なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ-1
前々回の記事
◆ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/18)
で、ベーシック・ペンションとは何か、定義と主な特徴を、一般的に言われるベーシック・ペンションと一部比較しつつ述べました。
前回では、そのベーシック・ペンションをより深く、正しく理解するためのシリーズ「ベーシック・ペンション10のなぜ?」を始めるとして、その「10のなぜ」がどういうモノ、コトかを以下で整理して提示しました。
◆ 日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金「10のなぜ?」を始めます(2021/1/19)
べーシック・ペンション支給の目的
「なぜ?」シリーズ、第1回目の今回は、当然、最初に挙げた「なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか」についてです。
言い換えると、まさに「ベーシック・ペンション支給の目的」についてです。
ひとことで言うと、
「日本国憲法<第三章 国民の権利及び義務>に規定する条文を、国が国民に対して実行するため」
です。
では、そこでどのように規定しているのか。
実際に、先ず直接関係する条文を見ていきましょう。
基本的人権としてのベーシック・ペンションの支給を受ける権利
基本的人権とはなにか?
第11条ではこう定めています。
〔基本的人権〕
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
この章の初めに、このように、憲法が基本的人権を永久の権利として、国民に与えることを宣言しています。
国は憲法により成り立っているのであり、ここで国がその基本的人権を守る必要があることを宣言しているとも言えるわけです。
そしてこの人権について、次の条文にこうあります。
〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
この「基本的人権」を守るためには、国民それぞれが努力し続けることが必要であることをここで確認しておきましょう。
「幸福追求権」に応えるためのベーシック・ペンション
この第12条に付け加える形で、第13条に、基本的人権の位置付け、国民との関係について次のように規定しています。
〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
いわゆる「幸福追求権」と言われる規定ですが、生命、自由と合わせて規定されていることが重要です。
そして、その権利は、立法や国政によって尊重され、生命が守られ、自由が保障されていることが前提・条件になります。
生命と自由が守られるためには、生活をしていく上で食料品など生活基礎物品などを得るための所得や所得を得るための労働など経済的要素が密接に関係します。
その要素を通貨によって支給し、確かにするのがベーシック・ペンションです。
そのため、「幸福追求権」は、第25条に定める「生存権」が保障されていることが前提となります。
最低限度の生活を営む「生存権」のベーシック・ペンション
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
この第25条が、いわゆる「生存権」と言われている規定です。
これは、給付額設定の根拠の一つともなっている、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を意味し、これを保障するのがベーシック・ペンションになります。
国の社会福祉・社会保障、向上・増進の努力義務の実行結果としてのベーシック・ペンション
もう一つ重要なのは、2項に、国が、すべての生活部面において「社会福祉、社会保障及び公衆衛生」の向上・増進のための努力義務があることを規定していることです。
1項の「生存権」を実際に行使し、享受・実現するために、社会保障・社会福祉・公衆衛生の維持・向上・増進を行う。
そう理解することができます。
現在、さまざまな社会福祉・社会保障制度がありますが、それらが、十分にこの第25条の1項と2項に定める要件を満たしているとは言えません。
むしろ貧困や格差、不平等・不公正・不公平を拡大させる部面もあります。
それらの問題の改善・向上・増進に取り組む義務を国がもち、その努力の結果として、すべての国民が公平に享受できるベーシック・ペンションを実現するのです。
すなわち、広義の社会保障制度の中に、ベーシック・ペンションが位置付けられると言えるのです。
国がそこで努力すべきこととは、
・ベーシック・ペンションを
・すべての国民が等しく持つ、憲法に定められた、基本的人権、生活権、幸福追求権を具現化するために
・最低限の生活権を保障する社会保障制度の軸として、他に必要とされる諸制度を不断の努力により体系化して整備・確立することと併せて
・生涯にわたって、そして次の世代も、平等に、無条件に受け取ることができるように
・立法府国会で法律として成立・施行し、行政により執行・運営管理させる。
ことです。
憲法の規定する当然の権利でありながら、これまでは努力が足りず、熱意も足りず、法律にできなかった制度としてのベーシック・ペンションを、これから議論検討し、国政の場に持ち込み、実現する段階に歩みを進めようというわけです。
あるいは、既存政党にその役割・責任を果たしてもらおうということ。
もちろん内閣がその気になれば、最短で実現できますが、現在の自民党与党政権ではまったく期待できないことは明々白々です。
ここまでが、ベーシック・ペンションを支給する法的根拠【日本国憲法準拠】を示しており、同時にベーシック・ペンションの目的を意味することになります。
社会保障制度とベーシック・ペンションの位置付け
基本的人権、社会保障、生活権としての生活保障。
この概念を、図で表現してみました。
なお、第25条にある<社会福祉>は、ここでは、(広義の)<社会保障>に含むこととさせて頂いています。
では、権利の対象としたべーシック・ペンションの具体的な内容について、次回は、今回の根拠とした日本国憲法<第三章 国民の権利及び義務>に規定する他の関連する条文と一部結びつけて、2つ目の「なぜ?」
「なぜすべての日本人個人に、世代に応じて決めた額を平等に、無条件に支給するのか」【日本国憲法準拠】【個人限定】【世代区分規定】
について考えます。
【ベーシック・ペンションを理解するための論考リスト】
◆ 日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金「10のなぜ?」を始めます(2021/1/19)
◆ なぜ国がベーシック・ペンションを支給するのか?憲法の基本的人権を保障・実現するため:ベーシック・ペンション10のなぜ?-1(2021/1/20)
◆ なぜすべての個人に、平等に、無条件にベーシック・ペンションを支給するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-2(2021/1/21)
◆ なぜ日本銀行が、デジタル通貨でベーシック・ペンションを発行・支給・管理するのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-3(2021/1/22)
◆ 諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
◆ なぜ循環し、回収消却され、再生し、世代を継承していくベーシック・ペンションなのか:ベーシック・ペンション10のなぜ?-6~10(2021/1/24)
◆ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)
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