本党首私案
2.日本ベーシックインカム学会会員S氏の試案
Ⅳ ベーシックインカム実現の必要条件
1.財源の問題
(1)最大の課題は財源
(2)財源の問題は発想の転換が必須
(3)最大の懸念はインフレの発生である
(4)市中からの貨幣の吸い上げ
2.ベーシックインカムの導入が必要になる時期
3.ベーシックインカム導入が可能となる条件
4.世界が連携・協調出来る体制作りは長い道のり
5.課税強化は時間を掛けて
6.課税強化による市中からの貨幣吸い上げで、過大インフレが防げるか
(1)将来の課税強化による貨幣の市中からの吸い上げ効果が出るまでは
(2)富裕層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
(3)中間層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
Ⅴ ベーシックインカム導入後の世界
1.個人の活動の成果である資産は一代限り
2.子孫や家族の安定した生活は国で保障
3.労働と生きる事に対する価値の多様化
4.社会貢献業務・ボランティア活動への参画
3回を予定している当シリーズ。
第1回は、2つの序論とⅠ~Ⅲまでを取り上げ、以下の記事を投稿しました。
◆ BI財源論に必要な発想の転換とは?:NI氏のベーシックインカム論を考える-1(2023/2/18)
今回第2回は、残りのⅣとⅤを取り上げます。
最終回、第3回は、私のベーシック・ペンション案との比較と、NI氏が懸念・指摘される問題点についての回答を予定しています。
では、まずNI氏のBI論の最も重要な提案部分の紹介と感じるところの簡単なメモ書きです。
Ⅵ ベーシックインカム実現の必要条件
以下の構成のこの区分ですが、前回同様、作成された資料を順番に添付しています。
1.財源の問題
(1)最大の課題は財源
(2)財源の問題は発想の転換が必須
(3)最大の懸念はインフレの発生である
(4)市中からの貨幣の吸い上げ
2.ベーシックインカムの導入が必要になる時期
3.ベーシックインカム導入が可能となる条件
4.世界が連携・協調出来る体制作りは長い道のり
5.課税強化は時間を掛けて
6.課税強化による市中からの貨幣吸い上げで、過大インフレが防げるか
(1)将来の課税強化による貨幣の市中からの吸い上げ効果が出るまでは
(2)富裕層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
(3)中間層の投資・消費行動(将来、相続税・譲渡税100%課税が実施状況下での)
財源は、発想の転換、相続税・譲渡税100%課税で
まず、ベーシックインカムの財源についてのNI氏の基本的な考えが示されている。
国民全員に毎月7万円支給するとした場合の年間支給総額は107兆円。
現状の生活保護制度における平均支給額並みに全国民に支給するとすれば同じく381兆円。
膨大な金額だが、一応は、税を財源としない貨幣発行権に基づくMMT現代貨幣理論に拠れば可能とする。
しかし、その過大な貨幣発行は過大なインフレを引き起こすことは経済の常識とし、インフレ抑制のための課税強化策を提起する。
ここで従来のBI論における所得増税や消費増税による財源確保を唱えれば、発想の転換になどならないのだが、そうではなく、相続税及び譲渡税の100%課税の提案に至る。
所得税・法人税は現状レベルを保つとし、一方消費税の廃止を併せて提案している。
もちろん、相続税・譲渡税100%課税で、どの程度の税収が可能か、そしてそれがベーシックインカムが支給される期間、止むことなく継続して確保可能なのか、試算もしくは(私はあまり好まない)シミュレーションされているとは思うが、ここでその提示はない。
また、この法改正案に対する反対・批判予想にまったく触れることなく、簡単に発想の転換を完結させていらっしゃるのが不思議である。
この発想の転換案は、私は、特に目新しいものではないと受け止めている。
所得の再分配論の一つの案であるし、随分以前の稚拙な以下の記事中で、波頭亮氏が、金融資産課税や相続増税などの提案例も示している。
(参考)
⇒ 財源問題、所得再分配論から脱却すべき日本型ベーシックインカム(2020/10/4)
違いを見出すとすれば、NI氏の提案は、相続税・譲渡税100%課税という1本足打法であることだろうか。
私はこの案に疑問を持つ者だが、その理由は、次回述べたい。
ベーシックインカムはすぐには必要でなく、実現にも時間を掛けて
次は、いつ頃ベーシックインカムは必要になるか、いつ頃実現可能になるか、という少々面白い観点からの考察・提案である。
要するに、経済的困窮者が増加し、それにより生活保護対象者が相当数増えるとその行政手続き等で膨大なコストが発生することになる。
国民の過半数が生活保護を必要とする段階を想定すると、行政コストの削減・合理化のためにベーシックインカムを導入することが適切、というである。
そしてそれは、20年から30年後のことというのが大方の識者の想定である、と。
これには、れいわ新選組山本太郎を批判した理由と同じレベルの理由ではないかと失礼ながら感じてしまう。
そして「独裁国家の民主化への移行⇒国連改革⇒世界各国の連携・協調」がベーシックインカム制実現の目処とする20~30年後までに必要である、と。
提案するベーシック・ペンションも相当の「ロマンチストの見果てぬ夢」やもしれぬと思っている私をはるかに上を行く構想。
そのために、時間を必要とする、という認識は同じだが・・・。
100%相続税・譲渡税課税までは、漸進的に税率を上げていく。
そのプロセスで、国債大量発行と市中への貨幣の滞留は続くし、それにより富裕層が消費行動に走っても、贅沢品への消費が主でインフレには繋がらないと、いとも簡単に断定。
中間層も、教育・医療の完全無償化、一定限以上の住宅と生活保証で過度の貯蓄も不要になる、と。
完全無償化に必要な財源はどの程度で、どうやって確保するのか。
生活保証(保障)レベルのベーシックインカム給付額とは、先に示した生活保護平均給付満額レベルをいうのか。
説明不足の念は拭えない。
Ⅶ ベーシックインカム導入後の世界
いづれにしても、こうしたNI氏提案のベーシックインカムが実現した世界は、こうなるというのが、以下で示されることになる。
1.個人の活動の成果である資産は一代限り
2.子孫や家族の安定した生活は国で保障
3.労働と生きる事に対する価値の多様化
4.社会貢献業務・ボランティア活動への参画
5.脱成長意識
ここで示された内容を読むと、同氏が批判した斎藤幸平氏の書を読んでいるかような気持ちになってしまう。
「資本主義経済下、得られた所得は個人の活動によりもたらされたものであり、本来的には家族や仕損のものではない。その意味で個人の活動の成果の資産は個人一代に限り、相続や譲渡は認められない。」
「子孫や家族の安定した生活は国で保障する。」
夫婦の関係はどうなる、どうする?
教育の範囲はどうなる、どうする?
相続・譲渡禁止で、持っているお金は使いたいだけ使ったら???
吸い上げる相続税も譲渡税も、いつかはなくなってしまうのでは?
そうなったらどうなる、どうする?
皆が皆、生きている内が華なのよ、と消費したいだけ消費したら、消費できたら、インフレは起きない?
財源が枯渇すれば、廃止した消費税を復活させ、ついでに贅沢品により課税する贅沢税が必要になる・・・???
タラレバは、言い出したらキリがないので、今回はここらで終わりにし、次回、ベーシック・ペンションとの比較とNI氏がご懸念のベーシック・ペンション導入におけるインフレ発生必定指摘に対するm現状の考えの提示に進みます。
20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
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