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2020・21年考察

日本維新の会のベーシックインカム方針:本気で考えているとすれば稚拙で危うい曖昧BI

ベーシックインカム(以降BIとすることがあります)、あるいは当サイトが提案するベーシック・ペンション(以降BPとすることがあります)が実現するには、政治が変わる必要がある。
望ましいBI(またはBP)を公約とする既存政党が現状ないため、そして特定政党が望ましいそれを公約にするまでには、まだまだ時間を必要とする。
ベーシック・ペンション実現は、10年がかり、という理由がそこにあります。

では、既存政党は、現状BIについてどのように考えているのか。
その問いに対する答えを探すため、これまで、次の2政党を調べています。

れいわ新選組のベーシックインカム方針:デフレ脱却給付金という部分的BI(2021/4/4)
立憲民主党のベーシックインカム方針:ベーシックサービス志向の本気度と曖昧性に疑問(2021/4/6)

今回は、先日4月17日の党大会で、ベーシックインカムを次期衆院選の公約に組み入れたことが報じられた日本維新の会のその方針・内容を調べてみました。

今回そのきっかけになったのは、私の運営するFacebookグループ<ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング>に、よく投稿くださるMAさんからの以下の情報です。

4月19日放送のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演のジャーナリスト須田慎一郎氏と飯田氏との対談記事がそれ。

曖昧でよくわからない日本維新の会の「ベーシックインカム」>と題したそのタイトル通り、元の情報が、維新の会のホームページに掲載されていないか確認したのですが見当たらず、対談の元ネタがどういうものかも曖昧であることを予めお伝えしておきます。



日本維新の会が掲げる曖昧でよくわからない「ベーシックインカム」


維新の会が、次期衆院選に向けた活動方針の最重要政策として掲げるのが、経済成長と格差解消に向けた「日本大改革プラン」。
その中で、国民に最低限の所得を保障する「ベーシックインカム」の導入などを公約に掲げているとしての須田氏の発言をまとめました。

曖昧なベーシックインカムの中身

日本維新の会のベーシックインカムに関する制度設計が具体的にどういう内容なのか、よく見えない。
(日本維新の会では、その額は、月額6~7万円)
生活保護をなくす代わりに7万円をもらえば、それで生活が成り立つのか。
日本維新の会の膝下の大阪市の場合、住宅扶助だけで4万円で、7万円にそれを含むのか含まないのか、 含むとすると3万円では生活はできない。
そこが曖昧。

「給付付き税額控除」方式なのか

「そうではなくて、これは平均値を取ると月額7万円になるのだ」と言っているらしく、給付付き税額控除をイメージしているのか。
これも曖昧で、もしそうなら「7万円については税額控除し、それだけ控除できない人については、差額分を給付する」というイメージで「ベーシックインカム」とは、少し違う。

制度設計が出て、メリット、デメリットがわからないと議論ができない

その辺りを具体的に「どういうベーシックインカムを想定しているのか」というところを言うべき。
だが、平均7万円給付となると、結果的に、それで社会保障費がすべて吹っ飛んでしまう。
言ってみれば7万円がベーシックインカムの限界値で、これ以上出そうとすると、赤字国債などに頼らなくてはならず、意味のない話になってしまう。
すなわち、どういう形で制度設計をして、どういうメリットを受けることができるのか。
一方デメリットは何なのかという議論の叩き台のところを出してくれないと、賛成反対は言いにくい。

この意見を受けて、飯田氏は、こう締めくくっています。

確かに「お金をもらえます」というと、「おっ」となるが、その分カットされるものや一緒になるもの、年金や医療福祉も含めて7万円のなかに入っているということになると、少し考え方が変わる。
一口に「ベーシックインカム」と言っても、制度設計によって、いろいろなものが存在する可能性がある。


はっきりしない情報を元に、ラジオで、こういう情報が流れてしまっていること自体が問題なのです。
要するに、イメージ先行、というか、イメージだけ刷り込むやり方。
そもそも、こんな大事なことが公式に活字にまとめられ、公開されていないことが維新の会の胡散くささ、欺瞞性を示すもの。



維新が考えるBIとフラットタックス所得税による新・所得倍増論の欺瞞

そのいい加減さを示す、別のベーシックインカム情報が、同党のホームページからたどり着いた次の動画で知ることができます。
動画はこちら ⇒ https://youtu.be/cbC_WP6oMCs

ここでは、なぜか月額6万円という設定で話をしていますが、まず、6万円のベーシックインカムを支給するといいつつ、所得控除が廃止されることで増額となる所得税がBIの財源とされることを示しています。
所得税の課税をフラット化することで、6万円程度のBIで所得が倍増するといとも簡単に言っているが、倍増する可能性があるのは、一定の高い所得がある層に限られるはず。
加えて、月額6万円のBIを支給された場合、生活保護や児童手当、年金制度、健康保険等がどうなるのかについては全く触れていません。

笑いながら説明している若手議員が、本当にベーシックインカムを理解しているのか、自党の政策とするベーシックインカムの本質や問題をどこまで認識しているのか。
正直、国会議員のレベルがこの程度のことかと愕然とします。

そして何よりも怖いのは、こうした欠陥提案を、支持するコメントが多く書き込まれていること。
ベーシックインカムとはこういうもの、と植え付けられてしまった感がある、竹中暴論と同次元にも拘らずです。
その拡散はなんとかして食い止めなければと強く思うのですが、残念ながら、対抗するオーソドックスなベーシックインカム論をもつ政党がないことが、一層、真のベーシックインカムを巡る議論と望ましい集約・合意形成を困難にしていることに繋がっています。



2020年4月27日「新型コロナウィルス対策に関する提言(第4弾)」のBIに関する記述

ついでと言っては不謹慎ですが、ちょうど1年前、2020年4月27日に同党が内閣に提出した「新型コロナウィルス対策に関する提言(第4弾)」に、ベーシックインカムについての記述があったので、参考までに、一部のみ切り取って転載しました。

特にここではコメントを加えません。
特別定額給付金を継続したらそのままベーシックインカム。
非常にシンプルで、それだけの提案です。


日本維新の会「基本方針」

また、もっとついでですが、同党の基本方針を以下に掲載します。
その中にはベーシックインカムについての直接的な表現は見られないのですが、本質的にベーシックインカムをどう考えるか、どう位置づけるか、その可能性について考える上で参考になる基本的な考え方が盛り込まれています。
それらを抽出して、同党の社会保障政策、そしてベーシックインカムについての考え方を推測したいと考えています。


1.統治機構改革
憲法を改正し、首相公選制、一院制(衆参統合)、憲法裁判所を実現する。
地方課題については地方自治体が国家の意思決定に関与できる新しい仕組みを創設する。

2.地方分権
首都機能を担える大阪都をつくり、大阪を副首都とすることで中央集権と東京一極集中を打破し、将来の多極化(道州制)を実現する。
国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫による社会全体の活性化を図る。

3.既得権益と闘う成長戦略
既得権益と闘う成長戦略により、産業構造の転換と労働市場の流動化を図る。
成長を阻害する要因を徹底的に排除しイノベーションを促進するとともに、衰退産業から成長産業への人材移動を支援する。

4.小さな行政機構
政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にする。
公助がもたらす既得権を排除し、政府は真の弱者支援に徹する。
供給者サイドヘの税投入よりも消費者サイドヘの直接の税投入を重視する。

5.受益と負担の公平
受益と負担の公平を確保する税制度や持続可能な社会保障制度を構築する。

6.現役世代の活性化
現役世代と女性の社会参画を支援し、世代間の協力と信頼の関係を再構築する。

7.機会平等
国民全体に開かれた社会を実現し、教育と就労の機会の平等を保障する。

8.法の支配
「法の支配」「自由主義」「民主主義」の価値観を共有する諸国と連帯する。
現実的な外交•安全保障政策を展開し世界平和に貢献する。
国際紛争を解決する手段として国際司法裁判所等を積極的に活用する。


加えて、その基本方針を具体的な政策を7つに区分し、提起しています。
その中から、ベーシックインカムとの関係性が深い<政策5:教育・子育て・労働・社会保障>のみ今回以下に転機しました。

政策5:教育・子育て・労働・社会保障

1.経済格差が教育格差とならぬよう教育機会平等社会を実現する。
2.教育予算の対GDP比を他の先進国並みに引き上げる。
3.幼稚園や保育園をはじめ、全ての教育を無償化する。
4.保育士給与の官民格差を是正し民間保育所の保育士の待遇を改善する。
5.保育サポーター制度を導入する。
6.労働市場のニーズを踏まえ、公的職業訓練を時代に即したものに見直す。
7.労働時間ではなく仕事の成果で評価する時間給から成果給へ。
8.労働契約の終了に関するルールを明確化し、解雇紛争の金銭解決を可能にする。
9.雇用の7割を担う中小企業の振興策を強化する。
10。医療費に関わる消費税制の見直し。
11。公的年金制度は払い損がなく世代間で公平な年金積立方式を導入する。
12 。高齢者の雇用を創出しつつ年金の支給開始年齢を段階的に引き上げる。


やはり、当然ですが、この中の複数の項目が、ベーシックインカムと直接・間接に関係している政策課題です。
すなわち、維新の会は、ベーシックインカムを提案するにあたって、これらの政策課題をどうするかも、併せて提示し、改定・改正方法・内容を説明すべきなのです。

それがないベーシックインカム提案はありえないのです。
ということで、維新の会のベーシックインカムは、現状では、その曖昧さも理由として、検討も評価するにも値しないものであると留めることにします。

ただ、維新の会の政策には、大賛成する内容も実は多々あります。
しかし、その案とは両立しない、二律背反の政策を組み入れていることが、同党の胡散臭さ、欺瞞性を払拭できない理由です。
それも含め、いずれ政治改革を課題とする記事の中で、同党の基本方針と政策を詳しく、細かく考察することにします。



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