
議員定数削減一院制へ改憲を:イタリアで国会議員数削減国民投票可決|背景としてのベーシックインカム政策
イタリア、国会議員3分の1削減へ 国民投票で可決
イタリアで9月に国民投票があり、国会の定数を37%減らすための憲法改正案が可決されたという。国会議員の数が3分の1以上減るわけだ。
次回選挙から、上院定数は315人が200人、下院は630人が400人になる。
よく成立したな、と思う。
イタリアはEU加盟国であるが、政治不安が起きやすい。
今回は、一院制への変更は問われなかったが、不安定な政治の要因の一つが、両院が似通った性質のもので、ねじれ現象が起きやすいことから、一院制化への議論・検討は、これまで続けられてきているという。
こうした動きは、中道左派と与党連合を構成する五つ星運動が公約に掲げることで、両院とも第1党を占めたことで、加速された。
つまり、既成の左右両派でもなく、極右でもない、新しい政治の動きによるものだ。
この結果、年間1億ユーロ(約120億円)の経費削減効果があるとされている。
日本も見倣いたいものだ。
やりたい放題内閣改造は、論功行賞主義劣悪政治の証明
何かにつけ人心一新と称し内閣改造を行い、大臣の入れ替えを行う不思議な政治がまかりとおる日本。
省庁のトップが、そうコロコロ変わるようでは行政に遅滞が生じ、官僚の仕事もテキトーになってしまうだろう。
ムダなコストも掛かる。
引き継ぎに必要な時間とコストを示すべきだ。
就任した大臣を、官僚・スタッフが深夜でも待ってお迎えする。
適格性を欠く議員が大臣に就任し、即マスコミがスキャンダルを暴き、任命責任がどうこう言われ、開き直り、そして辞任、時には居直り・居座りのいずれか、というのも常態になってしまっている。
本来辞任ではなく、辞職勧告もしくは大臣職解任ものなのだが。
何かにつけて、過去のやり方にこだわらないと、時に屁理屈での理由付けが常態化しつつある菅内閣だ。
解散総選挙や内閣改造も、従来の踏襲など破棄して、しっかり政治・行政に専念してもらいたいものだが、果たしてどうだろう。
自分に都合のいいことは、恐らく、理由も何もなしで、継続するだろう。
それが権利だから、というだけで。
権利の濫用や誤用には無頓着だ。
やりたい放題政治は、絶対多数与党の権利という認識に拠る。
民主主義国家を自ら放棄する政党であり、首相と内閣は、主権を持つ国民が取り替えていくしかない。
7年余も続いた安倍政治にようやく終止符が打たれたが、何かが新しくなるどころか、より保守専横になる兆しが増し始めている。
携帯電話料金の引き下げ、不妊治療の保険適用などを売りにしているレベルでは、ごまかしの、人気取り政治に過ぎない。
その政治の劣化は、与党だけでなく、憲法第4条の国会規定に同様に守られ、特権化している野党とその議員にも同様に原因と責任がある。
ゆえにやりたい放題なのだ。
なので、その政治を変えなければ何事も始まらないということで、以下の記事を3月に書いた。
◆ 劣化する国会議員・国会・議院内閣制:絶対不可欠の政治システム改革-1(2020/3/5)
◆ 一院制移行・議員総定数削減と選出システム改革を:絶対不可欠の政治システム改革-2(2020/3/6)
9条改憲よりも優先すべき、憲法第4条国会、第5章内閣規定改正
だが、イタリアのようにやるには、当然憲法を改正しなければいけない。
その憲法改正の実現には、国民投票に持ち込む必要もある。
政治と政治家の劣化・腐敗は、多くの国民が感じている。
そして、国会が機能していないこと、国会議員の議員報酬が高く、報酬分の仕事をしているとは感じていないこと、ゆえに、国会議員の数を増やすべきと思っていること。
どれも多くが賛同するに違いない。
与党があたかも最優先課題とする第9条改憲よりも、憲法第4条の国会規定を改正した方がよほど良いと多くの国民は考えるだろう。
そして、権力主義をかざす内閣の慣習継承政治を抑止するために第5章の内閣規定も併せて改正すべきことも、きちんと理由を上げ、改めるべき内容を示せば、国民の理解・賛同を得られるに違いない。
内閣規定には触れなかったが、憲法改正をテーマに、以前、以下を投稿した。
◆ 憲法改正の最優先課題は、第四章国会:憲法改正の新視点-1(2020/5/16)
◆ 一院制導入で憲法第四章国会の改正を:憲法改正の新視点-2(2020/5/17)
左右、同軸の政治権力志向時代のリスク
英エコノミスト誌元編集長のビル・エモット氏は、大統領選を控えているアメリカの現状についてこう言っている。
「米民主主義は長期の病にかかっている。両政党それぞれで極論の勢力が強まったことだ。超党派のような旧来の慣習は崩壊し、ゲームのルールが『勝者総取り』に変わっており」「最高裁人事にみるように、自らに有利な政策や人事を徹底して専横化する手法が常態化しつつある。」
これは、まさに前任の安倍政治を継承する菅内閣そのものにも見事に当てはまる。
そしてそれは、言わずもがな、習近平中国共産党一党独裁政治、金正恩北朝鮮体制、北追従文在寅韓国大統領政治とも共通する絶対的権力主義政治を示している。
ネトウヨ等盲目的な保守支持派は、そのことに気づいているのかいないのか知らぬが、まあ、リベラルらしきモノに対抗する絶対的手段程度の感覚だろうか。
それ自体問題なのだが、もう一つ厄介なのは、日本のリベラルも、そうした本来是々非々で判断すべき政治に対して、自ら教条主義・原理主義に拘泥し、本来の民主主義的思考と行動を回避していることにある。
自ら大幅定数削減、一院制を公約する政党はあるか
こういう制度劣化、というよりも、制度解釈悪用慣習化を起こしている憲法の国会及び内閣規定を、国会議員こそが問題視し、自ら変革する意識と責任感を持つべきなのだが、微塵もその兆候は見られない。
与党に期待することなど土台ムリなのは承知だからこそ、野党が声高に叫び、国民に呼びかけるべきなのだ。
自ら国会議員定数の削減、一院制への改革を提案し、公約とする政党・政治勢力が待たれている。
立憲民主党は、一院制、議員定数削減、議員報酬削減を公約に衆院選に望むべき
9条改憲問題よりも、国民にとっては、恐らく議員定数削減や内閣の専横を許さない政治改革の関する憲法改正の方に関心を示すだろう。
また提案すれば絶対に支持を得るだろう。
もし自称リベラルが、自らの保身という反リベラルすなわち保守を体現する政治思考を持ち、その行動を取るのであれば、あるいは何もしないことを選ぶならば、支持拡大はあり得まい。
どうだろう。
次の衆議院選で、一院制、議員定数削減、議員報酬削減をマニフェストに具体的に盛り込んで臨んではどうか。
ついでに衆議院解散権や内閣改造の権利制限についても。
もちろん、国民民主党でも良いのだが、今度の衆院選には立候補者を揃えられないだろう。
イタリア憲法改正成功は、条件付きベーシックインカム導入が起点
実は、イタリアの憲法改正の原動力になったのは、欧州におけるポピュリズム政党の代表格とされる五つ星運動だった。
2018年の政権獲得以降、年金支給開始年齢の引き下げ、求職活動の継続などを条件としたベーシックインカムの支給開始など改革を進めた。
(この条件付きベーシックインカムの内容については、後日調べてご報告したい。)
そのため財政能力を超えたばらまきと批判されたが、一方では、政治のスリム化を掲げ、この議員定数削減改憲案を昨年10月に成立。
新型コロナウイルスパンデミックで半年延期された9月の国民投票で69.96%の賛成を得て、施行にこぎつけた。
立民も、イタリアの五つ星運動を学ぶべきだろう。
単なるポピュリズム政党ではないく、民意をよく把握承知した上での政策展開である。合理性が存在し、民主主義が基盤にある。
私もベーシックインカム導入賛成派であり、運営するWebサイト、https://2050society.com で種々提案しており、先日、Facebookグループとして
<日本型ベーシックインカム実現をめざすカウンター・デモクラシー・ミーティング>を開設している。
国民民主党がベーシックインカムを公約に掲げているらしいが、どこまで踏み込んだ提案をしているのか、詳細は知らない。
費用がかかるベーシックインカムと引き換えに、と言っても、必要財源と比較すると微々たるものかもしれないが、国会議員自ら身を削っての導入提案とすれば、国民もその意気は感じ取るだろう。
少しは同党に対する見方が、好転するに違いない。
カウンター・デモクラシー活動を始めてみる
まあ、立民、国民(民主党)には望むべくもないし、自民党は論外だろう。
とすると我々は何に頼ればいいのか。
現状では、倉持麟太郎氏が書き表した『リベラルの敵はリベラルにあり 』にある、カウンター・デモクラシーの活動を広げていくことが一つの方法かと思う。
カウンター・デモクラシーについては、機会を改めて紹介したいと考えている。
ただ、その感覚での提案として、女性主体の政党の基盤となるカウンター・デモクラシー組織の創設を以下で提案した。
◆ 「平和と社会保障と民主主義を守る女性会議」(仮称)創設のご提案(2020/9/24)
そして、その組織が、既存の政党に対するカウンター政党へと進化することをイメージして、以下を投稿した。
◆ 女性主体政党創設の夢:2030年自民党女性国会議員30%、20年後女性総理誕生に先駆けて(2020/9/30)
国会改憲とセットで、ベーシックインカム生活基礎年金制導入を公約に
こうした、国会改革・内閣改革を実現する憲法改正活動と、ベーシックインカム導入をめざす活動、2つの流れが、カウンター・デモクラシーと本流のデモクラシーと合流して、社会システム改革に繋がっていく。
これが理想だが、その推進組織基盤の軸は、女性に担ってもらうのが良いと思っている。
しかし、どちらか一方でも、公約に掲げ、実現のためのシナリオや必要法案も備えている政党があれば、それを支持することにしたい。
そこまでの検討・研究を行い、関連法理論・法体系のとりまとめまでやり通せる政党があるかどうか。
あればとっくに、できるのならとっくにやっているはずだが。
やはり、当面は、カウンター・デモクラシーの展開方法を、現実化するための種々の提案と並行して試行錯誤しながら進めていくことになりそうだ。(参考)
⇒ <日本型ベーシックインカム実現をめざすカウンター・デモクラシー・ミーティング>
ではどうしたら憲法改正ができるか、憲法改正に必要な国民投票はどういう場合に実施されるか。
折角ですので、最後に「憲法改正国民投票法」で確認しておきたいと思います。
憲法改正国民投票法とは
以下は、総務省のホームページから転載しました。
この法律は、日本国憲法第96条に定める日本国憲法の改正について、国民の承認に係る投票(国民投票)に関する手続を定めるとともに、あわせて憲法改正の発議に係る手続の整備を行う内容となっている。
日本国憲法第96条
1.この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2.憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
国民投票の投票権は、年齢満18歳以上の日本国民が有することとされている。
国会議員により憲法改正案の原案が提案され、衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査されたのちに、本会議に付される。両院それぞれの本会議にて3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされる。
また、憲法改正の発議をした日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に国民投票が行われる。
憲法改正案に対する賛成の投票の数が投票総数(賛成の投票数と反対の投票数を合計した数)の2分の1を超えた場合は、国民の承認があったものとされる。
憲法改正案は、内容において関連する事項ごとに提案され、それぞれの改正案ごとに一人一票を投じる。
カウンター・デモクラシーを念頭に、トリプルA、安心、安全、明るい未来社会創造へ!
ということで、いずれにしても、両院で3分の2以上の賛成が不可欠です。
超党派で憲法改正案が提案される場合を除き、単独、連立どちらでも良いですが、3分の2を占めないと国民投票に持ち込めないわけです。
そうなると、先ず衆議院で3分の2の勢力を確保し、参議院もそれに追随する。
仮にそこまでうまくいったとすると、国民投票は問題なく賛成多数で改憲は承認されるでしょう。
となると、自党の議員も一部席がなくなるわけで、それを承知での改憲マニフェストというわけです。
どんなことが起こっても辛抱強く我慢し続ける国民。
大きな変化、変革を求めない、ある意味平和な国民性と言えるのかもしれませんが、結構さまざまな社会問題が蔓延し、生き辛い社会、生き辛い時代と表現も、決して大げさではないと言えましょう。
無党派層が、ものも言わぬ、行動もしない、潜在国民・潜在住民になってしまったら・・・。
次に続く子ども世代の将来も、同じ色に染まってしまいそうです。
静かだが、何かしらのカウンターとして存在し、必要があれば活動もする。
お互いがそういうカウンター・パートナーでありえれば。
そう願っています。
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