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2020・21年考察

ベーシック・ペンションによる雇用保険制度改革・労働政策改革:安心と希望を持って働くことができる就労保険制度と労働法制を


1月30日投稿記事
ベーシック・ペンション導入に伴う社会保障・社会福祉制度等関連法改定課題体系
を受けて、ベーシック・ペンション導入に伴って改正すべき社会保障・社会福祉関連制度等を取り上げ、その内容や課題などを提起・提案する作業を進めています。

ベーシック・ペンションによる貧困問題改善と生活保護制度廃止(2021/2/6)
ベーシック・ペンションによる児童手当・児童扶養手当廃止と発生余剰財源の保育・教育分野への投入(2021/2/7)
ベーシック・ペンションによる年金制度改革:国民年金廃止と厚生年金保険の賦課方式から積立方式への改正(2021/2/8)
ベーシック・ペンション導入で、2健保、後期高齢者医療、介護の4保険を統合して「健康介護保険制度」に
と、生活保護制度、児童手当、年金制度、そして健康保険・介護保険がどうなるか、どうするかを提案してきました。

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第5回目の今回は、雇用保険と、雇用保険も含む包括的な労働保険と労働関連法等をどうするかを考えたいと思います。


一般的なBI論では、BI導入で雇用保険をなくすことができるかのような論調も見られます。
しかし、私は、反対にベーシック・ペンションの導入を好機として、労働政策、労働法、労働保険制度全体の見直しと再構築に結びつけるべきと考えています。

雇用保険はもちろんのこと、労働関係の制度や法律は、かなりボリュームがあり、かつ細かい規定ばかりなので、ここで詳細かつ十分な議論・検討・提案はできません。

初めに、ざっと雇用保険について大雑把に把握しておきます。

雇用保険とは


労働者の生活や雇用を安定させるために国が運営している労働保険で、以下の主な目的・機能を持っています。

1.失業手当等の給付:失業した場合1日最大8,370円支給
2.育児・介護休業手当の給付:育休取得時、国から給与の67%支給
3.雇用保険2事業:雇用調整助成金支給、社会人再教育のための能力開発

まさに、ベーシック・ペンションが担う目的・役割の一つを担っている制度の一つであり、その対象は、雇用され賃金を得ている働く人です。
従業員を1人でも雇う企業は原則加入する必要がありますが、<暫定任意適用事業>といって、雇用保険を強制的には適用しない事業も例外的にあります。
常時雇用する労働者が5人未満の場合、個人経営の場合、農林・畜産・養蚕・水産業は、除かれます。
この例外になっている人が、人為的・悪意的に多いのです。

雇用保険の財源


雇用保険の運営に用いられる資金は、被保険者と事業主が負担する保険料を積み立てたものに国が負担拠出する財源を合わせたものです。
雇用保険料率は賃金総額に対する割合で決まっており、労使折半で0.6%を積み立てています。
前述の雇用調整助成金には、事業主のみが0.3%が負担し、この雇用2事業に充てられる保険料収入は年間6千億円程度です。


コロナ禍で発生した雇用保険、労働政策上の諸問題


そして、長引くコロナ禍は、以下のような大きな問題を引き起こしています。
1)(隠れ失業者である)休業者数の大幅増加、解雇・雇い止めの増加
2)失業手当と雇用調整助成金の膨大な支出による雇用保険財源の払底
3)休業手当と雇用調整助成金との公平性の欠如

4)非正規雇用者の失業手当、雇用手調整助成金未払い問題

そこで、こうした課題も頭に入れながら、ベーシック・ペンション導入によってどういう検討課題が生じ、改正や新たな政策・制度の検討に結びつけることが望ましいか、イメージで繋いでみることにします。


ベーシック・ペンションで失業手当、育児・介護休業給付金支給の雇用保険は必要なくなるか?

ベーシック・ペンション(以下BP)が失業手当の一部を先取りして補完する機能を持つ。
確かにそういう性質をBPは持っています。
BPにより、従来の失業給付額を抑制することが可能になります。
例えば、従来の給付算定額からベーシック・ペンション(月額15万円)を差し引いた額だけ給付する方式です。
これは、雇用保険を廃止するのではなく、残す発想です。
従来の生活レベルを落とさないようにすることが目的です。
但し、当然、その計算方法や支給日数・期間など、現状制度を参考にして新たに設定する必要があります。

雇用保険の負担を削減できるか


そうすると、個人と雇用主が負担している雇用保険料率を下げるかどうか。
BPで積立分からの支出が減るので、保険料を引き下げても良さそうですが、コロナのようなことが今後もありえます。
コロナ禍で発生した失業手当や雇用継続給付金の膨大な支出増で、その資金をプールしておくことの重要性を経験しています。
また、一層雇用保険による給付を、方法を変えて厚くすることを検討しても良いでしょう。
そのため、現状の雇用保険料は据え置きとしては、と思います。
なお、厚生年金保険の方は、一部削減することを提案しています。
(参考)⇒ ベーシック・ペンションによる年金制度改革:国民年金廃止と厚生年金保険の賦課方式から積立方式への改正(2021/2/8) 

就労保険制度への転換を


そしてまた、コロナ禍で、アルバイト・パート等非正規雇用者が、失業手当や雇用調整助成金などを受けられない問題が発生しました。
事業持続化給付金をもってしても事業継続が困難になった多くの個人零細事業者も多数います。
そこで、被用者も雇用主も、働いて給与を得るすべての人が雇用保険制度に加入する、就労者皆保険制度、仮称「就労保険」への改正・転換を提案したいと思います。
もちろん、ベーシック・ペンションとは別に、です。


就労者保護政策拡充の労働政策・労働法制改革を


一方、ベーシック・ペンションは、企業サイドが解雇をやりやすくする要因となり、かつ賃金を低下・抑制させる要因にもなりうるものです。
むしろネオリベBI論者は、それを目的の一つに加えてさえいます。
とんでもない話で、それではBPを導入する意義がなくなってしまいます。

実は、BP導入を機に、解雇規制の強化や最低賃金の引き上げなど、労働政策の根本的な見直しをも進めることが望ましく、かつ必要なのです。

とは言っても、企業負担を徒に増やすのではなく、有所得者の皆就労保険を導入・促進するとともに、国費の有効な使い方を、コロナの経験と現状制度が抱える諸問題とを勘案し、新たな労働政策・労働法構築に結びつけたいと思います。

再度確認しますが、ベーシック・ペンションは、解雇をしやすくするための制度ではもちろんなく、最低賃金や賃金レベルを引き下げることに繋がる(企業サイドのための)制度でもありません。
より安心して働き、希望を持って働くことができるようにする。
それが、ベーシック・ペンション導入にあたって改定する雇用保険制度や労働関係制度改革の使命です。

失業手当と休業扱いに拠る雇用調整助成金支給との運用の公正さを


なお、先述したようにコロナ禍において、失業手当と雇用調整助成金支給に関して、2つの給付を巡る公平性や持続性、企業サイドの悪利用、企業規模間の不公平性などの問題が顕在化しました。
その運用管理においても改善が必要です。
基本的には、雇用保険としては、失業給付に比重を置き、休業による雇用の維持はまず企業による休業手当支給基準の明確化と確実な実行を優先し、雇用調整の方は副次的な規定とすべきと考えています。

労働基準法の解雇規制強化への改正、最低賃金法の最賃引き上げを


他にもBP導入に伴う社会保障制度全般の見直しの中に、行うべき課題が多々あります。
その一つが、労働基準法上の解雇規制の強化です。
現在の解雇予告期間規定1ヶ月を改正し、1ヶ月前の予告と予告期間満了後の賃金の3ヶ月分の支払いを企業に義務付けるというのはどうでしょう。
失業手当支出を削減できますし、安易で暴力的な解雇を抑制できます。

また、BPは賃金を抑えようとする方向に働くリスクがあります。
そこで、現状維持ではなく、一層の最低賃金引き上げを企業に義務付けます。
地域格差も最小限またはなくすくらいの政策とし、当分、全国一律時間給1,500円にするくらいの政策を、と考えます。
そのくらい払えない事業は行うべきではない、という考え方を定着させることが大切と思います。

非正規雇用比率の逓減政策、能力開発支援政策の有効化


それ以外にも、コロナ禍だけに限らず問題になっている非正規雇用率の高まりによって起きているワーキングプア・格差問題対策のための、「労働契約法」「労働者派遣法」「パートタイム・有期雇用労働法」などの改正、能力開発事業の実効ある運用も、雇用保険料積立の有効活用や雇用の質の向上のためにも必要と考えます。
その詳細について論じることは、時間と能力不足で不可能ですが、今後も関心をもっていきたいと思っています。

ベーシック・ペンション導入に伴う各種改定制度

本稿を含め、ベーシック・ペンション導入に伴って改定などを行う社会保障制度・労働政策などに関する提案のリストは以下です。
ぜひご参考に!

ベーシック・ペンション導入に伴う社会保障・社会福祉制度等関連法改定課題体系(2021/1/30)
ベーシック・ペンションによる貧困問題改善と生活保護制度廃止(2021/2/6)
ベーシック・ペンションによる児童手当・児童扶養手当廃止と発生余剰財源の保育・教育分野への投入(2021/2/7)
ベーシック・ペンションによる年金制度改革:国民年金廃止と厚生年金保険の賦課方式から積立方式への改正(2021/2/8)
ベーシック・ペンション導入で、2健保、後期高齢者医療、介護の4保険を統合して「健康介護保険制度」に (2021/2/11)
ベーシック・ペンションによる雇用保険制度改革・労働政策改革:安心と希望を持って働くことができる就労保険制度と労働法制を(2021/2/13)
ベーシック・ペンションによる所得税各種控除の廃止と税収増:子どもへの投資、30年ビジョンへの投資へ(2021/2/14)

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