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2020・21年考察

ベーシックインカム地域通貨県札「房」発行公約:千葉県知事選立候補予定の皆川眞一郎氏

既に2021年3月4日公示、同3月21日投票の千葉県知事選に、公約としてベーシックインカムの支給を掲げて、元高校校長皆川眞一郎氏が立候補することを表明しました。
同氏が、ベーシックインカム実現活動グループに参加している方であることは知っていましたし、Facebookで立候補の意志を投稿していたので、早晩ニュースにはなると思っていました。

同じグループでその活動を主宰する映画監督増山麗奈氏が、1月6日に、皆川氏の選挙用ホームページと掲載動画を制作したことを公表。
既に数日経過してしまいましたが、今回、その概要を紹介し、感じた点を述べたいと思います。

今すぐでも結構ですし、後からでも結構ですので、地域通貨発行に関する動画をシェアしましたので、御覧ください。


公約の一つに、一種のベーシックインカムとして地域通貨「房(BOU)」の発行・給付を掲げてることが注目されています。


ベーシックインカム導入公約、拙速を懸念

まずその一報を知って私が真っ先に懸念したのが、拙速にならぬようにということ。
というのは、こうした公約は、意外にと言うか、当然というか、あまり深く考えられていないことが往々にしてあるためです。
この類の公約を発表するためには、それなりに突っ込んだ検討考察とその内容を詳述した文書・資料が必要です。
記者・マスコミや他の立候補者サイドからの質問への回答になるレベルのもの、案、構想・計画が用意されているかどうか。
これは極めて大切かつ不可欠なことです。
果たしてそれがあるかどうか?

このホームページと動画製作者の映画監督増山麗奈氏は、『AI時代の新・ベーシックインカム論 』の執筆者である野口智洋氏等と共に、コロナ禍における特別給付金実現活動を行うなど、現在日本でベーシックインカム導入を主張している活動家の代表的存在です。
皆川氏は、そのグループの一人です。

地域通貨ベーシックインカム、千葉県札「房(BOU)」の概要・特徴



現在日本ベーシックインカム学会理事でもある皆川氏の詳しい経歴は、そのホームページで見て頂くこととして、まずその地域通貨の目的・概要を、添付された動画から整理してみました。

1.ベーシックインカムとして「房(BOU)」と呼ぶ、県のお札、県札を、千葉県民に「県民配当」として発行する。
2.社会的実験として、まず、若者や一人暮らし高齢者に年間24万円分の「房」を知事の任期4年間、毎年支給する。
3.「房」の原資は、県債により賄う。
4.「房」は、1房1円として、千葉県内でのみ地域通貨として使用できる。また将来的には、種々の「県税」等千葉県への納付費用として使うことができる。
5.若者は、学び支援として、大学生・学院生、短大、専門学校、高専生等学生を当初想定する。

他にもありますが、重要点に絞ればこのようになると思います。

地域通貨発行の目的・背景

これらの概要をもつベーシックインカム導入の目的・背景をその動画から簡単に整理してみました。

・長引く不況への経済対策として発行
・教育政策重視県政実現の手段として、学生に「房」を発行
・いずれ支給対象を千葉県民全員に広げる上での社会的実験として実施

整理の仕方にもよりますし、皆川氏及び制作者の意図とは違うかもしれませんが、私の受け止め方です。

拙速・稚拙が過ぎる内容にがく然

もちろん、まだ知事選が告示されたわけではないですし、それまではまだ時間がありますから、いまここですぐ評価すること自体拙速のそしりを受けそうですが、それでもこの動画を公開したのですから、これを見た人は、ベーシックインカムとはこういうものか、と受け止め、何かしらのイメージをもつでしょう。
この画像とは別に、地域通貨県札「房」について、より詳しい内容が書面・資料で添えられていれば、それを読むことで理解は深めてもらえます。
しかし、現在は公開されていません。

動画での内容を見る限りでは、表現は悪いですが、幼すぎます。
魅力を感じませんし、実現可能とも思えません。

とこう書きながら、私自身の提案内容はどうか、必ず反芻して考えていること、考えるべきことは当然です。

拙速・稚拙と考える理由を、思いつくまま以下に挙げます。

1.このために必要な資金・予算はいくらか、何人が対象となるのかなど試算されていない。
2.任期4年での支給が、学生・一人暮らし高齢者に限定され、経済対策のレベルには程遠い。
3.母子家庭・父子家庭対策、貧困者対策、格差是正対策など、社会保障制度とはほとんど関係がない。
4.二選、多選しない限り、全県民対象への「房」支給は実現できない。
5.従って、県税他、県への納付に「房」が持ちられるまでには至らないと予想される。
6.県札発行で、財務省より、地方交付税交付金を抑制されるリスクが高い。
7.こうした構想は、政府・財務省への事前説明や交渉が不可欠で、それに関する発言が現状ない。
8.偽造紙幣が出回るリスクが高い。
9.他府県からの見学者・利用者など、予想期待が甘すぎ、言っている内容も意味不明である。

まだまだありますが、何せ仰っている情報の質・量とも動画だけでは非常に不足しているため、これをベーシックインカムと喧伝され、理解されると後々困るなあという思いがあります。

皆川氏が属するグループには、それ相当の見識がある方々がいらっしゃるはずですから、本来なら、もっと相談し、検討し、とりまとめた上で公表・公開すべきだったでしょう。
余計なことですが、ご自身の画をお札に載せるのは、いかがなものかとも・・・。


市民全員に5万円支給公約そして破棄の岡崎市長同様の恥にならぬように


恥ずかしながら、私が住む岡崎市では、昨年の岡崎市長選で、市民全員に一律5万円支給を公約とした元国会議員が当選しました。
しかし、直後の市議会で、その財源が使用目的が決まっている種々の準備金に多くを頼ったものであったことで市長案は否決。
いとも簡単に公約を破棄せざるを得なくなってしまったことが話題になりました。
国会議員が考えていることがそのレベルのことという落胆を感じると共に、万一のことがあることを想定して代案を用意しておかなかったことの幼稚さには、がく然としてしまいました。

今回の皆川さんの提案内容を見て、ふとそのことを思い出してしまいました。


これから皆川氏に望みたいこと

皆川氏の場合、まだ立候補届けの時期ではないですので、もう一度他の公約も合わせて、支えてくれるスタッフとも十分議論し、備えるべきと考えます。
私個人としては、江戸時代の藩札を持ちだして県札の類似性・合理性を語ることの時代錯誤を思うと、また、政策の原点を教育の在り方に据えてのことを思うと、失礼ながら、今回の立候補は取りやめた方が良いのではと思っています。

もし立候補されるならば、超限定的ベーシックインカム、正直なところベーシックインカムとは呼べない内容レベルでのそれは、構想のやり直しか公約からの削除をお願いしたいと思います。
本気でベーシックインカムの実現をめざすには、多くの課題があり、準備が必要だからです。
それらの課題を、これから当サイトで考察・検討・議論・提起していきます。

なお、もちろん、皆川さん提案の地域通貨「房」について、新しい情報や動きがありましたら、取り上げて参ります。



2021年3月21日千葉県知事選結果

3月21日に投開票が行われた千葉県知事選の結果は以下のとおりです。

投票前から、千葉市長を辞して立候補した熊谷氏の当選は予想されていたことで、圧倒的な支持を受けて当選しました。
その中で、皆川氏は2万票を獲得。
これを善戦というのかどうか分かりません。
また同氏提案の県札「房」の発行案が、どの程度千葉県民にインパクトを与えることができたのかも分かりません。
少なくとも、全国レベルで話題になるまでは至らなかったのではとお思います。

日本ベーシックインカム学会の理事でもある皆川氏が、今回の経験をどのように感じ、どのように今後の活動に生かしていかれるのか、注目していきたいと思います。

なお、ベーシックインカム党を名乗って立候補した後藤輝樹氏については、何も調べていません。
こうした立候補者がどういう組織を背景に活動しているのか、本来知ってくべきとは思いますが、いずれ機会があればと思っています。

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