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ベーシック・インカムとは-1:歴史から学ぶベーシック・インカム(2020/6/2)

本稿は、WEBサイト https://2050society.com 2020年6月2日投稿記事 2050society.com/?p=1704 を転載したものです。

『ベーシック・インカム入門』『ベーシック・インカム』『AI時代の新・ベーシックインカム論』から(前編)

私のベーシック・インカム考、これまで

 昨年開設したブログサイト「世代論サイト」で始めた、世代継承視点で望ましい社会のあり方を考える作業。そのサイトを、レンタルサーバーの機能の問題で廃止し、新規に契約したサーバーで立ち上げたのが、このサイト「2050society.com」。
 2つのサイトを繋ぐ形で、メインのテーマにしてきたのが、保育や介護、年金などに関わる社会保障。
 安倍内閣が主導した、小手先の「全世代社会保障改革」への批判と望ましい改革考察を進めるうちに、自然発生的に、直感的に思いついた「ベーシック・インカム」。
 特に詳しい、専門的な知識があるわけでなく、少しずつ直感や思いつきやアイディアをメモし続けて、投稿してきたのが、以下のラインナップ。

憲法で規定された生存権と「社会保障」:全世代を対象とする社会保障システム改革-1
○○手当は○○年金!?:全世代が年金受給機会を持つ社会保障システム改革-2
所得者全員が年金保険料を!:国民年金の厚生年金統合による社会保障システム改革-3
ベーシック・インカム制の導入を!
ベーシック・インカム生活基礎年金の年間総額、216兆円
ベーシック・インカム生活基礎年金はポイント制で
ベーシック・インカム「生活基礎年金制度」続考
社会保障保険制度試論
ヘリコプターマネーではなく、ファンダメンタルマネー:全国民受給のベーシック・インカム制へ
母子家庭の貧困、子育て世帯の不安、結婚し子どもを持ちたい人たち、すべてに機能するベーシック・インカム制の議論・検討を


 そろそろ、きちんと整理し、それらしくまとめていく必要があると考えた時、2つの課題が気になってきていた。
 一つは、もっとこのサイトの記事を多くの人に目にしてもらうことが必要ということ。
 できれば、これらの問題の専門家、研究者にも届き、批評・批判なども得られるようになれば、とも。

ベーシック・インカムを知っておく必要性を感じて、ベーシック・インカム関連新書3冊入手

 もう一つは、やはり、ある程度内容に責任を持つには、ベーシックインカムそのもの、そのことについて、ある程度専門的に、ある程度深く知っておく必要があるということ。
 そうでなければ、万が一研究者・専門家と話す機会ができた時に、ある程度ロジカルに、それらしく話ができなければ、という思いも。
 そこでYahoo! Shopping で検索して、以下の3冊の新書を注文し、5月29日に入手。

1.ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える(2009年初版:山森亮氏著)
2.ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか(2015年初版:原田泰氏著)
3.AI時代の新・ベーシックインカム論(2018年初版:井上智洋氏著)


 まさに、私にとっての入門書となった、2009年初版のベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考えるから時系列的に読み始め、昨日、6月1日に、斜め読みを終えて、このメモに着手したところ、という次第です。

『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』から考える


 読み進めながらまず思い浮かんだのは、やっぱり読まなければよかった、という思いと、やっぱり読むべきだった、という思い。そして、その2つの思いの交錯。

 まず、参考までに、本書の構成・章立てを以下に転用させて頂いた。

はじめに ”ベーシック・インカム”とは
第1章 働かざる者、食うべからず - 福祉国家の理念と現実
第2章 家事労働に賃金を - 女たちのベーシック・インカム
第3章 生きていることは労働だ - 現代思想の中のベーシック・インカム
間奏 「全ての人にほんとうの自由を」 - 哲学者たちのベーシック・インカム
第4章 土地や過去の遺産は誰のものか? - 歴史のなかのベーシック・インカム
第5章 人は働かなくなるか? - 経済学のなかのベーシック・インカム
第6章 <南>・<緑>・プレカリティ - ベーシック・インカム運動の現在

※ベーシック・インカムに関するQ&A
おわりに 衣食足りて・・・・・・?


 この構成でだいたい見当がつくと思うが、本書で、グローバル視点で、べーシック・インカムについての歴史、その考え方や種々の運動について理解できる。
 正直、読むまで、まったく知らなかった、その歴史、展開された国・地域、そこでの運動の担い手・背景、加えて、哲学者・経済学者・政治家・活動家などで、著名な人・名を聞いたことがある人、名前を初めて聞いた人など。
 ベーシック・インカムの歴史に残る人々とその組織・主張内容に関する、価値満載の新書だった。
 その概要を知ったことは当然、ムダではない。
 しかし、人間、同じようなことを考えるものだな、という思いもある。
 思い上がりと言うべきかもしれないが、発想するところ、感じるところは、時代や、国・地域や、立場などが変わっても、だ。
 これまでの私のベーシックな、ある意味稚拙な考察は、本書で知らしめられたこととはほとんど無関係だ。
 ただ、人が考え、表示する用語・言葉とその体系が、海外文献も翻訳され、日本語を母国語とする社会的基盤にあることが共通であり、ある意味共有化されているという事実がある。
 それ以上でも、それ以下でもない。

グローバル社会のベーシック・インカムの歴史に対して貧弱な日本のそれ

 だが、ベーシック・インカムについて、日本では、これまで本格的に取り上げられ、議論されてこなかったのはなぜか。
 明治維新、大正を経、2つの世界大戦を経験し、その後経済成長期を経てきた日本の近代・現代史においては、その思想や活動が入り込む隙間がなかったような気も、確かにする。
 平成は、まさにある意味平らかに過ぎさり、令和に入り、コロナ禍という未曾有の不安定状態にある。
 しかし、東日本大震災や多くの自然災害に見舞われた平成などは、ベーシック・インカムがどうこうと、多少は話題のきっかけになってもよさそうな出来事・事象が多発した時代だったのだが。
 まして、一律一人10万円支給という特別定額給付金が、初めて実現したことで、ベーシック・インカムが、今後の社会保障や福祉のあり方を考える上での一つのテーマ、選択肢となりうる機会と言えるのだが、ほんの一握りのベーシックインカム論者を除けば、その気配もない。
 勝手に推察すると、日本では、弱者による活動化の文化的・風土的基盤が、極めて薄いことが、その理由の一つになるのではないか。
 いわゆる革新、リベラルを標榜する政党自体に、そうした視点や主張が欠落していることもある。
 ある意味、平和ボケしているのと、国そして国民全体が、問題先送り、問題の見て見ぬ振りのモラトリアム化しているのだ。

 と、ここまで来たが、ちょっと合間に目にした、次の課題新書『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』の前書き部分に、日本では、21世紀の初めの10年間の後半で、ベーシック・インカム議論が盛り上がった、とあった。
 その期間中に発刊された、山森氏の本書『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』も紹介されていた。
 そうか。
 この時期、私はボーッと生きていたか、仕事が忙しすぎて、社会への関心が薄くなっていか・・・。
 まあ、そういう時期があっても、現状はあまり話題にされなくなってしまっている。
 そういう文化的・風土的性向が日本らしさ、日本人らしさ、といい加減なところで手を打つことなく、自分流に取り組んでいこうと、意を新たにする機会にはなった。

過去のベーシックインカム論の良いとこ取りは、矛盾を招く

 思うに、個々の要因からのベーシック・インカム要求は、それ自体波及・関係する範囲を限定しているゆえ、マイノリティ対マジョリティで、勝ち目はない。
 種々多様な組織・グループ、団体・勢力が、ベーシック・インカムを要求するいう一点では共通・合意していても、それぞれが個々に異なる要因・背景をもって寄り集まる、あるいは言い換えて、大同団結しても、大抵は、どこかで綻びや矛盾が露呈し、要求や闘争は破綻する。
 残念ながら、人の常、世の常だ。

要求者視点ではなく、提案者視点でのベーシックインカム

 本書でベーシック・インカム論と実現状況の盛衰などを斜め読みすると、女性差別・人種差別・障害者差別がもたらす、貧困・格差などの社会問題の闘争・要求に発する例が多かったことがわかる。
 それらが、社会活動を引き起こしはするが、多くは、為政者や反対者の反対や抑圧に会い、衰退化や変質化する。
 もちろん、持続もするし、現実、その例もある。
 だが、原因や背景、内容には理解できるものが多いが、実現はほぼ困難、と思わされるものの方が多い。
 どうも、権利としてベーシック・インカムを要求し、闘争化したり、政治問題化するのは、有効性・持続性を考えると、うまくいかないと思う。
 それらの裏付けとして、哲学者や経済学者のそれぞれの視点からの、さまざまな主張や言説もあるが、有効に政治化するのは、古今東西、多くは苦手である。
 面白いのは、政治の場において、いくつかの国や地域では、右の立場からも左の立場からも、ベーシック・インカムを主張・提案する動きがあったことだ。
 であるならば、とっくにどこかの国で採用され、成功事例や追随する動きも報告されて良いはずだが、それもない。

 ならば、どうするか。
 どう展開するのが望ましいか。
 それを考えるのが、当サイトの役割と認識・確認する機会とヒントを与えてくれたのが本書。
 これが、一言でいうとすれば、ここまでの結論。
 そして、私は「要求者」視点ではなく、「提案者」の視点で取り組んでいること、今後も取り組むことを確認することになった。

ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』をお薦めします。

 本書でのベーシック・インカム論の軸となるのが「労働」に関する見方と労働所得との関わりでベーシック・インカムをどう位置付けるか。
 家事労働や保育・介護労働を担うこととその労働価値。
 雇用(就労)所得と自営業者の所得。
 働かなくても得る所得。
 それが行き進むと、働けない、働かない場合の所得。
 それらのさまざまな所得を包括・包摂しての、無条件で給付する「基本所得」としてのベーシック・インカム。
 こうした軸は必然で、社会保障理論としても理解・納得できるところだが、それとは別の視点も不可欠なのは、同書でも及んでいるところだ。
 例えば、「保険・保護モデルの社会保障の破綻、もしくは限界」としての論述は、労働視点では収まらないことを示してる。
 その他、付箋を貼った箇所も多く、今後のベーシック・インカム提起のなかで、折を見て紹介していきたいと考えている。
 ただ、いずれにしても、とても良い本なので、興味関心をお持ちになりましたら、是非ご一読を。
⇒『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える

現時点での私のベーシックインカム考、追加新提案

 本来ならば、同書内の主張・記述において、私が同じくすること、異なる意見などを取り上げるべきだが、これも、残りの2冊を読み終えた時点で、取り組むことにしたい。
 これまでの私の考察の概要は、もしお時間があれば、冒頭に列記しリンクを貼った投稿でさらっと斜め読みして頂ければと思います。
 代わって、今回の終わりには、わが国にベーシック・インカム、生活基礎年金制度を導入する場合の、運用方法に関する思い付きを、メモしておきたいと思います。

・現状のものとは異なる個人番号(マイナンバー)カードを新たに作り、社会保障保険カード機能を組み入れる。
・社会保障保険カード機能に、ベーシック・インカム=生活基礎年金・児童基礎年金制度、及び健康保険・雇用保険・厚生年金保険・労災保険などの機能も包含する。
・ベーシック・インカムは、現金及び電子マネーまたは暗号通貨(例:JLPコイン・Japan Life Pension Coin)で支給する。
・日銀に全国民のベーシック・インカム(生活基礎年金)口座を開設し、現金の引き出しは、市中金融機関からも可能とする。
・電子マネーまたは暗号通貨の利用は、指定の医療機関等で決済時に可能とする。
・上記口座管理のため、及び各種社会保障保険や自治体など申請手続きのために、電子認証機能付き電子端末を、一人1台(または世帯1台)支給する。


 この方法によれば、全国民が個人番号(マイナンバー)カードを洩れなく持つことになる。
 産まれて、出生届を提出すると、自動的にカードが発行され、口座も開設することになるわけだ。
 そして、種々の社会保障サービスを受けるたびに、このカードを必ず利用ないし確認することになるわけ。

 次回は『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』を参考にしての考察に進みます。

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当ベーシックインカム、ベーシック・ペンション専用サイト http://basicpension.jp は2021年1月1日に開設しました。
しかし、2020年から、冒頭のWEBサイトで、ベーシックインカムに関する考察と記事投稿を開始。
同年中のベーシックインカム及び同年12月から用い始めたベーシック・ペンションに関するすべての記事を、当サイトに、実際の投稿日扱いで、2023年3月から転載作業を開始。
数日間かけて、不要部分の削除を含め一部修正を加えて、転載と公開を行うこととしました。
なお、現記事中には相当数の画像を挿入していますが、当転載記事では、必要な資料画像のみそのまま活用し、他は削除しています。
原記事は、冒頭のリンクから確認頂けます。

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