1. HOME
  2. 2020・21年考察
  3. 宮内義彦氏の話を耳をかっぽじって聞け、竹中平蔵:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-2
2020・21年考察

宮内義彦氏の話を耳をかっぽじって聞け、竹中平蔵:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-2

前回、マネーポストWEBに昨年10月12日に掲載された
ベーシックインカム導入で50代会社員が大損か 月8万円収入減も」と題した記事で取り上げられた、竹中平蔵の年金制度等全廃に拠る月額7万円ベーシックインカム支給の暴論。
以下の記事で批判しました。

竹中平蔵の暴論はシカトすべき!:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-1(2021/1/14)

そこでは、まさにその時点で話題になっていた竹中説の額面についての批評しかしていませんが、もうちょっと考えるだけで、とんでもない矛盾と問題点が派生して存在することが分かります。
その内容については、いずれ、当サイトのカテゴリー<BI THEORY>の中で細かく触れたいと考えています。

今回は、一部その竹中説を批判することとセットで、日本もベーシックインカムを導入すべきと提案した、著名な財界人宮内義彦氏へのインタビュー内容を、同じくマネーポストWEBの2021年1月12日公開記事から紹介します。
なお同記事は、やはり<週刊ポスト2020年1月15・22日号>掲載記事でもあります。

その記事は、
宮内義彦氏の菅政権への提言 「BI検討を」「法人税下げる必要ない」
というタイトルのものです。
宮内氏は、オリックスグループ経営者時代から政財界においても一目置かれ、政府の規制改革関連会議で議長役を務めるなど、幅広く活躍・活動。
新聞などでも頻繁に名前が出てきたのを覚えています。
菅首相とは、その当時から接点があり、首相就任以後の同時の政治をどう評価するかということでのインタビューでした。
インタビュー内容は、上記リンクからお読み頂ければと思いますが、以下要点をそこから紹介させて頂きます。


コロナ禍による「特別定額給付金」から「ベーシックインカム」検討へ

宮内氏は、昨年支給された国民への一律10万円支給の「特別定額給付金」を評価した上でこう述べています。

 
 「貯金に回っただけ」との批判もあるが、もしそうだとすれば「一度しか
 もらえない」と考えてしまうから。
 来月も支給されるとなればもっと消費に回る。
 日本は今後、需要を上げていくためにも、毎月、政府が全国民に無条件で
 一定額を支給するベーシックインカムの制度を取り入れてみるべきだと思
 います。

文面だけを見ますと、ベーシックインカムは、経済対策として有効という印象を強く受けますが、企業経営者・財界の立場からの発言としては、理解できるところです。
もちろん、ベーシックインカムの導入は、経済的側面からだけでなく、非常に幅広くかつ重要な役割・目的をもって検討されるべきものです。
それらの内容も、今後当サイトで提起・議論していきます。

竹中暴論を一言で批判

そして、宮内氏は、
「BIを導入すれば年金や健康保険制度の廃止に」という竹中暴論に対するインタビューアーの質問に対して、多くの言葉を要せず、端的にこう応えています。


 社会保障をすべてBIに置き換えるのは乱暴な話。
 ひとつひとつ丁寧に検証していけば現状の制度で必要なものは残していけ
 るはず。
 (竹中氏が)BIを提言して批判も浴びたが、こういった議論は「オール・オ
 ア・ナッシング」では駄目。
 海外では試験的にBIが導入され、一定の効果をあげている国もある。
 十分に検討に値するテーマです。


まさに竹中説は「オール・オア・ナッシング」の極論。
これが「ネオリベラル」新自由主義の考え方というのは、あまりにも短絡的過ぎます。
自由過ぎて、思考がぶっ飛んでしまっている!
こういう人間に限って、都合のいい場面・時には平気で「多様性」の大切さを引き合いに出すことでしょう。
彼が会長を務める人材派遣業も「多様な働き方」を認め、支援するということになるのでしょうね。
実は、単なる経営者サイドの理由からに過ぎないはずの側面こそが「オール・オア・ナッシング」なのですが。

宮内氏は、竹中を思いやって丁寧に「提案」と言っていますが、実際には「困ったもんだ」と苦々しく思っているでしょうね。
これが良識というものです。

菅氏評価へ

そして首相の性格やその政策について、こう語っています。

 
 菅さんを一言で評すると「各論に強い勉強家」。
 安倍前首相のマクロ観と比べても際立っている。
 十分な知識と突破力があるので、政策を具体的に実行する能力は高く、規制
 改革も着実に実現してくれるのではないかと期待している。
 

とまあ、優しい言葉をかけていますが、実際にそうですね。
総合的・俯瞰的という表現を漠然と使ったことが、その証のようなもの。
だからといって安倍前首相のマクロ観が良かったわけでは決してなく、結局何も具体的な功績は残さなかったのだから、マクロ、イコール、ナッシングということだったのでスガ。
さて各論のスガさんには、やっぱり、10年、20年スパンでの国と社会システム、社会経済システムの改革の発想など期待できないでしょうね。
唯一、脱炭素、カーボンゼロ政策だけは、私は期待していますが。

「Go Toキャンペーン」批判と法人税下げ不要主張

当サイトの目的からは外れますが、宮内氏は、他にこう語っています。

 
  コロナ禍における経済政策、「Go Toキャンペーン」は心理的に感染拡大
 を助長しかねないだけではなく、景気浮揚策としては不十分。
 「Go Toイート」を含め、「支払いの何割かを国が負担する代わりに国民に
 積極的な消費活動をしてほしい」という、「消費者頼み」の発想で、危機に
 瀕している事業者にとっては焼け石に水であり、発想も飲食・観光業界とい
 う(特定の)「供給側」の視点に立ちすぎ。
 自分たちの仕事がなくなるかもしれないというときに、旅行や食事が割引き
 になると言っても需要喚起の効果は限定的で、キャンペーンが終了してしま
 えば、消費者は割高感を覚えて消費しなくなる。

 今まさに国が行なうべきは、人の移動を最大限制限する代わりに広範な補償
 を行ない、企業と社員の雇用と所得を守ること。
 莫大な費用が必要にはなるが、そこまでしなければこの難局は乗り越えられ

 ない。

そして、ここが重要な点ですが、こう断言しています。

 
 政府は平成30年間の「供給側」の視点に立った経済政策の全面的見直しを
 行なうべきで、需要を上げていくことしか道は残されていない。

そして、それと連動する政策として、昨年の消費増税を批判すると共に、
・マイナス金利の見直し
・法人税の引き下げの不要

を主張します。

この需要喚起という面からは、先述した同氏のベーシックインカム導入提案もその効果を確実に産み出すものというわけです。
そして最後にこう結んでいます。


  コロナを奇貨として、日本はこれから大きく変わっていくべきであり、
 菅さんにはそれを先導し日本を活力ある社会にしていただきたい。

果たしてどう変わっていくべきか、マクロとミクロ両面からの10年、20年スパンでの改革政策を打ち出し、首相としてのリーダーシップを発揮できるでしょうか。
それとも結局、今年の衆議院選前後で、もうお先に失礼、となってしまうでしょうか。
ベーシックインカムを本気で、財源問題をしっかり解決できる方式で導入することを政策とすれば、間違いなく再選可能となり、逆転して名宰相の名を勝ちとることができるようになるでしょうが。
期待できませんね。

さて、宮内氏の提案を真剣に聞いてほしいのは、竹中ではなく、すべての国会議員です。
宮内さんが言うのだから、これまでのホリエモンや山本たろう、古くは緑の党の主張とは視点が違うはず。
実際に実現可能かどうか、多面的に検討してみる価値がありそうだ。
そう感じる国会議員が存在し、行動に移すことを期待したいと思います。

また、今回の宮内氏のインタビューでは、コロナと経済政策とベーシックインカムとがつながる構図での話になってしまいがちです。
しかし、基本的には、その発言の中にあった「自分たちの仕事がなくなるかもしれないというとき」という視点でベーシックインカムを考えることも大きなテーマとすべきことを確認しておきましょう。

当サイトでは、これならば、と受け止められる、理解されるベーシックインカム案を多面的に、構造的に追究していきます。



再度、竹中平蔵の暴論記事についてはこちらから
竹中平蔵の暴論はシカトすべき!:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-1(2021/1/14)

(参考):<週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う>シリーズ
 竹中平蔵の暴論はシカトすべき!:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-1(2021/1/14)
宮内義彦氏の話を耳をかっぽじって聞け、竹中平蔵:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-2(2021/1/15)
日本ベーシックインカム学会の竹中暴論及び諸説へのスタンス:週刊ポストの小学館マネーポストWEB、ベーシックインカム記事を追う-3(2021/1/16)

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。