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2020年関連図書考察

性別役割分業解放料としてのBI、口止め料としてのBI:『ベーシックインカムとジェンダー』から考える-2(2020/11/29)

 なかなか真正面から論じることができない感じがした著『ベーシックインカムとジェンダー』。
しかし、一昨日
「日本型ベーシックインカム生活基礎年金」提案のここまでのプロセス
で述べたように、日本型ベーシックインカム提案の新たな段階に進むにあたって、「ジェンダー問題」と結びつけてまとめておくことは、ベーシックサービスの是非を考えるよりも重要かつ不可欠なことと考えました。
 そして始めた『ベーシックインカムとジェンダー』論ですが、不謹慎にも
白崎朝子氏「あとがき」から考える『ベーシックインカムとジェンダー』論
と題して<あとがき>から踏み入れてしまいました。

 今回は、第2回で、以下の構成の中からいくつかピックアップして、少しばかりの感想を加えたいと思います。

『ベーシックインカムとジェンダー - 生きづらさからの解放に向けて -』構成

はじめに                     白崎朝子
第1部 ベーシックインカムとジェンダー      編者一同
 - 現代社会における女の位置付けとベーシックインカム -
 はじめに
 1 現代社会における女の位置付け
 2 女にとってのベーシックインカム
 3 ベーシックインカムは、女にとっての「解放料」か「口止め料」か?
第2部 様々な「おんな」の立場から-ベーシックインカムを語る 
 1 女性労働問題の課題と展望        屋嘉比ふみ子
 2 社会活動と「食っていくこと」のはざまで   野村史子
 3 自由と自律 ~ベーシックインカムをめぐって 白崎朝子氏
  - シングルマザー、サバイバーの立場から
 4 暮らし方・生き方モデルを示す制度にNo!   桐田史恵
  -私が私の暮らしを生きる権利を阻害させないための
   ベーシックインカム
 5 女/学生/ベーシックインカム       堅田香緒里
  - 女/学生に賃金を!
 6 うっとりする時を取り戻すために      佐々木 彩
 7 ケアワーカーと貧困、低学歴問題としての
   不登校・引きこもり
            吉岡多佳子
 8 私とベーシックインカム           楽 ゆう
 9 セクシュアル・マイノリティの立場から
    ベーシックインカムを考える         ミナ汰
  - ジェンダー公正を踏まえた社会保障の
      ユニバーサルデザインに向けて
第Ⅲ部 座談会 ベーシックインカムは家父長制を打ち破れるか
 桐田史恵・瀬山紀子・野村史子・屋嘉比ふみ子氏 司会白崎朝子氏
あとがき                      白崎朝子氏 

「ベーシックインカムは、女にとっての「解放料」か「口止め料」か?」から

 女にとってのベーシックインカムの含意は両義的である。
 一般にそれは、女の経済的自立を促すことで女の解放のための「解放料」となることを期待されてきた。
 しかし他方でそれは、女を家庭に送り戻し、女の解放と自立に抗するバックラッシュに貢献するような、女への「口止め料」とみなされることもある。
 はたしてBIは女にとってどのような意味を持つのか?

 こんな書き出しで始まる本節は、まず、この両義的含意をこう整理しています。

1)BIは女の経済的自立を促す
2)BIは社会関係な内における女の声(Voice)と権力ないし交渉力の増大に貢献する
3)BIは、いわゆる「貧困と失業の罠」を軽減する
4)BIは、福祉国家を「脱官僚化」する
5)BIは、家事やケア労働を社会的に価値ある貢献として(再)評価する

 ここまでは、確かに「解放」的機能を果たすように見えますが、続けてこう言います。

 BIは、家庭内での家事・ケア労働に対して経済的報酬を与えることで、女を家庭という私的領域に幽閉し黙らせ、その結果性別役割分業を維持・強化する、というものである。

 これが、解放が性別役割分業の解消に貢献する捉えることと相反する現実の一面、すなわち性別役割分業を温存するための「口止め料」として機能してしまうというわけです。

 そして、「ベーシックインカムと性別役割分業」についてこう言います。

 確かにBIは、男女間でケアの責任を分担し合うよう促す可能性をもってはいる。
 事実BIは性別役割分業を前提に置かないという意味では、既存の多くの給与体系よりはずっとマシだ(性差別主義ではない)。
 しかしそれは、男に対してケアを共有するよう促すことまではしない。
 BIは、男が賃労働から解放されたその時間を家事労働に費やすことまでを保証するものではない。
 すなわちBIは、賃労働を強制しないのと同様に、不払い労働も強制しないのである。
 それゆえ、BIが性別役割分業の解消に貢献するためには、女性を解放する他の政策によって補完されなければならない。


 書き写しながら考え、考えながら書き写してきていますが、恐らく、こうした論を展開されている方は、労働をすべて雇用されて行うものと捉えるか、企業などの下請けとしてやはり管理・拘束下にあることを前提としていると思われるのが一つ。
 もう一つは、すべて、家族形成している女性を前提としていると思われること。
 そこで、どちらが働き、どちらが働かないか、家事育児をどちらがどのように分担するかは、本質的には、夫婦間の問題であり、企業や法律にその支援や判断や運用を義務付ける、あるいは委ねるものではないはず、ということです。
 男と女の共同生活のあり方は、家庭内労働という設定においては、BIが、個人の基本的な生活コストを保障するレベルであれば、二人の問題として解放されるべきものでしょう。
 単身生活、同性の人との生活においては起きない、論じる必要のない話です。
 働き方・生き方の自由は、支給されるBIの範囲では保証されているはずですから。
 「解放」も「口止め」も、一体だれが行うことを想定しているのか。
 敵はだれで、どこにいるのか。
 恐らく、「国家」を想定してるのでしょうが、この国家は、政治行政主体ですね。
 国がBIを全国民に平等に給付したあとの行動は、すべて自由のはずです。
 万一、仮想敵とする国家が、思うような機能・役割を果たさないのなら、その政治・行政を変える取り組みをすることが解決策になるはず。
 そう思い浮かべながら、次の論述に進みます。

社会活動と「食っていくこと」のはざまで」:野村史子氏著から

 次に、以下のように、さまざまな社会活動に参画していらっしゃった野村史子さんの小論です。

1.活動の場を暮らしの場へ - ウーマンリブの試み
2.家事・育児の共同化と子育ての新しい関係を目指して - 全日共同保育の試み
3.優生保護法改悪阻止闘争 - 「しがみつき合いながら、ぶん殴り合いをさせる」システムへの闘い
4.児童扶養手当改悪阻止活動 - 女がひとりで生きていける権利を求めて
5.優生思想を問うネットワークの活動 - 「それで食っている」専門家対「食っていけない」素人の闘い
6.NPOで働くということ - 有償は無償よりましか?


 これらの厳しい活動内容を伺うと、「痛い」感覚を心身のどこかに受けるのですが、当事者ではない者に、何かを語る資格はないと、いつも思います。
 結論から言わせて頂くと、こうした活動・闘争が必要のない社会を創るしかないわけです。
 その唯一の方法は、そのための法律を成立させ、発効させることです。
 その方策を考えることも、当サイトの目的の一つですが、ここでは省略します。

 実はこの小論で、最も着目したのが、「NPOで働くということ」の部分でした。

 NPO法人が今まで私がしてきた活動と根本的に違うのは、事業をする、ということだ。
 今までの活動は、何かに対する抗議活動や意見表明で、事業といってもせいぜい講座や学習会をする程度だったが、NPOの法人では、当事者の交流活動や支援者養成活動、社会啓発活動などさまざまな事業に取り組むことになった。

 そこからの新たな艱難辛苦の物語がこのあと展開されています。
 それも失礼を承知で、乱暴ですが、以下のまとめに一気に進みます。

 NPOので働くということは、社会活動で食っていくということである。
 生きにくい社会をなんとか変革しようとすればするほどNPOは貧乏になり、NPOの活動家も貧乏になる。
 膨大な女のただ働き労働と身をすり減らす労働に支えられて、かろうじて日本のNPOはその存在を維持している。

のです。
 意地の悪いおじさんの言い方をお許し頂けるなら、NPOの首根っこ、生殺与奪は国・行政に抑えつけられ、掴まれており、善意が収奪されているのです。
 やはり、こういう政治も変えなければいけません。
 それは決して、講座や研修はもちろん、抗議活動や意見表明レベルでさえ無力です。

 やはり、もうそろそろ気づきましょう。
 活動のあり方を変えましょう。
 ネットワーク形成と活かし方も変えましょう。

 もう一つ、<優生思想を問うネットワークの活動 - 「それで食っている」専門家対「食っていけない」素人の闘い>という項もお伝えしたい内容ですが、割愛させて頂きました。
 この表現で、どんな状況かは、なんとなく想像できるのではないでしょうか。
 前者は、その社会問題を材料として収入を得ており、後者は、厳しい基準や審査で日々の暮らしにさえ困っている。
 真の当事者と、少し距離のある非当事者との断絶事情です。
 よくある話です。

「暮らし方・生き方モデルを示す制度にNo!」:桐田史恵氏著から 

 最後に、もう一つ、以下のストーリーの桐田史恵さんの論述を。

1.暮らし方・生き方を問う現行の社会保障制度
 1)現行制度の中だって必要な保障を
 2)経済的保障と天秤にかけて奪われていくもの
2.暮らし方・生き方モデルがいかに生活や意識に影響を及ぼすか
 1)偏見に満ちた「事実婚」認定
 2)制度の前で分断される「シングルマザー」「主婦」という立場
 3)婚姻制度・「子育て」・「家族」を問い直す
 4)子供の生計費と「家計」を切り離す
3.暮らし方・生き方モデルを残したBI導入では意味がない
 1)家族単位の暮らしをイメージしたまま語られるBI
 2)望むのは「ベーシックインカム導入、支給0円」の社会
 3)現物支給についても暮らし方・生き方モデルを示されたくない
4.暮らし方・生き方モデルを示す制度はいらない


 桐田さんの論は、特定の社会保障・社会福祉を受ける上での基準に関わる問題についてと言えるでしょうか。
 生活保護制度しかり、児童扶養手当しかり、母子世帯支援制度しかり。
 共通基盤は、ジェンダー・女性そして子ども、そして家族です。
 その基準になるのが、結婚はこうあるべき、家族はこうあるべき、働くことを前提とし、その収入によって、子どもの年齢等によって支給額は変動・変更される、等々。
 いうならば、暮らし方・生き方のモデルがあって、その基準に拠って社会保障・福祉制度が存在する現実を指弾し、拒否するわけです。
 BIはそれを突き破るものでなければならないのです。
 そしてその望ましいBIを実現するためには、やはり政治を変えなければどうにもしようがないのです。
 但し、一言添えさせて頂くと、私が提案するBIは、まさに基本的な生活を維持するレベルの金額の給付であるため、食費・衣料日用雑貨費、教育・教材費、国内旅費交通費、医療費自己負担分など、特定の使途にのみ利用できるという制約を設定しています。
 これを一種の暮らし方・生き方モデルと言われないことを祈るものですが。

 これ以外の論も取り上げたかったのですが、労働問題が軸の屋嘉比ふみ子さんの論については、経営コンサルタントを仕事としてきた私としては、やや異なる視点から問題を考える立ち位置なので、取り上げませんでした。
 BIをめぐる議論では、やはり堅田香緒里さんの論を取り上げるべきと思っていますが、本書の内容はここではよいかなと思いましたので。
 しかし、なんというめぐり合わせか、数日前、思い立って手配・入手した『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか? 』の中での同氏執筆文がインパクトのあるものでしたので、明日第3回目・最終回にその一部を紹介することで替えさせて頂くことにしました。

 中途半端な紹介になってしまいましたが、次回、最後の座談会から気になった点をピックアップすることと、全体の総括、そして、堅田香緒里さんの前述書の記述の紹介で、一旦「ジェンダー論」とBIとを結びつけての記事を終わりにしたいと思います。

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本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年11月29日投稿記事 2050society.com/?p=5512 を転載したものです。
当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から上記WEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を行っていました。
そこで、同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、上記リンクから確認頂けます。

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