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2020・21年考察

無理なく、漸進的・段階的に導入するベーシックインカム:ベーシックインカム現実的実現法考察-3

真のベーシックインカム実現を政策とする政党ゼロから取り組むべき現状と今後(2021/7/16)
という基本認識から始めた<ベーシックインカム現実的実現法考察>シリーズ。

 まず早期に実現可能と思われる給付額として、全員一律毎月7万円を設定して、以下の2つの記事を投稿しました。
全員月額7万円で始める:ベーシックインカム現実的実現法考察-1(2021/7/17)
月額7万円ベーシックインカムの条件と期待効果:ベーシックインカム現実的実現法考察-2(2021/7/18)

 しかし、財源上の制約問題やインフレリスク対策などを考えると、初めから全員一律にその額を支給するのではなく、より緩やかに、時間をかけて、一定の条件に基づいて導入する方法・方式も検討の余地があるかと思います。
 そこで今回は、幾つかの方法・方式を取り上げてみることにします。


1.支給と給付額は全員一律だが、少額から始め、少しずつ金額を増やしていくベーシックインカム


 これは、財政規律主義に基づくベーシックインカム導入を前提とする場合、その財源への負荷を緩やかにしてムリのない程度に漸次増額していくやり方。
 この方式では、インフレ発生リスク対策にもなり、金額を少しずつ増やすことで、ベーシックインカムによる経済への影響を検証しながら取り組むことができるメリットもあります。

 例えば、井上智洋氏は、自著『AI時代の新・ベーシックインカム論』(2018/4/30刊)において、一人毎月1万円から開始し、固定ベーシックインカムの上限設定額7万円になるまで、7年間かけて毎月1万円ずつ増額する方法を提案しています。
⇒  井上智洋氏提案ベーシックインカムは、所得再分配による固定BIとMMTによる変動BIの2階建て(2021/2/24)
 同氏のベーシックインカム論では、この固定BIとは別に、変動ベーシックインカムを加えた2階建ての方式を提案しています。
 増額していくプロセスで、充当する財源の手立てが可能になりますし、インフレ等経済へ影響を確認・調整できるメリットが確かにありますが、同氏の提案では、BI以外の種々の社会保障制度などとの関連での議論・考察・提案がなされておらず、経済対策に偏重していることを私は問題視しています。
 そうした諸課題への取り組み、関連諸制度・法制の改定・改正の必要性と並行しての取り組みが合意形成されれば、現実的な選択肢としてもよいと考えています。


2.支給対象者に優先順位をつけて、段階的に支給者を増やしていくベーシックインカム


 当サイトで提案するベーシック・ペンションでは、さまざまな理由による経済的困窮から、安心して生活を送ることができない多くの人々を支援することを最も重要な目的・目標としています。
 しかし、財政上の理由から、すべての国民を支給対象として一気にベーシックインカムを支給することが困難な場合、給付の効果度が高いと思われる状況・条件にある人々から順に支給を始める方法も選択肢とあると考えます。
 これは、特定の対象者のみに支給を限定する限定ベーシックインカムではなく、最終的には、全員を対象とする完全ベーシックインカムを実現するものです。

 その優先順の例としては、以下が考えられます。
1)少子化対策、婚姻支援策として、新たに産まれた子どもに支給するBI
2)少子化対策、母子・父子世帯困窮支援策として、一定の年齢以下の子どもに支給するBI
3)エセンシャルワークに該当する特定職業に就く人々の低賃金支援のために支給するBI

1)2)は特定する条件がはっきりしていますが、3)を含め、考えうる他の場合は、支給対象者を特定するのが、途中変わるケースがあるなど、難しい面があります。
 そう考えると、既存の児童手当(児童扶養手当)を増額してベーシックインカムに切り替えることで、他に先行して導入し、出生数の増加、出生率の向上に期待する方法が、最も現実的であり、これに限られるのかな、と考えます。
 



3.地域通貨や電子マネーなど早期発行可能な代替通貨を先行導入するベーシックインカム

 
 ベーシック・ペンションは、自給自足経済政策を進める機能としても考えられています。
 これを地域経済の活性化や安定化に直結させる目的で、地域通貨や地域限定利用可能電子マネーで支給する方式も検討される価値があると思います。
 それぞれの地方財政財源で賄うとするか、財源は国費(公費)として、発行方法は各地方自治体に任せるとするか選択肢はあります。
 国費からの支給に加え、地方自治体独自に、自治体財政支出で金額を上乗せすることも可能としても良いでしょう。
 間違いなく地域経済で還流する通貨であり、金額も含め、大いに検討の余地があると思います。



 ちょっと思いついたものをメモ書きしました。
 また、別のアイディアなど出てきましたら、投稿したいと思います。
 皆さんからのご意見・アイディアもお寄せください。

 なお、当サイトとしては、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション実現に向けてのそのプロセスとして、今回及び前回、前々回の考察を位置づけ、導入することも理想型の一つと考えています。
 以下の参考記事から、ベーシック・ペンションについて確認頂ければと思います。

ベーシック・ペンションについて知っておきたい基礎知識としての5つの記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

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