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2023年blog&考察

平均年収443万円に含まれた多様な格差要因:全世代共通に広がるベーシック・ペンション早期導入ニーズ-1

1月課題新書。すべてがベーシック・ペンションに繋がるこの3冊:『年収443万円』『世界インフレと戦争』『未来の年表 業界大変化』(2023/1/4)

今年初めに、当サイトで上記記事で紹介した3冊のうち、まず
中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書) 
を読み終え、同書を参考に新しいシリーズを始めることを、次の記事に記した。
『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション:シリーズ開始にあたって(2023/1/9)

次に読み始めたのが、
小林美希氏著『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(2022/11/20刊・講談社現代新書)
第1部の一部を読んだ後、跳んで「第3部 この30年、日本社会に何が起きたのか?」を先に読んだ。
今回、先のシリーズに入る前に、予定を変更して、同書の主テーマから考えたことを投稿することにしました。
以下、少々脈絡のまとまりを欠きますが、寄り道しながら取り組んでみます。

(参考):『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』目次

はじめに
第1部 平均年収でもつらいよ
 ・毎月10万円の赤字、何もできない「中流以下」を生きる
   神奈川県・48歳・会社員・年収520万円
 ・「私は下のほうで生きている」コンビニは行かず、クーラーもつけない生活
   東京都・35歳・自治体職員・年収348万円(世帯年収1000万円)
 ・不妊治療に対する経済的不安……「リーマン氷河期世代」の憂鬱
   北陸地方・33歳・電車運転士・年収450万円(世帯収入900万円)
 ・教育費がとにかく心配……昼食は500円以内、時給で働く正社員
   東京都・44歳・会社員・年収260万円(世帯年収1000万円)
 ・3人の子育てをしながら月13回夜勤をこなす看護師の激務
   北陸地方・42歳・看護師・年収670万円(世帯年収1300万円)
 ・で手取り65万円、「ウーバーイーツ」の副業でちょっとした贅沢を実現
   東京都・41歳・倉庫管理・年収660万円+副業(世帯年収約1500万円)
第2部 平均年収以下はもっとつらいよ
 ・月収9万円シングルマザー、永遠のような絶望を経験した先の「夢」
   東海地方・41歳・秘書・年収120万円
 ・子どもに知的障がい、借金地獄・・・マクドナルドにも行けないヘルパーの苦境
   茨城県・38歳・介護ヘルパー・年収48万円(世帯年収400万円)
 ・コロナ失業・・・1個80円のたまねぎは買わない、子どもの習い事が悩みの種
   北海道・29歳・清掃員・年収180万円(世帯年収540万円)
 ・共働きでも収支トントン、賃金と仕事量が見合わない保育士
   東京都・40歳・保育士・年収300万円(世帯年収700万円)
 ・何もかも疲れた・・・認知症の母との地獄のような日常を生きる非常勤講師
  埼玉県・56歳・大学の非常勤講師・年収200万円
第3部 この30年、日本社会に何が起きたのか?
  私の原体験
 「就職氷河期」に入って30年
 「中間層が崩壊すれば、日本は沈没する」丹羽宇一郎の言葉
  私たちは今、どんな社会に生きているのか
 「中流」という意識の低下
  こうして「格差」は生まれた
  派遣は麻薬と同じ
  働く人は何を求めているのか?
  諦めムード、そして安楽死を望む人も・・・
 「非正規」という言葉はなくなったのか
  too late ー 日本社会はすでに崩壊している
  結婚や出産への大きな影響
  世界から完全に取り残された日本
  老後破綻と隣合わせの財政破綻
  解決策はないのか
  UIJターン就職に注力する富山県
  高付加価値のものづくりへ
  安すぎるこの国の絶望的な生活

就職氷河期の定義と対象者数

内閣官房に設置された「就職氷河期世代支援室」による定義は、次のとおり。
・概ね1993年卒から2004年卒で、2019年現在、大卒で概ね37~48歳、高卒で同33~44歳
・同世代の中心層35~44歳の非正規の職員・従業員は371万人をその支援対象に

しかし45~49歳の非正規社員数は226万人で、氷河期全体の非正規社員数は約600万人を数えるというのが小林氏が重視する点です。

(参考)
⇒ 1)就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プログラム)の概要
⇒ 2)経済財政運営と改革の基本方針2019 ~「令和」 新時代:「Society 5.0」への挑戦~ (2019年6月21日閣議決定)

下図は、2)より抜粋したものです。


年齢層別非正規雇用数の2002年・2019年構成比率推移

もう一つ、本書の中から以下を抽出しました。
ここ20年足らずでの非正規雇用者数の構成比の変化、当然その増加のデータです。
・25~34歳:2002年20.5% ⇒ 2019年22.5%
・35~44歳: 同 24.7% ⇒  同 27.1%
・45~54歳: 同 27.8% ⇒  同 31.0%
※ 働き盛りの4人に1人、あるいは3人に1人が非正規。

平均年収443万円における年収分布の実態

「民間給与実態統計調査」による調査から、本書では以下を抽出。
<1位>:300万円超400万円以下 = 17.4%
<3位>:200万円超300万円以下 = 14.8%
※ 3人に1人が200万~400万円 (32.2%)

(参照)
⇒ 国税庁:民間給与実態統計調査;給与階級別の総括表(PDF)

男性・女性、正規・非正規間格差の拡大

本書からとは別に、国税庁の同調査公表資料から、関係部分を以下に抽出しました。
1)給与所得者総数 5,270万人(対前年比0.5%増、25万人増)
 ・男性3,061万人(同0.5%減、16万人減)
 ・女性2,209万人(同1.9%増、41万人増)
2)平均給与 443万円(同2.4%増、102千円増)
 ・男性545万円(同2.5%増、131千円増)
 ・女性302万円(同3.2%増、94千円増)
3)正規・非正規社員職員別平均給与
 ・正規平均給与 508万円(同2.6%増、127千円増)
 ・非正規 同  198万円(同12.1%増、214千円増)
4)給与階級別分布(最も多い層)
 ・男性:年間給与額400万円超500万円以下 537万人(構成比17.5%)
 ・女性:100万円超200万円以下 497万人(同22.5%)

(参考)
⇒ 令和3年分 民間給与実態統計調査:概要

就職氷河期現役世代の生活困難・不安対策が欠落した現状

こうした実態を背景とした生活不安、生活苦の状況を、同書は、<第1部 平均年収でもつらいよ>、<第2部 平均年収以下はもっとつらいよ>と2つに構成し、著者の方針であり持ち味である直接インタビューをもとに、当事者の一人称によるルポとして、上記の目次にあるテーマで報告しています。

現在、妻74歳、夫3月で73歳という団塊世代である私たち夫婦ですが、日々の生活は、双方の年金だけで生活しており、介護保険料等を控除後の合計月額実質所得は22万円に満たない額。
持ち家ゆえ家賃負担がない分恵まれていますが、それでも節約を心がけ実践しないと厳しいことを実感する毎日です。
それ故に、本書で紹介されている現役世代の不安・苦労は十分理解できるものです。

正規・非正規格差と男女格差がもたらす生活困難・不安対策も欠落

本書は、『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』と年収に着眼しての多くの人々が生活不安・困難を抱える現状を訴え、政治的な対策の必要性を強く主張するものです。
しかし、平均年収をめぐる実態は、上述のように複数の構造的局面での問題を含むものです。
就職氷河期という年代世代、正規・非正規という雇用システム、男性・女性というジェンダー問題、それに今回は触れませんでしたが、大都市・地方圏格差問題などです。

ベーシックペンション導入の優先順化への迷い

当サイト提案のベーシックペンション生活基礎年金では、実現には相当の期間を要するとして、また財源問題への理解と合意形成にも同様であるため、優先順位をつけて、児童基礎年金、高齢者基礎年金の順に導入することを併せて提案。
しかし、今回の本書のテーマやその問題の背景等を考えると、現役世代を構成する正規・非正規雇用間格差、就職氷河期世代という世代間問題、給与労働者数が減少する男性に対して増加する女性の低所得問題など、多様な生活困難・不安にある人々のためにも、ベーシックペンション導入がより早期に行われることが望ましいと考えさせられた次第です。

次回は、同様の視点で、今日の日経1面掲載の以下の記事
生涯子供なし、日本突出 50歳女性の27%  「結婚困難」が増加 :日本経済新聞 (nikkei.com)
を取り上げ、考えてみたいと思います。

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

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